車椅子 電動車いす

車椅子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/20 09:08 UTC 版)

電動車いす

電動式の車椅子
ジョイスティック

電気モーターによる走行が可能なもので、最初の動力付車いすは電動ではなく、1912年イギリスでエンジンを取り付けた三輪型が出現した。アメリカでは、サンフランシスコ万国博覧会(1915年開催)の入場者移動用に使われ(病人の移動手段だった模様)、1956年ごろ最初の量産モデルが作られた。日本国内での工業的な国産第一号は1968年の八重洲リハビリ(1960 - 70年代の日本のリハビリ機器最大手)によるものと言われているが、手作りなどにより各地で作られていた模様である(例:有限会社アローワン(後述)など)。1977年に電動車椅子JISが制定(手動型のJIS制定は1971年)されるとともに、各メーカーが製造販売に参入することになる。操作は主にジョイスティックで行い、手動型同様、左右の駆動輪の回転数の差による旋回する。前輪キャスターの進行方向を電気モーターによって直接操舵することで旋回できるパワーステアリング装備型もある。また、近年では中輪駆動方式が出てきて、旋回性能を向上させているものもある。この方式は、乗っている人の真下に駆動輪があるので、方向を変えたときに搭乗者を中心に向きを変えられるので、ごく自然に向きを変えることが出来る。

障害により手が自由に動かない場合でも 足でジョイスティック操作するためのオプションも用意されている。また、口や顎、額など、なにかしら可動部位が存在すれば複数のスイッチを組み合わせて操縦が可能である(ほかにも呼気などを吹き込んで操作するストローのようなスイッチもある)。

高速バスや、乗降方法が前乗り前降りの路線バスでは、折りたたむことができないため、利用できない場合が多い[15][16][17][18][19]

運転が不慣れな使用者による事故が発生しており、死亡事故も起こっている[20]

普通型

シート下に大容量のバッテリーと後輪付近に電気モーターを装備し、小径で幅の広いタイヤ・キャスターをもつ。
障害等級2級以上が審査対象となり[要出典]、形状やコントロール方法は障害に応じてカスタマイズを行うことが可能。
数年前までは液式バッテリーが主流だったが、現在はシールドバッテリーが標準である。液式バッテリーのタイプも受注生産できるが、完成まで数ヶ月を要する。
手動/電動切り替えの機構がついているため、バッテリー切れや微妙な幅寄せが必要なときは介助者により手動での操作が可能であるが、自重がかなりあるため操作には腕力も必要であり、登坂などは一人ではかなり大変である。パワーステアリング装備型を手押しで介助する場合、操舵用モーターが直進方向に固定され幅寄せができないため、押手の部分に介助者のための操舵用スイッチを装備している。
座面がティルトするタイプがある。長時間の座位が困難なユーザーの場合、座面を後ろに傾けることにより坐骨を除圧させることがでいる。一部の機種には座面を前へ傾けることができるので移乗のしやすくなる。
背もたれがリクライニングするタイプがある。長時間の座位によって股関節屈筋の拘縮を緩和させるため、背もたれをリクライニングさせることによりが股関節を伸展させることが可能となる。
座面が昇降するタイプもある。脚部を主に使って生活動作を行う必要のあるユーザーの場合、机の高さまで座面を上げ、執筆・食事などを行なったり、起立した他者との会話時に目線を同じ高さまで上げることにより、心理的にも対等に会話ができるため有効な機能である。床やベッドの高さまで座面を昇降することが可能な機種では、全く起立ができないユーザーでも自力での乗降が可能となり、自立と言う側面からも有用であるといえる。

簡易型(手動切替式)

手動型に、電動モーターユニットを取り付け、電動化したもの。
標準的な電動車いす(80kg程度)に対し、軽量(おおむね40kg以下)で折りたたみ機能もあり、自動車への積載に有利だが、モーターユニットとバッテリーが邪魔になり、通常の自走式よりは折りたたみ後の幅が大きい。バッテリーが小型軽量化されたのと引き換えに標準の電動車いすと比べ航続距離が半分以下となってしまっている。近年リチウムイオンバッテリーを使い、一回の充電で40km(カタログ値)走れるものもあるが、既存のものの倍以上の価格がネックになっている。
ベースとなるフレームが手動車いすのため、衝撃に対する強度は特別にはない。
手動-電動切り替え装置により、自操も可能である。
手動切替式A
コントロールボックス上のレバー(ジョイスティック)で操作するため、電動車いすと同じ操作感覚。モーターつきの主輪に丸ごと換装するタイプと、タイヤを強制的に(モータ軸に付いたローラーをタイヤのトレッド面に接触させて)回転させる外部ユニットを取り付けるタイプがある。
手動切替式B
アシスト型とも呼ばれる。ハンドリムをこぐときだけスイッチが入る仕組みになっており、少ない筋力で手動型と同じ操作で操作が可能となる。ただし、減速や旋回を行う場合はハンドリムを止めるような操作がいるので、握力がある程度必要である。

ハンドル型

高齢者向けに作られた、ハンドルを使って前輪を操舵する電動車いす。


注釈

  1. ^ ここでいう一般的なものとはJIS規格(規格番号JIS T 9201)で定められている「手動車いす」のことで、車いす型式分類における「自走用標準型車いす」や「介助用標準型車いす」などのこと
  2. ^ JIS規格(JIS T 9203)で定められているもの
  3. ^ JIS規格(JIS T 9208)では「ハンドル形電動車いす」と呼ばれる。

出典

  1. ^ History of Wheelchairs”. wheelchair-information.com. 2019年3月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月25日閲覧。
  2. ^ Who Invented the Wheelchair?”. mentalfloss.com. 2019年1月25日閲覧。
  3. ^ Joseph Flaherty (2012年5月24日). “Putting the 'Whee!' Back in 'Wheelchair'”. Wired. https://www.wired.com/design/2012/05/wheelchair/ 2019年1月25日閲覧。 
  4. ^ Maggie Koerth-Baker. “Who Invented the Wheelchair?”. Mental Floss Inc.. 2013年11月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月25日閲覧。
  5. ^ History of the Wheelchair”. thoughtco.com. 2019年1月25日閲覧。
  6. ^ a b 車いすのはじまりは? - つくばみらい市 社会福祉協議会
  7. ^ 車椅子の歴史 海外編 - 株式会社ジェー・シー・アイ
  8. ^ 日本生活支援工学会誌 Vol.9 No.2 意匠から見る手動車いすの発展、閲覧2017年8月3日
  9. ^ 車椅子の歴史 日本編 - 株式会社ジェー・シー・アイ
  10. ^ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第76条
  11. ^ 介護保険法施行令第4条
  12. ^ Butt, Muhammad Bilal (2020年1月22日). “Disabled Sports: Sports wheelchairs a hope for disabled sportsman”. Youth Press Pakistan. Youth Publishers (Which owns Pakistan Times). 2022年2月19日閲覧。
  13. ^ 【楽天市場】アルミ折りたたみ自走用車椅子 KA22-40
  14. ^ 公益財団法人テクノエイドHP、福祉用具の選び方使い方情報、移動機器、車いす、片手駆動式車いす、閲覧年月日、2016/12/26
  15. ^ 高速バスの利用 高齢者、身障者の対応. 日本バス協会. 2017年10月9日閲覧.
  16. ^ バリアフリーへの取り組み(車椅子利用者への対応). Bus-Channel. 2017年10月9日閲覧.
  17. ^ 千葉交通が謝罪 車椅子利用者のバス乗車拒否 千葉日報 2017年4月7日
  18. ^ 車椅子理由にバス乗車拒否 千葉県委員会に男性申し立て バス会社に配慮助言 成田 千葉日報 2017年4月6日
  19. ^ 車椅子乗車拒否 バス会社が謝罪 NHK千葉 NEWS WEB 2017年4月6日
  20. ^ “電動車いす、誤使用などで死亡事故多発”. TBS. (2013年9月12日). http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2012905.html 2013年9月12日閲覧。 
  21. ^ 金属探知機に反応しない竹製車椅子を開発 - 産業技術総合研究所、2010年12月21日
  22. ^ a b 道路交通法 第2条第1項第11号の3”. e-Gov法令検索. 2020年11月28日閲覧。
  23. ^ 道路交通法 2022年4月26日改正
  24. ^ 道路交通法 第2条第3項”. e-Gov法令検索. 2020年11月28日閲覧。
  25. ^ 道路交通法施行規則 第1条の4第1項”. e-Gov法令検索. 2020年11月28日閲覧。
  26. ^ https://www.taro.org/2018/12/電動車椅子と飲酒.php
  27. ^ 電動車いすの安全利用に関するマニュアルについて|警察庁Webサイト”. 警察庁. 2023年10月28日閲覧。






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