麻薬 主な生産地域

麻薬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 07:00 UTC 版)

主な生産地域

黄金の三角地帯

黄金の三角地帯

黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)とは、アヘン(阿片)の原料であるケシ(芥子)が、タイ・ラオス・ミャンマーの山岳地帯で多く栽培されていることによる呼称である。ただし、現在は麻薬の生産はほぼミャンマーに限られている。ミャンマーでは、麻薬王クン・サが仕切っていたことで有名なように、様々な政治勢力がドラッグビジネスと関わり合いを持っている。

黄金の三日月地帯

黄金の三日月地帯は、黄金の三角地帯と並ぶ、世界最大の麻薬及び覚せい剤密造地帯。アフガニスタンニームルーズ州)・パキスタンバローチスターン州)、イランの国境が交錯している。この呼称の由縁は、アフガニスタン東部のジャラーラーバードから南部のカンダハールを経由し、南西部のザランジ地方に至る国境地帯が三日月形をしているため。

歴史

アヘン戦争

アヘン戦争林則徐イギリスによるアヘンの輸入を禁じ、アヘンを没収し、廃棄処分したことを口実に起こされた戦争。1840年より二年間。

1889年にドイツで(バイエル社より)商品名ヘロインで発売され[23]、モルヒネに代わる依存のない万能薬のように国際的に宣伝され、アメリカでは1924年に常用者推定20万人とされた[24]。1912年の万国阿片条約で規制され第一次世界大戦後に各国が条約に批准した。ドイツで1921年、アメリカで1924年に医薬品の指定がなくなると、のちに非合法に流通するようになった[23]

戦時中の麻薬

ベトナム戦争ではメオ族を支援するためにアメリカ中央情報局 (CIA) が市場へのアヘン運搬を支援したが、これが高純度のヘロインとなって駐留兵の手に渡った[25]。アメリカで1971年麻薬患者が推定56万人となりニクソン大統領が、薬物に対する戦いを宣戦布告する[26]

アメリカ合衆国がベトナム戦争当時、アメリカ軍兵士に対して士気を高めるためにコカイン摂取を極秘に認めていた。当時ベトナムに駐留していたアメリカ軍兵士の40%がコカイン摂取をしていたとされる。現在でも航空機パイロットにアンフェタミン錠剤などを配布していると言われる。[要出典]

国家産業やマフィアの資金獲得

コロンビア1970年代後半から、アメリカ合衆国向けに密輸するコカイン栽培が急増した。アメリカ合衆国で1960年代後半からコカイン摂取がブームになったことがきっかけだった。コロンビアでコカイン生産を行ったのは、アンデス山中の大都市で動いていた犯罪組織メデジン・カルテルだった。その後犯罪組織はコロンビア国家の政治・経済も支配するようになり、コカイン栽培が国家産業の一つにまで発展した。

ミャンマーにおいては、主としてシャン州周辺で古くから栽培されており、同州にはミャンマーからの分離独立を志向する少数民族が多く存在する事、1960年代以降のいわゆる「ビルマ式社会主義」によってミャンマー経済が慢性的な停滞に陥り多くの人材が麻薬産業に流入した事、シャン州から主要な「市場」であるタイや中国に比較的近距離である事、60年代以降のミャンマー政府が国際的に孤立主義の傾向を取り続けた事などから、ケシ栽培を中心とする麻薬産業が急速に発達した。

少量の生産販売で多額の利益が得られる事、多くの麻薬植物は容易に栽培が可能である事から、多くの国の反政府ゲリラ民兵組織が資金源として麻薬産業を保有する事が多い。また、同様の理由で、かつ、中央政府の支配力が及ばない事から貧しい農家が「究極の換金作物」として麻薬植物を栽培するケースも多く、アフガニスタン内戦当時のレバノンベッカー高原などでは盛んに麻薬植物が栽培されている。

2012年の第67回国連総会では、メキシコ、コロンビア、グアテマラといったラテンアメリカ諸国の大統領は、薬物の流通を制限するという証拠は乏しく、暴力につながるこうした政策の変更を提案した[27]。メキシコでは、カルデロンの任期中6年間に、薬物に関連した暴力により死者は6万人を上回り、コロンビアでは撲滅運動にかかわらず依然としてコカインの世界最大の生産地の1つである[27]

2013年の国連の薬物乱用防止デーにおいて、法の支配は一部の手段でしかなく、罰することが解決策ではないという研究が進んでおり、健康への負担や囚役者を減らすという目標に沿って、人権や公衆衛生、また科学に基づく予防と治療の手段が必要とされ、このために2014年には高度な見直しを開始することに言及し、加盟国にはあらゆる手段を考慮し、開かれた議論を行うことを強く推奨している[28]

オピオイド危機

2017年10月には、アメリカで処方されたオピオイドに端を発する過剰摂取死のうなぎ上りによって、トランプ大統領は公衆衛生の非常事態を宣言した[9]。10月中旬には、トランプ大統領が麻薬問題担当長官に指名した共和党のトム・マリーノが、オピオイドの取り締まり弱体化させる法案を進めていたことで指名辞退となり、オピオイドを蔓延させた製薬会社への捜査の声も高まった[29]。およそ1週間後には、オピオイドのフェンタニルを過剰に売り込んだ、インシス・セラピューティクス社の最高経営責任者(CEO)らが逮捕され、医師や薬剤師にリベートや賄賂を渡して売り込んでおり、FBIの捜査官はオピオイドをがんでもない患者に売りつけるのは密売人と変わらないと非難した[30]。また中国で密造された、ほとんどがフェンタニル誘導体である合成オピオイドも新たな脅威となってきた[9]

文化と麻薬

宗教

幻覚性植物を聖なる植物とし、信仰の対象にしている宗教もある。米国のネイティブ・アメリカン・チャーチのペヨーテや、ブラジルのアヤワスカを使うカトリック系教会、ジャマイカのラスタファリ運動における大麻、西アフリカ、ガボンのブウィティ教、瞑想のために大麻樹脂を吸うシバ派のヒンドゥー教修行者などがある。宗教儀式における幻覚性植物の使用は、コミュニティ内の連帯を高める役割もはたしている。2006年、アメリカ合衆国最高裁判所は、規制薬物の宗教上の使用を認める判決を出している[31]

シャーマニズム

人類と向精神性作用のある植物との関係は遥か昔まで遡ることができる。世界各地にみられるシャーマニズムの儀式では、夜間に少人数で集まり、明かりを消した小屋の中や野外でたき火を囲み、幻覚性植物を摂取する。シャーマンは歌を歌い、祈りを捧げたりドラムを叩いたりしながら、病気の治療をしたり、精霊と交信し重要な決定をしたり予言をしたりする。メキシコ、マサテク族のマジックマッシュルーム、アメリカン・チャーチのペヨーテ(幻覚性サボテン)、アンデス地方のサンペドロ・サボテン、アマゾンのアヤワスカや西アフリカのイボガ(イボガイン)、シベリアのベニテングタケなどがある。中世ヨーロッパや古代インドでは、せん妄性の植物ベラドンナダチュラが儀式的に使用されていた。

少数民族

コロンビアペルーボリビアに住む先住民インディオや労働者は、コカインの原料であるコカの葉を興奮剤として日常的に噛んだり、お茶にして飲んでいる。東南アジア、東アフリカ中東においても、興奮作用のある植物を嗜好品として摂取する習慣がある。ケシ(芥子)栽培をするタイ北部やラオスに住む少数民族の中には、アヘン中毒に陥っている者も少なくない。

ヒッピームーブメント

定義2、3に該当する麻薬 LSD は、1960年代後半に欧米を中心に爆発的に広まり、ヒッピームーブメントを生みだした。音楽、文学、映像、絵画、ファッションなどに大きな影響を与え、ベトナム戦争反戦運動精神世界東洋哲学エコロジーなどへの関心を集めた。中心人物として、元ハーバード大学教授のティモシー・リアリーや、『カッコーの巣の上で』を書いたケン・キージーなどがあげられる。


  1. ^ 麻薬及び向精神薬取締法 別表第一にて74の化学物質を定義のほか[32]、麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令でも追加定義している[22]
  2. ^ a b c 東京都知事指定薬物から薬事法の「指定薬物」に変更[33]。薬事法 第2条15では指定薬物を定義しており、麻薬及び向精神薬取締法に規定する麻薬及び向精神薬を含む[34]
  3. ^ 麻薬及び向精神薬取締法 別表第三にて10の化学物質を定義のほか[35]、麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令でも追加定義している[22]
  1. ^ a b c d e 世界保健機関 (1994) (pdf). Lexicon of alchol and drug term. World Health Organization. pp. 25-26, 47, 49. ISBN 92-4-154468-6. http://whqlibdoc.who.int/publications/9241544686.pdf  (HTML版 introductionが省略されている
  2. ^ 松下正明(総編集) & 1999-06, pp. 112、120-121.
  3. ^ a b 松下正明(総編集) & 1999-06, p. 109.
  4. ^ 松下正明(総編集) & 1999-06, pp. 110-111.
  5. ^ a b c 松下正明(総編集) & 1999-06, pp. 120-121.
  6. ^ 松下正明(総編集) & 1999-06, p. 112.
  7. ^ Kathalijne Maria Buitenweg (2003年10月6日). “Working document on the UN conventions on drugs”. 2006年4月15日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g ジェフリー・ライマン、ポール・レイトン 2011, pp. 65-69.
  9. ^ a b c Axel Bugge (2017年10月28日). “アングル:米国の「オピオイド危機」、欧州にも波及の恐れ”. ロイター. https://jp.reuters.com/article/drugs-opioids-idJPKBN1CW0ST 2017年12月5日閲覧。 
  10. ^ ジェフリー・ライマン、ポール・レイトン 2011, p. 77.
  11. ^ 2007年10月、中国から日本に密輸出しようとした日本人3人に死刑が言い渡され確定した。
  12. ^ 小林桜児「統合的外来薬物依存治療プログラム― Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program(SMARPP)の試み」 (pdf) 『精神神經學雜誌』第112巻第9号、2010年9月、 877-884頁、 NAID 10028059555
  13. ^ 国際麻薬統制委員会 (2019年6月). “State responses to drug-related criminality (PDF)”. International Narcotics Control Board. 2019年6月10日閲覧。
  14. ^ 国連開発計画・世界保健機関ら 2019.
  15. ^ a b c d e f ジェフリー・ライマン、ポール・レイトン 2011, pp. 71-75.
  16. ^ INCB holds consultations with Uruguay on cannabis legalization for non-medical purposes”. 国際麻薬統制委員会 (2021年1月4日). 2021年2月13日閲覧。
  17. ^ Brian Vastag (2009年4月7日). “5 Years After: Portugal's Drug Decriminalization Policy Shows Positive Results -”. Scientific American. 2021年2月9日閲覧。
  18. ^ Oregon becomes the first state to decriminalize small amounts of heroin and other street drugs”. CNN (2021年2月2日). 2021年2月9日閲覧。
  19. ^ Tracy Loew, Virginia Barreda (2020年11月4日). “Oregon decriminalizes small amounts of drugs, including heroin”. Usa Today. 2021年2月9日閲覧。
  20. ^ Frédéric Burnand (2017年4月28日). “麻薬撲滅は幻想、東南アジアでも麻薬政策の転換進む”. swissinfo. 2019年1月15日閲覧。
  21. ^ 島根県 : 薬物乱用の状況 各国の罰則[リンク切れ]
  22. ^ a b c 麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令(平成二年政令第二百三十八号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2019年6月28日). 2019年12月28日閲覧。 “令和元年政令第四十七号改正、2019年7月28日施行分”
  23. ^ a b ツェンク & 田端 1996, p. 97.
  24. ^ アルフレッド・W・マッコイ 1974, pp. 上4-6.
  25. ^ クリストファー・ロビンズ『エア・アメリカ』松田銑訳〈新潮文庫〉、1990年、369-370頁。ISBN 4-10-233101-8
  26. ^ アルフレッド・W・マッコイ 1974, p. 上1.
  27. ^ a b Brian Winter (2012年9月26日). “U.S.-led "war on drugs" questioned at U.N.”. Reuters. http://www.reuters.com/article/2012/09/26/us-un-assembly-mexico-drugs-idUSBRE88P1Q520120926 2013年11月13日閲覧。 
  28. ^ 国際連合 (2013年6月26日), “Secretary-General's remarks at special event on the International Day against Drug Abuse and illicit Trafficking” (プレスリリース), http://www.un.org/sg/statements/index.asp?nid=6935 2013年11月13日閲覧。 
  29. ^ 「オピオイド危機」で儲けているのは誰か?麻薬系鎮痛剤オキシコンチンで数十億ドルを稼ぐ 秘密主義のサックラー一族”. Democracy Now! (2017年10月19日). 2017年12月5日閲覧。
  30. ^ メリナ・デルキック、河原里香・訳 (2017年10月27日). “米製薬大手、中毒性のオピオイド「密売」でCEOら逮捕 (Big Pharma Exec Arrested for Opioid Bribes)”. ニューズウィーク日本版. http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/10/ceo-13.php 2017年12月5日閲覧。 
  31. ^ UDV Wins Supreme Court Decision on Preliminary Injunction, 2006
  32. ^ 麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)別表第一(第二条関係)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2015年6月26日). 2019年12月28日閲覧。 “平成二十七年法律第五十号改正、2016年6月1日施行分。「第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。一 麻薬 別表第一に掲げる物をいう。」「別表第一(第二条関係)七十五 前各号に掲げる物と同種の濫用のおそれがあり、かつ、同種の有害作用がある物であつて、政令で定めるもの」”
  33. ^ 知事指定薬物”. 東京都福祉保健局. 2007年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年12月28日閲覧。
  34. ^ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第2条(定義)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2016年12月16日). 2019年12月28日閲覧。 “平成二十八年法律第百八号改正、2018年12月30日施行分”
  35. ^ 麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)別表第三(第二条関係)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2015年6月26日). 2019年12月28日閲覧。 “平成二十七年法律第五十号改正、2016年6月1日施行分。「第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。六 向精神薬 別表第三に掲げる物をいう。」「別表第三(第二条関係)十一 前各号に掲げる物と同種の濫用のおそれがあり、かつ、同種の有害作用がある物であつて、政令で定めるもの」”






麻薬と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「麻薬」の関連用語

麻薬のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



麻薬のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの麻薬 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2021 GRAS Group, Inc.RSS