速度計 航空機

速度計

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/13 09:35 UTC 版)

航空機

古くから現在に至るまで、対気速度計 (ASI, airspeed indicator) と呼ばれる航空計器が広く使われている。これはピトー管を利用して計測した全圧と静圧を、全圧から静圧を引いた動圧を測定することにより、対気速度を求めるもので、この時の計器の指示は、航空機の近くの気流の乱れや、速度・姿勢・フラップの位置などで変わる、全圧・静圧系統の誤差と速度計自体の誤差を含んだ指示対気速度 (IAS: indicated air speed) であり、IASから、その誤差を修正した CAS(calibrated air speed, 較正対気速度)、CASから空気の圧縮性の影響を排した値に直したEAS(equivallent air speed, 等価対気速度)、さらに高度や温度の変化により空気の密度が変化することで速度計の指示が変化する誤差を修正したTAS(true air speed, 真対気速度)、があり、一般的な対気速度計で表示されるのはIASである。に発生する揚力を考える際など、機体の操縦において問題となるのは対気速度であり、たとえば失速速度や超過禁止速度などは対気速度で指示され、単発機と多発機では速度計は異なる。また、真対気速度計もある。

また、対気速度計には、目盛板の周辺にカラー・マークが付いており、その航空機のいろいろな速度限界を、共通の色標識で表示することにより、飛行中での安全の確認が簡単に分かるようにしている。

色標識の意味は以下の4つあり

  • 赤色放射線:運用禁止限界
  • 緑色弧線:常用運用範囲(フラップを上げて格納した飛行状態での常用運用範囲)
  • 黄色弧線:警戒範囲
  • 白色弧線:フラップ操作範囲(フラップが操作できる速度範囲) 

高高度や音速付近やそれを超える高速で飛行する場合の航空機では、高高度では温度の低下により音速が低下し、対気速度が音速に接近すると、機体の一部が音速以上となって衝撃波が発生する危険があるため、飛行中において、音速に対してどの程度の速さを知るマッハ計を装備して対気速度計と別に持つか、あるいは、PFD (primary flight display) のような統合計器に集約されているか、または、対気速度計に高度により変化する音速に応じて、その航空機の最大運用限界速度を変えて指示する、赤白の斜縞に塗られた指針(Barber Pole)を装備した、最大運用限界速度計を装備している。また、飛行中でのエア・データ(気圧高度・対気速度・外気温度など)の計測が複雑になるため、計測した全圧と静圧や静圧の誤差を修正するセンサーからの電気信号をエア・データ・コンピュータに入力して計算された対気速度や最大運用限界速度を対気速度計に電気信号を送り出して指示している。

一方、航法(ナビゲーション)の際には地上に対する移動速度である対地速度 (GS, ground speed) が問題となる。周囲の空気自体が動いている場合、すなわち風が吹く中を飛行する際には、対気速度と対地速度とは異なる。特に、乱気流ジェット気流のような強い気流の中を飛ぶ場合には差が大きくなる。一般に長時間飛行すると対気速度で計算した距離と実際の飛行距離との誤差が大きくなる。この誤差を補正するために、古くからディレクショナル・ジャイロ(DG, 定針儀)による自立飛行技術が使われてきたが、近年では慣性航法装置が使用されたり、さらに現在ではグローバル・ポジショニング・システム (GPS) の一般化・低価格化により、ジャイロスコープよりもGPS速度計を搭載した航空機が多くなっている。

現在の多くの航空機はピトー管を利用した対気速度計と対地速度計との両方が搭載されているか、両者の機能を兼ね備える統合計器をもつ。


  1. ^ speed meterと記される場合もあるが、正しい英字表記はspeedometerである。
  2. ^ a b c d e f g 金田 ケイスケ. “なぜスピードメーターは実際より速い速度を表示? 車検で“速度の誤差”が許される訳とは”. くるまのニュース mediavague. 2022年8月10日閲覧。
  3. ^ 金田 ケイスケ. “なぜスピードメーターは実際より速い速度を表示? 車検で“速度の誤差”が許される訳とは”. くるまのニュース mediavague. p. 2. 2022年8月10日閲覧。
  4. ^ a b c d フランス車のスピードメーターはなぜ奇数表記なの?”. くるまのニュース mediavague. 2022年8月10日閲覧。
  5. ^ 道路運送車両法では、125cc以下の原動機付自転車以外の車両は自動車に含まれる。したがって、この法規制は一般にいう自動車だけではなく、125cc超の二輪自動車についても当てはまる。


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