音楽 定義

音楽

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/19 04:58 UTC 版)

定義

広辞苑では「音による芸術」とした。

4世紀古代ローマ哲学者アウグスティヌスの『音楽論』では「musica est scientia bene modulandi (音楽とは音を良く整えるスキエンティア[注 1]である)」とした[1]。 ジョン・ブラッキングの書では「人間が組織づけた[2]」とされた。 ジョン・ケージは「音楽は音である。コンサートホールの中と外とを問わず、われわれを取り巻く音である。」と語った。

語源

呂氏春秋』(紀元前239年に完成)に既に「音楽」という表現がみられる。

音楽の由来するものは遠し、度量に於いて生じ、太一に於いて本づく(『呂氏春秋』大楽)

英語の"Music"を始め、ヨーロッパの多くの言語においては、古代ギリシャ語μουσική (mousike; 「ムーサのアート」の意)を語源とする。ムーサはミューズの名でも知られる芸術や文化を司る女神である[3]

歴史

古代の音楽の歴史

音楽は有史以前から行われていたとされるが、何時、どのように始まったかは定かでない。ただ、それはから始まったのではないかと考えられている[4]西洋では、古代ギリシアの時代にはピタゴラスプラトンにより音楽理論や音楽に関する哲学が始まっており、古代ギリシアの音楽ギリシア悲劇に伴う音楽が主であった。これが後のクラシック音楽に繋がっている。

東洋では江戸時代まで総検校塙保己一らによって温故堂で講談された和学や、中国神話によると、縄の発明者の氏族が歌舞や楽器、楽譜を発明したとされる。塙保己一は、撚糸である縄や結縄の発祥を日本列島から出土する土器や房総半島飯岡の網小屋に遺る有結網に捜し求めた研究成果を群書類従に編纂した。

  • 歌舞の発明者―『葛天氏』治めずして治まった時代の帝王。縄、衣、名の発明者でもある。
  • 瑟の発明者―『伏羲三皇の初代皇帝。魚釣り、結縄、魚網、鳥網、八卦の発明者でもある。
  • の発明者―『女媧』天を補修し人類を創造した女性。

クラシック音楽の歴史

クラシック音楽の音楽史においては、6世紀頃まで遡ることができる。まず、この頃にキリスト教の聖歌であるグレゴリオ聖歌や、多声音楽が生まれ(中世西洋音楽)、これが発展し、15世紀にはブルゴーニュ公国フランドル地方ルネサンス音楽が確立された。16世紀には本格的な器楽音楽の発達、オペラの誕生が起こり、宮廷の音楽が栄えた(バロック音楽)。これ以前の音楽を初期音楽とよぶことが多い。その後18世紀半ばになると民衆にも音楽が広まり、古典派音楽とよばれる「形式」や「和声」に重点をおいた音楽に発展した。またこの頃から一般的に音楽が芸術として見られるようになる。19世紀には「表現」に重点を置いたロマン派音楽に移行し、各国の民謡などを取り入れた国民楽派も生まれる。20世紀頃には「気分」や「雰囲気」で表現する印象主義音楽や、和声および調の規制をなくした音楽などの近代音楽が生まれ、さらに第二次世界大戦後は現代音楽とよばれる自由な音楽に発展した。

邦楽の歴史

日本では、縄文時代からすでに音楽が始まっていたが、5世紀から8世紀にかけて朝鮮半島中国から音楽を取り入れたことからさまざまなジャンルの音楽が始まった。まず、平安時代遣唐使を廃止して国風文化が栄えていた頃、外来音楽を組み込んだ雅楽が成立し、宮廷音楽が盛んになった。その後鎌倉時代室町時代には日本固有の猿楽が始まり、狂言に発展した。江戸時代でも日本固有の音楽が発達し、俗楽浄瑠璃地歌長唄箏曲など)に発展した。明治時代以降は音楽においても西洋化、大衆化が進み、西洋音楽の歌曲ピアノ曲が作曲された。昭和時代には歌謡曲流行歌などの昭和時代のポピュラー音楽が始まり、戦後はアメリカのポピュラー音楽や現代音楽が取り入れられ、演歌J-POPに発展した。

ポピュラー音楽の歴史

ポピュラー音楽の歴史は17世紀頃、アメリカへの移民まで遡る。本格的に移民が行われるようになると白人によるミュージカルのような劇場音楽が盛んになった。また、アフリカからの黒人により霊歌(スピリチュアル)、ブルースゴスペルが始まった。19世紀末にはブルースが西洋音楽と融合し、スウィング即興ポリリズムが特徴的なジャズに発展していった。1920年代にはブルースやスピリチュアル、アパラチア地方の民俗音楽が融合したカントリー・ミュージック(カントリー)が人気を集め、1940年代には電子楽器や激しいリズムセッションが特徴的なリズム・アンド・ブルース(R&B)、1950年代にはR&Bとゴスペルが融合したソウルミュージック(ソウル)が生まれた。さらに、1950年代半ばにはカントリー、ブルース、R&Bなどが融合したロックンロール(ロック)が現れ、1970年代にはヒップホップの動きが現れた。

要素

音の要素
音には、基本周波数(音の高さ、音高)、含まれる周波数(音色和音など)、大きさ(音量)、周期性(リズム)、音源の方向などの要素がある。
西洋音楽における三要素の概念
上記の要素に関連して、いわゆる西洋音楽の世界では、一般に音楽はリズムメロディーハーモニーの三要素からなる、と考えられている。ただし、実際の楽曲では、それぞれが密接に結びついているので一つだけを明確に取り出せるわけではない。また、音楽であるために三要素が絶対必要という意味ではない。たとえば西洋音楽以外ではハーモニーは存在しないか希薄であることが多いし、逆に一部の要素が西洋音楽の常識ではありえないほど高度な進化を遂げた音楽も存在する。このように、これら三要素の考え方は決して完全とは言えないが、音楽を理解したり習得しようとする時に実際に用いられ効果をあげている。
西洋音楽において和声が確立した音楽におけるメロディ
メロディ(旋律)は特に和音の構成によってなされており、和音は周波数のおよそ整数比率によって発生する。
音の発生方法
を発生する方法には口笛、手拍子、楽器などがある。西洋の伝統的な分類法においては楽器は息を吹き込む管楽器の系統で、クラリネットなどの木管楽器トランペットなどの金管楽器に分かれる)、弦を振動させることで音を出す弦楽器(弦の使用法によって、弦をはじくギターなどの撥弦楽器、弦をこするヴァイオリンなどの擦弦楽器、そして弦を打つ打弦楽器に分かれる)、そして楽器そのものを打ったり振ったりして音を出す打楽器太鼓など)の3つに分類される。楽器は地域的な特色が強く出るものであり、西洋音楽の普及によって西洋期限の楽器が世界中に広まっていったのちも、世界各地にはその土地ならではの特徴的な楽器が多く存在し、同じ楽器でも使用する素材が異なることも珍しくない[5]



注釈

  1. ^ scientia スキエンティアは「知」で、しかもやや断片的な知、知識のこと。はるか後の時代、19世紀になって「サイエンス」(科学)の語源となる語彙。
  2. ^ その結果、広告用の単なるコピーにすぎないジャンル(名)も氾濫するが、音楽的に大きな影響力を保ち続けるジャンルもある。
  3. ^ CDや映像記録化されたもの、放送で流されるもの、を含む
  4. ^ その結果、レコード音楽への露出の多い作品や分野に人気が集まり、あまり取り上げられないジャンルや演奏家は省みられないといった弊害もある。
  5. ^ 生演奏される音楽は、同じ演奏者が演奏する場合でも、(即興演奏を認めていない場合ですら)毎回少しずつ異なる。またさらに、演奏者が異なる場合は、同じ楽譜を見て演奏する場合でも、しばしば演奏は大きく異なる。複数の演奏者が関わる作品であればなおさらである。例えば(あくまで例えばであるが)楽譜上の指示の解釈をどう実行するか、ということにも幅があり、複数の楽器を用いる場合どの楽器の音をどの程度大きくしどの楽器の音をひかえめにするか、各楽器ひとつとっても、ひとつの和音の構成音のうち、どの音を強く出しどの音を弱めに出すか、メロディーのどの部分を印象付けるか、ある音にビブラートはどの程度かけるか... 等々等々、ここでは書ききれないほど膨大な数の要素が、演奏者(たち)のその時々の判断や、ゆれうごく一種の「感覚」にゆだねられており、生演奏は演奏されるたびに異なり、特に複数の演奏者によって行われる生演奏は毎回、多かれ少なかれ異なった質感を聴き手に与えるのであり、毎回異なることによって、聴き手に一種の「驚き」や「意外性」や「新鮮味」を感じさせる可能性があるのである。
  6. ^ なお、音楽でも再生音楽(録音され、コピーされたものを再生する音楽)の場合は(同等の機器で再生すれば、ほぼ)同一のものを観賞することができる。たとえば、「演奏者Aの○○○○年--月--日の~ホールでの演奏のデジタル録音されたものを、○○社の再生装置で聴く」ということなら、AさんでもBさんでも同じ作品(細かい質感まで同一の作品)を聴くことができ、また数年後でも、数十年後でも、同じ演奏を鑑賞することができるわけである。録音・再生音楽は(聴くたびに意外なものに出会う喜びは無いかわりに)高評価を得た特定の演奏を、何度でも繰り返し聴き、理解を深めたり、演奏を心に刻みつけることができる、というメリットがある。

出典

  1. ^ アウグスティヌス著作集 第三巻
  2. ^ ジョン・ブラッキング 『人間の音楽性』岩波書店、1973年
  3. ^ 「138億年の音楽史」p72 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  4. ^ 「図説 人類の歴史 別巻 古代の科学と技術 世界を創った70の大発明」p220 ブライアン・M・フェイガン編 西秋良宏監訳 朝倉書店 2012年5月30日初版第1刷
  5. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p11 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  6. ^ 「138億年の音楽史」p253-254 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  7. ^ 「138億年の音楽史」p218-219 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  8. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p12-13 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  9. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p132 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  10. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p132 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  11. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p42 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  12. ^ 「138億年の音楽史」p239-240 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  13. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p40 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  14. ^ 「138億年の音楽史」p240 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  15. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p132 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  16. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p132 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  17. ^ 「138億年の音楽史」p118-120 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  18. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p8-9 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  19. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p96 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  20. ^ 「138億年の音楽史」p212-213 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  21. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p147 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  22. ^ 「音楽のヨーロッパ史」p198-199 上尾信也 講談社 2000年4月20日第1刷
  23. ^ 「音楽のヨーロッパ史」p3-4 上尾信也 講談社 2000年4月20日第1刷
  24. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p103-104 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  25. ^ 「文化人類学キーワード」p196-197 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷





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