霊柩車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/21 10:38 UTC 版)
鉄道車両
かつては鉄道車両にも「霊柩列車」が存在した。
鉄道院・鉄道省
英照皇太后、明治天皇及び大正天皇の崩御の際に、その遺体を輸送するために轜車が製作された。皇族以外の者では病客車によって遺体が搬送された記録が残っており、東海道本線で大磯から京都まで運ばれた新島襄や、東北本線で東京から盛岡に運ばれた原敬の例がある。
名古屋市
一般用としては、1915年(大正4年)に名古屋市に市営の共同墓地と火葬場(八事霊園)が建設されたことに伴い、尾張電気軌道(名古屋市電の前身の一つ)が墓地に線路を引き込み、既存の電車(9号とされるが、4号とする説もあり)を改造して霊柩電車を製作している。前述の轜車をプロトタイプとして製造されたと伝えられる[21]。この霊柩電車は、車体の中央部に棺を出し入れする幅1800mmの扉を設置し、会葬者とともに墓地まで運んだという。この霊柩電車は1935年(昭和10年)頃まで使用されたが、1931年(昭和6年)までとする説もある。
名古屋市以外の計画
- 大阪
- 大阪では1915年(大正4年)に霊柩電車構想が浮上したが[22]、第一次世界大戦開戦後に経済が復調すると大阪市の人口は150万人を超え[23]、都市化と相まって自動車が普及し、霊柩電車構想は実現しなかった[22]。
- 東京
- 東京は江戸時代以来下町に人口が集中していたが、1916年(大正5年)頃から東京への人口集中がさらに進み、下町では住宅不足に陥っていた。そのため、雑木林やススキの草原だった武蔵野・多摩で宅地開発が行われるようになり、火葬場も下町からこれらの地域に移転した。
- 1921年(大正10年)になると、当時はまだインターアーバンの路面電車であった京王電気軌道(現・京王電鉄)に霊柩電車を走らせる計画が浮上した。京王線沿線には多磨霊園があり、京王線から霊園まで既存の道路に軌道を敷設することを想定していたが、大阪同様に都市化の進行とともに自動車が普及し、この計画も実現されなかった[24]。
ロサンゼルス鉄道
アメリカ・ロサンゼルスの市内交通を担ったロサンゼルス鉄道が"Descanso"(安息・休憩の意)という愛称を持つ無番号で1910年製造の霊柩電車を保有していたことがあり、南カリフォルニア鉄道博物館に保存されている[25]。
チャーチルの亡骸を運ぶ霊柩列車。イギリス、1965年
第16代米大統領エイブラハム・リンカーンの霊柩列車。1865年
- ^ a b 碑文谷創 (2008年6月27日). “<葬祭編:第35回> 宮型霊柩車が消える?! -変わりゆく葬儀の光景-”. セカンドステージ冠婚葬祭講座. 日経BP社. 2017年2月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年2月7日閲覧。
- ^ a b 久保洋一「19世紀イギリスの墓地 : 共同墓地を中心とした研究動向の整理」『歴史文化社会論講座紀要』第10巻、京都大学大学院人間・環境学研究科歴史文化社会論講座、2013年、51-105頁、2019年5月26日閲覧。
- ^ “世界の葬送”. 公益社. 2017年2月7日閲覧。
- ^ 松涛弘道 『世界の葬送』イカロス出版、2009年、101頁。
- ^ “フィリップ殿下の特注霊きゅう車を公開 自身も開発に携わり”. 毎日新聞 (2020年4月16日). 2021年4月18日閲覧。
- ^ 松涛弘道 『世界の葬送』イカロス出版、2009年、127頁。
- ^ a b c “利用者の皆様へ 霊柩自動車のご紹介”. 一般社団法人全国霊柩自動車協会. 2021年2月21日閲覧。
- ^ “沿革について”. 一柳葬具総本店. 2023年1月13日閲覧。
- ^ a b プリウスを真っ二つ!? 霊きゅう車「改造工場」に潜入した! 11月5日(木)16時14分配信 若林朋子
- ^ ど派手クラウン快走中 全身ピンク、出産送迎に霊柩車に:朝日新聞デジタル、閲覧2017年11月7日
- ^ 【教えて!goo】宮型霊柩車が減少した2つの理由(1/3ページ) 産経ニュース、閲覧2017年11月7日]
- ^ News Up 霊きゅう車は時代を映す鏡 NHK
- ^ “死亡女性葬儀…市民大勢が悼む ミャンマー(日本テレビ系”. 日本テレビ (2021年2月21日). 2021年2月21日閲覧。
- ^ トヨタ博物館 メルセデスベンツ 500K
- ^ “67.<この頃はやらない自動車談義ですが…> I.後期高齢車”. ダンディー先生のお茶飲み話 . Littera 逍遥雑信 <リテラ> (2008年7月29日). 2012年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年9月2日閲覧。
- ^ クラシカル霊柩車“絶滅”の危機…火葬場入場禁止の自治体も 「走る寺」アジア仏教国では人気(2ページ目) 産経WEST(産業経済新聞社)、2017年3月15日(2021年4月29日閲覧)。
- ^ 『減少する「宮型霊柩車」 人気がなくなったワケ』 中京テレビ、2019年9月7日(2022年2月18日閲覧)
- ^ リューギセンターストレッチリムジン(光岡自動車公式、2023年3月21日閲覧)
- ^ 実際、ラダーフレームのスズキ・ジムニーでは通称「バンカット」と呼ばれる、Bピラーより後ろのルーフを切除してしまう事例が見られる
- ^ 無許可の車を霊きゅう車として使用 葬祭業者を書類送検 NHKニュース 2017年5月23日
- ^ 『封印された鉄道史』p.46
- ^ a b 『封印された鉄道史』(p45)
- ^ 『大阪市交通局七十五年史』(p56)
- ^ 『封印された鉄道史』(p44, p45)
- ^ 『路面電車の技術と歩み』(p120)
霊柩車と同じ種類の言葉
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