食肉 成分と機能

食肉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 14:09 UTC 版)

成分と機能

本項では食肉の主な成分と、それらが栄養や味および香り、さらに健康機能などにおよぼす影響を述べる。

生食をすれば、その鳥獣の種類や飼育環境、鮮度によっては寄生虫食中毒の危険性がある[2]

主な成分

食肉の主な成分はであり、他にタンパク質脂質無機質ビタミンなどで構成される。

タンパク質
食肉のタンパク質は、主に筋線維を構成するタンパク質、筋漿に溶解しているタンパク質、および結合組織を構成するタンパク質に分けられる。
脂質
食肉中の脂質の多くは中性脂質であるが、それらのほとんどは「筋間脂肪組織」および「筋肉内脂肪組織」(いわゆる霜降り)に分布する。霜降りの存在により、脂肪の含有量はバリエーションが大きく、牛肉のロース(胸最長筋)では40%を超えるもの、豚肉のロースでも近年は10%を超えるようなものも出てきている。また、リン脂質も含まれるが、これらは細胞膜などの膜に局在している。
無機質
食肉中の無機質で特に重視されているのはである。実際にはヘム鉄の形態で、ミオグロビンおよびヘモグロビンとして存在している。
ビタミン
とくに豚肉において、ビタミンB1(チアミン)が多く含まれることが良く知られている。

栄養学的な特徴

家禽(鳥)や魚は含まない、牛豚羊馬ヤギの肉である赤肉については、摂取量が多いと結腸直腸がん、心臓疾患、糖尿病のリスクの高まりから、鳥魚豆よりも健康を保つのに最適な食事ではないとされる[3]。肉に含まれるヘム鉄は、発がん性物質のN-ニトロソ化合物ニトロソアミンなど)の生成を促す[3]

霜降りの多い食肉は脂肪の含量が多すぎることから、健康状態(運動不足など)によっては極端に脂肪の多い食肉を摂取しないよう指導する場合もある。動物性脂肪の摂取のし過ぎは生活習慣病との関連から問題視されている。

  • 動物性の脂肪より植物性の油を多めに「健康づくりのための食生活指針」1985年[4]
  • 脂肪のとりすぎをやめ、動物、植物、魚由来の脂肪をバランスよくとりましょう「食生活指針」2000年[5][6]

豚肉は日本人に欠乏しがちなビタミンB1の優れた給源である。

官能特性と成分

味や香り、見た目といった食肉の官能特性は、含まれる成分によりもたらされるものである。

食肉の呈味成分としては、酸味を呈する乳酸をはじめとする有機酸うま味を呈するアミノ酸核酸イノシン酸)およびペプチド塩味を呈する無機塩類、甘味を呈する還元糖などがある。実際にはうま味や酸味が重要だと考えられている。脂肪のおいしさも想定されているが、それが味であるのか香りであるのかについては判然としない。
香り
食肉を特徴付ける「肉らしい香り」は複数の成分によってもたらされるもので、いわゆる核となる成分は存在しないと考えられている。肉の種類などによっても成分は異なり、一概に説明できないのが現状である。肉の悪い臭いについては、オスに由来するいわゆる性臭や、糞便に由来するインドール系の臭気、および保存によって生じる酸化臭などが知られており、それぞれ成分の同定が進められている。
食感
食肉の食感は、主に構成するタンパク質のうち、筋線維を構成するものと、筋肉内結合組織を構成するタンパク質によってもたらされているものと考えられている。
  • 外観
食肉を特徴付ける赤い色はミオグロビンによるものである。ミオグロビンはその誘導体の種類により呈する色が変化するが、好まれる鮮やかな赤色は、ミオグロビンが酸素と結合したオキシミオグロビンによるものである。オキシミオグロビンはさらに酸化されるとメトミオグロビンになるが、このメトミオグロビンは、消費者に好まれない褐色を呈する。食肉を放置すると色が悪くなるのはこのためである[7]
畜種による官能特性の違い
動物種により味や香り、食感が異なると思われているが、実際に異なるのは香りと食感であり、味は動物間による違いが無いことが明らかにされている。

機能性

食肉を機能性食品として取り扱う例はあまり多くないが、前述の鉄の吸収が良い点などを機能性として紹介する例がある。


注釈

  1. ^ USDA yield gradeとUSDA quality gradeがある[12]
  2. ^ 日本食肉格付協会 により規格化および運用されている。

出典

  1. ^ 「食肉」『広辞苑』
  2. ^ 肉の生食に注意! 埼玉県ホームページ(2018年3月17日閲覧)
  3. ^ a b 国際がん研究機関 (2015-10-26). IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat (Report). http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2015/pdfs/pr240_E.pdf.  WHO report says eating processed meat is carcinogenic: Understanding the findings”. ハーバード公衆衛生大学院英語版 (2015年11月13日). 2017年5月6日閲覧。
  4. ^ 厚生省保健医療局健康増進栄養課『健康づくりのための食生活指針-解説と指導要領』第一出版、1986年5月。ISBN 978-4-8041-0327-3
  5. ^ 国立健康・栄養研究所監修『食生活指針』 第一出版、2版、2003年9月。ISBN 978-4-8041-1076-9
  6. ^ 「食生活指針」の策定について (厚生労働省)
  7. ^ 千国幸一、「食肉の特性と利用」 日本調理科学会誌 2007年 40巻 1号 p.33-36, doi:10.11402/cookeryscience1995.40.1_33
  8. ^ 石田正昭「食肉工場の衛生改善と生産性向上」『三重大学生物資源学部紀要』第21号、1999年1月、 17-30頁、 NAID 110000506896
  9. ^ 三橋貴明『経済ニュースの裏を読め!』 TAC出版、2009年、213頁。
  10. ^ 『現代の食品科学(第2版)』三共出版、1992年、p.260〜261、ISBN 978-4-7827-0277-2
  11. ^ 松石昌典、西邑隆徳、山本克博編『肉の機能と科学』《食物と健康の科学シリーズ》p71 朝倉書店、2015年4月5日初版第1刷
  12. ^ USDA quality standards
  13. ^ ジビエ(野生鳥獣の肉)はよく加熱して食べましょう 厚生労働省
  14. ^ E型肝炎ウイルスに対する安全対策へのご協力のお願いについて 日本赤十字社 2018年3月9日告知
  15. ^ エルセビア・サイエンス社 Meat Science誌
  16. ^ International Congress of Meat Science and Technology
  17. ^ 日本食肉研究会
  18. ^ Meat Atlas 2014 – Facts and figures about the animals we eat , page 46, download as pdf
  19. ^ Meat Atlas 2014 – Facts and figures about the animals we eat , page 48, download as pdf
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m [1]
  21. ^ 「肉の機能と科学」(食物と健康の科学シリーズ)p19 松石昌典・西邑隆徳・山本克博編 朝倉書店 2015年4月5日初版第1刷
  22. ^ 「肉の機能と科学」(食物と健康の科学シリーズ)p24 松石昌典・西邑隆徳・山本克博編 朝倉書店 2015年4月5日初版第1刷
  23. ^ a b 「肉の機能と科学」(食物と健康の科学シリーズ)p25 松石昌典・西邑隆徳・山本克博編 朝倉書店 2015年4月5日初版第1刷
  24. ^ 「世界の食肉生産はどうなるか 2018年の展望」p4 ハンス・ヴィルヘルム・ヴィントフォルスト著 杉山道雄・大島俊三編訳著 平光美津子・鷲見孝子訳著 筑波書房 2011年6月20日第1版第1刷発行
  25. ^ 「食肉・鶏卵生産のグローバル化 2021年までの展望」p1 ハンス・ヴィルヘルム・ヴィントフォルスト、アンナ・ヴィルケ著 杉山道雄・大島俊三編訳著 平光美津子・鷲見孝子・棚橋亜矢子・松野希恵・高山侑樹共訳 筑波書房 2011年6月20日第1版第1刷発行
  26. ^ FAO (2009): FAOSTAT. Rom.
  27. ^ a b https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_000814.html 「食肉の消費動向について」独立行政法人農畜産業振興機構 2015年7月6日 2016年4月29日閲覧
  28. ^ 牛肉取引禁止令差し止め インド最高裁 日本経済新聞ニュースサイト(2017年7月13日)2018年3月17日閲覧
  29. ^ 「肉の機能と科学」(食物と健康の科学シリーズ)p9-10 松石昌典・西邑隆徳・山本克博編 朝倉書店 2015年4月5日初版第1刷
  30. ^ [2]
  31. ^ 植物性たんぱくに脚光 三井物産、エンドウ豆で食肉風 日本経済新聞・電子版(2017年10月30日)
  32. ^ 「植物肉」は“ほぼ”肉の味だった日経ビジネスオンライン(2017年5月17日)2018年3月17日閲覧
  33. ^ 北村真理・屋良佳緒理(日本語版監修)「食べ物の仕組みとはたらき図鑑」創元社・2020年1月24日閲覧・233頁
  34. ^ Solan, Matthew (2022年7月1日). “Eating less meat may lower overall cancer risk” (英語). Harvard Health. 2022年6月22日閲覧。
  35. ^ Godman, Heidi (2022年6月1日). “Protein intake associated with less cognitive decline” (英語). Harvard Health. 2022年6月22日閲覧。
  36. ^ Eat more plant-based proteins to boost longevity” (英語). Harvard Health (2020年11月1日). 2022年6月22日閲覧。






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