離脱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/13 07:49 UTC 版)
用語
英語圏のオックスフォード大学出版の精神医学事典にて、Withdrawalは、薬物をやめることや、それによって生じる症状の両方を意味する[1]。また日本の文献でも、アルコール離脱とは一連の症状を指すと説明されていることがある[2]。
古くは、禁断(abstience)の語が用いられていたが、次第にこの語は避けられ、1968年の、KellerとMcCormickによるアルコール用語辞典の第1版では、withdrawalの語が用いられている[1]。日本でも、このような違いについて語られ、禁断しなくても症状が生じることが明らかとなり、離脱に用語が変わったと説明されている[19]。
日本では、古くは1973年の『アルコール中毒』および1975年の『精神医学事典』では離脱症状の語は採用されていない[1]。1975年の医学総会にて、札幌医科大学の精神科の小片が、内科の領域ではwithdrawalが離脱と訳されていることから、アルコールに関して離脱と表現していたと柳田知司は記している[20]。その時に、withdrawal signs and symptomsを退薬症候と訳すことについて、小平に同意を得たとしている[20]。
1989年の精神神経学会による『精神医学用語集』にはwithdrawalの訳語として、離脱と退薬が記された[1]。1993年の『新版精神医学事典』には離脱症候群が採用されている[1]。しかしながら、1997年のアルコールの離脱に関する日本の論文では、基礎医学の用語とことわりをいれ、離脱の代わりに退薬の語を用いている[19]。
世界保健機関(WHO)の『ICD-10 第5章:精神と行動の障害』や、アメリカ精神医学会(APA)の『精神障害の診断と統計マニュアル第4版』(DSM-IV)においては、直後に述べるように、離脱の語が正式な診断名である。
- ^ a b c d e f g h 小片基「精神医学用語解説120. 離脱症状」『臨床精神医学』第23巻第13号、1994年12月、1706-1707頁。
- ^ a b 松下正明(総編集) 著「アルコール依存と関連障害(症状・経過・診断)」、編集:牛島定信、小山司、三好功峰、浅井昌弘、倉知正佳、中根允文 編『薬物・アルコール関連障害』中山書店〈臨床精神医学講座8〉、1999年6月、199頁。ISBN 978-4521492018。
- ^ a b “Development of a rational scale to assess the harm of drugs of potential misuse”. Lancet 369 (9566): 1047–53. (March 2007). doi:10.1016/S0140-6736(07)60464-4. PMID 17382831 .
- ^ 薬物政策国際委員会 (2011). War on Drugs. The Global Commission on Drug Policy
- ^ a b c アメリカ精神医学会 2004, p. 194.
- ^ a b c d e f g h Galanter, Marc; Kleber, Herbert D (1 July 2008). The American Psychiatric Publishing Textbook of Substance Abuse Treatment (4th ed.). United States of America: American Psychiatric Publishing Inc. p. 58. ISBN 978-1-58562-276-4
- ^ アメリカ精神医学会 2004, pp. 282, 213.
- ^ a b c d e f g h 世界保健機関 2004, pp. 107–109.
- ^ a b コロンビア大学嗜癖物質乱用国立センター 2012, p. 88.
- ^ a b アメリカ精神医学会『DSM-III-R 精神障害の診断・統計マニュアル』高橋三郎訳、医学書院、1988年、153頁。ISBN 978-4260117388。
- ^ WHO Programme on Substance Abuse (1996年11月). Rational use of benzodiazepines - Document no.WHO/PSA/96.11 (pdf) (Report). World Health Organization. p. 21. OCLC 67091696. 2013年3月10日閲覧。
- ^ “Chapter 15: Reinforcement and Addictive Disorders”. Molecular Neuropharmacology: A Foundation for Clinical Neuroscience (2nd ed.). New York: McGraw-Hill Medical. (2009). pp. 364–375. ISBN 9780071481274
- ^ Nestler EJ (December 2013). “Cellular basis of memory for addiction”. Dialogues Clin. Neurosci. 15 (4): 431–443. PMC 3898681. PMID 24459410 .
- ^ “Glossary of Terms”. Mount Sinai School of Medicine. Department of Neuroscience. 2015年2月9日閲覧。
- ^ “Neurobiologic Advances from the Brain Disease Model of Addiction”. N. Engl. J. Med. 374 (4): 363–371. (January 2016). doi:10.1056/NEJMra1511480. PMID 26816013.
- ^ 中村春香、成田健一「嗜癖とは何か-その現代的意義を歴史的経緯から探る」『人文論究』第60巻第4号、2011年2月、37-54頁、NAID 120003802584。
- ^ 世界保健機関 (1957). WHO Expert Committee on Addiction-Producing Drugs - Seventh Report / WHO Technical Report Series 116 (pdf) (Report). World Health Organization. pp. 9–10.
- ^ 世界保健機関 (1994) (pdf). Lexicon of alchol and drug term. World Health Organization. pp. 6. ISBN 92-4-154468-6 (HTML版 introductionが省略されている)
- ^ a b 小宮山徳太郎「アルコール退薬の臨床一退薬症状群、遷延性退薬徴候、後遺障害」『日本臨床』第55巻特別、1997年、393-405頁。
- ^ a b 柳田知司「薬物依存関係用語の問題点」(pdf)『臨床薬理』第6巻第4号、1975年、347-350頁、doi:10.3999/jscpt.6.347、NAID 130002041760。
- ^ a b 世界保健機関. The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders: Clinical descriptions and diagnostic guidelines (pdf) (Report). World Health Organizetion. pp. 5–7. 2014年6月4日閲覧。
- ^ a b アメリカ精神医学会 2004, p. 192.
- ^ a b c 世界保健機関 2003.
- ^ a b アメリカ精神医学会 2004, p. 193.
- ^ アメリカ精神医学会 2004, p. 203.
- ^ アメリカ精神医学会 2004, pp. 220–221.
- ^ アメリカ精神医学会 2004, pp. 246–247.
- ^ アメリカ精神医学会 2004, p. 288.
- ^ アレン・フランセス『精神疾患診断のエッセンス―DSM-5の上手な使い方』金剛出版、2014年3月、146頁。ISBN 978-4772413527。、Essentials of Psychiatric Diagnosis, Revised Edition: Responding to the Challenge of DSM-5®, The Guilford Press, 2013.
- ^ a b c d e f g コロンビア大学嗜癖物質乱用国立センター 2012, pp. 88–92.
- ^ 世界保健機関 1969, pp. 9–12.
- ^ a b 世界保健機関 2009, p. 3.
- ^ WHO Programme on Substance Abuse 1996, p. 20.
- ^ Ebadi, Manuchair (23 October 2007). “Alphabetical presentation of drugs”. Desk Reference for Clinical Pharmacology (2nd ed.). USA: CRC Press. p. 512. ISBN 978-1-4200-4743-1
- ^ a b Jorge R. Petit 2011, p. 216.
- ^ 世界保健機関 1969, p. 20.
- ^ 世界保健機関 2009, p. 44.
- ^ a b 世界保健機関 2009, p. 43.
- ^ a b Jorge R. Petit 2011, p. 214.
- ^ a b c Jorge R. Petit 2011, p. 218.
- ^ 世界保健機関 2004, p. 91.
- ^ 世界保健機関 2004, pp. 100.
- ^ 江刺正嘉 (2010年6月29日). “向精神薬:過量服薬対策、厚労相が表明 省内にPT”. 毎日新聞: p. 東京朝刊1面
- ^ 2012年11月29日 第1回依存症者に対する医療及びその回復支援に関する検討会 議事録. 厚生労働省. 29 November 2012. 2013年6月7日閲覧。
- ^ 2013年1月31日 第3回依存症者に対する医療及びその回復支援に関する検討会 議事録. 厚生労働省. 31 January 2013. 2013年6月7日閲覧。
- ^ Neil B. Sandson『精神科薬物相互作用ハンドブック』医学書院、2010年。ISBN 978-4260009591。、Drug-Drug Interaction Primer: A Compendium of Case Vignettes for the Practicing Clinician, 2007
- ^ 加藤隆一監修、鈴木映二『向精神薬の薬物動態学 -基礎から臨床まで』星和書店、2013年、表紙帯頁。ISBN 978-4791108374。 出版社による書籍の概要ページに薬物動態学を苦手とする精神科医が多いという旨が書かれている。
- ^ 厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム『過量服薬への取組-薬物治療のみに頼らない診療体制の構築に向けて』(pdf)(プレスリリース)2010年9月9日、7-8頁 。2013年3月15日閲覧。
- ^ 『抗精神病薬減量法ガイドラインを発表 -多剤大量処方から少しずつ最適な処方への工夫』(プレスリリース)独立行政法人国立精神・神経医療研究センター、2013年10月4日 。
- ^ a b SCAP group (2013年7月12日). SCAP 法による抗精神病薬減量支援シート (pdf) (Report). 国立精神・神経医療研究センター. 2013年10月4日閲覧。
- ^ 伊豫雅臣(監修)、中込和幸(監修) 編『過感受性精神病』星和書店、2013年5月。ISBN 978-4791108404。
- ^ 田辺英 著「60 抗精神病薬の離脱症状について教えてください。」、藤井康男(編集)、稲垣中(編集協力) 編『統合失調症の薬物療法100のQ&A』星和書店、2008年5月、194-195頁。ISBN 978-4791106677。
- ^ “抗精神病薬 減薬指針…多剤大量処方の改善急務”. 読売新聞. (2013年11月13日). オリジナルの2013年11月14日時点におけるアーカイブ。 2014年1月20日閲覧。
- ^ 姫井昭男『精神科の薬がわかる本』(1版)医学書院、2008年、113頁。ISBN 978-4-260-00763-4。
- ^ 笠陽一郎『精神科セカンドオピニオン―正しい診断と処方を求めて』シーニュ、2008年7月、204-206頁。ISBN 978-4-9903014-1-5。
- ^ 山田武史 著「12 抗コリン性抗パーキンソン薬について教えて下さい。抗コリン性パーキンソン病を併用することによるデメリットはどのようなものがあるでしょうか?本当に認知機能に影響するのでしょうか?」、藤井康男(編集)、稲垣中(編集協力) 編『統合失調症の薬物療法100のQ&A』星和書店、2008年5月、35-37頁。ISBN 978-4791106677。
- ^ David Healy Antipsychotics (rxisk.org, Update 2016) 2016年12月14日閲覧
- ^ 日本うつ病学会; 気分障害のガイドライン作成委員会『日本うつ病学会治療ガイドライン II.大うつ病性障害2012 Ver.1』(pdf)(レポート)(2012 Ver.1)日本うつ病学会、気分障害のガイドライン作成委員会、2012年7月26日、26頁 。2013年1月1日閲覧。
- ^ 厚生労働科学研究・障害者対策総合研究事業「睡眠薬の適正使用及び減量・中⽌のための診療ガイドラインに関する研究班」および日本睡眠学会・睡眠薬使用ガイドライン作成ワーキンググループ 編; 気分障害のガイドライン作成委員会『睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドラインー出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル』(pdf)(レポート)(2013年10月22日改訂版(医療従事者向けの記述が削除された版))日本うつ病学会、気分障害のガイドライン作成委員会、2013年6月25日初版、35頁 。2014年3月12日閲覧。
- ^ 中川敦夫ら『向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究(平成22年度総括・分担研究報告書厚生労働科学研究費補助金厚生労働科学特別研究事業)』(pdf)2011年3月、8頁 。
- ^ 世界保健機関 2009, p. 40-41.
- ^ 英国精神薬理学会; AR Lingford-Hughes, S Welch, L Peters and DJ Nutt (July 2012). “BAP updated guidelines: evidence-based guidelines for the pharmacological management of substance abuse, harmful use, addiction and comorbidity: recommendations from BAP” (pdf). Journal of Psychopharmacology 26 (7): 899–952. doi:10.1177/0269881112444324. PMID 22628390 .
- ^ 英国精神薬理学会; Nutt, David; Baldwin, David; Aitchison, Katherine (2013). “Benzodiazepines: Risks and benefits. A reconsideration” (pdf). J Psychopharmacol 27 (11): Epub 2013 Sep 24. doi:10.1177/0269881113503509. PMID 24067791 .
- ^ “Antidepressant discontinuation syndrome”. American Family Physician 74 (3): 449–56. (August 2006). PMID 16913164 .
- ^ グラクソ・スミスクライン『パキシル錠5mg, 10mg, 20mg 医薬品添付文書』(レポート)日本医薬情報センター、2013年11月 。2014年3月15日閲覧。
- ^ 『抗うつ薬「パキシル®錠5mg」、新発売~減量、投与中止する際の低含量製剤として』(プレスリリース)グラクソ・スミスクライン、2010年9月24日 。2014年3月15日閲覧。
- ^ Maizels M (December 2004). “The patient with daily headaches”. Am Fam Physician 70 (12): 2299–306. PMID 15617293.
- ^ a b Meeks, Ashley (2008年12月7日). “Mayor abandons anti-drug program affiliated with Church of Scientology”. Las Cruces Sun-News 2014年3月20日閲覧。
- ^ a b Robert W. Welkos; Joel Sappell (1990年6月27日). “Church Seeks Influence in Schools, Business, Science”. Los Angeles Times 2014年3月20日閲覧。
- ^ a b c LeFlore, Jeanne (2013年8月7日). “Narconon Arrowhead loses state certification”. McAlester News-Capitol 2014年3月20日閲覧。
- ^ a b c d Peters, Paul (2008年7月10日). “Scientology Nation”. Salt Lake City Weekly: pp. 20–22, 24 2014年3月20日閲覧。
- ^ a b c “Scientologist-run rehab centre ordered closed in Quebec”. CBC News (2012年4月17日). 2012年4月21日閲覧。
- ^ Dulaney, Josh (2012年5月16日). “Anti-drug Pamphlets Linked to Scientology Gone From Santa Ana Police Department”. Orange County Weekly 2014年3月20日閲覧。
品詞の分類
- >> 「離脱」を含む用語の索引
- 離脱のページへのリンク