責任能力
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刑事訴訟法上の心神喪失
刑事訴訟法上も心神喪失概念があり、被告人が心神喪失になった場合は公判が停止される(刑事訴訟法314条本文)。被告人の心神喪失が恒久的なもので回復の見込みがない場合は、公判を打ち切ることもできる(最決平成7年2月28日刑集49巻2号481頁、千種秀夫裁判官補足意見)。一方、判決が無罪、免訴、刑の免除あるいは公訴棄却であることが明らかな場合にはその判決を直ちに下すことが出来る(刑事訴訟法314条但書)。
なお、ここにおける心神喪失は被告人としての重要な利害を弁別し、それに従って相当な防御をすることのできる能力を欠く状態をさすものであり(前記最決平成7年2月28日)、その意味内容は刑法上の心神喪失と必ずしも同一ではない。会話・文字・点字・手話等のコミュニケーション能力を一切もたない者は、刑法上心神喪失となるわけではないが、刑事訴訟法上は心神喪失となることがある。
民法上の責任能力
民法における責任能力とは、すなわち不法行為に関する責任を負う能力であり、その行為の責任を弁識するに足るべき知能を備えていることが要求される(民法712条)。責任能力を持たないものに対しては不法行為責任が認められず、損害賠償を請求することができない。
その場合には、これら責任無能力者の監督義務者等が原則として責任を負うことになっている(民法714条1項本文・2項)。
ただし、監督義務者等が監督義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、責任を負わない(民法714条1項但書・2項)。監督義務の範囲が不明確とされていたが、2015年4月、最高裁判所は危険を予想できたなどの特別な事情がない限りは、監督義務を尽くしていなかったとは言えないと初めて判断した[7]。
なお、18歳未満の不法行為者に責任能力がある場合には、その者に不法行為責任が認められるが、その者が無資力である場合には事実上損害を賠償してもらうことが困難になるという問題を生じる。判例は民法714条の規定は不法行為者に責任能力が認められる場合において監督義務者につき民法709条の一般不法行為が併存的に成立することを妨げる趣旨ではないと解しており、監督義務者の監督義務違反と未成年者など不法行為者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められる場合には監督義務者は民法709条の一般不法行為責任を負うものとしている(最判昭和49年3月22日民集28巻2号347頁)。
18歳未満の責任能力
不法行為における18歳未満の責任能力には、刑事事件における刑法第41条のような画一的基準は存在しない。従って、各事例において行為の種類および当該少年の成育度などを考慮して判断されることになる。11歳以上(小学校5年生)を基準として責任能力が判断されると言われている。
心神喪失者の責任能力
民法713条は、精神上の障害によって行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある者について、その状態にあるときに行った不法行為の損害賠償責任を負わない旨を定めている。ただし、故意または過失によって一時的に心神喪失状態に陥った者は不法行為責任を免れないとしている。
脚注
注釈
出典
- ^ 八木剛平、田辺英『日本精神病治療史』金原出版 2002年(平成14年)ISBN 4-307-15056-2
- ^ 芹沢一也『狂気と犯罪 なぜ日本は世界一の精神病大国になったのか』講談社α新書 2005年(平成17年)ISBN 4-06-272298-4
- ^ 最高裁判所第三小法廷決定 昭和43年2月27日(『刑集』第22巻2号67頁)
- ^ a b c d e f g 開示されない心神喪失者の事件情報 遺族「なぜ」晴れぬ苦悩 年間400人程度が不起訴『毎日新聞』夕刊2022年6月14日1面(2022年6月25日閲覧)
- ^ 医療観察法病棟 国立病院機構久里浜医療センター(2022年6月25日閲覧)
- ^ a b c d e 「心神喪失で不起訴」の現状訴え/被害者の会 千代田でシンポ/意見言えず 情報も限定「制度、時代遅れ」『朝日新聞』朝刊2022年6月17日(東京面)2022年6月29日閲覧
- ^ “子供の蹴ったボールで事故、親の責任認めず 最高裁”. 日本経済新聞. (2015年4月9日) 2015年4月10日閲覧。
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