親族 日本法における親族

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親族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/20 01:20 UTC 版)

日本法における親族

日本法での親族・親等

親族の範囲

日本民法は、6親等内の血族配偶者3親等内の姻族を「親族」として定める(民法第725条)。

親等の数え方

親等の数え方について日本の民法は先述のローマ法式を受け、民法第726条により次のように定められている[12]。なお、配偶者は自分と同一視して親等を数え、配偶者の親族は自らの親族と同様に扱われる。

親等は親族間の世代数を数える(民法第726条第1項)。つまり、親子関係を一世代移動するごとに1親等を数えることとなる。
本人又はその配偶者から同一の祖先に遡り、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による(民法第726条第2項)。つまり、親子関係に基づく隣接する世代に対してのみ1親等の関係にあり、兄弟姉妹などの同世代の間では直接1親等の関係にはない。兄弟姉妹、、兄弟姉妹の孫(姪孫、大甥大姪)については、本人との共通の先祖に遡るため、兄弟姉妹は“本人→親→兄弟姉妹”で2親等、甥姪は“本人→親→兄弟姉妹→甥姪”で3親等、兄弟姉妹の孫(姪孫、大甥大姪)は“自分→親→兄弟姉妹→甥姪→兄弟姉妹の孫(姪孫、大甥大姪)”で4親等がカウントされる。従兄弟姉妹再従兄弟姉妹の場合にも同様に、従兄弟姉妹は祖父母に、再従兄弟姉妹再従兄弟姉妹は曽祖父母に遡ってカウントする。従って、兄弟姉妹は2親等、従兄弟姉妹は4親等、再従兄弟姉妹は6親等となる。

具体的範囲

日本の民法上の親族の具体的範囲は次の通り(本人を基準として数字は親等を表す)。

  • 6親等内の血族
    1. 父母、子
    2. 祖父母、孫、兄弟姉妹
    3. 曽祖父母、曽孫、伯叔父母、甥姪
    4. 高祖父母、玄孫、兄弟姉妹の孫(姪孫、大甥・大姪)、従兄弟姉妹(いとこ)、祖父母の兄弟姉妹(大おじ・大おば)
    5. 五世の祖、来孫、兄弟姉妹の曽孫(曽姪孫)、従兄弟姉妹の子(従甥・従姪)、父母の従兄弟姉妹(従伯叔父母)、曽祖父母の兄弟姉妹(曽祖伯叔父母)
    6. 六世の祖、昆孫、兄弟姉妹の玄孫(玄姪孫)、再従兄弟姉妹(はとこ)、従兄弟姉妹の孫(従姪孫)、祖父母の従兄弟姉妹(従大伯叔父母)、高祖父母の兄弟姉妹(高祖伯叔父母)
日本の民法が血族を6親等内としているのは江戸時代の慣行に由来する[22]
  • 配偶者
配偶者は自己と同列として扱われ、いずれの親系にも属さず、血族にも姻族にも含まれず、親等や尊卑の区分もない[23][24]。このことは、本来、配偶者関係は本質的に他の親族関係とは異なる法原理に服する関係にあるためとされる[23]。現代の各国における一般的な法制では、配偶者関係については他の親族関係の観念とは別個の観念として純粋に婚姻関係によって生じる諸々の法的効果が規定されるのが普通とされ[25]、日本民法のような立法例は他に例をみない特異な法制とされる[26]。日本でこのような法制がとられた背景には、律令以来の用例によったこと、配偶者が姻族の基準となること、配偶者を親族と別個に扱うことが立法上不便であることなどが理由とされるが、このような規定の仕方に対しては婚姻概念と親族概念の未分化を露呈するものであるとの批判がある[22]
  • 3親等内の姻族
    1. 配偶者の父母(舅・姑)、父母の再婚相手(継父母)、子の配偶者(嫁・婿)、配偶者の子(配偶者の前婚における子など)
    2. 配偶者の祖父母、祖父母の再婚相手(父母の継父母)、継父母の父母、配偶者の兄弟姉妹(小舅・小姑)、兄弟姉妹の配偶者(兄嫁・姉婿・弟嫁・妹婿)、継父母の子、孫の配偶者、配偶者の孫(配偶者の前婚における孫など)、子の配偶者の子(子の配偶者の前婚における子など)
    3. 配偶者の曽祖父母、曾祖父母の再婚相手(祖父母の継父母)、祖父母の再婚相手の父母、継父母の祖父母、配偶者の伯叔父母(舅・姑の兄弟姉妹)、伯叔父母の配偶者(おじ嫁・おば婿)、継父母の兄弟姉妹、祖父母の再婚相手の子、配偶者の甥姪(小舅・小姑の子)、甥姪の配偶者(甥嫁・姪婿)、兄弟姉妹の配偶者の子(前婚における子など)、継父母の孫、曽孫の配偶者、配偶者の曽孫(配偶者の前婚における曽孫など)、子の配偶者の孫(前婚における孫など)、孫の配偶者の子(前婚における子など)

以上から、再従兄弟姉妹(はとこ)の子供や父母の再従兄弟姉妹、従兄弟姉妹の曽孫は7親等の血族、従兄弟姉妹(いとこ)の配偶者や、配偶者の兄弟姉妹の孫(姪孫、大甥・大姪)や、伯叔父母の配偶者の前婚の子などは4親等の姻族に当たるため、親戚であっても民法上の親族から外れる。

なお、親族の範囲は民法で法定されており、勘当義絶など個人の意思でその範囲を変えることは認められない[27]。現行法制度上、親族に法的な制裁を与える唯一の方法として、相続権の一切を剥奪する相続廃除があるが、家庭裁判所審判を要するため、認められた例は多くない。

立法上の課題

民法第725条については今後の立法上の課題として取り上げられることがある[28][29][30]。親族の範囲の定め方については、婚姻取消権者の範囲や近親婚にあたる範囲など対象となる親族の範囲について各条項ごとに個別的に定める個別的立法(限定主義)と親族の範囲について一般的な条項を設けて定める総括的立法(包括的限定主義)とがある[31]

日本法は後者の法制を採用しているが、日本民法のように血族と姻族の一定範囲を限って、これを「親族」と称して法律上特別の身分とする法制は現代では他に立法例をみないとされる[30][15]。この点については、民法上の「親族」の概念は現実の家族集団とかけ離れたものとなっていると指摘されており[30]、また、実際には親類として交際しておりながら法律上は必ずしも親族とはされず、他方で全くの面識・交際のない者が法律上は親族とされることになると問題点を指摘する立場がある[32]。そもそも血族関係・姻族関係には無限の広がりがあり、現実の親族による共同生活の範囲は一定の経済生活の下、習俗道徳を中心に規律され構成されるものであるとされる[33]。現代の各国における一般的な法制でも、血族は無制限に「血族」で、姻族については血族に準ずる関係とした上で、配偶者関係については他の一般の親族関係の観念とは別個の観念として規定されるのが普通とされる[25]。そして、近親婚の制限、扶養義務、相続権などについて個別的に何親等内の血族あるいは姻族に対して一定の法的効果(権利義務)を認めるという形式で規定するのが通例とされる[34]

実際には日本の民法においても基本的には近親婚の制限、扶養義務、相続権などについて個別的に範囲が定められており、他方、民法725条に定める親族全体に包括的一律に一定の効果をもたせることは少ないことから、結果的に民法725条で親族の範囲を規定しているにもかかわらず、わざわざ個々の条項において具体的効果の及ぶ親族の範囲について更に定めるという二重の構成となってしまっているとして問題視する見解がある[12][34]。また、そもそも親族編の冒頭に本規定を置く意味があるのか疑問視する見解も出されている[35]。そのため、昭和34年7月の「法制審議会民法部会身分法小委員会仮決定及び留保事項」の第一では民法725条については削除すべきとされている(なお、将来的に民法725条を削除することとなった場合には他規定において調整すべきことが同項に明記されている)[36][37]

親族関係の変動

血族

自然血族
  • 身分の取得
自然血族たる身分は出生によって取得する[38]戸籍法上の手続がなくとも出生という事実があれば血族としての身分を取得する(最判昭50・4・8民集29巻4号401頁)。ただし、非嫡出子については母子関係については分娩の事実によって生じるが(最判昭37・4・27民集16巻7号1247頁)、父子関係については父による認知が必要となる(民法第779条、父方の血族との関係も同じ)[39]。なお、原則として父母の離婚再婚は子との血族関係には影響しない[39]
  • 身分の喪失
自然血族の身分は死亡により消滅する[40]。また、子が特別養子となったときも消滅する(民法第817条の9)。
法定血族
  • 身分の取得
法定血族たる身分は養子縁組によって取得する(民法第727条)。これにより養子は養親の嫡出子と同様の血族関係となるが、養子についてのみ血縁関係を生じるのであり養子の血族と養親の血族の間に血族関係は発生しない[41]フランス法ドイツ法英米法では養子縁組により養子は完全に嫡出子と同様の関係となり実方との関係を断絶させるが、日本法では特別養子制度を設けており特別養子となる場合に限って実方との関係を断絶させる(民法第817条の2民法第817条の9)。
  • 身分の喪失
法定血族の身分は死亡、離縁、養子縁組の取消しにより消滅する[42]

配偶者

配偶者たる身分は婚姻によって取得され、離婚婚姻の取消しによって失われる[43]

姻族

姻族たる身分は(当事者となる配偶者の)婚姻によって取得され、離婚や婚姻の取消しによって失われる[43]。ただし、夫婦の一方の死亡は当然には姻族関係を消滅させない(民法第728条第2項を参照)。婚姻関係を終わらせるには戸籍法第96条による届け出が必要である。

このほか姻族たる身分は姻族自身の死亡によっても失われる[43]

親族関係の効果

日本法での親族の効果には次のようなものがある[44]


  1. ^ a b c 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、5頁
  2. ^ a b c d e 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、91頁
  3. ^ 前田陽一・本山敦・浦野由紀子著 『民法Ⅵ 親族・相続』 有斐閣〈LEGAL QUEST〉、2010年10月
  4. ^ a b 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)46頁
  5. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)47頁
  6. ^ a b c 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、103頁
  7. ^ a b c d 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)40頁
  8. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)49頁
  9. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)49頁
  10. ^ a b c d 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、7頁
  11. ^ a b c d e f 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)41頁
  12. ^ a b c d e f g h 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、106頁
  13. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)50頁
  14. ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)40-41頁
  15. ^ a b c 千葉洋三・床谷文雄・田中通裕・辻朗著 『プリメール民法5-家族法 第2版』 法律文化社、2005年11月、5頁
  16. ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、84頁
  17. ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、107頁
  18. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)50頁
  19. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)50頁
  20. ^ Schwimmer, Brian. “Systematic Kinship Terminologies”. 2016年12月24日閲覧。
  21. ^ Lounsbury, Floyd G. (1964), “A Formal Account of the Crow- and Omaha-Type Kinship Terminologies”, in Ward H. Goodenough (ed.), Explorations in Cultural Anthropology: Essays in Honor of George Peter Murdock, New York: McGraw-Hill, pp. 351–393 
  22. ^ a b 千葉洋三・床谷文雄・田中通裕・辻朗著 『プリメール民法5-家族法 第2版』 法律文化社、2005年11月、7頁
  23. ^ a b 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、96頁
  24. ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)37頁
  25. ^ a b 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、39頁
  26. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)47頁
  27. ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)42頁
  28. ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)44頁
  29. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)47頁
  30. ^ a b c 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、8頁
  31. ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、85頁
  32. ^ 我妻榮編著 『判例コンメンタール〈Ⅶ〉親族法』 コンメンタール刊行会、1970年、45頁
  33. ^ 我妻榮・有泉亨・川井健『民法3 親族法・相続法 第2版』勁草書房、2005年10月、32頁
  34. ^ a b 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、40頁
  35. ^ 二宮周平著 『家族法 第2版』 新世社〈新法学ライブラリ〉、2005年1月
  36. ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)44頁
  37. ^ 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)47頁
  38. ^ 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、43頁
  39. ^ a b 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、92頁
  40. ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、93頁
  41. ^ 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、43-44頁
  42. ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、95頁
  43. ^ a b c 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、44頁
  44. ^ 谷口知平編『新版 注釈民法〈21〉親族1』有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉1989年12月、99頁以下
  45. ^ 1日でも早く出生していれば年長者に該当する。
  46. ^ 1日でも早く出生していれば年長者に該当する。





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