鞭毛菌類 特徴

鞭毛菌類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/28 04:18 UTC 版)

特徴

古典的な意味で「菌類」とされていた生物のうち、生活環の一時期に鞭毛をもつ細胞(遊走子配偶子)を形成するものは、鞭毛菌類とよばれる[6][7][8]。鞭毛菌類は、主にツボカビ類(広義)、サカゲツボカビ類卵菌類を含む。これらのグループは鞭毛細胞の特徴で区別できる(下図2)。ツボカビ類は細胞後端から後方へ伸びる1本の鞭毛をもつ[6][7][8](下図2a)。ただし広義のツボカビ類のうちネオカリマスチクス類の一部は、後方へ伸びる多数の鞭毛をもつ[9](下図2b)。これらの鞭毛は装飾構造をもたず、尾型鞭毛(またはむち型鞭毛)とよばれる[6][9]。一方、サカゲツボカビ類は細胞前端から前方へ伸びる1本の鞭毛をもつ[6][7][8](下図2d)。この鞭毛には管状小毛が付随しており、羽型鞭毛とよばれる[6]。卵菌類では、サカゲツボカビ類と同様に前方へ伸びる羽型鞭毛をもち、それに加えて後方へ伸びる尾型鞭毛をもつ[6][7][8](下図2e, f)。

2. さまざまな鞭毛菌の遊走子(赤矢印は進行方向): (a) ツボカビ類、(b) ツボカビ類(一部のネオカリマスチクス類)、(c) ネコブカビ類、(d) サカゲツボカビ類、(e) 卵菌類の一次遊走子、(f) 卵菌類の二次遊走子

鞭毛菌類の栄養体は多様であり、単細胞で全実性(菌体全体が遊走子嚢になる)のものや、分実性単心性(1個の遊走子嚢と仮根からなる)のもの(下図3a)、分実性で多心性(複数の遊走子嚢が仮根状菌糸でつながっている)のもの、発達した菌糸を形成するものなどが知られる[8][10](下図3)。菌糸を形成するものでは、菌糸はふつう隔壁を欠く多核菌糸である[8][10](下図3c)。

3a. Chytriomyces hyalinusツボカビ類): 分実性・単心性の菌体
3b. コウマクノウキン(ツボカビ類[注 3]): 分実性・多心性の菌体
3c. Aphanomyces(卵菌類): 発達した菌糸を形成

ネコブカビ類は植物寄生性の生物であり、古くはふつう粘菌類に分類されていたが、鞭毛細胞を形成することから鞭毛菌類に分類されることもあった[10]。ネコブカビ類の鞭毛細胞は、細胞腹面(側面)から前後に伸びる尾型鞭毛をもつ[10](上図2c)。ネコブカビ類の栄養体は、細胞壁を欠く多核体(変形体)である[10][11]。現在では、ネコブカビ類はいくつかの鞭毛虫アメーバ類放散虫有孔虫とともにリザリアに属すると考えられている[11][12]


注釈

  1. ^ a b fungi の単数形は fungus[3]
  2. ^ 菌類のうち、粘菌を除いたもの。
  3. ^ 2023年現在ではコウマクノウキン門に分類される。

出典

  1. ^ 鞭毛菌類”. 微生物の用語解説. Weblio 辞書. 2023年8月16日閲覧。
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