鋼 製鋼法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/26 01:23 UTC 版)

製鋼法

鋼の生産は、先ず赤鉄鉱磁鉄鉱など採掘された酸化鉄である鉄鉱石高炉還元させて銑鉄を得る。縦長の高炉上部から、鉄鉱石・コークス石灰石を投入し、下部から熱ガスと空気を送り込んで800℃以上を維持するよう燃焼させる。これにより、コークスから発生する一酸化炭素が酸化鉄を還元させて銑鉄が得られる。この工程は高炉の耐久性限界まで連続して行うのが通例である[7]

高炉で得られた銑鉄に含まれる炭素など不純物を次の製鋼工程で取り除く。ここでは、ケイ素リン硫黄などを除去し、炭素の含有率が0.5 - 1.7%程度に調整される。この方法には転炉平炉がある[7]

転炉(転炉製鋼法)は1856年イギリスの発明家ヘンリー・ベッセマーが開発した。彼の名を取ってベッセマー法と名づけられた本技術によって初めて鉄鋼の大量生産が可能となった。このベッセマー転炉においては、珪石製の煉瓦を内部に張った炉に銑鉄を入れ加熱空気を送ると不純物や余分な炭素が燃焼(酸化)して除去できる。この方法によって20トンの製鉄を30分以下で行うことが可能となった。発明当初の技術ではリンの除去は不可能であったが、1887年にシドニー・ギルクリスト・トーマスが白雲石粉末を裏張りした転炉を用いる方法を開発し、このトーマス転炉においてリンをリン酸カルシウムの溶滓(ようさい)として分離させることが可能となった。この溶滓は肥料に転用された。現在では1946年にオーストリアで開発された空気の代わりに酸素を用いるLD転炉法が主流となっている[7]。また、1949年にはそれまで底から酸素を送り込んで不純物を除去していたものが、上から酸素を吹きつけるだけでも撹拌が起きて不純物が除去されることがわかり、上部から酸素を送り込む工法が主流となった。しかし上部からの酸素だけでは撹拌が弱くなるため、1970年代にはふたたび底吹きが主流となる。しかし今度は上部の温度が上がりにくくなるという欠点が現れ、結局1980年代以降は上部からの酸素供給を基本とし、底部から補助的に空気を送り込む混合式の吹込みが主流となった[8]

平炉は反射炉の一種で、1856年にシーメンス兄弟(カール・ウィルヘルム・シーメンスとフレデリック・シーメンス)によって炉の構造が発明され、マルタン父子(ピエール・ マルタンとエミール・マルタン)によって製鋼法が発明された[9]ことから、両者の名を取ってシーメンス・マルタン法と呼ばれる。鉄鉱石と屑鉄(スクラップ)を混合し加熱して不純物を酸化・除去し、適度の炭素を残す。熱源は電気アークである[7]。しかし平炉法は冷えた材料の加熱を行うため、初期のものは鋼の製造まで10時間を要した。1960年代には3時間まで時間が短縮されたものの、転炉はこの過程を30分で行えるため勝負にならず、日本では1960年代以降この方式での製鋼は行われていない[10]

このほかにスクラップを用いる電気炉生産方式(電気炉製鋼法)がある。日本での生産割合は、転炉製鋼法が約75%、電気炉製鋼法が約25%である。

日本古来の砂鉄からの製鋼法を「たたら吹き」と呼び、日本刀の原料となる玉鋼が製造される。日立金属が極少量の生産を続けているが、生産された玉鋼は指定された日本刀の刀工にのみ配布され、一般には流通しない。


  1. ^ 三省堂. “鋼鉄とは 大辞林 第三版の解説”. コトバンク. 朝日新聞社/VOYAGE GROUP. 2017年6月24日閲覧。
  2. ^ 田中 2015, p. 478.
  3. ^ ISO 4948-1:1982, Steels — Classification — Part 1: Classification of steels into unalloyed and alloy steels based on chemical composition. https://www.iso.org/standard/10963.html
  4. ^ 「文明の誕生」p128-129 小林登志子 中公新書 2015年6月25日発行
  5. ^ 『世界文明における技術の千年史 「生存の技術」との対話に向けて』p137 アーノルド・パーシー 林武監訳、東玲子訳、新評論、2001年6月。ISBN 978-4-7948-0522-5
  6. ^ 『世界文明における技術の千年史 「生存の技術」との対話に向けて』p138-139 アーノルド・パーシー 林武監訳、東玲子訳、新評論、2001年6月。ISBN 978-4-7948-0522-5
  7. ^ a b c d 大澤p.83-86 Ⅱ.金属の材料 3.鉄鋼 3.2.転炉と平炉
  8. ^ 新日鉄住金 2004, pp. 68–69.
  9. ^ 中沢護人、「平炉法の発明の経過」『生産研究』 1964年 16巻 9号, 東京大学生産技術研究所
  10. ^ 新日鉄住金 2004, pp. 67–68.
  11. ^ a b c 谷野・鈴木 2013, p. 117.
  12. ^ a b 高木 1997, p. 675.





鋼と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

「鋼」に関係したコラム

  • 株式の株価水準による分類

    株式市場に上場している銘柄を分類する方法の1つに、株価水準が挙げられます。株価水準では、株価の高い、安いによって銘柄を分類します。一般的に株価水準では、次のように分類します。値がさ株(値嵩株)中位株低...

  • 株式の投資基準とされるPBRとは

    株式の投資基準とされるPBR(Price Book-value Ratio)とは、時価総額が株主資本の何倍かを示す指標のことで、株価純資産倍率とも呼ばれています。PBRは、次の計算式で求めることができ...

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「鋼」の関連用語

鋼のお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング



鋼のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの鋼 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2020 Weblio RSS