食パン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/24 00:16 UTC 版)
種類と形態
分類
食パンには次のような分類がある。
- 角食パン(角型食パン)
- 角食パンは、生地を型に入れた後、蓋をして焼いた食パンである[4]。蓋を閉じて焼くためしっとりと滑らかな触感となる[4]。
- 山食パン(山型食パン)
- 山食パンは、生地を型に入れた後、蓋をせずに焼いた食パンである[4]。焼く過程で生地が上に伸びるため比較するときめが粗い触感となる[4]。日本では明治時代にイギリス人によって作られたこともあり「イギリスパン」ともいう[4]。
北海道では、四辺が直線の食パンを「角食」(かくしょく)と呼び、一辺が丸い食パンを「山食(やましょく)」と呼ぶ人も多い。
なお、小麦粉に全粒粉を用いたものは全粒食パン(ブラウンブレッド、グラハムブレッド)という[4]。
英仏の食パン
イギリスでは焼き型に蓋せず上部が盛り上がった山形である。
近年、イギリス大都市部のパン職人はフランスやドイツ流のサワードウ発酵パンを主流とする。伝統的なローフブレッドは田舎町のパン工房や観光地で探した方が見つけやすい状況にある[13]。
食パンはフランスの「パン・ド・ミー」に相当する[4]。フランスはパンの種類が多様であり、その多くが外側が濃い色にパリパリと固く焼き上げられたものである。フランス語で「mie ミー」というのは中身のことであり、ハードなクラスト(皮)ではなく、ソフトなクラム(中身)を楽しむパンという意味である[4]。フランスでは日本の食パンに比べてやや小振りなタイプが広く嗜好されている[14]。とは言ってもフランスでは朝食ではクロワッサンなどが主流であるし、サンドイッチに使うパンはあくまでバゲット類が主流なので、全体の流通量に占めるパン・ド・ミーの割合はかなり小さい。
日本の食パン
明治初期に日本へイギリスの山型白パンが伝わり、主に外国人向けに製造された。神戸では米騒動を期に食パンが朝食用に用いられた[15]。太平洋戦争後、サンドイッチを食する占領軍兵士の要望を受けて、角型食パンが8枚に切り分けて販売される。後年に食パンの食感が日本人の嗜好へ調整されるようになった。トーストでの供食に好まれる6枚(20mm)、5枚(24mm)、4枚(30mm)など厚切りや、サンドイッチなど調理加工に好まれる10枚(12mm)、12枚(10mm)など薄切りが販売されるなど切り分け厚は多様である[16]。
消費は関西が特に多い。都道府県別の消費量で見ると、近畿の2府4県が上位10位内に入っており、廉価品より高級品、薄切り(6・8枚切)より厚切り(4・5枚切)の販売額が高い[17]。
欧州各国では水と塩だけで練られることが多いのに対して、日本の食パンは牛乳や脱脂粉乳、バター、マーガリン、ショートニングなど油脂類の添加されているものも多い。こうした日本の製品は菓子パンに分類される場合がある。
現代日本において、食パンは主食の1つとして社会の隅々まで普及し切っており、様々な事業者により生産・販売される。大手製パン会社が自社ブランドや小売チェーン等から依頼を受けたプライベートブランド(PB)商品[18]として生産し、特にスーパーやコンビニを中心に卸しているほか、街中のベーカリーでも独自に製造し販売している。家庭のホームベーカリーで作られる事もあるが、炊飯とは異なり、一般的とは言い難い。
製法
工程はおおまかに言うと、ミキシング(材料を混ぜること)→ 発酵 → 切り分け・丸め → ベンチタイム → 成形・型詰め → 焼成 → 型からの取り出し、といった順になる。
製粉小麦粉類を焼成すると重量は約1.5倍に増加する。用いられる長い箱型の型は、日本では「食パン型」と呼ばれている。
日本の家庭で食パンを作ろうとしても、以前はなかなか困難であった。生地をコネたり発酵させたりといった工程の管理も大変であったが、長い金属型を入れて焼くことができるような大型のオーブンなどを持つ賃貸・分譲・戸建てなどの家庭用住宅の物件が不動産業界から例外的と見なされるほどに少なかったためである。近年、日本の家庭では家庭用パン焼き機(ホームベーカリー)も普及するようになってきており、そのほとんどが工程のコースを選べるようになっており、おおむね基本コースとして「食パン」コースを用意している。家庭用パン焼き機の内部には、テフロン加工などのこびりつかない金属型とヒーターがあり、生地をコネることや発酵も含めて工程のほとんどが自動的に行われるようになっている。
計数単位
食パンの重量は「1斤(きん)」「2斤」……と数える。尺貫法の斤から派生した「英斤」(120匁=450グラム)に由来し、製品重量の時代毎の変遷(シュリンクフレーション)と偏差を考慮して1斤当たりの重量は350 - 400グラムであるのが一般的で、製パン業界の公正競争規約では340g以上と定めている[21]。切り分け前の棒状食パンは1本、2本と数え、切り分け後は1枚、2枚、または1切れ、2切れと数える。
注釈
出典
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ a b 広辞苑 第6版【食パン】
- ^ a b c d e f g h i j k ナガタ ユイ『サンドイッチの発想と組み立て』誠文堂新光社、2012年、10頁。
- ^ 河野友美 編『穀物・豆 (新・食品事典)』真珠書院、1994年、152頁。ISBN 4-88009-101-4。
- ^ 舟田詠子『パンの文化史』朝日新聞出版〈朝日選書〉、2007年、236頁。ISBN 978-4-86143-069-5。
- ^ 上田萬年・松井簡治 (1916). “しょく-ぱん”. 大日本國語辭典 しーく. 冨山房. p. 1135 2023年4月3日閲覧. "食麺麭(名)食用に供する麺麭。(略)菓子麺麭の對"
- ^ a b “パンの用語集”. 日本パン技術研究所. 2019年1月18日閲覧。
- ^ “パン・ド・ミとハードトースト、その違いは?”. ドンク. 2017年6月29日閲覧。
- ^ 『パンの歴史』第2章,4章
- ^ パンの耳のチョコレート菓子「チョコの山」 - 日経トレンディネット
- ^ まい泉の“かつサンド”の“パンの耳”で作ったラスクが登場!|web★1週間
- ^ 『パンの歴史』pp. 114-116
- ^ 成美堂出版編集部 編『パンの事典―おいしいパンのある幸せな生活』成美堂出版、2006年、60,90頁。ISBN 4-415-03995-2。
- ^ 日本の食生活全集兵庫編集委員会 編「神戸のケーキとパン」『聞き書 兵庫の食事』農山漁村文化協会〈日本の食生活全集〉、1992年、61頁。ISBN 4-540-91006-X。
- ^ 柴崎友香「ローカルフード」『よそ見津々』日本経済新聞出版社、2010年、123頁。ISBN 978-4-532-16755-4。"「八枚切り」の存在を大阪の友だちに言うと、「ああー、だからトーストくわえて走っている場面が【漫画やラブコメに】あるんや」という。確かに、五枚切りではくわえて走るのは、無理ではないがちょっと難しい。あごが疲れそうだ。四枚切りではさらに難易度が上がる。"。
- ^ 大阪市ゆとりとみどり振興局; 財団法人大阪観光コンベンション協会「大阪食のタブー集・マナー集・常識集」『Osaka TOURIST GUIDE(大阪観光案内)』。 オリジナルの2011年1月6日時点におけるアーカイブ 。2011年6月5日閲覧。
- ^ PB商品「金の食パン」が高くても売れる理由『プレジデント 』2014年3月17日号(2018年10月3日閲覧)。
- ^ 『小麦粉とパン・めん・菓子・料理』 財団法人製粉振興会、平成19年、p.57
- ^ 小麦粉のおはなし ●日本人が作り出した食パン(製粉振興会) 2011年7月9日閲覧。
- ^ “食パンの1斤の定義はどのように決められているのですか。”. 消費者相談 > 過去の相談事例. 農林水産省 (2008年7月). 2009年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年6月7日閲覧。
- ^ 金子 亨、速水 敬一郎、西川 正恒、村辺 奈々恵、佐藤 みちる「素描に関する一考察─ リアリズム絵画を中心に ─」『東京学芸大学紀要. 芸術・スポーツ科学系』第64巻、東京学芸大学学術情報委員会、2012年10月31日、11-35頁。
食パンと同じ種類の言葉
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