青空文庫 青空文庫の概要

青空文庫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/23 05:04 UTC 版)

青空文庫
URL
www.aozora.gr.jp
タイプ 電子図書館 
使用言語 日本語 
項目数 17,313作品(2023年3月18日現在)[1][注釈 1]
閲覧 無料
登録 不要
著作権 青空文庫収録ファイルの取り扱い規準[2]に従う
資金 寄付
営利性 非営利
設立 1997年7月
現状 作品数増加中

概要

富田倫生、野口英司、八巻美恵、らんむろ・さてぃの4人が呼びかけ人となって発足した[4]日本で著作権切れ作品をオンライン公開する動きの先駆者[5]。2017年の年間アクセス数の合計は920万件以上[6]であり、インターネット上の電子図書館として知られている。

作品はボランティアの手によりJIS X 0208漢字の範囲で青空文庫形式テキストファイルやHTMLとして電子化されている。また、「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」に従い自由に利用出来るため、その収録作品はパーソナルコンピュータのみならずタブレットスマートフォンなどの環境でも利用されている。テキストファイルである事から、大きな文字で印刷したり、テキストを読み上げるソフトウェアと組み合わせるなど、視覚障害者向けとしても利用されている[7][8][9]

オンライン上では、横書きのXHTML版を直接閲覧するほか、公式の閲覧サービス「青空 in Browsers」や「えあ草紙・青空図書館」などで閲覧可能。運営から閲覧ソフトウェアを開発したり提供したりはしていないが、iOSAndroidともに専用閲覧アプリケーションがサードパーティによって開発されている[10][11][12][13]

青空文庫収録ファイルは楽天グループが運営する楽天Kobo(楽天Kobo電子書籍ストア)や、Amazon.co.jpが運営するAmazon Kindle(Kindleストア)向けにも再配布されている。

収録作品

大別して、著作権の保護期間が切れた作品(パブリックドメイン)及び著作権者が青空文庫への収録を求めた作品が収録されており[14]、前者の明治期から昭和初期の作品が大部分を占めている。ジャンルは小説、詩歌、随筆といった文学のみならず、回想録、講演録、人物伝、追悼文、論文など幅広く収録されている[15]

ボランティアにより作品の入力・校正が行われるという収録方式上(後述)、一般的に有名であり、かつ、著作権が消滅している作品が必ずしも収録されているとは限らない。その反面、知名度の低い作品や復刊の可能性の低い作品であっても、著作権が消滅している作品であれば収録することが可能となっている。

収録されている主な作家は、日本人作家では夏目漱石(1916年没)、森鷗外(1922年没)、芥川龍之介(1927年没)、宮沢賢治(1933年没)、夢野久作(1936年没)、中島敦(1942年没)、太宰治(1948年没)、堀辰雄(1953年没)、坂口安吾(1955年没)、永井荷風(1959年没)、吉川英治(1962年没)、江戸川乱歩(1965年没)、山本周五郎(1967年没)など、海外の作家ではエドガー・アラン・ポー(1849年没)、ハンス・クリスチャン・アンデルセン(1875年没)、小泉八雲(1904年没)、アーサー・コナン・ドイル(1930年没)、魯迅(1932年没)、アルベルト・アインシュタイン(1955年没)などが挙げられる。

2011年3月15日、収録作品数が1万点になった[16][17]

運営

青空文庫はボランティアで運営されており、閲覧は無料[3]。開始当初サーバーはボイジャー (企業)から提供された[18]。1998年から1999年にかけて富田らが作業ルールとマニュアルを決めた[10]

入力と校正はボランティアによって行われる[3]。入力は底本を見ながらの手入力かスキャナーOCRを使う方法で行われる[3]。作品を入力する「入力者」と入力された作品を校正する「校正者」とは別々のボランティアが担当する[19]。入力者が入力を完了したファイルは「点検グループ」が青空文庫の注記形式に沿っているかチェックして校正可能な状態に整える。その後、校正者が校正を申請すると、点検グループが校正するファイルを校正者に送り、校正者が校正を完了するとファイルが校正履歴と共に点検グループに送り返される。最後に、点検グループが送られたファイルと校正履歴をチェックし、作品の公開日を設定して青空文庫の新着情報のページ[20]で公開される[21]

2013年8月に創設者の一人である富田が亡くなったことを機に、青空文庫への継続的な支援を目的とした「本の未来基金」が設立された[22]。しかし2015年現在はエンジニアが不在の状態でのサーバ運用を余儀なくされており、サーバ自体も老朽化が問題になっている。このため同年5月に「『Code for 青空文庫』アイデアソン」が開催され、今後のシステム運用についての意見交換が行われた[23]。その後同イベントを母体に、システム管理やコード改修などを行う「aozorahack」プロジェクトが立ち上がっている[24]


注釈

  1. ^ 青空文庫トップページ下部の「収録作品数」より。

出典

  1. ^ 青空文庫 Aozora Bunko - ウェイバックマシン(2019年12月31日アーカイブ分)
  2. ^ 青空文庫収録ファイルの取り扱い規準
  3. ^ a b c d 「(文化の扉)はじめての青空文庫 タブレット広まり利用者急増」朝日新聞2012年1月23日31ページ
  4. ^ 『青空文庫ものがたり』:新字新仮名 - 青空文庫
  5. ^ 「メディア事情:ネットで文化遺産共有=国立情報学研究所客員教授・岡村久道氏」毎日新聞東京朝刊2006年9月10日26ページ
  6. ^ 青空文庫 2016年-2017年の年間アクセス増率分析 aozorablog 投稿者:POKEPEEK2011 | 投稿日:2018年1月22日
  7. ^ 青空朗読”. 一般社団法人 青空朗読. 2023年6月23日閲覧。
  8. ^ 川原 徹也 (2009年4月27日). “青空文庫形式テキストを読み上げる「青空ろーどく」”. 窓の杜. 2023年6月23日閲覧。
  9. ^ 川原 徹也 (2006年6月8日). “テキストやHTMLを読み上げる「TXRD」v3.0”. 窓の杜. 2023年6月23日閲覧。
  10. ^ a b 『日本の電子出版を創ってきた男たち: この声を聞かずして、電子出版を語るなかれ。』 ISBN 978-4-86478-002-5 「日本が誇る青空文庫の軌跡」OnDeck編集部 2015年2月6日
  11. ^ 青空文庫ビューアー Android向けおすすめアプリTOP13”. APPLION. 2023年6月20日閲覧。
  12. ^ 青空文庫ビューアー iPhone向けおすすめアプリ10選”. APPLION. 2023年6月20日閲覧。
  13. ^ 青空文庫ビューアー iPad向けおすすめアプリベスト7”. APPLION. 2023年6月20日閲覧。
  14. ^ 青空文庫への作品収録を望まれる方へ
  15. ^ 青空文庫 分野別リスト
  16. ^ 2011年03月15日 収録作品数1万点 - そらもよう
  17. ^ 工藤ひろえ (2011年3月16日). “青空文庫、収録作品が1万点に到達”. INTERNET Watch. 2019年6月7日閲覧。
  18. ^ 青空文庫の仕組みのページより。
  19. ^ 工作員志願者へのお願い (青空文庫)を参照。
  20. ^ 新規公開作品
  21. ^ 青空文庫編 作業の進み方
  22. ^ 青空文庫のしくみ
  23. ^ 「Code for 青空文庫」アイデアソン #1 - ATND
  24. ^ aozorahack - GitHub
  25. ^ HTML版工作員作業マニュアル 2.入力-1(青空文庫)→(5)特殊な表記
  26. ^ 視覚障碍者読書支援協会”. 視覚障碍者読書支援協会. 2011年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月7日閲覧。
  27. ^ 富田倫生〈イネーブル・ライブラリー〉としての青空文庫」『現代の図書館』第37巻3号(通巻 151)、日本図書館協会、1999年9月、176-181頁、ISSN 0016-6332オリジナルの2018年1月16日時点におけるアーカイブ、2023年3月18日閲覧 
  28. ^ 「リンク」ページ(青空文庫)
  29. ^ 2005年01月01日 著作権保護期間の70年延長に反対する - そらもよう
  30. ^ 著作権保護期間の延長を行わないよう求める請願署名 (最終更新 2008年10月13日、青空文庫)
  31. ^ TPPの著作権保護期間20年延長で「青空文庫」はどうなる?”. THE PAGE(ザ・ページ) (2015年8月8日). 2019年7月17日閲覧。 [1]
  32. ^ a b c “「青空文庫がやせ細っていく」 著作権保護「70年」、新規作品公開が凍結され対応模索”. ORCON NEWS(弁護士ドットコムニュースからの転載). (2019年1月12日). https://www.oricon.co.jp/article/669879/ 2019年1月14日閲覧。 
  33. ^ 2019年01月01日 20年先の種を蒔く――真実は時の娘 - そらもよう


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