量子コンピュータ ハードウェア

量子コンピュータ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 09:39 UTC 版)

ハードウェア

ハードウェアは、数学的に等価な量子ゲートが物理的に核磁気共鳴量子光学量子ドット超伝導素子、レーザー冷却などによって構成出来るため、様々な実験的ハードウェアの実現法が研究されている。

核磁気共鳴・電子スピン共鳴

近年、核磁気共鳴(NMR)や電子スピン共鳴を用いた量子コンピュータの研究開発が行われている[17][39][40][41][42]

2001年、7量子ビット量子コンピュータによる素因数分解が実装された[17][39]。核磁気共鳴 (NMR) により、1998年に2量子ビット、1999年に3量子ビット、2000年に5量子ビット、2001年に7量子ビット[40]、2005年に8量子ビット[41]、2006年に12量子ビット[42]が実現した。1量子ビット増えるごとに並列度は2倍になる。

国内では大阪大学[43]や沖縄科学技術大学院大学[44]が主な研究拠点であり、核スピン・電子スピンを用いた量子情報処理の実験が行われている。

窒素空孔欠陥スピン・シリコン核スピン

国内では横浜国立大学[45]、京都大学[46]が主な研究拠点であり、窒素空孔欠陥を用いた量子メディア変換・量子情報処理の実験が行われている。また慶応義塾大学[47] では、シリコン中の核スピンを用いた量子情報処理実験が行われている。

量子ドット

国内では理化学研究所[48]、東京大学[49]が主な研究拠点であり、量子コンピュータの実現に向けた取り組みがなされている。

量子光学

特に光子を用いているものは光子コンピュータ光量子コンピュータとも呼ばれる。2001年、非線形光学を使わずに、量子コンピュータを作成する方法が考案された[50]。線形光量子コンピュータ (: linear optical quantum computer、LOQC) と呼ばれ、その後の光量子コンピュータの主流となる。

2007年、光子を使い、4量子ビット量子コンピュータによる素因数分解が実装された[18]。さらに、2009年、光集積回路(シリコンフォトニクス)上で、4量子ビット量子コンピュータによる素因数分解が実装された[19]

2017年9月、東京大学 工学系研究科の古澤明教授と武田俊太郎助教のグループは、大規模光量子コンピュータ実現法を発明と告知[51]

2020年に中国の九章が光子を用いたコンピュータでの量子実現性を世界で初めて実現して世界中で話題となった[52]

国内の主な研究拠点には東京大学[53]や東京理科大学[54]が挙げられる。

超伝導素子

超伝導素子を用いた量子コンピュータの量子ビットは、ジョセフソン・ジャンクションを用いた超伝導回路によって構成されている[55][56][57][58]。超伝導回路中の電荷(クーパー対)の自由度を用いた量子ビットを、電荷量子ビット、またはクーパー対箱と呼ぶ。1999年、日本電気において中村、Pashkin、蔡らにより実現された[55]。当時の量子ビットのコヒーレンス時間は約1ナノ秒であった。 超伝導量子ビットは回路量子電磁力学英語版の研究とともに発展し、2004年にはコプレーナ導波路により実装された超伝導共振器と電荷量子ビットとの強結合が観測されている[59]。共振器や導波路を組み合わせた回路量子電磁力学は、超伝導量子ビット間の相互作用や、量子非破壊測定を行うとても良いツールとなっている。

SQUIDを含み、磁束量子の重ね合わせ状態を用いた量子ビットを磁束量子ビット英語版と呼ぶ。2003年、デルフト工科大においてChiorescu、中村、Harmans、Mooijらにより実現された[56]。これらはDWAVE社が開発した量子焼きなまし法による最適化手法[20][21]に採用されている。

2007年に電荷量子ビットにおける電荷揺らぎ雑音を回避する量子ビットが提案され、トランズモン型量子ビット英語版と呼ばれる[60]。比較的シンプルな構成で長コヒーレンス時間が実現され、米国を中心に盛んに研究が進められている。 2011年、量子計算や量子誤り訂正に必須となる単一試行の量子非破壊測定英語版が実現し、トランズモン型超伝導量子ビットの量子跳躍が観測されている[61]。これらの技術の背景には、標準量子限界に近い雑音指数を達成する低雑音増幅器(ジョセフソンパラメトリック増幅器)の実現がある[62][63]。 2013年、上記の基礎技術とFPGAによる高速フィードバック処理により量子テレポーテーション[64]の実験が行われ、空間的に離れた量子ビット間の状態転送が実現した。 2014年には160マイクロ秒のコヒーレンス時間が実現し[65]、1999年の発見から15年の間に約10万倍という飛躍的な改善がなされている。 同年、Google社のJohn Martinis[66]らのグループは、誤り耐性符号の一つである表面符号英語版の誤りしきい値を下回る、高い忠実度の基本量子ゲートを実現した[67]。これにより誤り耐性量子計算が現実化し、超伝導量子ビットを用いた量子計算機の開発が一層加速することになる。2015年、9量子ビットによるビット反転エラー訂正英語版を実行し、論理量子ビットのエラー確率を物理量子ビットに比べ約1/8まで小さくすることに成功した[68]。同年には、新しい機能性材料の開発を飛躍的に加速する、フェルミ粒子のディジタル量子シミュレーションが、小さな系にて実装されている[69]。大規模化に向けた取り組みが始まり、2016年には三次元集積技術による実装が議論されている[70]

国内では東京大学[71]と理化学研究所[72]が量子コンピュータや量子情報処理の研究を、NTT物性科学基礎研究所[73]、情報通信研究機構[74]が量子物理の研究を行っており、主な研究拠点である。

海外ではGoogle[66]、IBM[75]、デルフト工科大学(インテル・マイクロソフトが支援)[76]、マサチューセッツ工科大学[77]、チューリッヒ工科大学[78]が主な研究拠点である。

イオントラップ

イオントラップを用いる量子コンピュータでは、レーザー冷却によってイオンの捕捉とマニピュレーションを行なう。 国内では阪大[79]にて量子シミュレータ・量子コンピュータに向けた研究がなされている。

その他


  1. ^ 一般的でない例としては、数は少ないが3状態の素子で動作するコンピュータや、多値論理の応用などとして研究されている。MLC NANDフラッシュのように実用例も一部にはある。
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