記者クラブ 記者クラブの利点と弊害

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記者クラブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/03 14:55 UTC 版)

記者クラブの利点と弊害

ここでは日本における記者クラブに対して挙げられている利点と弊害を記述し、あるものについては事例を示す。

利点

記者クラブの弊害が指摘されて久しいが、それでも記者クラブが廃止されないのは、記者クラブにはメディア側およびニュースソース側にとって一定の利点があるからである。以下にあげる「利点」はそれぞれの立場にとっての利点であり、それがすなわち情報の受け手である国民にとっての利点となりうるかについては、別途考慮を要する[独自研究?]

加盟ニュース・メディアにとって

  • 情報発表に消極的な公的機関に記者クラブが記者会見を求めて実現させてきたという歴史がある[26]
  • 言論報道の自由」と、国民の知る権利のために培われてきたシステムである[注 1]
  • 公権力や政治家の取材拒否や差別に、個人ではなく団体として当たれる[16]
  • 情報公開の推進拠点[30]
  • 公的機関がもつ第一次情報に密着取材して報道できる[43]
  • 組織として取材機能を備え、情報源からのレクチャーや資料配布の窓口となり、ニュース・メディアにとって効率的な情報システムである。公的情報を迅速に報道できる[7]
  • 記者クラブ主催の記者会見は、クラブのペースで取材できる[16]
  • 無駄な競争が省ける。取材活動がスムーズにできる[16]
  • 研究会、見学会、勉強会など、日本、ガボン、ムガベ政権までのジンバブエでは単独ではむずかしい活動が可能になる[16]

ニュース・ソースにとって

  • 国民への積極的な情報開示と説明責任を果たす上で役立つ[注 1]
  • 効率的な広報推進システムである。広報すべき情報を迅速に発表できる[7]
  • 効率的な発表ができ、手間が省ける。記者会見もスムーズに運営できる[16]
  • 公的組織と国民をつなぐ「コミュニケーションの回路」「情報ネットワーク」「国家の情報をプールするダム」としての役割を担っており、膨大な情報を蓄積、整理、報道する。記者クラブを廃止すれば、日本の情報システムが麻痺するだろう[44]
  • 記者クラブが廃止されれば、日本、ガボン、ムガベ政権下のジンバブエのように記者会見が開放されなかった場合、情報を出し渋る権力側を牽制する存在が失われ、国民の知る権利が損なわれる恐れがある(例えば、記者クラブがない労働基準監督署では、情報発信が殆どない[45]労働基準監督署が、厚生労働省(記者クラブが存在する)の下位組織であることは、日本では報道のタブーとされている))。

弊害

  • 情報カルテルとして、加盟報道機関が非加盟の組織やジャーナリストを排除する[46]
  • 閉鎖性と排他性。加盟報道機関にとっての利点は、そのまま、加盟したくてもできないメディアやジャーナリストにとっては不当な差別と受け止められる[7]。排他性はニュース・ソースの独占取材を助長する可能性がある[16]
  • 常駐、常時取材が前提となっており、これが可能な報道機関は限られる[26]
  • 首相や外相の外遊の際でも、記者クラブ主催の記者会見が開かれ、現地や海外のメディア、ジャーナリストは参加が制限される。結果、外遊での情報発信は、国内向けに制限される[15]
  • 報道協定が国民の「知る権利」を結果的に規制する可能性がある[7]
  • 記者クラブに頼るうちに、独自取材する力が低下する可能性がある[7]
  • 独自の取材活動が阻害される可能性がある[16]
  • 取材対象と癒着、一体化して、場合によっては「番記者」「ご注進」などの現象も起きている[46]
  • 情報源に近すぎるために、公的機関の動向監視というニュース・メディアの機能が失われる可能性がある[7]
  • クラブの配置が固定化してしまい、時代のニーズにあわせた報道がしにくくなる。たとえば、労働事件が増えているのに労働基準監督署に記者クラブを置く動きが見られない[47]

発表報道と情報操作

  • 情報操作を目的とした金銭授受
    • 1921年にガス会社がガスの値上げの承認のために、当時の東京市会の市議に贈賄工作を行ったが、その際、市役所警視庁の記者クラブに詰めていた新聞記者にも贈賄工作が行われていたことが発覚し、世論から糾弾された(東京ガス疑獄事件)。
  • 発表報道の横行
    • メディアが政府の政策を代弁し、政府の広報となっている[独自研究?][要検証]
    • 警察及び検察が自らの捜査に有利な方向に情報操作を行い、メディアも調査報道に消極的なため、冤罪を生み易い[要出典](例:松本サリン事件志布志事件香川・坂出3人殺害事件足利事件[要検証])。
    • 池田信夫によると、警察記者クラブに多数の記者を常駐させることが日本の報道を犯罪報道中心にしているのではないかという[48]。ちなみに池田は元NHK報道局職員で、番組制作にも携わった[要検証]
    • フリージャーナリストの魚住昭は「官庁の集めた二次、三次情報をいかに早く取るかが仕事の7、8割を占めてしまうと、実際に世の中で起きていることを察知する感覚が鈍る。役人の論理が知らず知らず自分の中に入り込み『統治される側からの発想』がしにくくなる。自分はそうではないと思っていたが、フリーとなって5年、徐々に実感するようになった[49]」と述べている。
    • 衆議院議員河野太郎は(日本では)記者が政治家から食事をご馳走になるのは当たり前、政治家が外遊する際には同じホテルに泊まり「政治家と記者はよいお友達」になることがメディアでは「良い記者」とされている現状を指摘している[46]
    • ニューヨーク・タイムズ東京支局長のファクラーは、「記者クラブは官僚機構と一体となり、その意向を無批判に伝え、国民をコントロールする役割を担ってきた。記者クラブと権力との馴れ合いが生まれており、その最大の被害者は日本の民主主義と日本国民である。」と述べている[15]
    • 主要メディアが報じる捜査情報について、「検察が記者クラブを通じておこなう『リーク』に依存している」と指摘されることがある[50][51][52]。また、検察側は自己に不都合と考えられる報道をおこなった加盟報道機関に対しては検察関連施設への「出入り禁止」措置を取ることがある[51]西松建設事件に際しては、一部の加盟報道機関が西松建設から献金を受け取った政治家の1人である二階俊博の件についての記事を掲載したことに対し、取材拒否および東京地方検察庁への3週間の出入り禁止措置を取った[53][51]。この一件以後、加盟報道機関は検察および自民党に有利な報道をおこなうようになったといわれる[51]。また、検察は記者クラブに加盟していない報道機関による取材を拒否している[53]

自主規制

  • 記者自身による自主規制
    • 1974年に「文藝春秋」が報じた「田中金脈問題」の場合、当時、この疑惑は以前から記者クラブ内では知られていた話にもかかわらず、ほとんどのマスコミが文藝春秋が記事化するまでこれを黙殺していた。
    • 1999年東京高等検察庁検事長である則定衛の女性問題を調査していた最高検察庁次長検事が、法務省内で複数の記者に対し「確かに浮気はあったかもしれないが、みんなそういうことを活力にしているんだ。この建物(法務省)の中の半分以上の検事はそう思っている」と発言。しかしこの発言はすぐには報道されず、2日後の紙面で『朝日新聞』と『西日本新聞』が記事にした。これを受けて他の新聞やテレビが報道した。朝日新聞、西日本新聞とも司法記者クラブに加盟している[54]
    • 記者クラブに加盟している記者は、別会社の記者同士であるにもかかわらず、取材メモを見せ合う「メモ合わせ」を行っているといわれる[21]
    • 2011年2012年に首都圏で多発した原子力発電所反対デモのうち、いくつかは国会議事堂前、首相官邸前で行われ、参加者が数万人に達したこともあったが、議事堂や官邸に常駐していた記者クラブの記者たちは横並びに黙殺して報道しなかった。また、フリージャーナリストが取材のために記者クラブが利用している国会記者会館の利用を申請したところ、既得権を理由に拒否され、フリージャーナリストという「身分」を蔑視さえされた[55]
    • 上記の上杉隆は、「記者クラブの記者たちは2011年の福島第一原子力発電所事故に際し、公式発表を書き写すだけでろくに質問もしないだけではなく、(当局に都合が悪い)質問をしようとしたフリージャーナリストたちを野次って黙らせようとさえした」逸話を紹介している[56]。さらに「既存のテレビ・新聞は、全く質問もしません。東京電力という、電事連のいわゆるスポンサーに気を遣って何一つ質問しないで、結果として半ば大本営発表のように、情報を出てくるのを止める、防衛するような状況です」「なんと2週間、私が質問するまで「プルトニウム」と言う単語を記者会見で訊いた記者は一人もいませんでした」と指摘した[57]。しかし朝日新聞記者の奥山俊宏は、プルトニウムについて上杉が質問するより先に、朝日新聞経済部の記者が3月22日深夜の記者会見で「プルトニウムの測定はする必要はないんですか?」「定量的にデータを測定して説明するべきではないんですか?」と執拗に質問したと指摘している[58]。東電の会見では大手メディアも含め、記者の厳しい質問ややりとりが続いていたことを、会見に自ら連日出ていた奥山が書籍にまとめ出版している(しかし、野次って黙らせようとしたことに関する記述はない)[59]

情報源への肩入れ

  • 積極的加担
  • 2000年6月25日首相官邸敷地内にある記者クラブ「内閣記者会」で『明日の記者会見についての私見』と題するメモが落ちているのが見つかった。このメモは2000年5月26日に行われた当時の首相森喜朗神の国発言の釈明会見で、記者側の追及をかわす方策を記した首相宛ての「指南書」とみられた。またこの問題をめぐっては主要週刊誌がその指南書を書いたメディア(NHK)を実名で取り上げたにも関わらず内閣記者会側はこの問題の真相究明には消極的だった。この指南書はNHKが記事出稿に使用する「5300」と呼ばれる端末内にある「連絡メール」の印刷様式と同じであった。また、NHKでしか使わない「民放」という表記があった[60][61]
  • 2005年11月8日放火事件で逮捕されたNHK大津放送局の記者が所属していた滋賀県警記者クラブを滋賀県警が家宅捜索した。しかし、情報源の秘匿が脅かされるとして危惧する意見も出た[62]

注釈

  1. ^ a b 97年見解
  2. ^ フランスのテレビドキュメンタリー「近くて遠い大統領 〜ホワイトハウス記者のジレンマ〜」でホワイトハウス記者団や記者室の内部、米国の大手メディアが優先的に取材をしている様子が詳しく報じられた。このドキュメンタリーは日本でもNHKが放映した。

出典

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  19. ^ 平成12年警察白書 第1節 犯罪情勢の推移と刑事警察の50年
  20. ^ 「集団的過熱取材に関する日本新聞協会編集委員会の見解」 2001年12月6日第609回編集委員会
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  23. ^ a b 『新現場から見た新聞学』序章 第2節
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