鳩 人との関係

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/01 15:13 UTC 版)

人との関係

カワラバト(ドバト)

ハトはまた、通信用の伝書鳩としても古代から盛んに使用された。カワラバトから長年にわたって改良された伝書鳩は、戦中の軍事用、戦前・戦後には報道用や通信用に大いに活用された。太陽コンパスと体内時計地磁気などにより方角を知る能力に優れているとされ、帰巣本能があるため、遠隔地まで連れて行ったハトに手紙などを持たせて放つことによって、情報をいち早く伝えようとしたのである。戦時には古くから軍が導入し、軍用鳩が本格的に研究され、第二次世界大戦においては主に伝令用の他、小型カメラを装着させた敵地偵察用のスパイ鳩として活躍した。薬品血清等の医薬品、動物(主に牛)の精子の輸送にも使われ僻地医療で重要な役目を果たした。しかしその後、電話などの通信技術の進歩によりその役目を終えたかに見えた。現在では、脚環にICチップを内蔵した自動入舎システムが普及したため、かつて鳩を飼っていた団塊の世代がリタイア後に再開し、鳩レースを楽しむことが小ブームになっている。また、情報IT関連の新しい試みとして、レース鳩にマイクロSD(合計2TB程度)等の超小型メモリーチップを運ばせたり(200km程度の短距離で所要時間約2H)、GPSユニットやCCDカメラ等を取り付け、より詳細な生態や飛行コースを追跡する実験も行われている[3]

文化

ハトは、その群れを成す性質から、オリーブと共に平和の象徴とされている。

ノアとハトのモザイク画

これは旧約聖書ノアの箱舟の伝説にも由来している。ノアは47日目にカラスを放ったが、まだ水が乾く前であったからすぐに戻ってきた。ハトを放ったところ、オリーブの葉をくわえて戻ってきた。これによりノアは水が引き始めたことを知ったという。平和の祭典とも称される近代五輪の開会式では、かつては実際に鳩が飛ばされていたが、外来生物への危機感の高まりや鳩が生息できる環境ではない場所での開催、式典が日中ではなく夜中に行われるようになった事などから、鳩に扮した人のダンサーなどによるパフォーマンスや鳩を模した風船、モニター映像によるもの等に変わった。

また、ギリシア神話においてハトは、女神アプロディーテー聖鳥とされていた他、イアーソーンを始めとする英雄たち(アルゴナウタイ)が乗るアルゴー船が、互いに離れたりぶつかり合ったりを繰り返す二つの巨岩シュムプレーガデスの間を通り抜ける際、試しにハトを通り抜けさせて安全を確認するエピソードや、狩人オーリーオーンプレイアデス(巨神アトラースの七人娘たち)を追い回した際、それを不憫(ふびん)に思った主神ゼウスが彼女たちをハトに変え、さらに星へと変えたエピソード等が存在する。新約聖書では、荒野で苦行を終えたイエス・キリストサタンの誘惑をしりぞけた後、聖霊が白いハトの姿となってくだったことは、つとに有名である。

一方、オーストリア動物行動学の権威、コンラート・ローレンツはその著書『ソロモンの指環』の中で、平和の象徴とされるハトの別の一面を紹介している。2羽のハトを一つの鳥籠に入れて外出したところ、籠の中でハトが喧嘩を起こし、互いに死ぬまで決して戦いを止めようとはしなかった、というもので、こうした「ハトの喧嘩」は戦い方を知らず致命打を与えられるほどの武器も持ち合わせていない動物ほど、いざ争いを始めた際にはある意味戦慣れした肉食動物以上に凄惨な殺し合いに発展する、という事例の典型例として引き合いに出される事が多い。

日本

日本がヴェルサイユ条約締結を記念して発行した3銭切手(大正8年 (1919年))

日本では鳩が八幡神神使とされてきた。八幡神は軍神なので平和とは結びつかず、武士の家紋ともなった[4]。戦後西洋的価値観が入ってきて、タバコピースのデザインのような平和のシンボルと言うイメージが定着した。

十銭紙幣A号券(昭和22年 (1947年))

日本の童謡の代表的なものの一つとして『』が挙げられる。また、瀧廉太郎は『鳩ぽっぽ』という童謡を作曲している。

「鳩に三枝の礼あり(仔鳩が親の恩を感じ三つ下の枝に止まる故事より、礼儀を重んじることの重要性)」「鳩に豆鉄砲(突然の出来事に、あっけにとられた様子)」「鳩を憎み豆を作らぬ(些細なことに拘って肝心なことが疎かになる愚かしさや弊害)」等、諺でもお馴染みである。

ハトの名前は特急列車の名称などに用いられ親しまれたことがある他、日本テレビジャンクション鳩の休日』にも長年(開局〜)ハトが登場している。また、神奈川県の銘菓のひとつに、「鳩サブレー」というハトの形を模した菓子も存在している。

平和堂フレンドマート彩都店
郷土玩具のあけび鳩車

企業名やシンボルマークでハトにちなんだものとしては、例えばはとバスや、イトーヨーカ堂のロゴマーク(真上にと真下にの中間にシロバトの位置)、同社傘下のスーパーマーケット・ヨークマートのマーク(ヨーカ堂での青部分が緑)全国宅地建物取引業協会連合会のシンボルマーク、全国引越専門協同組合連合会が存在し、また滋賀県を中心に展開するスーパーチェーンの平和堂のロゴマーク(赤い背景に前にシロバトと後にアオバトの位置)として親しまれていたこともある。後述の外国語名から取られた企業名として、ベビー用品メーカーのピジョン、ガス機器メーカーのパロマなども挙げられる。

日本では1980年代あたりから都市部を中心にハトによる食害や糞害が多発し、問題化している。もともと都市部に生息する野鳥はヒトに肺炎を起こすオウム病クラミジア原虫)やクリプトコッカス(カビの一種)を含んだ糞を排出しやすく、特に大群をなすハトはそれを排出しやすい。[要出典]公園などでの餌付け行為にも賛否がある。

金沢駅では糞害対策として鷹匠に依頼し鷹で鳩を追い払うパトロールが定期的に行われている[5]

イングランド

イングランドでは、胸の筋肉を異常に発達させたポーターという愛玩具用の品種の鳩やen:Fancy pigeonという観賞用のハトの品種群が存在する。

中国

中国では鳥を放つと幸運が訪れるという民間信仰があり、祭事・祝い事の際にはハトを放つ習慣があったが、現在では都市部でハトが繁殖してしまっているため、放鳥が禁止されている地域もある。

食用

食文化としてドバトは中国では普通に食用にされる。また、フランスでもハトは食材として一般的である。ギリシャレバノン、エジプトなど地中海沿岸諸国においてハトはよく食される[6]イギリスでも18世紀頃までは自然繁殖した物を捕らえて調理したものが一般的に食卓に上っていたといわれ、現在でも食文化中にそのなごりがみられる。中近東では古くより、乾燥した風土でも放し飼いでよく増える性質があるため、ハトのための養殖場(のような建造物)もあり、貴重な動物性蛋白源として、一般的に利用されている。鳩の塔(ピジョン・タワー)と呼ばれるこの塔は、高さは10mから15mほどで、場所によってスタイルが違う。イランイスファハーン周辺においてはひとつおきに積んだ日干しレンガを高く積み上げ、ハトの休息できる無数の空洞を作る。ここにハトがやってきて営巣するのである。その外側はぐるりと日干しレンガの壁によっておおわれており、内部構造は見えなくなっている。外壁にはいくつかの穴があけられており、そこからハトは出入りする。エジプトにおいては中は空洞で、そのかわりに止まり木が何段も差し込まれ、これがハトの巣となっている。イランにおいてのピジョン・タワーの主目的は肥料としてのハトの糞の収集であり、そのため化学肥料の普及後は利用されることはなくなっている。これに対しエジプトのピジョン・タワーは食用ハトの飼育を目的としており、現在でも使用されている。糞ももちろん肥料として使用するが、二義的なものである[7]。エジプト料理においてはハトは一般的な食材の一つとなっている。

日本では一般的には鳩を食用とすることはまれである。初めて日本にきた中国人はしばしば、野生のハトを誰も捕まえようとせず、ハトも人を恐れないことに驚く。日本において野鳥を狩猟することは鳥獣保護法で規制されているが、キジバト(山鳩)は狩猟鳥であり、食用にされることがある。ハトの卵はハトの肉と同様日本では食材として一般的ではない。沸騰したお湯でも固まらず、ほとんど食べられることはない。


  1. ^ 9種とする説もある。
  2. ^ 広義にカワラバトの飼養品種がドバト、狭義に飼養品種が再野生化した個体をドバトとする説があるが、ドバトの名称はすでに江戸時代から見られることより、フン問題などが社会問題化した1970年代以降の新説と言える。一般的にはカワラバトとドバトの間には明確な線引きはない。これは、すでに数千年にわたり家禽化され続けているカワラバトに対して純粋な野生種としてのカワラバトを見極めきれないためである。従って、学術名としてはカワラバト、呼称としてはドバトという事になろう。
  3. ^ 観賞用に飼われたりマジックの小道具として使用される小型のハト
  4. ^ ゲルマン祖語: *dubon
  1. ^ 三輪睿太郎監訳『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』朝倉書店、2004年9月10日、第2版第1刷、645-646頁。
  2. ^ F.E.ゾイナー『家畜の歴史』国分直一・木村伸義訳、1983年、法政大学出版局。p. 528
  3. ^ 2010伝書鳩による実験
  4. ^ 佐々木清光「鳩」(歴史のなかの動物107)、『週刊朝日百科日本の歴史』107、朝日新聞社、1988年。金子裕昌、小西正泰、佐々木清光、千葉徳爾編『日本史のなかの動物事典』東京堂出版、1992年に収録。
  5. ^ 金沢駅の美しさを守る「鷹パトロール」がスゴ過ぎる! おたくま経済新聞、2018年4月23日
  6. ^ 松本仁一『アフリカを食べる』朝日新聞社、1998年8月1日第1刷発行。p. 204.
  7. ^ 遠山柾雄『沙漠に緑を』岩波新書、1993年6月21日第1刷。pp. 85-88.
  8. ^ スー・ドナルドソン、ウィル・キムリッカ『人と動物の政治共同体』尚学社、2016年、343頁。


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