限定詞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/11 05:09 UTC 版)
名詞や形容詞が性、数、格などに応じて変化する言語では、限定詞も同様に変化することが多い。例えばドイツ語の定冠詞には der/des/dem/den/die/das の6形があり、後に続く名詞の性・数・格によって変化する。これに対して英語の定冠詞は変化形を持たないことが特徴的である。
また限定詞は、強勢を持たない接語であることが多い。
多くの形容詞と異なり、限定詞は単独では用いられず、コピュラの補語となることもできない。英語、フランス語、ドイツ語などの西欧諸語の多くで、限定詞は形容詞など他の品詞と明確に区別される。
言語学では、限定詞こそがいわゆる名詞句の主要部であるという DP 仮説(DP hypothesis DP: Determiner Phrase、限定詞句)が提唱され[1]、現在では生成文法の主流となっている。
一般に、限定詞には以下の語が含まれる。以下、各節にて個別に解説する。
冠詞
冠詞は典型的な限定詞であり、談話機能として定と不定のどちらであるのかを、認知機能として可算名詞と不可算名詞のどちらであるのかを、示すものである。英語の the, a、フランス語の le, un、ドイツ語の der, ein などがそうである。
- the man, a woman (英語)
- l'homme, une femme (フランス語)
- der Mann, eine Frau (ドイツ語)
指示限定詞
指示限定詞は名詞を修飾する指示語であり、英語の this, that、フランス語の ce、ドイツ語の dieser, jener などがそうである。冠詞と同じく、指示限定詞は定を表す。性・数・格による変化のほとんどを失った英語にあっても、指示限定詞 this/these, that/those は数による変化を残している。
- those children (英語)
- ces enfants (フランス語)
- diese Kinder (ドイツ語)
所有限定詞
所有限定詞は所有を表す限定詞であり、英語の my, your、フランス語の mon, ton、ドイツ語の mein, dein などがそうである。冠詞と同じく、所有限定詞は定を表す。ドイツ語の文法用語では所有限定詞を不定冠詞類と呼ぶことがあるが、不定冠詞に似た格変化をすることに注目した呼び名であり、定性の上では定である。イタリア語で所有を表す mio などの語は、冠詞と共存できるので、形容詞と見なされる。
- my house (英語)
- ma maison (フランス語)
- mein Haus (ドイツ語)
疑問限定詞
疑問限定詞は疑問文で使われる限定詞であり、英語の which、フランス語の quel、ドイツ語の welcher などがそうである。日本語の「どの」、「どんな」に当たる。
- which book (英語)
- quel livre (フランス語)
- welches Buch (ドイツ語)
- ^ Abney, Steven Paul (1987), The English Noun Phrase in its Sentential Aspect, Cambridge, Massachusetts: MIT Press
- ^ Zweig, Eytan (2005), “Nouns and Adjectives in Numeral NPs”, Proceedings of NELS 33
- ^ Postal, Paul (1966), Dinneen, Francis P., ed., “On So-Called "Pronouns" in English”, Report of the Seventeenth Annual Round Table Meeting on Linguistics and Language Studies (Washington, D.C.: Georgetown University Press): 177-206
限定詞と同じ種類の言葉
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