進化 大進化

進化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/30 04:33 UTC 版)

大進化

種内で起こる形質の変化を小進化というのに対し、新しい種や、種より高次の分類群の起源や絶滅のプロセスを大進化という。このような区別がなされるのは、大進化を小進化の積み重ねで説明できるかどうかについて議論があるためである[92]。しかし一般的には、大進化も小進化の延長として理解できると考えられている[92]

種分化

1種が2種以上に分岐し、新しい種が形成されることを種分化という。種の定義は多数あるが、進化生物学においては「相互に交配可能な生物の集団」として定義されることが多い(生物学的種概念)。したがって種分化は、集団間に生殖隔離が生じることを意味する[93]

前述したセグロカモメの事例のほか、エシュショルツサンショウウオ[94]などで知られる輪状種の存在は、わずかな進化の累積が種分化を引き起こすことを示している[95]

一度に種分化が起こる事例も報告されている。たとえばカタツムリの殻の巻きは単一の遺伝子によって決定されているが、この遺伝子に突然変異が起こって右巻きになると、巻きの違う個体同士は交尾できないことが多いので、生殖隔離が成立する[96][97]。植物では、倍数体(全ゲノムが倍化した個体)が、もとの種と生殖できなくなることによる種分化がかなり頻繁に起こっていると考えられている[98]

断続平衡説

断続平衡説(下)と漸進的進化(上)の対比

地層中の化石の出現パターンを調べると、基本的な形態はあまり変化しないで安定な状態にあり、新しい形態をもつ化石は、ある地層に突然現れ、その後長い年月の間、形態はふたたび安定して、あまり変化しないという傾向がある(ただし、古生物学でいう「突然」とは数万年程度の時間を指す)。古生物学者のエルドリッジとグールドは、このような現象を断続平衡現象と呼んだ[99]。彼らは、進化は種分化のときにのみ急激に起こり、その他の期間は停滞すると主張した。

断続平衡説は種分化の重要な側面を捉えているという評価もある一方で[100]、批判も多い。たとえば断続平衡説は生物学的種概念に基づく種分化の理論を援用しているが、化石種は交配可能性ではなく形態に基づいて分類されているため、化石種と生物学的種は必ずしも一致しない[101]。実際に形態の変化を定量的に追跡できる事例についてみると、断続平衡的な進化を示す系統もあるが、一方で連続的に進化している系統もある[102]。また、断続平衡説は主流の進化理論に矛盾すると言われたこともあるが、実際には一般的な進化理論の範疇で理解できるものである[103][104][105]




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