魯迅 魯迅の生涯

魯迅

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/05 02:15 UTC 版)

魯迅の生涯

魯迅は生涯において、小説集3冊、雑文集17冊、散文詩集1冊、回想記1冊を刊行したほか、『中国小説史略』をはじめとする研究書や論文、さらに膨大な翻訳を残した[26]。このなかで圧倒的な量にのぼるのは雑文集である[26]。とくに、1927年から始まり1936年に病没するまでの上海時代は、彼は教職に就かず、フリーの文学者・思想家・論争家として生きた[26]。毒舌的なレトリックを駆使した雑文を矢継ぎ早に発表し、多岐にわたる論的に厳しい攻撃を加え続けた[16]。古典文学者あるいは小説家として大成する途を棄て、論争の現場に身をさらしながら、転換期を闘い抜いた[26]

魯迅と漢字

魯迅は、中国の近代文学の元祖であり、同時に国民精神の改造を生涯の課題とした作家である[27]漢字(当時の漢字は主に康熙字典体である)に対して、「漢字が滅びなければ、中国が必ず滅びる」と断言し、以下のように述べている[28]

この四角い字(漢字)の弊害を伴った遺産のお陰で、我々の最大多数の人々は、すでに幾千年も文盲として殉難し、中国もこんなほかの国ではすでに人工雨さえ作っているという時代に、我々はまだ雨乞いのため蛇を拝んだり、神迎えをしたりしている。もし我々がまだ生きていくつもりならば、私は、漢字に我々の犠牲になって貰う外はないと思う。 (松枝茂夫訳『魯迅全集』(1956年)岩波書店刊に所収されている)

中国共産党と魯迅

魯迅墓(上海市)
魯迅像(魯迅公園・上海市)
魯迅紀念館(上海市)
1936年撮影

魯迅の人生の最後の6年間は、左派的な理念によって育まれた多くの人にとって突出した文化的英雄であった[3]。彼の死後、ほどなくして20巻からなる『魯迅全集』が出版されたが、これは現代中国文学界における空前の出来事であった[3]。中国現代作家の中で、このような栄誉に浴したのは魯迅以外にはいない。このような栄誉は、中国共産党により作り出されたものである[3]。国民党との奪権闘争を通じて、かれは中国共産党にとって人民に愛される反政府的な愛国主義を宣伝する代弁者として非常に利用価値の高い存在だったからである[3]毛沢東は、国防文学論戦ですでに魯迅を盾にして、党内の敵対派閥を叩くという巧みな戦術を展開していたが、魯迅の死後には、中国共産党統治の正統性を宣伝するために徹底的に魯迅を利用していった[25]日中戦争開始直後の1937年10月、共産党中央と中国紅軍総司令部が置かれていた延安では、魯迅逝世1周年を記念する集会が開かれ、毛沢東が「魯迅の中国における価値は、わたしの考えでは、中国の第一等の聖人とみなされなければならない」と講演した[25]。民国期の言論界で、欧米・日本の帝国主義国に対し抵抗しつつ、その近代文化を主体的に受容しようとした点、および左翼文壇の旗手としての国民党批判者としての「戦歴」により、魯迅は中国革命の聖人へと祭り上げられた[29]

作品原題一覧

  • 熱風
  • 華蓋集
  • 華蓋集続編
  • 而已集
  • 三閑集
  • 二心集
  • 偽自由書
  • 南腔北調集
  • 准風月談
  • 花辺文学
  • 且介亭雑文
  • 且介亭雑文二集
  • 且介亭雑文末編
  • 集外集
  • 集外集拾遺
  • 集外集拾遺補編
小説
  • 『懐旧(処女作)』吶喊 -『狂人日記』、『孔乙己』、『故郷』、『阿Q正伝』等、北京時代の小説を収める。
  • 彷徨
  • 故事新編
  • 朝花夕拾
  • 野草  平凡社東洋文庫に全釈
書簡・評論
  • 両地書  2つの土地の間を往復した書簡という意味の書簡集で、北京時代の魯迅と北京女子師範大学宿舎に住む許広平の間(その間2キロ足らず)で交わされた書簡をまとめたもの[30]
  • 中国小説史略  平凡社東洋文庫(全2巻)で新訳

  1. ^ 藤井(2011年)25ページ
  2. ^ 藤井(2011年)27ページ
  3. ^ a b c d e 夏(2011年)11ページ
  4. ^ a b 藤井(2011年)まえがき1ページ
  5. ^ a b 井波(2005年)192ページ
  6. ^ a b c d 夏(2011年)13ページ
  7. ^ a b c 藤井(2011年)55ページ
  8. ^ a b c d 夏(2011年)14ページ
  9. ^ 「名言巡礼 国籍超えた「惜別」の証し」読売新聞2016年3月20日日曜版
  10. ^ a b c d e f g h i j k l 夏(2011年)15ページ
  11. ^ 莫邦富『中国人は落日の日本をどう見ているか』(1998年 草思社
  12. ^ a b 井ノ口(2012年)173ページ
  13. ^ 藤井(2011年)80ページ
  14. ^ a b 夏(2011年)17ページ
  15. ^ a b c 伊藤(2005年)97ページ
  16. ^ a b c d 井波(2005年)193ページ
  17. ^ a b c d 藤井(2011年)99ページ
  18. ^ a b c 藤井(2011年)112ページ
  19. ^ 夏(2011年)40ページ
  20. ^ 藤井(2011年)113ページ
  21. ^ a b 藤井(2011年)114ページ
  22. ^ a b c d e f g 藤井(2011年)119ページ
  23. ^ a b c d e 藤井(2011年)122ページ
  24. ^ a b c 藤井(2011年)208ページ
  25. ^ a b c d 藤井(2011年)209ページ
  26. ^ a b c d 井波(2005年)194ページ
  27. ^ 大島(2011年)14ページ
  28. ^ 大島(2011年)16ページ
  29. ^ 藤井(2011年)210ページ
  30. ^ 藤井(2011年)104ページ
  31. ^ 魯迅特集(東北大学・まなびの杜)
  32. ^ a b 魯迅の下宿跡地、仙台市が記念広場化 21年3月完成予定 - 河北新報
  33. ^ 日中今昔ものがたり「人的財産」賞に(asahi.com)
  34. ^ 東北大学魯迅記念奨励賞(東北大学)





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