酒 原料

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/20 09:20 UTC 版)

原料

カベルネ・ソーヴィニヨン(ブドウの品種)

糖分、もしくは糖分に転化されうるデンプン分があるものは、酒の原料になりうる。脂肪タンパク質が多いもの(たとえば大豆などの豆類)は原料に向かない。

よく用いられる原料

果実類
ブドウリンゴサクランボヤシクリの実など
穀物類
トウモロコシなど
根菜類
ジャガイモサツマイモなど

その他の原料

天然の素材
サトウキビテンサイ樹液蜂蜜
加工品
  • 酒造の副産物として得られる酒粕やブドウの絞りかすなど

このほか、通常は飲料や食材として扱われていなくても、含有している糖分をアルコール発酵させれば酒は造れる。日本の森林総合研究所は、木材を細かく破砕してリグニンに保護されていたセルロースを露出させて酵素により糖に変え、樹種により味・香りが異なる酒を造る製法を開発した[11][12]

種類

製造方法による分類

酒は大きく分けて醸造酒蒸留酒混成酒に分かれる。醸造酒は単発酵酒と複発酵酒に分けられ、複発酵酒は単行複発酵酒と並行複発酵酒に分けられる。

  • 醸造酒:原料を発酵させた酒。蒸留や混成といった手順を踏まないもの(発酵後そのままとは限らない。飲みやすく調整するために水を加えるなど)。
    • 単発酵酒:原料中に糖類が含まれており、最初からアルコール発酵を行うもの。
    • 複発酵酒:アルコール発酵だけでなく、穀物のデンプンなどを糖化する過程を含むもの。
      • 単行複発酵酒:糖化の過程が終わってからアルコール発酵が行われるもの。ビールなど。
      • 並行複発酵酒:糖化とアルコール発酵が並行して行われるもの。清酒など。
  • 蒸留酒:醸造酒を蒸留し、アルコール分を高めた酒。
  • 混成酒:酒(蒸留酒が主に使われる)に他の原料を加え、香り・味・色などを整えた酒。

蒸留酒のうち、熟成を行わないものをホワイトスピリッツ、何年かの樽熟成で着色したものをブラウンスピリッツとする分類法がある。ただし、テキーララムアクアビットなどではホワイトスピリッツとブラウンスピリッツの両方の製品があり、分類としては本質的なものではない。

なお、全ての酒が上記いずれかに含まれるわけではない。例えばアイスボックビール[13] は、醸造後にアルコール分を高める手順があるため醸造酒とは言いがたいが、その手順が蒸留ではない(凍結濃縮)ため蒸留酒でもない。また、凍結濃縮を他の酒類に適用する研究も行われている[14]

原料による分類

原料によって酒の種類がある程度決まる。しかし、ジンウォッカ焼酎、ビール、マッコリものがあり、必ずしも原料によって酒の種類が決まるわけではない。また、原産地によって名称が制限される場合がある。たとえばテキーラは産地が限定されていて、他の地域で作ったものはテキーラと呼ぶことができずメスカルと呼ばれる。

醸造酒 蒸留酒 混成酒
果実 ブドウ ワイン ブランデー

ピスコ

ブドウ(絞りかす) グラッパ

マール

リンゴ シードル(アップル・ワイン) カルヴァドス

サボルチの林檎パーリンカ

ナシ ペリー(またはペルー)
レモン リモンチェッロ
プルーン ツイカ

スリヴォヴィッツ

バナナ バナナ・ビール
その他 猿酒
穀物 清酒

どぶろく

紹興酒

マッコリ

サト

焼酎

泡盛

ソジュ

みりん
米(酒粕 粕取焼酎
小麦 白ビール

ボザ

大麦 ビール モルトウイスキー

麦焼酎

トウモロコシ チチャ バーボン・ウイスキー
トウモロコシ

コーンスターチ

ビール

※副材料として

用いられる。

甲類および乙類焼酎
モロコシ 白酒
ソバ 蕎麦焼酎
ライムギ クワス
ヒエ トノト
テフ テラ
根菜類 サツマイモ 芋焼酎
ジャガイモ アクアビット
タピオカ 甲類焼酎 ※一部の商品
その他

植物

サトウキビ アグリラム

カシャッサ

黒糖焼酎

リュウゼツラン プルケ メスカル

テキーラ

ヤシ樹液 ヤシ酒
トマト トマト焼酎
その他 馬乳酒

クミス

アルヒ
蜂蜜 ミード

メドヴーハ

廃糖蜜 甲類焼酎

インダストリアルラム

酒類の分類に関連する法律

アルコール飲料は多くの国で課税対象であり、また年齢によって飲用が制限されることも多いため、法律によって酒の定義や区分を明確に定めている。 日本ではアルコール度数1度以上が酒類と定義され20歳未満の飲用は禁じられているが、これらの閾値は当然国・地域によって異なる。 また、フランスのAOC法のように文化財としての酒を保護するための法律もある。

度数

100g中の酒に含まれるアルコール重量[15]
種類 100g中のアルコール重量
日本酒(純米酒) 12.3g
日本酒(本醸造酒) 12.3g
日本酒(吟醸酒) 12.5g
日本酒(純米吟醸酒) 12.0g
ビール(淡色) 3.7g
ビール(黒) 4.2g
ビール(スタウト) 5.9g
発泡酒 4.2 g
ぶどう酒(白) 9.1g
ぶどう酒(赤) 9.3g
ぶどう酒(ロゼ) 8.5g
紹興酒(紹興酒) 14.1g
しょうちゅう(甲類) 29.0g
しょうちゅう(乙類) 20.5g
ウイスキー 33.4g
ブランデー 33.4g
ウオッカ 33.8g
ジン 40.0g

日本でのアルコール度数は、含まれるアルコールの容量パーセントで「度」と表す。正確には、温度15のとき、その中に含まれるエチルアルコールの容量をパーセントで表した値。販売されている酒の多くは、3度(ビール等)から50度前後(蒸留酒類)の範囲であるが、中には90度を超す商品もある。日本の酒税法では、1度未満の飲料は酒に含まれない。そのため一般的な甘酒はソフトドリンクに分類される。なお、日本酒には「日本酒度」という尺度があるが、これは日本酒の比重に基づくもので、アルコール度数とエキス分(酒類中の糖、有機酸アミノ酸など不揮発性成分の含有量)に依存する。

英語圏では、度数のほか、アルコールプルーフも使われる。USプルーフは度数の2倍、UKプルーフは度数の約1.75倍である。英語圏で degree° といえばプルーフのことなので、注意が必要である。

酒に含まれるアルコール分はほとんどの場合、酵母による糖のアルコール発酵によって作られる(テキーラは例外的にザイモモナスと呼ばれる細菌をアルコール発酵に使用している)。果実から作られる酒(ワイン)は、果実中に含まれる糖分から直接アルコール発酵が起こる。しかし、麦・米・芋などの穀物類から造る酒の場合、原材料の中の炭水化物はデンプンの形で存在しているため、先にこれを糖に分解(糖化)する。糖化のためにはアミラーゼ等の酵素が必要である。酵素の供給源として、西洋では主に麦芽が、東洋では主にが使われる。


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