鉄道建設・運輸施設整備支援機構
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沿革
2002年12月18日に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法(平成14年法律第180号、以下「法律」と表記)が公布され、JRTTの設立が決定した。
2003年10月1日、法律が施行されて独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が発足した。これに伴い、日本鉄道建設公団および運輸施設整備事業団がそれぞれ解散した。
前身の日本鉄道建設公団が進めていた鉄道建設工事はJRTT鉄道建設本部が引き継ぎ、横浜高速鉄道みなとみらい線、九州新幹線(新八代 - 鹿児島中央)などを完成させた。2005年には北海道新幹線、2006年には北陸新幹線(富山 - 金沢間)の建設工事が始まるなどJRTT設立後の新規の建設にも着手している。また、既存の事業以外にも、自治体などから、調査業務や建設業務を受託し、リニア中央新幹線工事などで、これまでの技術力やノウハウ、政府系機関としての公正性が生かされている。
JRTTの前身である運輸施設整備事業団が支援して開発が進められてきた高速船であるテクノスーパーライナーの1号船「SUPER LINER OGASAWARA」は、2004年11月13日に岡山県玉野市の三井造船玉野事業所で進水した。小笠原航路に就航予定とされていたが、燃料費の高騰で国や東京都が支援を断念したため、運行予定であった小笠原海運は船を引き受けなかった。その後、東日本大震災の支援船として一時利用される機会もあったが、保有してリースするために設立されたテクノ・シーウェイズは破産処理が行われ[3]、船自体も解体処分されることになった[4]。
2006年1月27日、JRTTが技術開発・建造を進めてきた電気推進船「スーパーエコシップ」 (SES) の第1船として、JR西日本の宮島連絡船(現在はJR西日本宮島フェリーによる運航)に投入される「みやじま丸」が竣工した。SESは、エンジンで発電機を回してその電力でモーターを回して推進する船で、窒素酸化物 (NOx)や二酸化炭素の排出を減らすと共に燃費を改善することができる。さらに従来型の船では巨大なエンジンを船の後部のほぼ決まった位置に搭載しなければならず設計上の制約が大きかったものが、自由なレイアウトを採用できるようになり船室スペースの増加や積載効率の改善にも寄与するといった特徴がある。「みやじま丸」を皮切りに貨物船などにも続々と採用されている。
国鉄清算事業本部(現在は本部制廃止)が進めてきた資産処分については、2004年3月12日にはJR西日本、2006年4月10日にはJR東海の全株式の売却がそれぞれ完了し、両社は完全民営会社となった[5]。2016年10月25日には、JR九州の全株式の一括売却が完了し、JRTTが株主となっているのは、JR北海道・JR四国・JR貨物の3社である。なお、日本国有鉄道が東京都と共同で出資者となっていた帝都高速度交通営団については、国鉄分割民営化の際に国鉄清算事業団が承継したが、財務省(旧・大蔵省)に引き継がれた。
2008年4月1日には、2012年度までの第2中期計画が始まった。整備新幹線の残りの区間の建設推進と共に、相模鉄道のJR東日本・東京急行電鉄(東急)への乗り入れを行う神奈川東部方面線、京成成田空港線の建設が計画に挙げられていた。
建設中の北海道新幹線新函館北斗・札幌間、北陸新幹線金沢・敦賀間、九州新幹線(西九州)武雄温泉・長崎間については、完成の事業年度は変更していないものの、それぞれ5年、3年、可能な限り、短縮を目指すこととされた。
2015年8月26日に新たな業務として、地域公共交通への出資・貸付業務が追加された。東京都中央区・江東区間のBRT事業などが、このスキームの利用を検討されている。
2016年11月に新たな業務として、中央新幹線の整備加速のための資金貸付業務が追加された。2016・2017年度に中央新幹線の建設主体である東海旅客鉄道に対して、3兆円の資金貸付が実行された。
2018年8月31日に新たな業務として、海外高速鉄道プロジェクトに関する業務が追加され、本来業務となった。
北陸新幹線金沢・敦賀間の建設について、2023年春の完成・開業予定から1年遅れる見込みになったことで、2020年(令和2年)12月22日、国土交通省から初の業務改善命令を受けた。これを受けて北村理事長は引責辞任することになった[6]。
2021年4月1日に日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律(国鉄債務処理法)が改正施行し、JR未上場会社への新たな支援として、デットエクイティスワップ(DES)や不用地買取りのほか、青函トンネルや本四連絡橋へのインフラ費用負担に関する業務が追加された。
年表
JRTTが建設した鉄道路線の開業については#鉄道建設業務を参照
- 2002年(平成14年)12月18日 - 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法公布
- 2003年(平成15年)
- 10月1日 - 法律が施行され、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構設立、日本鉄道建設公団、運輸施設整備事業団がそれぞれ解散
- 2004年(平成16年)
- 2006年(平成18年)
- 2008年(平成20年)
- 3月31日 - 国鉄清算事業本部制の廃止
- 2010年(平成22年)
- 2014年(平成26年)
- 4月5日 - 三陸鉄道南リアス線全線復興開業
- 4月6日 - 三陸鉄道北リアス線全線復興開業
- 6月4日 - スーパーエコシップ貨客船「橘丸」竣工 ~共有旅客船1000隻目~
- 2015年(平成27年)
- 3月20日 - スーパーエコシップ第25番船 旅客フェリー「第二桜島丸」竣工
- 2016年(平成28年)
- 2017年(平成29年)
- 3月31日 - 鉄道建設本部制の廃止・国鉄清算事業地方機関(西日本支社)の廃止
- 4月1日 - JR北海道、JR四国の経営安定基金の全額が自主的運用へ
- 2019年(令和元年)
- 11月30日 - 都市鉄道利便増進事業で初めての路線である神奈川東部方面線相鉄・JR直通線開業(西谷~羽沢横浜国大間)
- 2020年(令和2年)
- 12月22日 - 北陸新幹線金沢・敦賀間の開業遅れに関して、国土交通省から業務改善命令が出される[6]。
- 2021年(令和3年)
- 7月30日 - 鉄道・運輸機構改革プランの公表
- 2023年(令和5年)
- 6月1日 - 鉄道災害調査隊(RAIL-FORCE)の
創設
- 6月23日 - 災害対策基本法に基づく指定公共機関に指定
- 2024年(令和6年)
- 4月1日 - 鉄道技術センターの設置
注釈
出典
- ^ 「鉄道・運輸機構、理事長に元国交次官の藤田耕三氏」『日本経済新聞』、2023年3月24日。2023年4月15日閲覧。
- ^ 「鉄道機構理事長に藤田氏 元国土交通事務次官」『時事ドットコム』、2023年3月24日。2023年4月15日閲覧。
- ^ “小笠原航路の高速船計画を推進していたテクノ・シーウェイズが破産”. Response. 2014年6月17日閲覧。
- ^ “「テクノスーパーライナー」 三井造船、買い手なく解体へ”. SankeiBiz (2012年2月24日). 2012年3月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月17日閲覧。
- ^ 交通新聞2010年10月1日
- ^ a b “鉄道機構理事長が辞任表明 初の改善命令受け―北陸新幹線工事遅れ”. 時事通信 (2020年12月22日). 2020年12月26日閲覧。
- ^ 読売新聞2010年12月25日13S版13面
- ^ 東海旅客鉄道株式会社に対する「中央新幹線の建設に係る貸付金」の貸付契約について - 鉄道・運輸機構
- ^ a b c d 開業実績一覧 2022年9月30日現在 (PDF) - JRTT
- ^ “整備中の鉄軌道路線一覧”. 国土交通省. 2023年11月3日閲覧。
- ^ 横田茂 2012, pp. 019–020.
- ^ 大貫富夫 1987, p. 17186.
- ^ 特殊法人等の個別事業見直しの考え方(日本鉄道建設公団) - 行政改革推進本部
- ^ 開業実績一覧 2023年10月25日現在 (PDF) - JRTT
- ^ “鉄軌道開業一覧(平成5年度以降)”. 国土交通省. 2023年11月3日閲覧。
- ^ “地元業者延滞金 自民 魚住汎議員、減免迫る 独立法人や国交省に度々” (日本語). 讀賣新聞. (2007年3月20日)
- ^ “北陸新幹線談合で在宅起訴 機構幹部、「官製」罪で東京地検”. 千葉日報. (2014年3月4日) 2023年2月19日閲覧。
- ^ “北陸新幹線談合事件 各社の判決状況と経過 東洋~高砂の判決まで”. JCnet. (2014年11月14日) 2023年2月19日閲覧。
- ^ “鉄道・運輸機構は「剰余金1.4兆円返納を」”. 日経BP社 ケンプラッツ (2010年4月30日). 2010年5月15日閲覧。
- ^ 日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律等の一部を改正する法律案について 平成23年2月8日 国土交通省報道発表資料
- ^ 改正旧国鉄債務処理法が成立 日本経済新聞2011年6月8日
- ^ “独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の特例業務勘定における利益剰余金等の取扱いについて”. 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (2010年12月21日). 2017年3月14日閲覧。
固有名詞の分類
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