西日本旅客鉄道 概況

西日本旅客鉄道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/01 23:41 UTC 版)

概況

営業概要

鉄道の営業エリアは山陽新幹線北陸新幹線上越妙高駅 - 金沢駅間および、北陸3県、近畿地方、中国地方の大部分と信越地方福岡県の一部の在来線であり、総営業キロ数は5,007.1 km[5][注 4][注 5]、駅数は1,174駅[1]、社員数26,500人(JR西日本単体)[1]と日本の鉄道事業者では東日本旅客鉄道(JR東日本)に次いでそれぞれ多い。

経営環境と経営戦略

JR西日本は自社の鉄道路線網を新幹線近畿地方在来線アーバンネットワーク)、北陸地方や中国地方など近畿圏以外の在来線の3つに大別している[3]

近畿圏のうち、日本の三大都市の一つに位置づけられる京阪神地区の輸送では、「私鉄王国」と称されるように近畿日本鉄道阪急電鉄阪神電気鉄道山陽電気鉄道南海電気鉄道京阪電気鉄道など多くの私鉄が存在し、JR西日本はこれら私鉄各社と競合関係にある一方、利用距離や目的地によって棲み分けがなされ、フリーきっぷの発売や振替輸送などで協調関係にある。山陽新幹線における都市間輸送では航空機との競合関係にある。京阪神地区以外の近畿地方や中国・北陸地方には赤字ローカル線を多数抱えているが、山手線を中心に莫大な数の通勤・通学客が利用する首都圏の在来線ネットワークを持つJR東日本や、日本の大動脈かつドル箱路線である東海道新幹線を擁する東海旅客鉄道(JR東海)には及ばないものの、安定した経営基盤を持つ。

JR西日本では、その発足直後から京阪神地区近郊路線を「アーバンネットワーク」と称して221系電車などの近郊車両の導入、東海道山陽本線琵琶湖線JR京都線JR神戸線)の複々線を最大限に利用した在来線列車の増発やスピードアップ、特に看板列車である新快速の運行拡大などに取り組み、沿線開発が活発であったエリアに重点的に投資を行うことで収益力を強化してきた。また「三都物語」キャンペーンを実施し、沿線ブランドの形成を図ってきた[注 6]

現状では、利用状況と収益性の観点から山陽新幹線や北陸本線特急と京阪神近郊の路線を中心に設備投資しており、京阪神地区の路線と地方路線ではかなり差別化している(「車両」の節を参照)。

赤字ローカル線への対応策は2010年4月5日の定例会見で、当時の社長の佐々木隆之が「大変重要な経営問題」との見解を示しており、同時に「赤字ローカル線の一部を廃止し、バスに転換する方向で検討」と発表している[6]

こういった状況を踏まえ、2008年から2012年にかけての中期経営計画[7] においては、「持続的発展に向けた事業戦略の推進」として「山陽新幹線の輸送サービス」と「京阪神エリアにおける線区価値の向上」を重点分野として明確に打ち出す一方、10年から15年後を見据えた「長期的視点からの経営構想の構築」におけるローカル線にかかる取り組みとして「ローカル線の設備、システムのダウンサイジング」や「〈バス、デュアル・モード・ビークル (DMV) 等への輸送モードの転換も含めた〉地域にとって最適な形の輸送サービスの提供」を経営の方向性として打ち出している。

バスについては、ソフトバンクグループなどと連携して、自動運転BRTの開発に取り組む計画を表明している[8]

主力である鉄道や同じ旅客輸送であるバス・船舶事業に加えて、大都市圏での駅ビルを含む商業施設運営や小売業・飲食業、観光・ホテル、不動産開発、ベンチャーキャピタルなどを営む多くのグループ企業を擁しており[9]、経営指針として非鉄道事業の強化を目指している。また、地方路線の沿線地域振興を目指し、魚介類の養殖や販売などの第一次産業にも参入している[10]

鉄道運行面

広域輸送

都市間広域輸送は主に山陽新幹線と北陸新幹線が担っており、在来線特急列車と京阪神地区での新快速ないし各種快速列車がそれを補完するような形態となっている。

山陽新幹線

山陽新幹線では「のぞみ」「ひかり」「こだま」が新大阪駅新神戸駅岡山駅広島駅小倉駅博多駅の各都市間の輸送を担っており、「のぞみ」を中心に東海道新幹線への直通運転も行っている。また、一部の列車は博多南線へ乗り入れている。

加えて、新大阪駅と九州新幹線鹿児島中央駅との間で直通運転も行っている。列車の種類が東海道新幹線と比べて多く、速達タイプの「のぞみ」「みずほ」、準速達タイプの「ひかり」「さくら」、各駅停車の「こだま」が運行されている。

直通運転を行う列車については、乗務員(運転士車掌)の交代は主に新大阪駅、博多駅で行う。

北陸新幹線

北陸新幹線では、速達タイプの「かがやき」、準速達タイプの「はくたか」、富山駅 - 金沢駅間の区間列車である「つるぎ」が運行されている。

なお、乗務員(運転士と車掌、金沢新幹線列車区が担当)は、北陸新幹線のうちJR東日本の管轄区間である長野駅まで越境乗務している。

在来線特急列車

大阪駅京都駅を中心として都市間輸送を行っている。大阪駅 - 金沢駅間では特急「サンダーバード」を運行している。北近畿方面には京都駅からは特急「はしだて」「まいづる」「きのさき」、大阪駅からは特急「こうのとり」「はまかぜ」を運行している。京都駅発着の関西空港南紀方面の特急「はるか」「くろしお」については、梅田貨物線を経由するルートを採っているため、大阪駅には発着せず、途中で大阪環状線に入って天王寺駅へ入る。

京阪神や山陽地方山陰地方を結ぶ陰陽連絡列車として、大阪駅発着の特急「はまかぜ」に加え、智頭急行線を経由する京都駅発着の特急「スーパーはくと」、岡山駅発着の「スーパーいなば」、伯備線を経由する岡山駅発着の特急「やくも」、山口線を経由する新山口駅発着の特急「スーパーおき」を運行している。山陰本線内の列車としては鳥取駅 - 米子駅益田駅間に特急「スーパーまつかぜ」を運行している。

JR他社間では、JR東海エリアとの列車として、金沢駅 - 名古屋駅間に特急「しらさぎ」、大阪駅 - 高山駅間に特急 「ひだ」、紀伊勝浦駅 - 名古屋駅間に特急「南紀」、JR四国エリアとの列車として、岡山駅 - 松山駅間に特急「しおかぜ」、岡山駅 - 中村駅間に特急「南風」、岡山駅 - 徳島駅間に特急「うずしお」、夜行列車としてはJR東日本エリアからJR東海エリア、自社エリアを経由してJR四国エリアを結ぶ、東京駅 - 高松駅間の寝台特急サンライズ瀬戸」、JR東日本からJR東海エリアを経て自社エリアの山陰地方を結ぶ東京駅 - 出雲市駅間の寝台特急「サンライズ出雲」がそれぞれ運行されている。

地域輸送

JR西日本の発足後、京阪神エリア(アーバンネットワーク)を中心にした体系に改められており、普通列車もそれに準じて運行されている。

京阪神地区の東海道・山陽本線では草津駅 - 西明石駅間の複々線を最大限に利用して新快速快速普通列車が増発・運行されている。新快速については網干駅播州赤穂駅発着の列車は姫路駅までが各駅停車、快速についても複々線の西明石駅 - 京都駅(朝ラッシュ時以外は西明石駅 - 高槻駅)間を除いた区間が各駅停車となり、これらの各駅停車区間は普通列車として運行されている。また、天王寺駅からの関西国際空港アクセス列車として「関空快速」、都市間輸送においての快速では、奈良方面発着は「大和路快速」、和歌山方面発着列車は「紀州路快速」が運行され、さらに福知山線の快速列車として「丹波路快速」が、奈良線の快速列車として「みやこ路快速」が運行されている。

京阪神地区以外では、広島市岡山市松江市米子市金沢市下関市といった主要都市近郊区間で普通列車を中心に運行している。

主な事故や災害、不祥事

重大死傷事故

阪神・淡路大震災の被害

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では大きな被害を受けた。

在来線では本線上で列車が8本脱線したほか、東海道本線JR神戸線六甲道駅を中心に高架橋や柱に大きな被害を受け、新長田駅付近の盛土が崩壊して駅設備が壊滅した。新幹線では、始発列車の前に地震が発生したため脱線などの被害はなかったが、橋脚が大きく損壊したり、高架橋が崩落したりするなど大きな被害を受けた。

在来線は同年4月1日に、山陽新幹線は同年4月8日に全線復旧した。

東日本大震災の影響

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震東日本大震災)によって車両部品の調達にめどが立たず、列車の運転に影響が出た。電車の電動機(モーター)に使用している車両部品を製造するメーカーが被災して製造の見通しが立たず、最終加工工場も福島第一原子力発電所の避難区域内に位置しているため操業することができない事態が生じた。部品の調達ができず、使用できない車両が早くても2011年4月下旬に発生する恐れがあることから、2011年4月から間引き運転を実施すると発表した[11]

2011年4月2日から特急列車への増結中止および臨時列車の運転も取り止められ、金沢・和歌山・福知山・岡山・広島エリアでは普通列車の運転が一部取り止められた[12]。その後、部品調達の見通しが立ったことから4月8日から通常ダイヤに戻し、京阪神地区での間引き運転は見送られることになった[13]

労働災害

2013年8月、尼崎労働基準監督署は、最長で月254時間残業し、2012年10月に過労自殺した社員の男性について労災を認定した。なお、2013年10月に遺族がJR西日本に対し1億9千万円の損害賠償を求め、大阪地方裁判所に提訴している[14]

新幹線の台車亀裂問題

2017年12月11日、山陽新幹線と東海道新幹線を通しで運行していたJR西日本所有車両による「のぞみ34号」の台車に亀裂が生じていることが名古屋駅で発見されるという重大インシデントが発生した[15]。その後の一年間でJR西日本が実施・表明した安全向上策として、新幹線の安全運行を担う「走行管理班」を復活させ、保守・検査部門を拡充した[16]。さらに振動などから異常を検知する装置の新幹線車両への取り付けを進めるとした[17]

平成30年7月豪雨の影響

2018年7月5日から8日にかけての平成30年7月豪雨により、中国地方を中心に多くの路線が被災した。最後まで復旧工事が行われていた芸備線中三田駅 - 狩留家駅間が2019年10月23日に運転を再開し、被災路線全てが復旧した[18][19][20]




  1. ^ ロゴの「鉄」の字は、金を失うという意味を避けるため「金偏に矢」という「鉃」の文字を使い、「西日本旅客鉃道株式会社」と表記している。ただし、登記上の商号常用漢字の「鉄」の字を用いている。また、四国旅客鉄道以外のJR各社もロゴタイプで同様に表記している。なるほどJRインターネットアーカイブ)も参照。
  2. ^ ただし、500系の先頭部など、自社の特急用車両に書かれている英語略称は「WEST JAPAN」。切符の地紋には「W」と記されている。
  3. ^ 同社とは読みも異なり、本会社は「にしにほん」と読むのに対し同社は「にしにっぽん」と読む。
  4. ^ a b c d 天王寺駅 - 新今宮駅間 1.0 km は関西本線としてのみ計上し、大阪環状線に重複計上していない。
  5. ^ a b c 七尾線の和倉温泉駅-穴水駅間 28.0 km(第三種鉄道事業区間)および山陰本線のトロッコ嵯峨駅-トロッコ亀岡駅 7.3 kmと梅田貨物線 10.0 km は含まず。北方貨物線は 12.2 km、片町線神崎川信号場 - 吹田貨物ターミナル駅間は 3.7 km として計算。
  6. ^ 事業エリアから遠く離れた関東地方でも、谷村新司の『三都物語』のテーマソングに乗った221系電車が走るテレビCMが流された。
  7. ^ a b 高速化事業区間は安来駅 - 益田駅間であるが、同日のダイヤ改正で米子駅 - 安来駅間も同時に高速化されている。
  8. ^ 偽造28件、省略9件。
  9. ^ a b c 放出駅 - 鴫野駅間 1.6 km は片町線としてのみ計上し、おおさか東線に重複計上していない。
  10. ^ 山陽新幹線の博多総合車両所への回送線を旅客線化したもので、新幹線車両で運行する。
  11. ^ a b ただし、廃止区間の設備の大部分は、おおさか東線としてそのまま使われている。
  12. ^ JR西日本の第一種鉄道事業においては旧称の「梅小路」表記。
  13. ^ 2017年3月4日のダイヤ改正で、山陽新幹線に乗り入れる定期列車が設定。過去にも2012年3月17日 - 2013年3月15日に山陽新幹線へ乗り入れる定期列車が設定されている。
  14. ^ JR東海管内では運転中。
  15. ^ 国鉄からの承継車両のうち、103系・105系・113系・117系クモハ123形・201系・381系の各電車を現在も運用しているのはJR西日本のみである。
  16. ^ 同時に新製されたJR四国5000系電車との併結運用を前提に新製されており、基本的に「マリンライナー」以外には充当されない。
  17. ^ 2006年までは「日本海」によりJR北海道への毎日乗り入れがあった。また、JR九州への乗り入れについては、2008年に寝台特急「あかつき」が廃止されて一時消滅していたが、2011年に山陽新幹線と九州新幹線が相互直通運転を開始したことにより復活した。
  18. ^ 現在、近畿車輛と川崎重工業では東海道山陽九州新幹線用の車両(JR東海・JR九州所属車も含む)は製造していない(N700A以降の東海道・山陽新幹線用車両はJR東海単独開発のため)。また、北陸新幹線用のW7系も現在は近畿車輛はW7・W10編成の合計2編成、川崎重工業はW1・W3・W5・W6編成の合計4編成に留まっている。
  19. ^ 現在は東海道・山陽新幹線用の16両編成のみを製造している。在来線車両は683系2000番台(S編成)とキハ187系(10・500番台)のみ。
  20. ^ 現在は新幹線車両のみを製造している。日立製作所は製造ラインをアルミ車体用に特化しているため、ステンレス車体を主体とした在来線車両の発注は見送っており、2020年時点で同社に発注した最後の在来線車両の形式である683系はアルミ車体だった。
  21. ^ 主に気動車を製造している。
  22. ^ 但し、221系電車と京阪神地区を走る通勤形電車は対象外。
  23. ^ 旧菱重プロパティーズ(かつての菱重興産グループ)で、三菱重工業と共同出資。
  24. ^ CMはオープニング直後の15秒2本のみ、他社スポットCMなどもなし、エンディングは曲で終わり提供読み無し
  25. ^ 同様の例は中部日本放送(現在はCBCテレビ、CBCラジオに分社)がある。
  26. ^ 小田急電鉄は、もともとは子会社の小田急カードが発行していたのを、2005年に合併して自社発行とした。このほかJR東日本もかつては自社で発行していたが2010年にビューカードに分社化した。
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