責任 概説

責任

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 23:45 UTC 版)

概説

近・現代に用いられている責任(英:responsibility、フランス語:responsabilité)という用語・概念は、元をたどればラテン語のrespondereレスポンデレ(答える、返答・応答する、英語ならばrespond)に由来しており、-ityの形では、何かに対して応答すること、応答できる状態、を意味している。respondereという語自体は古代ローマ時代には、法廷において自分の行為について説明したり弁明したりすることを意味していた。

責任とは、社会的に見て自由があることに伴って発生する概念である。自由な行為・選択があることに伴い、それに応じた責任が発生する。

ある行為・結果に対してある人(例えばAさん)には責任がある、とされているということは、ある行為がAさん本人にとって選択の余地がある(つまり哲学的な用語で言えば自由意志に基づいて行うものである)と判断されていることを意味する。責任と自由は常に同時に存在し、切り離すことは出来ない。自由の無いところに責任は存在せず、責任の無いところに自由は存在しない、とされる。

責任の概念は、他のことを意志できること、少なくとも意志したとおりの行為を為すことができるという意味での自由意志の概念を前提としている。そのため、責任という概念は、伝統的に自由意志の概念とも結び付けられてきた。

責任にまつわる近・現代的な観点からは、心に重きを置く考え方と、ある人の行為に重きを置く考え方とがある。

現代の社会において、ひとりひとりの人間は、何らかの自由を行使し行為を選択する際には、その自由に応じた責任があると認識・自覚する必要がある。ただし、その自由に応じた責任以外まで認める必要はない、ともされるので、どこまでが自由であったか、どこまでが選びえた行為か、どこまでが強制された行為か、ということはしばしば曖昧で、争いの原因となることがある。

また、責任という概念は、何らかの行為を行ったことだけについて適用されるのではなくて、行われるべきだったのに行われなかったことに対しても適用される。

また一般には、責任は原因とは区別される概念である。BがAの原因ということだけからは、BがAの責任を担うべきことが結論されることはない。

自分の仕事や行為についての責任を果たそうとする気持ちを「責任感」と言う[1]。責任感がないことや、責任を自覚しないことを「無責任」と言う[2]。責任を果たそうとしない状態が集団的・組織的に作り出されていることを「無責任体制」などと言う。

自分が負うべき責めを他の者に負わせることや、責任を他になすりつけることを「責任転嫁(せきにんてんか)」と言う[3]。なお、一般に日本語では、他者から期待されている反応・行動をその期待どおりに実行することを「責任を果たす」と言い、反対に期待されている反応・行動を実行しないことで結果として事後的に罰を受けたり、指揮権や地位などを手放すことを「責任をとる」と言う。誰かが「責任をとった」と表現される状態は、基本的に、「本来なら果たすべき責任を果たさなかった」ということを意味している[注釈 1]


注釈

  1. ^ 例えば、遠足で生徒の引率者(引率の責任がある者)が生徒たちを適切に引率し、遠足の目的を果たし、かつ無事に生徒らを家に帰宅させれば「責任を果たした」ということになる。反対に、たとえば途中で事故などに巻き込まれそうな事態になったのに、事故を回避するための反応・行動をとらなかった場合は「(引率者は)責任を果たさなかった」と表現される。また、その結果、引率者が解雇されたり、賠償したりする状態などに陥った場合に「責任を取った」と言う。

出典

  1. ^ 大辞泉「責任感」
  2. ^ 大辞泉「無責任」。(なお、責任が無いことも「無責任」と言う。(出典:大辞泉「無責任」)
  3. ^ 大辞泉「責任転嫁」
  4. ^ 進退については「知事としての責任は果たさなければならない」と述べるにとどめた
  5. ^ 大林検事総長は検察があるべき姿を取り戻すことが私の責任」と述べ、現段階での辞任を否定した
  6. ^ 運動会の選手宣誓のポーズ、「ナチスを想起させる」? ドイツ出身タレントの指摘で議論広がる (2017年6月21日)” (日本語). エキサイトニュース. 2020年11月3日閲覧。
  7. ^ 欅坂46「ナチス風衣装」の世界的炎上、いったい何が問題なのか?(辻田 真佐憲) @gendai_biz”. 現代ビジネス. 2020年11月3日閲覧。
  8. ^ 藤田宙靖「自己責任」の社会と行政法
  9. ^ 「自己責任論」をあおると、じつは「経済成長」が難しくなるって知ってましたか?(現代ビジネス)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2021年4月5日閲覧。
  10. ^ 防災対策まで自己責任論に傾く日本人の言行不一致 東日本大震災10年に思う、防災は自己責任ではなく国の義務 | JBpress(Japan Business Press)” (日本語). JBpress(日本ビジネスプレス). 2021年4月5日閲覧。
  11. ^ 「週刊文春デジタル」編集部. “「僕も通り魔を計画したことがある」なぜ“普通の子”はモンスターに育ってしまったのか?”. 文春オンライン. 2022年2月17日閲覧。
  12. ^ 「差別は許さないが、優生思想は見逃す」リベラル社会の矛盾(御田寺 圭) @gendai_biz” (日本語). 現代ビジネス. 2022年4月29日閲覧。
  13. ^ "「責務責任」とは、人がある立場・ 地位・役割を占めることによって発生する何らかの責務を意味する概念である" 蓮生. (2010). アカウンタビリティーの意味 : アカウンタビリティーの概念の基本的構造. 国際公共政策研究. 14(2) pp.1-15.
  14. ^ "事前責任とは、「予防基底的責任(prevention-based responsibility)」とも呼ばれ、何かが起こったときに責任を負うのは誰かを事前に指示する概念であり、事前責任を負う者は、未然に防ぐために予防措置をとることが期待されている。" 蓮生. (2010). アカウンタビリティーの意味 : アカウンタビリティーの概念の基本的構造. 国際公共政策研究. 14(2) pp.1-15.
  15. ^ "2次系列の責任概念に関して … liability(負担責任)の概念を採用している。" 蓮生. (2011). アカウンタビリティーと責任の概念の関係 : 責任概念の生成工場としてのアカウンタビリティーの概念. 国際公共政策研究. 15(2) pp.1-17.
  16. ^ "責任概念を大別して4つに分類 … 負担責任(liability-responsibility)" 蓮生. (2010). アカウンタビリティーの意味 : アカウンタビリティーの概念の基本的構造. 国際公共政策研究. 14(2) pp.1-15.
  17. ^ "法的責任や道徳的責任を指し、刑罰を科さられる、損害賠償をすること、道徳的非難を受けることなどを意味する。" 蓮生. (2010). アカウンタビリティーの意味 : アカウンタビリティーの概念の基本的構造. 国際公共政策研究. 14(2) pp.1-15.
  18. ^ "「事後責任(post-event responsibility)」 にそれぞれ対応させる見解がある … 事後責任は、「応答基底的責任(response-based responsibility)」とも呼ばれ、何かの出来事の後に観念される概念" 蓮生. (2010). アカウンタビリティーの意味 : アカウンタビリティーの概念の基本的構造. 国際公共政策研究. 14(2) pp.1-15.
  19. ^ "事後責任たる負担責任の執行の度合いを直接的に高めるだけでなく、フィードバック効果により事前責任である責務責任の執行の度合いも高めている" 蓮生. (2011). アカウンタビリティーと責任の概念の関係 : 責任概念の生成工場としてのアカウンタビリティーの概念. 国際公共政策研究. 15(2) pp.1-17.
  20. ^ "負担責任同様に転嫁可能性を持つ" 蓮生. (2010). アカウンタビリティーの意味 : アカウンタビリティーの概念の基本的構造. 国際公共政策研究. 14(2) pp.1-15.






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