頭髪 頭髪の概要

頭髪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/14 12:57 UTC 版)

直毛英語版金髪女性
直毛の黒髪男性
縮毛の黒髪(男性)
直毛の白髪 / 銀髪(男性)

構成

およびそれを囲む組織である毛包から構成される器官毛器官(hair apparatus)という[1]。毛器官は口掌、底などを除く全身の皮膚に存在し、一般に頭部には約10万本が存在している[1]。毛器官には触覚に関わる知覚神経の補助的役割があり、頭髪の場合は外力や光線からの頭部の保護、高温や低温からの保温の役割がある[1]

毛の構造

200倍に拡大した毛髪
毛髪の断面図

毛は3重構造になっており、内側から毛髄質(メデュラ、medulla)、毛皮質(コルテックス、hair cortex)、毛小皮キューティクル、hair cuticle)という[2][3]

毛は通常の乾燥した状態でを12%程度含まれており、毛髪の成分中に保持されている[4]。この中には200℃の熱で毛から離れる結合水を含む[4]。そのほか、湿度の影響を受ける自由水や湿潤状態で毛が吸収した吸着水がある[4]

毛皮質同士や毛小皮同士、または毛皮質・毛小皮間をつなぎ合わせる役割としてCMCがあり、水や薬剤の通り道にもなる[2]。特に毛小皮同士のCMCは外側からlower-β層、σ層、upper-β層の3層に分かれている[5]

毛色の成分となるメラニンは毛髄質及び毛皮質に存在し、黒毛ではユーメラニン、赤毛ではフォオメラニンが多い[3]。「ヒトの髪の色」も参照。

毛髄質

毛髄質は役割が未解明な部分が多いものの、髪の透明感やツヤに影響を与えることが判明している[2]。同じ人物の毛であっても、存在している・していない場合がある[6]。規則正しい構造を持たず、ケラチンがスポンジ状で無秩序に並び、空隙や袋状の空胞を多く持つ[6]。細い毛の場合はこの部分を持たないことが多い[6]

毛皮質

毛皮質は葉巻状の構造をしたもので、毛の延長方向に規則正しく並んでいる[2]。毛の体積の85~90%を占める領域で、毛髪の水分保持や強度、髪色に大きな影響を与える。毛皮質を詳細に見ると、マクロフィブリルが数個から数十個の集まってできている[5]。このマクロフィブリルの間には親水性の非ケラチンタンパク質があり、この中にメラニンNMF(天然保湿因子、髪の水分を一定に保つ役割を持つ)がある[5]。マクロフィブリルは更に数個から数十個のミクロフィブリルとマトリックスで構成される[5]。ミクロフィブリルは8本のプロトフィブリルで構成され、プロトフィブリルはフィブリル4本で構成されている[5]

毛皮質で形成されるケラチンは他の上皮細胞で形成されるケラチンよりも、シスチングリシンチロシンの含有量が多い[3]。シスチン、グリシン、チロシンの含有量が多い特殊なケラチンはなどにもみられ硬ケラチン(hard keratin)という[3]

毛小皮

毛小皮は無色透明をした鱗状の皮[2]。皮1枚で毛の外周の1/3~1/2程度を包み、全体としてタケノコの皮や瓦屋根のように重なった構造をしている[2]。毛小皮(キューティクル)そのものは外側からエピキューティクル、A-層、エキソキューティクル、エンドキューティクル、inner-層の順に構成されている[5]

毛の体積の10~15%を占める領域で、毛のツヤや手触り、硬さに影響を与える[2]。ブラッシングなどの物理的刺激や水・薬剤などの化学的刺激から毛を保護する役割がある[2]

化学的特徴

毛髪の構成は全体の8割がタンパク質でできている[7]。その中でシスチンを含むケラチンタンパク質の割合が毛髪全体の70%程度を占め、シスチンを含まない非ケラチンタンパク質が全体の10%程度を占める[7]。タンパク質を除いた残りがCMC脂質(脂肪酸セラミドコレステロール)・水分・メラニン色素・NMFなどである[7]

毛髪の形状が最も落ち着く等電点pH4.5~5.5の弱酸性のとき[4]。パーマやヘアカラーで毛髪を膨潤させるためにアルカリ性の薬剤を用いるが、施術後は弱酸性の薬剤を用いてアルカリに傾いた毛髪を元の状態を安定させる[4]

その他

古くから経験的に頭髪から得られた毛は丈夫なことが知られていて、科学的には1本の毛では100グラムの重さを、頭髪全体では12トンの重さを支えることができるとされる。これはアルミニウムの強さに匹敵する。それを利用した例として、日本京都にある東本願寺では、明治初期の再建工事における重い建材の運搬移動に、当時入手可能だった素材(など)の綱では強度が足りず、現代のように頑丈なワイヤーロープなども存在しなかった事から、門徒の女性が寄進した髪の毛と麻をより合わせて作られた毛綱を用いた事がよく知られ、その実物が現在も展示されている。

毛はその環境および、機械的、化学的な経歴に対応する。例えば、湿っている毛を成型して乾燥させると、その型を保つ。その型は再び毛が湿ると失われる。これは髪の毛に含まれる蛋白質同士の水素結合による。湿っている状態でない時でも熱風を加え、瞬時に冷やすことで型を保つことも可能である[8]。さらに恒久的なスタイリングのためには、化学的な処理(パーマネントウエーブ)によってジスルフィド結合を破壊し、再構成する。

加齢による変化

老人は毛の内部の色素が失われるため、灰色の(実際には色の無い)毛に発達する傾向がある。非常に薄い色の金髪が加齢に伴っての同様の色素喪失を来した場合は真っ白に見える。このように加齢変化した頭髪を白髪(しらが、はくはつ)という。白髪は通常の加齢の特徴と考えられている。

白髪が生ずる年齢は人によって異なるが、一般に男性は女性よりも白髪になりやすい。一般的に75歳以上になるとほとんどの人が少なくとも白髪交じりであり、85歳までにほとんどの人が元の色の毛を失って総白髪になる。

ハーバード大学医学部は、白髪になったり、ハゲたりするのは宿命で、いろいろな治療法があるが、基本的には効果がないと発表した[9]

毛包

毛を取り囲む組織層を毛包(毛嚢)といい、皮膚面に斜めに伸びており、内側は上皮性成分、外側は結合性組織性成分の二重構造になっている[10]。上皮性成分は内毛根鞘と外毛根鞘に分けられ、それぞれを総称して毛根鞘と呼ぶ。毛根鞘は髪を頭皮につなぎとめる役割を担っており、薄い膜のような見た目をしている[11]

毛包の皮膚面の一部はやや隆起しており、毛隆起(hair bulb)という[1]。また、毛孔は漏斗状に開口しており、毛漏斗(infundibulum)という[1]

縮毛と直毛

髪質の世界分布:濃い斜線は縮毛、薄い斜線は直毛。

髪質(Texture)に縮毛(縮れ毛)と直毛がある。これは、東アフリカの森に起源をもつ人類が草原へ移動して、直射日光から脳を守るために頭髪が発展して縮毛になり、さらに比較的寒冷地のヨーロッパへ移動した人類は、むしろ脳の温度を守るために直毛になった、という最近の説がある[12]日本人の髪質は、縮毛と直毛がほぼ半々で、これは南アジアを通して来た人々と、ヨーロッパから北アジアを通じてきた人々の混成だからともいう[13]

頭髪の部位用語

  • トップ - 頭髪のてっぺんで、主につむじ周り。
  • 生え際 - ヘムライン、フェイスラインと称される。もみあげともみあげをつなぐ顔周り。
  • アウトライン - 髪型で下側、および外側のラインを呼ぶ。
  • モヒカンライン - 髪の中央の縦のラインを呼ぶ。この部分が他の部分より長いスタイルがソフトモヒカンと称される。
  • 後ろ髪 - バックと称される。頭の後ろ、後頭部部分。「後ろ髪を引かれる」での表現でも使用される。
  • 襟足 - ネープと称される。
  • 前髪 - バングと称される。顔の前、(おでこ)周辺の髪。二重構造で作られた前髪はダブルバングと称される。
  • ハチまわり - 耳上の骨格の部分で最も出っ張る部分をハチと称し、その周辺の髪。
  • サイド - 髪の両横部分。耳上あたり。髪の量が多く、厚くなっているサイドはヘビーサイドと呼ばれる。
  • ミドルセクション - 耳上の部分。
  • 小鬢(こびん) - サイドのうち、頭の左右前側面、こめかみあたりの髪。ここから発展して将棋で玉の囲いで玉の斜め前の部分。玉の斜め前に歩などの守り駒がいない状態を「コビンがあいている」と表現する。 また、角行での斜めから相手の玉や飛車を攻めることを「こびん攻め」と称する。

毛の成長

成長の仕組み

毛は毛根下部にある毛球から成長する[14]。毛球は毛乳頭を包み、毛球頭は毛細血管を通じて運ばれた栄養分を毛球内部にある毛母細胞に受け渡す[14]。毛母細胞は分裂を繰り返して数を増やすことで毛は成長する[14]

毛周期

髪の毛は一定の周期で生育と脱落を繰り返しており、毛周期(hair cycle)という[15]。毛周期は成長期退行期休止期に分けられる[3]。毛周期は髪の毛ごとに異なり、頭部全体では一定数を保つ[16]

  • 成長期
頭髪が成長する時期で数年間に及ぶ[15]。成長期の頭髪は1日に0.3〜0.5mm成長する[16]
  • 退行期
成長期の後、毛包の収縮が始まると細胞分裂は停止し、2〜3週間は退行期に入る[16]
  • 休止期
細胞分裂しなくなった毛包が毛隆起部まで上昇し、毛根は棍棒状の棍毛(club hair)になって数か月留まる[16]。再び成長期に入ると毛包表皮は細胞分裂しながら下降し、毛母から生じた新しい髪の毛に押されて棍毛は脱落する[16]。1日に脱落する髪の毛の本数は約100本である[16]

毛の根元にある毛胞は非常に速く成長する。そのため抗がん剤投与などの化学療法により頭髪を失うことがしばしばある。抗がん剤は速く成長する細胞に働くため、がん細胞だけでなく毛包にも作用することによる。毛細胞の代謝を抑える為に冷却して低温に保つ事で脱毛を抑える事もある。


  1. ^ a b c d e 清水 2011, p. 20.
  2. ^ a b c d e f g h タカラベルモント株式会社 2022, p. 13.
  3. ^ a b c d e 清水 2011, p. 22.
  4. ^ a b c d e f g タカラベルモント株式会社 2022, p. 20.
  5. ^ a b c d e f タカラベルモント株式会社 2022, p. 14.
  6. ^ a b c タカラベルモント株式会社 2022, p. 15.
  7. ^ a b c タカラベルモント株式会社 2022, p. 18.
  8. ^ 【元気でキレイに】梅雨時の髪/手入れで傷み抑えて水分と油分整え『朝日新聞』土曜朝刊別刷り「be」2021年6月12日9面(2020年6月26日閲覧)
  9. ^ Solan, Matthew (2021年9月1日). “You don't say? Hair today, gone tomorrow” (英語). Harvard Health. 2022年6月1日閲覧。
  10. ^ 清水 2011, pp. 20–21.
  11. ^ 毛根鞘とは?抜け毛・薄毛との関係を解説|男性ホルモン研究所”. 男性ホルモン研究所. 2022年4月28日閲覧。
  12. ^ 縮れた髪の毛は初期人類の脳が大きくなるのに有利だった?(National Geographic、2023年)
  13. ^ 【見逃し配信】チコちゃんに叱られる5月3日拡大版<植物/髪の毛/電車/カッターの刃/再放送/NHK/TVer>2024年5月3日FYouTubeULL LIVE(YouTube)
  14. ^ a b c タカラベルモント株式会社 2022, p. 11.
  15. ^ a b 清水 2011, pp. 22–23.
  16. ^ a b c d e f 清水 2011, p. 23.
  17. ^ a b Tom Hancock「中国の人毛加工製品、輸出が急成長」『AFPBB New』AFP、2014年8月22日。2014年8月23日閲覧。
  18. ^ a b 【ニュースQ3】長くきれいな髪は高値 ネットで「人毛売買」」『朝日新聞デジタル』朝日新聞社、2019年11月26日、朝刊。2019年11月27日閲覧。
  19. ^ a b c d e f g h i j k l 漆刷毛”. ハケ市(河合刷毛ブラシ工業有限会社). 2019年12月29日閲覧。
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 加藤千晶. “漆刷毛が繋ぐもの”. ウルシスト千晶のうるしのはなし. FEEL J株式会社. 2019年12月29日閲覧。
  21. ^ a b “Is there human hair in Dutch bread?” (英語). DutchNews.nl. (2014年2月5日). http://www.dutchnews.nl/news/archives/2014/02/is_there_human_hair_in_dutch_b.php/ 2019年12月29日閲覧。 
  22. ^ 科学警察研究所 法科学第一部 生物第一研究室. “毛髪の異同識別に関する研究”. 公式ウェブサイト. 科学警察研究所. 2019年12月12日閲覧。
  23. ^ コンソーシアムとは”. 公式ウェブサイト. 毛髪診断コンソーシアム. 2019年12月12日閲覧。
  24. ^ “髪の毛をリサイクル、驚きの様々な活用法、「フジロック」でも”. ナショナルジオグラフィック. (2023年7月28日). https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/070300340/?ST=m_news#:~:text=%E6%B0%97%E5%80%99%E5%A4%89%E5%8B%95 
  25. ^ “髪の毛をリサイクル、驚きの様々な活用法、「フジロック」でも”. ナショナルジオグラフィック. (2023年7月28日). https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/070300340/?ST=m_news#:~:text=%E6%B0%97%E5%80%99%E5%A4%89%E5%8B%95 
  26. ^ 小池 1999, pp. 25–29.


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