霰 霰の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/04 01:55 UTC 版)

霰にものさしを添えた写真。直径5 mm未満である。
雪霰。白色不透明で割れやすい。
氷霰。半透明で雪霰よりも固い。
雪のように地面に積もった雪霰
雨交じりの濡れた霰
電子顕微鏡で見た霰の表面。雪の結晶構造が見られない。

雪霰と氷霰

雪霰(雪あられ、ゆきあられ)は白色で不透明な氷の粒。形は球状や半円錐状。直径は2 mmから5 mmくらい。堅い地面に落ちると弾み、よく割れる。また砕けやすく、踏むと簡単に潰れる[2][3][4]

中心となる氷の粒(結晶構造を持つ氷晶のことが多い)が、微細な氷粒子(雲粒)で覆われる構造をしている。まわりの氷粒子は急速に凍結しふつう結晶構造を持たない。氷粒子に完全に覆われず氷晶が見えるような成長途中のものが観察されることもある。雪霰は隙間を多く含むため、比重はおよそ0.8未満(純水氷は約0.92)と小さい[2][3]

主に、地表の気温が0 前後のとき降る驟雨性の降水で[5]とともに降る[2][3]

氷霰(氷あられ、こおりあられ)は半透明の氷の粒。形は球状で、たまに半円錐状の尖った部分がある。直径は5 mmくらいで、5 mm以上になることもある(その場合に区分される)。堅い地面に落ちると音をたてて弾む。踏んでも簡単には潰れない。雪霰に比べて表面は滑らかで密度が高い[2][6][4]

全体または一部が薄い殻のように氷が包まれた雪霰でできている。隙間が比較的少なく比重は0.8を超え0.99に近い場合がある(純水氷は約0.92)[2][6]

氷霰は雪霰が雹に成長する途中の状態にあたる。雪霰は強い上昇気流のある積乱雲や発達した積雲の中で、過冷却の水滴に衝突し凍結、部分的に融けたり再び凍ったりという過程を経て大きさを増していく。この小さいものが氷霰、大きいものが雹[2][6][4]

常に驟雨性の降水で降る。積乱雲からの降水に多い[6][2]

観測・記録

天気予報の予報文では、雪霰は、氷霰はとして扱う[7]。ただし、実際に雪霰や氷霰が降っても、観測上は霰であり、雪や雨が降ったとは言わない。

積雪計は、霰も含んだ固形降水の深さを測定する仕組みで(固形降水の判別をしない)、実際には雪が降っていなくても、降雪積雪が記録される場合がある[7][8]

日本では、気象庁は管区気象台などの拠点では天気や大気現象の目視観測を行っており、大気現象として霰のほか、雹、凍雨などを区別し記録している。自動気象観測装置を導入したところ(アメダスやほとんどの地方気象台)では天気の雨雪判別(雨・雪・霙)のみで、霰などの大気現象の記録は2019年2月に廃止した。機械による天気の自動判別では、落下する物体の大きさを判別することは難しいためである[9][10][11]

国際気象通報式[注 1]では、観測時に降っているか止んでいるか、雨・雪を伴うかどうか、雷を伴う否か、雨や雷の3段階強度などの組み合わせで区分される天気から選択して報告する。基本の記号は氷霰が「」、雪霰が「[12][13]

ラジオ気象通報などの日本式天気図では、観測時に霰が降っている場合に天気を「あられ」とする。天気記号は「」。ただし優先順位があり、雷を伴う場合は雷とする[14]

航空気象の通報式[注 2]では、「降水現象」の欄のGSがあられを表す[15]


注釈

  1. ^ SYNOPSHIPなどに用いる96種天気。地上天気図#天気参照。
  2. ^ METARTAF

出典

  1. ^ 『最新気象の事典』p.12 石井幸男「霰」
  2. ^ a b c d e f g h i 『気象観測の手引き』、p.61-65「大気現象の種類と定義・解説」
  3. ^ a b c Snow Pellets”. International Cloud Atlas(国際雲図帳. World Meteorological Organization(世界気象機関) (2017年). 2023年3月4日閲覧。
  4. ^ a b c オックスフォード気象辞典 p.84「氷あられ」p.257「雪あられ」
  5. ^ 驟雨(しゅうう)性の降水:積雲積乱雲など対流性の雲から降る、強さがよく変化する降水。
  6. ^ a b c d Small Hail”. International Cloud Atlas. World Meteorological Organization (2017年). 2023年3月4日閲覧。
  7. ^ a b 「予報用語 降水」、気象庁、2023年1月24日閲覧
  8. ^ 気象観測ガイドブック』、気象庁、2002年12月、p.44
  9. ^ 「報道発表 地方気象台における目視観測通報を自動化します」、大阪管区気象台、2019年11月16日、2023年1月24日閲覧
  10. ^ 雪(初雪)の観測は誰がどのように行っているのですか?」、福岡管区気象台『はれるんマガジン』36号、2022年12月27日、2023年1月24日閲覧
  11. ^ 天気の「快晴」がなくなった 「歴史的転換」迎えた観測”. 朝日新聞デジタル. 2020年4月3日閲覧。
  12. ^ 国際式の天気記号と記入方式」、気象庁、2023年1月21日閲覧。
  13. ^ 過去の気象データ検索 > 「天気欄と記事欄の記号の説明」、気象庁、2023年1月21日閲覧。
  14. ^ 理科年表FAQ > 山内豊太郎「天気の種類はいくつあるのですか。その記号も教えてください。」、理科年表オフィシャルサイト(国立天文台、丸善出版)、2008年3月、2022年1月21日閲覧。
  15. ^ METAR報とTAF報の解説」、那覇航空測候所、2023年1月21日閲覧。
  16. ^ Rime and Graupel”. U.S. Department of Agriculture Electron Microscopy Unit, Beltsville Agricultural Research Center. 2017年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月23日閲覧。
  17. ^ 広辞苑』(5版)「霰」


「霰」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「霰」の関連用語






6
100% |||||

7
アラゴナイト デジタル大辞泉
100% |||||

8
霰粒腫 デジタル大辞泉
100% |||||

9
100% |||||

10
氷霰 デジタル大辞泉
100% |||||

霰のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



霰のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの霰 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS