貝塚 概説

貝塚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/18 11:55 UTC 版)

概説

最終氷期の終焉期には、長らく寒冷であった地球環境が急速かつ大幅に温暖化していった。その影響は当然ながら人類にも及んでいる。影響は食料資源にも現れ、最も顕著な変化として世界各地でメガファウナ英語版(大型動物の動物相。この時代では、ゾウ類、サイ類、オオツノジカ類、バイソン剣歯虎など)が大きな衰退を見せ、なかには動物相ごと消滅してしまう地域まであった[8]。マンモス動物群(マンモスヘラジカ、バイソンなどで構成される寒冷適応型メガファウナ)とナウマンゾウ・ヤベオオツノジカ動物群(ナウマンゾウヤベオオツノジカを主とする温暖適応型メガファウナ[* 3])が姿を消した日本列島[8]はその代表例である[* 4][8]。 人類は新しい環境に即して生活様式を変革する必要に迫られた。その一つが湖沼に溢れる魚介類の利用の拡大や開始であり、貝類を常食する人間集団の場合にはその居住地域でごみ捨て場として貝塚が形成されるようになった。

貝塚では、貝殻の炭酸カルシウム成分のために日本列島のような酸性土壌であっても中和され、土壌が有機物由来の考古遺物を保護する作用を持つため、人骨や鳥獣魚骨、骨角器などが比較的良好な保存状態で出土することが多い。貝塚は文字を持たなかった社会を研究するうえで重要視されている。

貝塚の研究は19世紀後半にデンマークで始められた[9]。ヨーロッパ先史考古学の指導的位置にあったデンマーク人考古学者でデンマーク国立博物館館長のイェンス・ヤコブ・アスムッセン・ウォルソー英語版は、同じデンマーク人の動物学者ヤペトゥス・ステーンストロップおよび地質学者ヨハン・ゲオルク・フォルシュハーマー英語版と共に、貝塚が人為的なもので、居住地に伴うごみ捨て場であることを実証した[9][10](■右列の画像のエルテベレ貝塚が実証の現場となった)。貝塚は世界各地で発見されており、それまでは自然の堆積現象か居住地のいずれかと考えられていたが[10]、貝殻のほかにも動物の骨や石器・土器が発見されたため、人間の食物の残滓が集積したものと認められるようになったのである。

世界的には、デンマークを中心としたヨーロッパ地域、カナダブリティシュコロンビアを中心とした北西海岸、アメリカ合衆国メイン州を中心とした大西洋岸、東アジア沿海地域(日本列島を含む)などの、ほぼ同緯度の地域で、ヴュルム氷期(最終氷期)終焉期以降(後氷期の到来以降)に貝塚が出現している。 極東ロシア沿海地方から東アジアの沿海地域(日本列島朝鮮半島中国大陸の沿海地域)にかけての一帯は、世界的に見ても貝塚が濃密に分布する地域である[11]


注釈

  1. ^ コンクガイ。マガキガイの近縁種で、食用及び装飾品に用いられる
  2. ^ 後者の有名な用例としてアメリカ先住民族オローニの貝塚「エメリービル貝塚(エメリービルシェルマウンド、 Emeryville Shellmound)を挙げる。また、大森貝塚の(モースによる)英語名は "Shell Mounds of Omori (シェルマウンズ オブ オーモリ)" である。
  3. ^ ただし、日本列島におけるナウマンゾウの衰退はこの時期の遥か以前に始まっており、この時期にとどめを刺されたと考えられる。
  4. ^ 北海道までは南下して棲息していたマンモス(※ヘラジカとバイソンは本州まで南下して寒冷地域で繁栄しているが、マンモスだけは本州へ渡った形跡が無い)がそうしたように、樺太経由でアジア大陸へ戻っていったのか、移動の機会を逸して取り残されたために絶滅したのかは分かっておらず、列島から姿を消したことだけがはっきりしている。
  5. ^ 日本で最初に「地層塁重の法則」を適用して土層単位での発掘を導入した。

出典

  1. ^ 大田区山王1-3(地図 - Google マップ…※該当地域は赤い線で囲い表示される)
  2. ^ 品川区大井6-21-6(地図 - Google マップ
  1. ^ a b c 貝塚”. コトバンク. 2019年5月21日閲覧。
  2. ^ 貝塚 -『国史大辞典』”. ジャパンナレッジ. 株式会社ネットアドバンス. 2019年5月21日閲覧。
  3. ^ 貝塚”. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. コトバンク. 2019年5月21日閲覧。
  4. ^ a b c 小山田了三、小山田隆信 『材料技術史概論 第3版』東京電機大学、2001年、32頁。 
  5. ^ 貝塚”. 平凡社『世界大百科事典』第2版. コトバンク. 2019年5月21日閲覧。
  6. ^ 貝塚”. 小学館『デジタル大辞泉. コトバンク. 2019年5月21日閲覧。
  7. ^ 貝塚”. 三省堂大辞林』第3版. コトバンク. 2019年5月21日閲覧。
  8. ^ a b c 冨田幸光 (2014年). “第5回 日本の巨獣はなぜ消えた?”. ナショナルジオグラフィック』日本語版(公式ウェブサイト). 日経ナショナルジオグラフィック社. 2019年5月21日閲覧。
  9. ^ a b 佐原真「日本近代考古学の始まるころ」金関恕春成秀爾編『佐原真の仕事1 考古学への案内』岩波書店、2005年、236頁。※同書での人名表記は、デンマーク国立博物館長ヴォーソー、動物学者スティーンストラブ、地質学者フォルヒハマー。
  10. ^ a b ウォルソー”. コトバンク. 2019年5月22日閲覧。
  11. ^ 「貝塚-狩猟と漁労」樋泉岳二 『日本の考古学』奈良文化財研究所編集 2007年4月。
  12. ^ a b c Ertebølle”. 平凡社世界大百科事典』第2版. コトバンク. 2019年5月21日閲覧。
  13. ^ 谷口 2005年 p.97-98
  14. ^ 中村 2009年 p.49
  15. ^ a b c d e 那珂川沿岸農業水利事業所. “さらに詳しく 大串貝塚と巨人伝説”. 公式ウェブサイト. 関東農政局. 2019年5月21日閲覧。
  16. ^ a b c d 大串貝塚”. コトバンク. 2019年5月21日閲覧。
  17. ^ 大串貝塚”. 小学館『日本大百科全書:ニッポニカ』. コトバンク. 2019年5月21日閲覧。
  18. ^ 大串貝塚”. 講談社『国指定史跡ガイド』. コトバンク. 2019年5月21日閲覧。
  19. ^ 大串貝塚”. 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. コトバンク. 2019年5月21日閲覧。
  20. ^ 大串貝塚”. 小学館『精選版 日本国語大辞典』. コトバンク. 2019年5月21日閲覧。






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