貨車
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日本国有鉄道(JR)における車種、記号一覧
車種の詳細は各項目を参照のこと。鉄道省が1928年10月に施行した車両称号規程によるものが基礎で、それに数次の改正が加えられている。×は2009年時点で現存しない、または保存車両のみが現存するもので、うち()付としたものはJR継承後に消滅したもの。△は私鉄のみに残るもの。
車掌室を有し、手ブレーキまたは車掌弁がある車両は「緩急車」(かんきゅうしゃ)という名を追加し、荷重表示記号の後に車両記号「フ」(ブレーキのフ)が付く。(例 有蓋緩急車:ワフ35000形、冷蔵緩急車:レムフ10000形、コンテナ緩急車:コキフ50000形等)
有蓋貨車
- 鉄製有蓋車(てつせいゆうがいしゃ)△(記号:テ)
- 内装を省略し、全体を鉄で作った有蓋車。袋詰めセメントなど発熱性、可燃性の高い物体の輸送に使われた。
記号は鉄のテ。
- 内装を省略し、全体を鉄で作った有蓋車。袋詰めセメントなど発熱性、可燃性の高い物体の輸送に使われた。
- 鉄側有蓋車(てつがわゆうがいしゃ・てつそくゆうがいしゃ)△(記号:ス)
- 内装を省略した有蓋車。鉄製有蓋車とは屋根が木製である点が異なる。元々木造車体が一般的だった頃に雨漏り防止のため木板部分を鉄板に置き換えた所、熱伝導率の違いで室内の温度変化が激しいという問題が発生し、積載貨物が限られるため一般有蓋車と区別するために制定。
記号はスチール(Steel:鉄鋼)のス。
- 内装を省略した有蓋車。鉄製有蓋車とは屋根が木製である点が異なる。元々木造車体が一般的だった頃に雨漏り防止のため木板部分を鉄板に置き換えた所、熱伝導率の違いで室内の温度変化が激しいという問題が発生し、積載貨物が限られるため一般有蓋車と区別するために制定。
- 冷蔵車(れいぞうしゃ)×(記号:レ)
- 屋根や壁面の断熱を強化し、密閉性を上げることで、定温輸送を可能とした有蓋車の一種。一部には、保冷用の氷を置く棚を有するものや、冷凍機・冷蔵機を装備したものもあった。鮮魚などの水揚げ地から東京や大阪などの大消費地への輸送に使われたが、大型トラックの冷凍車に太刀打ちできず、1980年代には全廃。
記号は冷蔵のレ。
- 屋根や壁面の断熱を強化し、密閉性を上げることで、定温輸送を可能とした有蓋車の一種。一部には、保冷用の氷を置く棚を有するものや、冷凍機・冷蔵機を装備したものもあった。鮮魚などの水揚げ地から東京や大阪などの大消費地への輸送に使われたが、大型トラックの冷凍車に太刀打ちできず、1980年代には全廃。
- 家畜車(かちくしゃ)×(記号:カ)
- 牛やヤギなど大型動物輸送用の有蓋車の一種。車体がすかし張りとなっているため、通風車の代用として使用されることもあった。
記号は家畜のカ。
- 牛やヤギなど大型動物輸送用の有蓋車の一種。車体がすかし張りとなっているため、通風車の代用として使用されることもあった。
- 豚積車(ぶたづみしゃ・とんせきしゃ)×(記号:ウ)
- 豚など小動物輸送用に車内が二段式となっている家畜車。豚に餌や水を与えるために、添乗員室がある。家畜車から独立した形式。
記号は牛のウ。形式が分かれた当初は家畜車を「カ」から「ウ」に変更し、豚積車が「カ」となる予定であったが、家畜車のほうが豚積車より圧倒的に多かったため、形式を書き換える手間を考慮して豚積車に新記号「ウ」を用いた。豚の鳴き声(ブウブウ)で「ウ」になったという説と、「ヴタ」の「ヴ」からとったという説は誤り[注 4]。
- 豚など小動物輸送用に車内が二段式となっている家畜車。豚に餌や水を与えるために、添乗員室がある。家畜車から独立した形式。
- 家禽車(かきんしゃ)×(記号:パ)
無蓋貨車
- 無蓋車(むがいしゃ)(記号:ト)
- 砂利や木材などの雨に濡れてもかまわない積荷の積載用。一般的に側面にあおり戸を有するものが多い。
記号はトラック (Truck) のト。
- 砂利や木材などの雨に濡れてもかまわない積荷の積載用。一般的に側面にあおり戸を有するものが多い。
- 長物車(ながものしゃ)(記号:チ)
- 無蓋車の一種。特にレールや長い木材といった、長尺物の積荷を積載する。側面にあおり戸はなく(ただし積荷の転落防止用の棒が等間隔で立っている場合がある)、上面はフラット。黎明期のコンテナ車はこの種別に分類されていた。
記号はチンバー(英:Timber=材木)のチ。
- 無蓋車の一種。特にレールや長い木材といった、長尺物の積荷を積載する。側面にあおり戸はなく(ただし積荷の転落防止用の棒が等間隔で立っている場合がある)、上面はフラット。黎明期のコンテナ車はこの種別に分類されていた。
- コンテナ車(こんてなしゃ)(記号:コ)
- コンテナを台枠上に固定して運ぶための無蓋車の一種。黎明期には長物車に分類されていた。
記号はコンテナ (Container) のコ。当初、記号「コ」は衡重車が使用していたが、名称と記号を変更することでコンテナ車に譲っている。
- コンテナを台枠上に固定して運ぶための無蓋車の一種。黎明期には長物車に分類されていた。
- 大物車(おおものしゃ)(記号:シ)
- 車運車(しゃうんしゃ)(×)(記号:ク)
- 土運車(どうんしゃ)×(記号:リ)
- 無蓋車の一種で砂利や砕石などを専用で運搬する。初期は無蓋車のアオリ戸高さが低いものが類別されていたが、のちに転倒式荷役が可能な車に置き換わる。
記号は砂利(じゃり)のリ。
- 無蓋車の一種で砂利や砕石などを専用で運搬する。初期は無蓋車のアオリ戸高さが低いものが類別されていたが、のちに転倒式荷役が可能な車に置き換わる。
タンク貨車
- タンク車(たんくしゃ)(記号:タ)
- 石油、バラ積みセメントなどの液体、粉状のものを運ぶタンク体を有する貨車。積荷の性質に合わせた構造、設備を持つものが多く、ほとんどが私有貨車である。
記号はタンク(英:Tank)のタ。
- 石油、バラ積みセメントなどの液体、粉状のものを運ぶタンク体を有する貨車。積荷の性質に合わせた構造、設備を持つものが多く、ほとんどが私有貨車である。
- 水運車・水槽車(すいうんしゃ・すいそうしゃ)×(記号:ミ)
- タンク車の一種。蒸気機関車が広く使われていた時代、水質の悪い地区の車両基地にボイラー用の水を輸送するために使われた。一部には、廃車となった蒸気機関車の炭水車を転用したものも存在した。特異な例として、特急「燕」を運行する際に東京 - 名古屋間を給水なしのノンストップで走破するための水槽車が用途廃止後に貨車に編入された(ミキ20。運行開始の1930年(昭和5年)10月から、静岡に給水を兼ねて停車するようになる1932年(昭和7年)3月まで、牽引機C51の次位に連結されていた)。当初は貨車の車種上も水槽車と称していたが、1953年(昭和28年)の称号改正において[5]水運車に改められた。
記号は水のミ。
- タンク車の一種。蒸気機関車が広く使われていた時代、水質の悪い地区の車両基地にボイラー用の水を輸送するために使われた。一部には、廃車となった蒸気機関車の炭水車を転用したものも存在した。特異な例として、特急「燕」を運行する際に東京 - 名古屋間を給水なしのノンストップで走破するための水槽車が用途廃止後に貨車に編入された(ミキ20。運行開始の1930年(昭和5年)10月から、静岡に給水を兼ねて停車するようになる1932年(昭和7年)3月まで、牽引機C51の次位に連結されていた)。当初は貨車の車種上も水槽車と称していたが、1953年(昭和28年)の称号改正において[5]水運車に改められた。
ホッパ貨車
- ホッパ車(ほっぱしゃ)(記号:ホ)
- 石炭以外の鉱石、砕石、セメント、あるいは小麦など、粒状のものを運搬する、漏斗状の車体構造をもつ貨車。一般営業用の他、線路道床へのバラスト撒布用の事業用車がある。
記号はホッパ (Hopper) のホ。
- 石炭以外の鉱石、砕石、セメント、あるいは小麦など、粒状のものを運搬する、漏斗状の車体構造をもつ貨車。一般営業用の他、線路道床へのバラスト撒布用の事業用車がある。
事業用貨車
- 車掌車(しゃしょうしゃ)(記号:ヨ)
- 車掌が乗り込んで、業務を行う。各種の緩急車と同様、貨物列車の最後尾などに連結されていたが、現在では一部の特殊なケース(重量物の運搬など)を除いて貨物列車に車掌が乗務する必要がなくなったために連結されなくなった。
記号は、車掌(しゃしょう)のヨ[5]。
- 車掌が乗り込んで、業務を行う。各種の緩急車と同様、貨物列車の最後尾などに連結されていたが、現在では一部の特殊なケース(重量物の運搬など)を除いて貨物列車に車掌が乗務する必要がなくなったために連結されなくなった。
- 雪掻車(ゆきかきしゃ)△(記号:キ)
- 積雪地で機関車に連結して除雪を行う。旧国鉄では除雪用機関車やモーターカーに移行してJR移行直後に消滅し、東北の一部私鉄で保有するのみ。
記号は雪(ゆき)のキ。
- 積雪地で機関車に連結して除雪を行う。旧国鉄では除雪用機関車やモーターカーに移行してJR移行直後に消滅し、東北の一部私鉄で保有するのみ。
- 検重車(けんじゅうしゃ)(×)(記号:ケ)
- 貨物駅にある秤の校正をするための分銅を積んでいる。分銅を出し入れするために小型クレーンを持っている。
以前は衡重車(こうじゅうしゃ)と称し記号は「コ」であったが、コンテナ車に記号を譲った。記号は検重のケ。
- 貨物駅にある秤の校正をするための分銅を積んでいる。分銅を出し入れするために小型クレーンを持っている。
- 工作車(こうさくしゃ)×(記号:サ)
- 駅などの設備の修繕や橋などの架け替え工事などの際に、現場に滞在して作業基地として使われた車両。工作機械積載車・材料積車・炊事食堂車からなる。1953年の改正で事業用客車(元有蓋車および2軸客車)と事業用代用有蓋車を統合して設定されたが、その後事業用代用貨車からの改番が職用車「ヤ」となった事や客車職用車による代替が行われたことで老朽車の廃車により1972年度をもって消滅。
記号は工作(こうさく)のサ。
- 駅などの設備の修繕や橋などの架け替え工事などの際に、現場に滞在して作業基地として使われた車両。工作機械積載車・材料積車・炊事食堂車からなる。1953年の改正で事業用客車(元有蓋車および2軸客車)と事業用代用有蓋車を統合して設定されたが、その後事業用代用貨車からの改番が職用車「ヤ」となった事や客車職用車による代替が行われたことで老朽車の廃車により1972年度をもって消滅。
- 救援車(きゅうえんしゃ)×(記号:エ)
- 事故の復旧用資材を積み込んで、車両基地に待機している。電車や客車にもあるが、貨車の車種としては1970年頃に消滅。余剰の有蓋車や荷物車が代用されることが多い。
記号は救援(きゅうえん)のエ。
- 事故の復旧用資材を積み込んで、車両基地に待機している。電車や客車にもあるが、貨車の車種としては1970年頃に消滅。余剰の有蓋車や荷物車が代用されることが多い。
- 操重車(そうじゅうしゃ)(×)(記号:ソ)
- 橋梁工事や事故の復旧用に大型のクレーンを持っている。通常は車両基地に待機している。一部に自走可能なものがある。
記号は操重のソ。
- 橋梁工事や事故の復旧用に大型のクレーンを持っている。通常は車両基地に待機している。一部に自走可能なものがある。
- 控車(ひかえしゃ)(×)(記号:ヒ)
- 貨物列車の入れ替えの際に作業員が乗り込んで誘導をしたり、連絡船に貨車を出し入れする際に桟橋や船内へ重量のある機関車が乗らないようにするためのスペーサーとして使われた。
記号は控えのヒ。
- 貨物列車の入れ替えの際に作業員が乗り込んで誘導をしたり、連絡船に貨車を出し入れする際に桟橋や船内へ重量のある機関車が乗らないようにするためのスペーサーとして使われた。
- 歯車車(はぐるましゃ)×(記号:ピ)
荷重表示記号
積載できる積荷の重さを表す記号。もとは、馬車用の馬を運ぶ有蓋車に馬(ムマ)のムをつけてワムとしており、その後の称号改正などで荷重表示記号をつける際に、ワムとしていた車両の積荷が15tだったことから14 - 16tの荷重にムの記号をあて、それにあわせて他の重量には語呂のよい(ム・)ラ・サ・キをあてたといわれている。
- 13t以下(記号なし)
- 14 - 16t(記号:ム)
- 17 - 19t(記号:ラ)
- 20 - 24t(記号:サ)
- 25t以上(記号:キ)
重量の上限は、使用線区の許容軸重と橋梁などの許容重量負担力により決まる。
車両番号
車両番号はカタカナの記号の下に書かれている一桁以上の数字である。
番号の付番の仕方は基本的には以下の通り(ただし同車種・同荷重の他形式と重複しないように飛び番させたり、番台区分等で異なっている場合もある)。
- 国鉄時代に製造された形式
-
- 形式番号が一桁の形式(○×1形)
- 車両番号=製造番号
- 形式番号が二桁以上の形式
- 車両番号=(形式番号+製造番号)-1
- (0番から付番されるため)
- JR化後に新製された形式(コキ100系以降)
-
- 車両番号=形式番号-(ハイフン)製造番号
1970年ころ、コンピュータ処理を考慮した、貨車の番号体系の変更(用途と荷重記号・形式番号4桁-(ハイフン)製造番号5桁)が検討されたことがあった。また、荷重表示記号も、25t以上を示す「キ」の上に、さらに3つに細分化された記号の新設が検討されていた[6]。
符号
他の形式と違う取り扱いをしなければならない形式にのみ、用途を表すカタカナの前に一回り小さい上付きのカタカナで表記する。
- 純アルミ製(主にタンク車)(記号ア・アタム等)
- 大型(主にタンク車・ホッパ車)(記号オ・オタキ・オホキ等)
- 急行便(有蓋車(ワム)のみ)(記号キ・キワム)
- 小型(主に無蓋車・タンク車)(記号コ・コトラ、・コタキ等)
- パレット対応(主に有蓋車)(記号ハ・ハワム等)
- 制動距離や走行安定性の面から運転最高速度を65km/h以下に制限した車両(主に大物車・石炭車・一部を除く事業用車全般)(記号はろくじゅうごのロ・ロシキ、ロセキ等。低速運転しか出来ないことから「のろのろ」のロ、というのは誤り[注 4]。)
- 有蓋車兼用(無蓋車(トラ)のみ)(記号ワ・ワトラ)
- また、上記の記号を複数組合せる場合もある(アコタキ等)
注釈
- ^ カブースもボギー車が基本だが、そこそこ2軸カブースも存在しており(比較的大きい鉄道ではデラウェア・ラッカワナ・アンド・ウェスタン鉄道が20世紀中盤まで使用)、「bobber(ボバー、揺れるもの)」と呼ばれた。[1]
- ^ なお “reefer” は略語で、本来は “refrigerator car” と呼ばれていた
- ^ ただし、Wagonは英語で「貨車全般」を指し日本のように有蓋車を区分する意味にはならず、狭義だと「無蓋車」となり日本とは逆の意味になる。
- ^ a b ただし、児童書などでは便宜上使用されている場合がある。[3]
- ^ 「生魚」を由来とする説は汽車会社の手帳に見ることが出来る[4]
出典
- ^ 松本健一「All about Cabooses・魅惑のカブース」『Rails Americana(とれいん2005年6月号増刊)(雑誌コード06760-06)』、株式会社エリエイ・アイゼンバーン、2005年、P.33・44。
- ^ 『国有鉄道建設規定』第61条「客貨車の車輪一対の軌条に対する圧力は停車中において13t以下たることを標準とし(後略)」・第64条「固定軸距は4.6m以下とする」より
- ^ 例)『学研の図鑑 機関車・電車』株式会社学習研究社、昭和48年初版・昭和52年改訂版発行、P141・189。
- ^ 「鉄道ファン」2009年5月号133頁に1968年版手帳の複写あり。
- ^ a b c 吉岡心平「保存版記号別貨車図鑑」ネコ・パブリッシング「レイルマガジン」1996年2月号
- ^ 鉄道ピクトリアル1994年4月号 p.60「幻の貨車形式・番号改定案」
- ^ せり上がり脱線『朝日新聞』昭和42年8月28日夕刊、3版、9面
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