賭博 賭博の概要

賭博

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/17 14:30 UTC 版)

パリの路上賭博
ラスベガスのカジノでのルーレットラスベガス米国)。
ポーカーのゲーム。
競馬で金を賭ける人々(Harper's Weekly 1870年10月号掲載)

英語ではgamblingと呼ぶのが普通であるが、カタカナでは「ギャンブル」と表記されることが多い。gambleは娯楽としての賭博も含む広い考え方であり、危険性の高い冒険や意味のある危険、潜在性のある利益に手を付けること等という意味がある。

概説

賭博とは、金銭品物などを賭けて勝負を争う遊戯のことである[1]。金銭や品物などの財物を賭けて、(偶然性の要素が含まれる)勝負を行い、その勝負の結果によって、負けた方は賭けた財物を失い、勝った方は(なんらかの取り決めに基づいて)財物を得る、と言う仕組みの遊戯(ゲーム)の総称である。

日常的に賭博を行う者や、賭博を特に好む者は「賭博師」や「ギャンブラー」、「博打打ち」などと呼ばれている。賭け事の遊戯(ゲーム)を主催している者を胴元と言う。

賭博の大前提は、あらかじめ取り決め周知されている厳密なルールに従って勝負を行い、偶然もたらされた結果に従うことである[2]。胴元(主催者)側が、自分に有利になるように、様々な詐術を用いて表向きのゲームとは違うことが起きるように細工をして行う賭博を、いかさま賭博と言う。いかさま賭博は厳密には賭博ではなく詐欺に当たる[3]。よくある手法は、参加者に分からないようなかたちで、なんらかのトリック(技術や道具)を用い、相手を錯誤させ、表向きの確率期待値(見掛けの確率や期待値)とは違うように、実際の確率及び期待値を改竄して行うことである。いかさま賭博を行う者を「いかさま師」や「ゴト師」などと言う。

商業賭博の配当を決定する方式としては、あらかじめブックメーカーが倍率を決定しているブックメーカー方式や、興業主が全賭け金から一定割合を差し引き、残りの全額を勝ち投票券に分配するパリミュチュエル方式[4]ガラ馬券などに代表されるロッタリー方式などがある。日本の公営競技はパリミュチュエル方式を採用している。

大分類

賭博とは、賭事(とじ)と博戯(ばくぎ)の二つを合わせた言葉である[5]

賭事と博戯の違いは、賭ける側の人間が、賭ける対象となる勝負事の結果に当事者として関与できるか否かである[5]

  • 賭事(とじ) - 勝負事の結果に参加者が関与できないもの
  • 博戯 - 勝負事の結果に参加者が関与できるもの

公営競技、「野球賭博」「ルーレット」「バカラ」などは賭事であり、「賭け麻雀」「賭けゴルフ」「賭けポーカー」などは博戯である。「クラップス」のように、一つのゲームで賭事と博戯が混在[注釈 1]する場合もある。

富くじ」の場合、数字が選べないタイプは購入者が結果を予測することも出来なく、結果にも関与できないため賭事である。数字選択式では、公営競技と同様に結果を予測することは可能であるが同様に結果にも関与できないため賭事である。全ての日本の「宝くじ」として売られているものについては締め切り後には追加購入を含めくじの当選に関わる関与は一切出来ない。

チェス将棋囲碁といった偶然の要素が無い二人零和有限確定完全情報ゲームの勝敗を予測することは賭事であるが、プレイヤー同士が自身の勝利に金銭をかけた場合は博戯となる。自身がプレイヤーとなるギャンブラーは真剣師とも呼ばれる。

先秦時代の中国では囲碁と共に六博(博)というすごろくに類似したボードゲームが流行しており、博をプレイする(打つ)ことから「博打」と言う言葉が生まれた[6]。よって「博打を打つ」「博打打ち」という言葉は本来二重表現であるが、「博打」が「賭博」の同義語として扱われるようになると、二重表現とはみなされなくなった。

さまざまな金融商品相場にも、その賭博性が提起されることがある。金融商品の中でも、保険は娯楽としてのギャンブルと全く同様の技術で実現されている。保険の歴史は賭博から生まれた物であり、事故に遭遇するというギャンブルに金銭を賭けるもの、とされているからである(賭博の用語ではオッズと呼ばれる物は保険用語では「等級」と呼ばれる。医療保険においては病気のリスクの少ない若年層のオッズは高いが、年配者の場合はオッズは低く、逆に自動車保険においては事故率の高い若年層の方がオッズは低くなる。保険商品では「配当金」は固定のためオッズが低い、すなわち保険給付事由が発生する可能性が高いほど保険料は高くなり、その可能性が非常に高いと判断される場合は保険の契約自体ができない)。

先物取引オプション取引外国為替相場株式の購入など、通常であれば商品取引(相場)あるいは株式などのように、投資の範疇に含まれる行為のうち、手持ちの現金以上の金額を投じることのできる信用取引や、投機と呼ばれるハイリスク・ハイリターンな取引[注釈 2]を、広い意味でのギャンブルに含むこともある。なお、日本では特定の株の上がり下がりを賭ける合百という直接的な賭博も行われていた[7]

世界的には歴史上、手品のはじまりといわれるCup and balls(カップアンドボール)が賭け事の対象としてヨーロッパ中東地中海地方、遠くは中国まで広がったが、行う者が手品師と同義であることから、いわゆる「いかさま賭博」とも言える。


注釈

  1. ^ サイコロを投げてその目の出方に掛ける競技であるが、サイコロを投げる役であるシューターがプレイヤーに回り、シューターも他の役と同様に掛けることが出来るため、賭事と博戯が混在している。
  2. ^ 投資商品の中でも、当たれば巨額の利益が得られるが、相場の値下がりなどによる投資額の損失リスクが高いもの。
  3. ^ この場合の引換券は「ゲームカード」と言われ、当てれば粗品がもらえるカードの意。

出典

  1. ^ a b 広辞苑第六版「賭博」
  2. ^ 「賭博1」(ものと人間の文化史40-1)p64-66 増川宏一 法政大学出版局 1980年6月20日初版第1刷
  3. ^ 「賭博1」(ものと人間の文化史40-1)p45 増川宏一 法政大学出版局 1980年6月20日初版第1刷
  4. ^ 「カジノ産業の本質 社会経済的コストと可能性の分析」p94 ダグラス・M・ウォーカー 佐々木一彰・仁木一彦監訳 山田美明・田畑あや子・岡本由香子訳 日経BP社 2015年6月15日第1版第1刷発行
  5. ^ a b 大谷實『新版刑法講義各論[追補版]』(成文堂、2002年)533頁
  6. ^ 呉智英『言葉につける薬』(双葉社1994年 ISBN 4-575-28339-8 )93頁「ばくち打ちは二度ばくちを打つ」より
  7. ^ 「合百賭博に手入れ 女もまじえた一味二十二名検挙」『日本経済新聞』昭和24年6月23日2面
  8. ^ 「ニワトリの動物学」(アニマルサイエンス5)p20 岡本新 東京大学出版会 2001年11月6日初版
  9. ^ 「スポーツの世界地図」p104-105 Alan Tomlinson著 阿部生雄・寺島善一・森川貞夫監訳 丸善出版 平成24年5月30日
  10. ^ a b c 「宝くじ問題検討会報告書 平成22年11月 宝くじ問題検討会」 (PDF) 日本国総務省 2020年2月19日閲覧
  11. ^ 「宝くじの文化史 ギャンブルが変えた世界史」p16-17 ゲイリー・ヒックス著 高橋知子訳 原書房 2011年11月10日第1刷
  12. ^ 「アジア各地に外国人専用カジノ、恩恵と損失の狭間で政府苦肉の策」 AFPBB 2013年1月29日 2020年2月18日閲覧
  13. ^ 武宏, 慎. “高級クラブ嬢から借金、税金滞納、闇カジノでバカラ賭博、そして…イチローとWBC決勝で名勝負を演じた林昌勇(46)の転落人生”. 文春オンライン. 2023年2月22日閲覧。
  14. ^ 「公営競技の文化経済学」(文化経済学ライブラリー1)p12-13 佐々木晃彦 芙蓉書房出版 1999年3月31日第1刷
  15. ^ 「賭博3」(ものと人間の文化史40-3)p337-338 増川宏一 法政大学出版局 1983年10月5日初版第1刷発行
  16. ^ 「宝くじ問題検討会報告書 平成22年11月 宝くじ問題検討会」 (PDF) 日本国総務省 2020年2月18日閲覧
  17. ^ 「公営競技の文化経済学」(文化経済学ライブラリー1)p21 佐々木晃彦 芙蓉書房出版 1999年3月31日第1刷
  18. ^ 「公営競技の文化経済学」(文化経済学ライブラリー1)p28 佐々木晃彦 芙蓉書房出版 1999年3月31日第1刷
  19. ^ 「公営競技の文化経済学」(文化経済学ライブラリー1)p34 佐々木晃彦 芙蓉書房出版 1999年3月31日第1刷
  20. ^ a b c 「スポーツの世界地図」p104 Alan Tomlinson著 阿部生雄・寺島善一・森川貞夫監訳 丸善出版 平成24年5月30日
  21. ^ a b c 「米、全州でスポーツ賭博解禁へ 最高裁が判断」 AFPBB 2018年5月15日 2020年2月18日閲覧
  22. ^ 「本物のカジノへ行こう!」p88-89 松井政就 文藝春秋 2016年3月20日第1刷
  23. ^ 「本物のカジノへ行こう!」p92-94 松井政就 文藝春秋 2016年3月20日第1刷
  24. ^ 「宝くじ・公営競技・サッカーくじの実効還元率 資料3」 (PDF) 日本国総務省 2020年2月18日閲覧
  25. ^ 「宝くじの文化史 ギャンブルが変えた世界史」p13-14 ゲイリー・ヒックス著 高橋知子訳 原書房 2011年11月10日第1刷
  26. ^ a b 「カジノ産業の本質 社会経済的コストと可能性の分析」p20 ダグラス・M・ウォーカー 佐々木一彰・仁木一彦監訳 山田美明・田畑あや子・岡本由香子訳 日経BP社 2015年6月15日第1版第1刷発行
  27. ^ 「【IR法成立】「観光立国の実現の第一歩」高まる経済効果への期待」 産経新聞 2016年12月15日 2019年12月22日閲覧
  28. ^ a b 「本物のカジノへ行こう!」p90 松井政就 文藝春秋 2016年3月20日第1刷
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  30. ^ 「本物のカジノへ行こう!」p84 松井政就 文藝春秋 2016年3月20日第1刷
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  32. ^ 「本物のカジノへ行こう!」p20 松井政就 文藝春秋 2016年3月20日第1刷
  33. ^ a b 「韓国カジノ産業の動向」p62 柳匡勳 (観光文化224号 January 2015) (PDF) 公益財団法人日本交通公社 2020年2月18日閲覧
  34. ^ スロット禁止「思わぬ効果」 コロナ感染防止、依存症が緩和―オーストラリア”. 時事通信社 (2020年4月28日). 2020年4月29日閲覧。
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  36. ^ 「本物のカジノへ行こう!」p53 松井政就 文藝春秋 2016年3月20日第1刷
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  40. ^ WHO『ICD-10 精神および行動の障害-臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』221-222頁「F63 習慣および衝動の障害」 監訳・融道男・中根允文・小見山実・岡崎祐士・大久保善朗。、医学書院、2005年11月15日。ISBN 978-4260001335 
  41. ^ a b c d ジョナサン・ウルフ 『「正しい政策」がないならどうすべきか:政策のための哲学』 大澤津・原田健二郎訳 勁草書房 2017年 第2刷 ISBN 9784326154401 pp.56-60.
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  43. ^ a b c d e f 『イスラーム世界がよくわかるQ&A100』/第6章 Q82:カフェでトランプをしているようですが、お金を賭けているのでしょうか。 - AA研
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