霊魂 宗教などにおける説明

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霊魂

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/22 17:47 UTC 版)

宗教などにおける説明

多くの宗教においては、人は死んでも意識あるいはそれに近いものは霊魂となって残ると説く。霊魂は生前暮らしていた土地に鎮まるとも、黄泉のような霊魂の住まう世界に旅立つともいう。霊魂の存在は、しばしば道徳倫理などと結びつけて語られる。キリスト教などが説くように、生前の行いに応じて天国地獄などに送られるともいわれる。あるいはヒンドゥー教のように霊魂は生前の行いに応じて転生すると説く宗教も有る。仏教の一部(大乗仏教)でも、六道の間を輪廻すると説く。

古代エジプト

死者の書』に描かれたオシリスの姿

古代エジプトでは、霊魂は不滅とされ、死者は復活するとされていた。オシリス死と再生を司る神として尊崇された。 自然界のあらゆるものに霊が宿るとされ、霊にも人間と同様に感情や弱点、欠点があると考えられていた[5]

定められた呪文を唱えたり定まった儀式を行うことによって願望を神に伝えたり、動植物の霊と交流したり、病人から苦痛の原因である悪霊を追い出すことや、死者に再び魂を入れる役割の神官、祭司(魔術師)などがいた[6]

人の魂は五つの部分から成っているとされた(アルファベット表記なら、Ren、Ba、Ka、Sheut、Ibの五つ)[7]。死者のBa(バー)のよりどころとして死者の体をミイラにして保存した。 『アニのパピルス』ではバーは人頭を持つ鳥として表現されている[8]

死者のバーが無事冥界に渡り、将来死者が甦るようにと、ミイラ作成期間の70日ほどの間、祭司は何度も大量の呪文を唱えた[9]。『死者の書』(死者の霊が肉体を離れて冥府に至るまでの過程を描いた書)が死者とともに埋葬されることもあった。

ピラミッド・テキストと呼ばれる初期の死者埋葬のテキストでは、死者が行くのは天の北にある暗黒の部分であり、そこで北極星のまわりの星とともに、アク(霊)として永遠の命を生きる、とされた[10]

古代ギリシャの哲学

ギリシア語では魂は「プシュケー」といい、語源は気息の音に由来する。またプシュケーには「」という意味もあり、死後の魂のイメージを蝶として表現することもある[8]

プラトンは対話篇において霊魂の働きに着目しつつ探求した。『パイドン』および『メノン』においては、永遠の真理(イデア)を認識する方式として想起論を提示し、その前提として霊魂不滅説を唱えた。

旧約聖書

エゼキエル書18章4節(口語訳)には「罪を犯した魂は必ず死ぬ。」と書いてある。18章20節(口語訳)でも「罪を犯す魂は死ぬ。」と書いてある。

キリスト教

旧約聖書では、ネフェシュ(ヘブライ語で「咽喉」の意)と表現される。これに聖なる霊(ルーアッハ。風、息の意)が入って預言がなされるという思想があった。

欧州においては人間を構成する要素は霊魂(アニマ、ANIMA)、精神(SPIRITV)及び肉体 (CORPVS) であり、錬金術ではこれらは三原質と結び付けられて考えられていた。また、3という数からキリスト教では三位一体に比せられることも多かった。霊魂と精神は肉体に宿り、肉体が滅びると精神と霊魂は分かれると考えられており、霊魂と精神は肉体という泉を泳ぐ二匹の魚に擬せられたこともあった。

ここにおける霊魂は人間の本能のようなものであり、成長することはないと考えられていたのに対し、精神は理性のようなものであって成長するものであるとされていた。

古代インド

ヴェーダ、ウパニシャッド

『リグ・ヴェーダ』などのヴェーダ聖典では、人間の肉体は死とともに滅しはするものの、人間の霊魂は不滅である、とされていた。同聖典では、人間の死後に肉体を離れた霊魂は、火神アグニなどの翼に乗って、最高天ヤマの王国にたどり着き、そこで完全な身体を得る、とされた。

後のウパニシャッドにおいては、死者の魂は、解脱する人の場合は"神道"を通ってブラフマンに至り、善人の場合は祖道を通って地上に再生する、と説かれた(「二道説」と呼ばれる)。そして解脱することがウパニシャッドの目標となった。

霊魂を示す言葉としては「アス」、「マナス」、「プラーナ」、「アートマン」といった言葉が使われた。その中でも「アートマン」はウパニシャッドの中心概念となっている。

サンジャヤ・ベーラッティプッタ

仏教興隆期のインドのサンジャヤ・ベーラッティプッタ来世に関する4つの問いを設け「来世は存在するか?」「来世は存在しないか?」「来世は存在しかつ存在しないか?」「来世は存在するわけでもなく、存在しないわけでもないか?」それぞれすべてに対して「私はその通りだとも考えないし、別だとも考えない、そうでないとも考えないし、そうでないのではないとも考えない」として確答を避け、不可知論の立場をとった。このような態度はゴータマ・ブッダの「無記」の立場と通じあう点がある、とされる[11]

初期仏教

ブッダが説いた初期仏教での「無我」は「霊魂がない」と解するのではなく「非我」の訳語が示すように、「真実の我ではない」と解すべきもの(自他平等の境地を目指した思想)である、ともされている[12]。 俗に言われる霊魂とは全く異なる。

中国の宗教(道教など)

中国の道教では、「(こん、たましい)」と「(はく)」という二つの異なる存在があると考えられていた。魂は精神を支える気、魄は肉体を支える気を指した。合わせて魂魄(こんぱく)ともいう。魂と魄はの思想と結びつき、魂は陽に属して天に帰し、魄は陰に属して地に帰すと考えられていた。

民間では、三魂七魄の数があるとされる。三魂は天魂(死後、天に向かう)、地魂(死後、地に向かう)、人魂(死後、墓場に残る)であり、七魄は喜び怒り哀しみ、懼れ、、惡しみ、欲望からなる。また、殭屍(キョンシー)は、魂が天に帰り魄のみの存在とされる(三魂は「胎光、爽霊、幽精」「主魂、覚魂、生魂」「元神、陽神、陰神」「天魂、識魂、人魂」、七魄は「尸狗、伏矢、雀陰、呑賊、非毒、除穢、臭肺」とされることもある)。

日本

日本での仏教

上記の初期仏教に関する上記の解説とは異なり、ブッダは「無我」を説いて霊魂を否定した[13]、ともされる。近年の日本の僧侶や仏教関係者によって執筆された仏教入門書等ではそのような図式で説明されていることが多い[14]

仏教では、六道の輪廻からの解脱を目的としている。 死後、成仏(解脱)する事ができた者は、諸仏の持つ浄国(浄土)へ生まれ変わる。出来なかった者は、生前の行いにより六道のいずれかに生まれ変わる。 その生まれ変わるまでの期間を中陰と呼ぶが、中陰時の立場を、民間信仰では霊魂と混同されることがある。

各宗派に対するアンケートで、死後の霊魂を信じると答えた僧侶の割合は日蓮宗80%、真言宗75%、浄土宗62%、曹洞宗52%、浄土真宗8%[15]

日本の古神道(民間信仰)、神道

古神道では、森羅万象マナが宿るとする。南洋の諸民族、中国などに共通した思想があった。 折口信夫『霊魂の話』によれば、肉体から容易に遊離し、付着すると考えられた。

優れた事績を残した人物の霊魂は、尊と同等の人格神、あるいはこれに相当する存在となるとされる。 国家神道明治以降、戦死者の魂のことを敬っていう場合は特に「英霊」(えいれい)[16]と呼んでいる[注釈 2]

その区別や概念も曖昧であり、それを分類や定義付けることなく享受してきた。 ただし、強弱や主客といえるような区別は存在し、大きいもの(巨石・山河)や古いもの長く生きたものが、その力が大きいと考えると同時に尊ばれた。

日本神話にある、人格神などの人としての偶像を持つ神々も信仰の対象とし、「それらの神がその他の森羅万象の神々を統べる」という考え方に時代とともに移っていった。

また神(霊魂)には荒御魂和御魂という魂の様相があるとし、それぞれ「荒ぶり禍をもたらす魂」と、「和ぎり福をもたらす魂」とされる。[17]

神霊
  • (みこと)日本神話にある人格神(人と同じ姿かたちと人と同じ心を持つ神)
  • 霊(チ)霊魂の基本となる言葉。血や乳(チ)に通ずるという。
  • (タマシヒ)強い付着性、遊離性を持つマナ
    • 荒御魂(アラミタマ)柳田國男『先祖の話』によれば、新たな御霊(ミタマ)つまり最近死んだものの魂
  • 霊(ヒ)全ての活力の元であり、優れて威力のあるもの。白川静『字訓』によれば、中国で生命の原動力が雨に求められたのに対し(なので雨の字がつく)、日本では太陽光から来ると考えられたので、日と同じヒと呼ばれる。

注釈

  1. ^ 大和言葉の「たましい(魂)」の方は、信念や思想、あるいはその心を表現する言葉としても慣用的に使われる。
  2. ^ 通常は英霊ではなく尊敬語はいずれも御霊(みたま)

出典

  1. ^ 広辞苑 第五版 p.2828 霊魂
  2. ^ a b デジタル大辞泉 「霊魂」
  3. ^ 広辞苑 第五版 p.2828 霊魂「人間の身体内にあってその精神、生命を支配すると考えられている人格的、非肉体的な存在」
  4. ^ a b c d e f 小口 偉一、堀 一郎、1973、『宗教学辞典』、東京大学出版会 ISBN 4-13-010027-0
  5. ^ 吉村作治『ファラオと死者の書 古代エジプト人の死生観』p.37
  6. ^ 吉村作治『ファラオと死者の書』p.41
  7. ^ * Allen, James Paul. 2001. "Ba". In The Oxford Encyclopedia of Ancient Egypt, edited by Donald Bruce Redford. Vol. 1 of 3 vols. Oxford, New York, and Cairo: Oxford University Press and The American University in Cairo Press. 161–162.
    • Allen, James P. 2000. "Middle Egyptian: An Introduction to the Language and Culture of Hieroglyphs", Cambridge University Press.
  8. ^ a b 小池寿子『死を見つめる美術史』ポーラ文化研究所 1999年、ISBN 4938547473 pp.124-128
  9. ^ 吉村作治 同書 p.55
  10. ^ 吉村作治 同書 pp.74-75
  11. ^ 岩波書店『哲学・思想事典』、「懐疑主義」の項
  12. ^ 岩波『哲学・思想事典』、「懐疑主義」の項。
  13. ^ 岩波『哲学・思想事典』、「霊魂」の項。
  14. ^ 仏教関係者による解説の例。 「日本人の霊魂観」(真宗の関係者向けの冊子「御坊さん」に掲載されたもの)
  15. ^ なぜ「葬式仏教」は生まれたか?〈死者〉との関わりから日本仏教を読み解く5冊 | 彼岸寺
  16. ^ 大辞泉
  17. ^ 出典:『マンガ神道入門~日本の歴史に生きる八百万の神々~』(監修:神保郁夫 原作:白取春彦 版:サンマーク出版)、『日本精神通義~人生、道を求め徳を愛する生き方~』(著:安岡正篤 版:致知出版社)、『神道辞典』(版:神社新報社)、『神道がよくわかる本』(著:安部正路 版:PHP文庫)
  18. ^ モーガン・フリーマン 時空を超えて 第2回「死後の世界はあるのか?」
  19. ^ NHK ザ・プレミアム超常現象 さまよえる魂の行方
  20. ^ http://www.epochtimes.jp/jp/2015/07/html/d68669.html
  21. ^ 竹倉 2015. 位置No.1678/2493
  22. ^ a b 竹倉 2015. 位置No.1646/2493
  23. ^ 竹倉 2015. 位置No.1617/2493
  24. ^ 竹倉 2015. 位置No.1637/2493
  25. ^ 竹倉 2015. 位置No.1790/2493
  26. ^ 竹倉 2015. 位置No.1844/2493
  27. ^ * 大石和男、安川道夫、濁川孝志、飯田史彦「大学生における生きがい感と死生観の関係」(健康心理学会『健康心理学研究』2007年末掲載) (大石和男は専修大学教授、安川道夫は専修大学教授、濁川孝志は立教大学教授、飯田史彦は福島大学教授)
    • 熊野道子 2003「人生観のプロファイルによる生きがいの二次元モデル」(『健康心理学研究16』pp.68-76)
    • 熊野道子 2005「生きがいを決めるのは過去の体験か未来の予期か?」(『健康心理学研究18』pp.12-23)
    • 佐和田重信、興古田孝夫、高江州なつ子他 2003「伝統的信仰意識が地域高齢者のメンタルヘルスに及ぼす影響についての検討」(『民族衛生69』pp.124-125)
    • 興古田孝夫、石津宏、秋坂真史、名嘉幸一、高倉実、宇座美代子、長濱直樹、勝綾子 1999「大学生の自殺に関する意識と死生観との関連についての検討」(『民族衛生65』pp.81-91)
    • 飯田史彦『生きがいの創造III』PHP研究所、2007年、ISBN 4-569-69448-9
  28. ^ ウァルデマール・キッペス『スピリチュアルケア 病む人とその家族・友人および医療スタッフのための心のケア』サンパウロ、1999
  29. ^ 関連文献: 竹田恵子、太陽好子『日本人高齢者のスピリチュアリティ概念構造の検討』(川崎医療福祉学会誌 Vol.16, No.1, 2006 53-66
  30. ^ 『健康と霊性』宗教心理出版、2001年、ISBN 4-87960-057-1


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