電気自動車 歴史

電気自動車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/31 09:23 UTC 版)

歴史

ローナーポルシェ
(ヤーコプ・ローナー)
エジソンDetroit Electric Model 47
(Anderson Electric Car)

黎明期 1800年代 - 1950年代

初の電気駆動車は1835年、トーマス・ダベンポート (en) が作ったもので、小さな鉄道線路の上を走る電気機関車だった。1838年、スコットランドのロバート・デービッドソン(en)は時速約6kmの速度で走行する電気機関車を作った。1840年、イングランドで鉄道線路を電気の供給に使う方式の特許が取得されており、1847年にはアメリカでも同様の特許が取得されている[39]

1830年代(正確な時期は不明)、スコットランドの発明家ロバート・アンダーソンが充電不可能な一次電池を搭載した世界初の電気自動車を発明した[40]

販売された初の電気自動車は、最初のガソリンエンジン車(1891年)の5年前に英国で登場した。1899年にガソリン車よりも早く初めて100km/hを突破するなど当初は有望視され、自動車の黎明期には蒸気機関・内燃機関と動力源の覇権を争っていた。ハブにモーターを搭載したインホイールモーターの原型とも言える4輪駆動車を当時ローナー社在籍のフェルディナント・ポルシェが、1900年のパリ万博に出展した。

アメリカでも発明王トーマス・エジソンが電気自動車の改良に努め、特に充電可能なバッテリーの開発に邁進していた。しかし、広大な国土を持つアメリカでは航続距離の短さが克服し難いネックとなり、やがて彼の元で内燃機関を研究していたヘンリー・フォードによるフォード・モデルTの成功により自動車市場は完全に内燃機関自動車に支配され、イギリスでのミルク配達用や屋内用のフォークリフト等、一部を除いて電気自動車は一旦市場から姿を消す[41]

1930年代、ゼネラルモーターズ (GM)、ファイアストンスタンダードオイルカリフォルニアの3社の協業で National City Lines (NCL) という会社が設立された。この会社は各地の電気機関車を使っていた路面電車の会社を買い取り、電車を廃止してGM製バスに切り替えるという事業を行った。3社はNCLへの車両や燃料などの供給を独占したことで有罪とされたが、NCLによる交通サービスの独占は問題にされなかった(アメリカ路面電車スキャンダル)。

日本でも戦後、ガソリンの入手が困難だった時期にたま電気自動車等、数社から電気自動車が販売されていたが、朝鮮戦争による価格の上昇やガソリンの入手性が向上した事により姿を消した。

石油ショック 1970年代

再び脚光を浴びるのは先進国でモータリゼーションが進んだ1970年代である。

オイルショックによる石油資源依存のエネルギーセキュリティ懸念や、排気ガスによる局地的大気汚染(公害問題の深刻化)の解決策として電気自動車が提案された。日本においては通商産業省(当時)主導の電気自動車研究開発プロジェクト(通称 : 大プロ)が実施され、本田技研工業を除く国内全メーカーが電気自動車を開発した。しかし主に鉛蓄電池を用いた電気自動車は性能を確保できぬまま、石油確保の政治的解決やガソリン自動車の排気ガス浄化性能の向上に伴い、電気自動車は再び姿を消す。

ゼロエミッション規制 1980年代後半 - 1990年代

次に状況が変化するのは1980年代後半、CARB(カリフォルニア大気資源局)のゼロエミッション規制構想時である。これはカリフォルニアで販売する自動車メーカーは一定台数、有害物質を一切排出しない自動車を販売しなければならない、という規制の構想であった。これに対応できるのは電気自動車と考えられた。

1970年代に比べ、鉛蓄電池からニッケル水素電池と言った技術の進歩もあり、実際にトヨタのRAV4EV、ホンダのEV-PLUS、ゼネラルモーターズEV1などの限定販売・リースが開始され、電気自動車の本格普及も近いと思われた。しかし鉛蓄電池に比べニッケル水素電池はエネルギー・出力密度に優れてはいたが、それでも電気自動車は充分な性能(航続距離・充電時間・耐久性・車両価格など)を確保できなかった。

1990年代により高性能なリチウムイオン電池を採用したのは日産のみであった。(1997年プレーリージョイEV、1998年ルネッサEV/北米向けアルトラEV、1999年ハイパーミニ[42])ハイパーミニはアルミスペースフレームによる超軽量ボディとリチウムイオン電池を採用する意欲作ではあったが、車両価格が362万円と高価で、かつインフラ整備も整わず、普及には至らなかった。

これ以降、自動車メーカーは、電気自動車の欠点であるエネルギー密度の問題を解決するため、燃料電池を搭載した燃料電池自動車の開発などにも注力し、2002年平成14年)には燃料電池自動車ホンダ・FCXや、トヨタ・FCHVリースが開始されたが、水素ステーションの未整備など、使い勝手や費用等に問題があり普及には至っていない。

2000年代

電気自動車のネックとなっていたバッテリー性能について、大きな進歩がみられる。

モバイル機器等で使用が当たり前になったリチウムイオン電池を採用することで、性能向上を果たした電気自動車が発表されるようになった。リチウムイオン電池は、ニッケル水素電池より高エネルギー・高出力密度であるとされ、電気自動車の性能改善が見込まれる。充電時間についてはメーカーや研究機関で30分以下で70%の充電を可能にする急速充電技術が開発されている。電池寿命についてはモバイル機器などに使用されているものとは異なり長寿命である。長寿命である要因は質量あたりのエネルギー密度がモバイル用よりも少なく、設計的に余裕があるためである。後述のTesla Motorsの電気自動車では16万kmの電池寿命と発表している。(日本の自家用車の場合20万キロに及ばないうちに廃車になることが多いが、30万km以上使うこともある商用車などの用途では途中で交換が必要と考えられる。)

充電時間の長い二次電池を使用せず、動力源に絶縁性能を改善したキャパシタを用いた試験では、重量1.5tクラスの車両であれば、100km/hの定速運転で700km以上の航続距離を達成することが既に可能であると報道された[43]。短時間の充放電が可能なキャパシタは回生ブレーキで発生した電力の有効な回収手段としても注目されており、日産ディーゼルが開発中である[44]

また、従来のバッテリーよりもはるかに高性能のリチウム・空気電池の開発も進みつつある[45][46]

バッテリー性能向上のほかにも、電気エネルギ効率を高められるインバータによる可変電圧可変周波数制御といった、パワーエレクトロニクスの発達もあり、電気自動車の性能は向上している。慶應義塾大学電気自動車研究室が開発したエリーカでは、既に370km/hの最高速度と4.1秒の0 - 100km/h加速が達成されており、内燃機関車両に比べ簡単な駆動系で高い動力性能が引き出せることを実証した。

台湾豊原バス純電気バス

米国では、テスラ (Tesla)(Google社の共同創始者のセルゲイ・ブリンラリー・ペイジなど、有名IT企業家も出資している電気自動車ベンチャー)により、0 - 60mph (0 - 96km/h) 加速約4秒、最高速度130mph (208km/h) 以上、航続距離250mile (400km) を達成したスポーツカータイプの、純粋の電気自動車「ロードスター」が発表された。電池寿命は10万マイル(16万km)は動力性能を出来るとしている[47]。さらに2009年3月には「モデルS」が発表された。これは大量生産車で、2009年4月ごろの段階ですでに1200台以上受注し、すでに数百台が路上を走っており、毎週25台のペースで生産しており、予約は同年秋までいっぱい[2]とされた。ファミリー・セダンタイプで、大人5人とオプションで最高子供2人が座れるという。ごく普通の家庭用コンセントから充電可能で、一度の充電にかかる時間はわずか45分で、最高約613kmの走行が可能だという。燃費が非常に良く、トヨタのプリウスのおよそ2倍で、370km走っても電気代が500円程度で済む[3]とされた。

日本では2009年6月4日[48]三菱自動車により世界初の量産電気自動車である三菱・i-MiEVが生産開始され、続いて2010年12月20日[49]日産自動車により日産・リーフが生産開始された

従来の電気自動車は、パワー・航続距離が不足しているため、短距離を走るシティコミュータなどが使用法として考えられてきたが、上記のような性能の車が発表されるなど、以前に比べ高性能な電気自動車を作れるようになり、問題は解決した。

米カリフォルニア州の2017年の排ガスゼロ車(Zero Emission Vehicle)の規制強化[50]、フランスやイギリス等におけるガソリン車・ディーゼル車の将来的な新規販売禁止(2040~2050年までを目途)[51]など、自動車メーカーによる電気自動車等の排ガスゼロ車の開発・販売が急がれている。

電気自動車で先行する日産自動車[52]は、鋭い加速などが特徴のスポーツ車へのEVモデルを[53]、トヨタは航続距離の長距離化に有利な全固体電池の実用化[54]を、それぞれ東京モーターショーで発表した。

中国では、2015年に発表した産業中期戦略「中国製造2025」において電気自動車を中心とした新エネルギー車を国家産業競争力の核心的利益として育てていく方針を打ち出し、2025年までに新エネ自動車販売台数を100万台、国内市場占有率70%以上にすること掲げた。2017年における中国市場の電気自動車販売台数は約58万台となっており、世界で販売される電気自動車全体の4割以上を占める状況となっている[55]




  1. ^ 電気自動車とは - 意味/解説/説明/定義 : 新語時事用語辞典”. 2009年9月30日閲覧。
  2. ^ 日産自動車株式会社. “日産 | ゼロ・エミッション | ゼロ・エミッションとは” (日本語). www.nissan-global.com. 2018年12月6日閲覧。
  3. ^ 日本の法令上、トロリーバスは無軌条電車と呼ばれる鉄道として扱われ、自動車として扱われないため、電気自動車には含まれない。
  4. ^ 報道発表資料:「ハイブリッド車等の静音性に関する対策について(報告)」の取りまとめ等について”. 国土交通省. 2011年9月17日閲覧。
  5. ^ @IT MONOist. 2日分の家庭用電力をEVから引き出す. http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1108/02/news085.html. 
  6. ^ パイクス参戦の増岡「ドラッグを上回るパワー」 - オートスポーツ・2014年6月26日
  7. ^ 総合効率とGHG排出の分析 報告書 日本自動車研究所 (PDF) 平成23年3月
  8. ^ 新しい構造の高性能「リチウム-空気電池」を開発 - 産業技術総合研究所 2009年2月24日発表
  9. ^ トヨタ、電池研究部を新設…金属空気電池などを研究 - レスポンス 2008年6月11日 (水) 22時52分発表
  10. ^ エタノール改質燃料電池車の問題点
  11. ^ 川島研究室ホームページ 8.間欠給電式バスシステムに関する研究(太陽エネルギー研究開発センター関連) http://www.me.kanagawa-it.ac.jp/kawashima/Study.html
  12. ^ 実用新案 第3156251(日本);第1427632(中国)
  13. ^ 非接触充電技術の車載化加速―各地でバス走行実験相次ぐ ガズー 自動車業界ニュース 「2009 年5月14日 16時21分 日刊自動車新聞」
  14. ^ ワセダのEV…短距離、非接触にこだわる電動バス - レスポンス 2010年2月18日 (木) 09時00分
  15. ^ 日産、12年以降のEVに非接触式充電システム対応モデル投入 日刊工業新聞 掲載日 2009年10月27日
  16. ^ 「Korea OLEV concept vehicle sees the future, and it's magnets」 - The Christian Science Monitor - March 12, 2010 発表
  17. ^ 高速道路自体がリニアモーター:未来の電気自動車システム(動画) 2009年8月11日
  18. ^ 電気自動車への改造に当たっての留意点 (PDF)”. 国土交通省. 2018年11月8日閲覧。
  19. ^ 船瀬俊介著 『疾れ!電気自動車』 築地書館 2004年7月14日初版発行 ISBN 4806712906
  20. ^ a b c 電中研ニュースNo.433, 2006年9月 (PDF) 電力中央研究所
  21. ^ 22.5インチホイール組込形大型バス用インホイールモータシステムの開発 (PDF)東洋電機技報 第113号(2006年3月)P.9
  22. ^ 藤井英敏 リチウムイオン電池の価格を下げる「脱コバルト」レースの勝者は? 2009年8月18日公開
  23. ^ 日経BP TechOn 用語 リチウムイオン2次電池用電極材料 2007/01/11 11:56公開
  24. ^ 産業技術総合研究所 プレスリリース リチウムイオン電池用高容量正極の安価な新材料を開発 2006年11月6日 発表
  25. ^ 日立らが希土類磁石を使わないモータを試作、効率は5ポイント向上
  26. ^ 自動車の高効率化と電気自動車ファミリーの技術動向 (PDF)
  27. ^ 電気自動車の駆動系-どんなモータが最適か- (PDF)
  28. ^ 社名テスラと誘導モーター
  29. ^ 【インプレッション・リポート】テスラ・モーターズ「モデルS」内の写真を参照
  30. ^ かながわ電気自動車普及推進方策 策定調査結果報告書 <概要版> (PDF)”. 2009年9月3日閲覧。
  31. ^ 「それでも水素はなくならない」 日経エレクトロニクス 2008年6月2日号
  32. ^ 日本経済新聞2010.5.11.38面
  33. ^ 100Vより200V給電の方が電力ロスが少ない。
  34. ^ 一般に蓄電池の容量上限近くは内部抵抗が高くなり温度上昇と充電効率も悪化して時間も掛かるため、満充電ではなく80%ほどで充電を終える方式が採られる。
  35. ^ 数分程度で充電が完了する急速充電器も開発されている。充電器側はキャパシタなどを内蔵することで短時間に大電流を供給できるが、このような急速充電による車載蓄電池側の発熱などが問題とならないか不明であり、一般には十数分程度の充電時間とされている。
  36. ^ 十数分程度の充電時間が短縮できないなら、液体燃料の給油に比べて店舗内に留まる車両台数が増えて顧客回転率が低下する。充電サービス事業の収益性の確保や自動車台数への対応を考えればより多くの停車空間と充電ターミナルの確保が求められる。
  37. ^ 電気料金-国際比較- (PDF)
  38. ^ http://jp.autoblog.com/2014/12/24/tesla-real-world-beta-testing-model-s-battery-swap/
  39. ^ History of Railway Electric Traction
  40. ^ Inventors - Electric Cars (1890 - 1930)
  41. ^ Escaping Lock-in: the Case of the Electric Vehicle
  42. ^ ソニー・日産電池撤退、電気自動車は韓中主導で再編加速か - ダイヤモンドオンライン(2016年8月19日版/2016年11月5日閲覧)
  43. ^ 「5分の充電で800km」新キャパシタ電気自動車 2007年9月7日 WIRED.jp
  44. ^ 世界初の「キャパシターハイブリッドトラック」 UDトラックス(旧 : 日産ディーゼル)
  45. ^ http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090224/pr20090224.html
  46. ^ http://www.designnewsjapan.com/content/l_news/2009/02/o14nbe000001i82r.html
  47. ^ Tesla Motors、電気スポーツカー「Tesla Roadster」の商用生産を開始 2008年3月19日 CNET JAPAN
  48. ^ “News Edge「三菱自 社運乗せ、電気自動車発進」”, 日経産業新聞: 20, (2009年6月5日) 
  49. ^ http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2010/_STORY/101203-01-j.html
  50. ^ ハイブリッドではもう遅い?電気自動車で出遅れた日本 Yomiuri Online 2017年6月2日
  51. ^ 焦点:電気自動車の勝利か、英国が脱ディーゼル・ガソリン宣言 ロイター 2017年7月27日
  52. ^ トヨタ、日産、ホンダ…大競争時代に突入 海外企業を巻き込む「自動車三国志」 (1/5ページ) SankeiBiz 2017年11月3日
  53. ^ 走りでもEV、「GT-R」級のパワーに-日産自コンセプト車で訴求 Bloomberg 2017年10月25日
  54. ^ トヨタ創始者の夢「佐吉電池」 能力2倍の次世代型開発 日本経済新聞 2017年10月25日
  55. ^ EV大国へ国家あげてひた走る中国——世界の4割保有、上位占める中国ブランド”. Businessinsider Japan (2018年4月15日). 2019年3月31日閲覧。
  56. ^ [1]
  57. ^ ヤマト運輸、トヨタ、日野が協力して電動(EV)小型トラックの実証運行を開始”. 日野自動車 (2013年3月1日). 2019年3月27日閲覧。
  58. ^ 西濃運輸、日野自動車が協力して電動(EV)小型トラックの実証運行を開始”. 日野自動車 (2013年5月21日). 2019年3月27日閲覧。
  59. ^ レース結果 - JEVRA
  60. ^ ラリークロスにも電動化の波。世界ラリークロスが2020年にフルEVシリーズへ変貌か





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