電動機 歴史

電動機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/26 03:26 UTC 版)

歴史

ファラデーの電磁実験(1821年ごろ)[2]
イェドリクの "lightning-magnetic self-rotor"(1827年、Museum of Applied Arts, ブダペスト)

モーター誕生の前に

1740年代、スコットランドの修道士アンドリュー・ゴードンとアメリカの実験家ベンジャミン・フランクリンが製作した単純な静電デバイスが最初の電気モーターであった。 現代の電磁モーターの前には、静電気の力で作動するモーター(静電モーター)の実験が行われていた。

1771年、ヘンリー・キャベンディッシュがその理論的原理を発見するも発表されず、1785年、クーロンが独自に発見し発表したため、クーロンの法則と呼ばれる。 実用に足るような大きさの力を発生させるためには高電圧が必要となるため、静電モーターは実用化されなかった。

1799年、アレッサンドロ・ボルタ化学電池を発明すると、持続的な電流を作り出すことが可能になった。

1820年、ハンス・クリスチャン・オルステッドは、電流が磁場を作り、磁石に力を与えることを発見した。 アンドレ・マリー・アンペールは、わずか数週間で電磁相互作用による機械的な力の発生を記述したアンペールの法則を発表した。

1821年、イギリスの科学者マイケル・ファラデー電磁気的手段で電気エネルギーを運動エネルギーに変換する実験を行った。上から導線を吊るし、水銀のプールに少し浸しておき、その上に永久磁石を置く。その導線に電流を流すと、導線の周囲に丸い磁場が発生し、磁石の周りで導線が回転する[3]。この実験は学校の物理学の授業でもよく実施されるが、毒性のある水銀の代わりに塩水を使うこともある。これは単極電動機と呼ばれる最も単純な形式の電動機である。後にこれを改良した Barlow's Wheel もある。これらは実演向けであり、動力源として実用できるものではなかった。

1827年、ハンガリーのイェドリク・アーニョシュは電磁作用で回転する装置の実験を開始し、それを "lightning-magnetic self-rotors" と呼んでいた。彼はそれを大学での教育用に使っており、1828年には実用的な直流モーターの3大要素である固定子電機子整流子を備えた世界初の実用的な直流電動機の実験に成功した。その固定部分も回転部分も電磁石になっていて、永久磁石は使っていない[4][5][6][7][8][9]。この装置も実験用であり動力源として使えるものではなかった。

DCモーター

1832年、イギリスの科学者ウィリアム・スタージャンが、機械の動力源として使える世界初の整流子式直流電動機を発明した[10]

1837年、アメリカでトーマス・ダヴェンポートとその妻エミリーと共に商用利用可能なレベルの整流子式直流電動機を開発し、特許を取得した。 この電動機は毎分最大600回転で、印刷機などの機械を駆動した[11]。当時電源としては電池しかなく、その電極用の亜鉛は非常に高価だった。そのためダヴェンポート夫妻は商業的には失敗し破産した。他にも直流電動機を開発した発明家が何人かいたが、いずれも電源コストの問題に直面した。当時、電力網はまだ存在しなかった。したがって、電源コストに見合うだけの電動機の市場は存在しなかった[要出典]

1834年、ロシアのモーリッツ・フォン・ヤコビが、比較的弱い回転・往復運動の装置を使って、初の本格的な回転式電気モーターを作った。このモーターは驚くべき機械的出力を持っていた。 このモーターは世界記録を樹立したが、さらに自身で1838年にその記録を更新した。後者を使って14人乗りのボートで広い川を渡ることができた。 1839年から40年にかけて、他の開発者も同様以上の性能のモーターを作ることに成功した。

1855年、イェドリクは electromagnetic self-rotors と同様の原理で役に立つ仕事をする装置を製作した[4][6]。また同年、電動機で駆動する自動車の模型を作っている[12]

1864年、アントニオ・パチノッティがリング状の電機子を初めて発表した(当初は直流発電機(ダイナモ)として考案された)。 これは、コイルが左右対称で互いに閉じられて配置され、整流器のバーに接続し、ブラシからは実用上問題ないレベルで変動のない電流を供給する点が特徴的である。 1871年にパチノッティの設計の再発明やヴェルナー・シーメンスによるいくつかの解決策を採用したゼノベ・グラムの後で、直流モーターはようやく商業的に成功する。

1873年、ゼノブ・グラムは2台の発電機を接続し、一方が発電した電力でもう一方を電動機として駆動できることを偶然発見した。このグラム発電機は電動機としても世界で初めて商業的に成功した[要出典]

1872年、ジーメンス・ウント・ハルスケ社のフリードリッヒ・フォン・ヘフナー・アルテンネックがパキノッティのリング電機子の代わりにドラムローターを導入し、機械効率を向上させた。 翌年には同社がラミネートローターを導入し、鉄損の低減と誘起電圧の向上させた。1880年、Jonas Wenströmはローターに巻線を収めるためのスロットを設け、効率をさらに高めた。

1886年、フランク・スプレイグは負荷が変化しても一定の回転速度を維持できる火花の出ない直流電動機を発明した。このころスプレイグは電動機の力を電力網に返す回生技術を発明しており、また路面電車用の架線から集電する方式も発明した。これらの技術を使い、1887年にバージニア州リッチモンドで路面電車を運用して成功を収め、1892年には電動エレベーターとその制御システム、さらにイリノイ州シカゴで集中制御方式の電動式地下鉄(通称シカゴ・L)を成功させた。スプレイグの電動機と関連発明を機に、産業における電動機需要は爆発的に増大し、他の発明家も同様のシステムを次々と発明していった。

電動機の効率向上は、固定子回転子の隙間を小さくすることが重要だということがなかなか認識されず、進歩は数十年間遅れてしまった。初期の電動機ではその空隙が比較的大きく、磁気回路の磁気抵抗が非常に大きかった。このため、現代の効率的な電動機に比べると、同じ消費電力で発生できるトルクがかなり小さい。その原因は磁石や電磁石が近いほど引き付け合う力が強いため、ある程度離しておこうとしたためと考えられる。効率的な設計では、固定子と回転子の隙間をなるべく小さくし、トルクを発生しやすい磁束パターンにする。

ACモーター

1824年、フランスの物理学者フランソワ・アラゴが「アラゴーの円板」で知られる回転磁界を定式化した。 1879年、ウォルター・ベイリーが手動でスイッチをオン・オフすることで、原始的な誘導モーターを製作した。 1880年代、長距離の高電圧送電における交流の利点は認識されていたものの、交流でモーターを作動させることが課題となっていたため、実用的な交流モーターの開発が盛んに行われた。

1885年、ガリレオ・フェラリスによって最初の交流整流子レス誘導モーターが発明された。 1888年、トリノ王立科学アカデミーは、モータ動作の基礎を詳述したフェラリスの研究を発表したが、当時は「その原理に基づく装置は、モータとしての商業的重要性を持ち得ない」と結論づけられた。

1887年、ニコラ・テスラは初の実用的交流電動機と多相送電システムを発明し、1888年に特許を取得した。 同年、テスラはAIEEに論文「A New System for Alternating Current Motors and Transformers」を発表し、特許を取得した3種類の2相4極モータについて説明した。 4極のロータで非自己始動型のリラクタンスモータを形成するもの、巻線のロータで自己始動型の誘導モータを形成するもの、ロータ巻線に個別に励起された直流電源を供給する真の同期モータである。 この特許の中には、短絡巻線型ローターの誘導モーターも記載されていた。 既にフェラリスから権利を取得していたジョージ・ウェスティングハウスは、すぐにテスラの特許を買い取った。 定速交流誘導モーターは路面電車には適さなかったが、ウェスティングハウス社は1891年にコロラド州テルライドの鉱山事業の動力源として採用した。 同社は1892年に最初の実用的な誘導モーターを実現し、1893年には多相60ヘルツ誘導モーターのラインを開発したが、これら初期のウェスティングハウスのモーターは巻線ローターの二相モーターであった。 後にB.G.Lammeが回転棒巻線ローターを開発した。

1889年、ミハイル・ドリヴォ=ドブロヴォルスキーが、ケージローターと巻線ローターの両方を備えた始動用レオスタット付き三相誘導モーターを、1890年には三肢変圧器を発明するなど、三相開発を着実に進めていった。 AEGとMaschinenfabrik Oerlikon社との合意を経て、ミハイル・ドリヴォ=ドブロヴォルスキーとチャールズ・ユージン・ランスロット・ブラウンは、20馬力のリス・ケージ型と100馬力の始動レオスタット付き巻線型の大型モデルを開発した。 1889年以降、同様の三相機械の開発は、ウェンストロムが始めていた。 1891年のフランクフルト国際電気技術博覧会で、初の長距離三相システムの発表に成功した。これは定格15kVで、ネッカー川のラウフェンの滝から175kmにわたって延びていた。 ラウフェンの発電所には240kWの86V 40Hzの交流発電機と昇圧トランスがあり、展示会では降圧トランスから100馬力の三相誘導モーターに給電して人工の滝を動かし、元の電源の移動を表現した。 三相誘導は現在、大部分の商用モーターに使用されている。ドブロヴォルスキーは、テスラのモーターは二相の脈動があるため実用的ではないと主張し、それが彼の三相の研究に固執するきっかけとなった。

1891年、ゼネラル・エレクトリック社は三相誘導モーターの開発を開始した。 1896年には、ゼネラル・エレクトリック社とウェスティングハウス社が、後にリスケージ・ローターと呼ばれるバー・ワインディング・ローターの設計に関するクロスライセンス契約を締結した。 これらの発明や技術革新に伴う誘導モーターの改良により、現在、100馬力の誘導モーターは、1897年の7.5馬力のモーターと同じサイズになっている。

日本国内の電動機

1895年(明治28年)、芝浦製作所(現在の東芝)が銅鉱山ポンプ用6極25馬力(18.5kW)の日本初の二相誘導電動機を誕生させた。

1901年(明治34年)、明電舎が1馬力(0.75kW)の三相誘導電動機を製造した。

1906年(明治39年)、明電舎が5馬力(3.8kW)以下の三相誘導電動機を独自の設計法をもって標準化し、汎用電動機として本格生産を開始した。

1906年(明治39年)、12月末時点の調査で、明電舎が東京市内の電動機シュアの約6割を占めていた。東京市内の電動機746台の内の463台が明電舎製で、残り283台の過半数は輸入品であった。[13]


  1. ^ a b 「モーター」というカタカナ表記に関して、電気学会に於いては「モータ」という表記法を定めている他、電動機メーカーによっては「モーター」のドイツ語表記“Motor”の20世紀前半までドイツ語発音の模範とされた「舞台発音」に基づいた発音方に倣って「モートル」(或いは「モトール」)という表記法を用いているところが見られる《日本電産Webサイト内『モーターとは~1-3-6.超音波モーター』ページ後半に掲載されているコラム『モーターの語源』より;なお「モートル」という表記は、現在、少なくとも日立系列の日立産機システム東芝系列の東芝産業機器システムに於いて、主にブランド名の中で用いられている》
  2. ^ Faraday, Michael (1844). Experimental Researches in Electricity. 2  See plate 4.
  3. ^ spark museum
  4. ^ a b Electricity and magnetism, translated from the French of Amédée Guillemin. Rev. and ed. by Silvanus P. Thompson. London, MacMillan, 1891
  5. ^ Nature 53. (printed in 1896) page: 516
  6. ^ a b Battery and Technology History Timeline Electropedia
  7. ^ http://www.fh-zwickau.de/mbk/kfz_ee/praesentationen/Elma-Gndl-Generator%20-%20Druckversion.pdf
  8. ^ http://www.uni-regensburg.de/Fakultaeten/phil_Fak_I/Philosophie/Wissenschaftsgeschichte/Termine/E-Maschinen-Lexikon/Chronologie.htm
  9. ^ Electrical Technology History Electropedia
  10. ^ Gee, William (2004). “Sturgeon, William (1783–1850)”. Oxford Dictionary of National Biography. Oxford, England: Oxford University Press. doi:10.1093/ref:odnb/26748 
  11. ^ Garrison, Ervan G., "A history of engineering and technology". CRC Press, 1998. ISBN 084939810X, 9780849398100. Retrieved May 7, 2009.
  12. ^ http://www.frankfurt.matav.hu/angol/magytud.htm
  13. ^ 「電気の友」(1906) |






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