輸血
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/18 02:58 UTC 版)
輸血用製剤の保存条件と有効期限
輸血用血液 | 保存条件 | 有効期間 |
---|---|---|
赤血球LR | 2 - 6℃ | 28日 |
洗浄赤血球LR | 48時間 | |
解凍赤血球LR | 4日 | |
合成血液LR | 48時間 | |
血小板濃厚液 | 20 - 24℃ | 4日 |
新鮮凍結血漿 | -20℃以下 | 製造から1年 |
アルブミン製剤 | 室温 | 製造から2年 |
凝固因子製剤 | 凍結せず10℃以下 |
通常の輸液と異なり、血液製剤は、急速に大量に血管内に注入する必要がある場合がある。また、特に濃厚赤血球は冷却して保存されるため、冷たいRBCを急速に輸血した場合の血管痛を低減するため、また、体温の低下を防ぐため、加温しながら輸血を行うことが現在でも一般的である。そのための専用の輸血ライン用ヒーターが存在する。
輸血用製剤の適正使用
輸血用製剤の添付文書では、「重大な基本的注意」の冒頭に「輸血は支持療法であり、根治治療ではない。」と特記されている。これは、輸血という治療が下記の副作用の危険性、献血者が自身を傷つけるという自己犠牲のもとに成り立っている治療であり、万やむを得ない場合にのみ行われるべきとする文言であり、実際に臨床現場では(献血者の減少もあり)そうされている。
術中での輸血では
- 循環血液量の15 - 20%の出血の場合
- 細胞外補液(乳酸リンゲル液)を出血量の2 - 3倍投与する。
- 20 - 50%
- 人工膠質液(HES、デキストランなど)を投与する。また、RBCもこの段階から輸血する。
- 50 - 100%
- 人工物では浸透圧などを維持できなくなるので等張アルブミンを投与する。
- 100%以上
- 凝固因子補充のためFFPを投与する。
- 150%以上
- 止血のためPCを投与する。
輸血過誤対策
輸血ミスは最悪の場合、患者の死をもたらすので重大な問題である。そのため各医療施設はいかにこれを防ぐかをマニュアル化している。
最も主な輸血ミスの原因は患者取り違えなので、一般的に「血液型検査用の検体」と「交差適合試験用の検体」は別々のタイミングで採血される。
これは一回の採血で得た血液を2本の容器に分注するとして、その採血を取り違えてしまうと異型輸血の危険性が高まるからであり、まず血液型が確定していれば、次に「交差適合試験用の検体」を違う患者から採血してしまっても、交差試験でエラーとなるので異型輸血は避けることができる、という考えに基づいている。実際、日本で起こった患者取り違えによる輸血ミスの多くは、これを理解できなかった医療従事者によって引き起こされている[要出典]。
- ^ http://voxsangman.seesaa.net/article/275860943.html
- ^ 『医学の歴史』ルチャーノ・ステルペローネ(著)小川煕(訳)原書房、(2009年)
- ^ Blood transfusion (Inventions)
- ^ 医学探偵の歴史事件簿 小長谷正明(著) 岩波新書 (2014年)ISBN 978-4004314745
- ^ 日本輸血学会25周年記念講演 『日本輸血学会雑誌』 1980年 26巻 1-3号 p.1-15, doi:10.3925/jjtc1958.26.1
- ^ 根本晋一「高度歯科医療に関する医療過誤訴訟の研究- -インプラント植立手術を素材として」(PDF)『日本大学歯学部紀要』第35号、日本大学歯学部、2007年、101-112頁、CRID 1520290882410127232、ISSN 1348818X。
- ^ 輸血について 日本輸血・細胞治療学会
- ^ 血液製剤 MSDマニュアル プロフェッショナル版
- ^ “2014年8月1日より「赤血球液-LR(RBC-LR)[日赤]」に商品名変更(旧称「赤血球濃厚液-LR(RCC-LR)[日赤]」)” (PDF). 日本赤十字社 (2014年7月). 2018年6月15日閲覧。
- ^ “生物学的製剤基準の改正に基づく添付文書等の改訂及び赤血球製剤の販売名変更について” (PDF). 日本赤十字社 (2013年12月). 2018年6月15日閲覧。
- ^ 麻田真由美, 菅野知恵美, 川本佳代 ほか、「洗浄血小板による輸血副作用の防止」 『日本輸血学会雑誌』 2002年 48巻 1号 p.32-36, doi:10.3925/jjtc1958.48.32
- ^ a b c “回収式自己血輸血の概要と実際”. 日本自己血輸血学会. 2017年12月29日閲覧。「I インフォームド・コンセント」(PDF)P.3
- ^ 水野樹、「術中回収式自己血輸血:産科手術」 『日本臨床麻酔学会誌』 2010年 30巻 7号 p.925-930, doi:10.2199/jjsca.30.925, P.925
- ^ a b c 国立国会図書館. “犬に血液型はあるか。”. レファレンス協同データベース. 2023年5月24日閲覧。
- ^ Hohenhaus, A. E. (1992年12月). “Canine blood transfusions”. Problems in Veterinary Medicine. pp. 612–624. 2023年5月24日閲覧。
- ^ Company, The Asahi Shimbun (2021年4月28日). “健康な猫から、病気の仲間への贈り物 「供血猫」登録は助け合いの輪を広げること”. sippo. 2023年5月24日閲覧。
- ^ “ペットを救うために働く「供血犬」に穏やかな暮らしを 八王子の英会話講師が引退後の飼い主を探す活動:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2023年5月24日閲覧。
- ^ a b “馬の輸血とユニバーサルドナー”. 馬の資料室(日高育成牧場). 2023年5月24日閲覧。
- ^ 重種馬の新たな価値~ユニバーサルドナー~ NLBC 家畜衛生通信 第23号 令和4年11月 著:十勝牧場 衛生課
- ^ “愛猫の血液型知っていますか? - 日本動物医療センター”. 日本動物医療センター - 24時間夜間救急も可 (2017年2月9日). 2023年5月24日閲覧。
- ^ “Wagging tails for Taiwan's first veterinary blood bank” (英語). Reuters (2016年7月8日). 2023年5月24日閲覧。
- 1 輸血とは
- 2 輸血の概要
- 3 輸血の歴史
- 4 輸血の供給源
- 5 輸血用製剤の保存条件と有効期限
- 6 輸血に関わる法律
- 7 輸血管理料
- 8 ヒト以外の動物における輸血
- 9 参考文献
輸血と同じ種類の言葉
品詞の分類
- >> 「輸血」を含む用語の索引
- 輸血のページへのリンク