衛星測位システム 機能

衛星測位システム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/12/19 11:57 UTC 版)

機能

代表的な機能は、衛星航法システムの電波を受信することで地表面上や空中で自らの位置を知ることであるが、それ以外にも幾つかの機能が実現できる[3]

一般的な機能

  • 位置決定
    • 即時位置決定(航法)
    • 高精度位置決定(測量)
  • 速度決定(航法)
  • 姿勢決定(航法)
  • 時刻同期[3]

特殊な機能・利用法

すべての衛星航法システムに備わっているのではないが、以下のような特殊な機能を持つシステムがある。

システム構成

利用者受信機

利用者受信機は、複数の航法衛星から電波で送信された航法信号を受信し、その送信時刻を測定する[注 4]。送信時刻の測定は、擬似ランダム雑音 (Pseudo Random Noise; PRN) 変調信号の特性を用いて行う。
受信機内での測位計算
送信時刻の測定値はおよそ10 nsもしくはそれ以上の誤差を持つ[注 5]
また航法衛星の天体暦(軌道)の情報を受信し[注 6]、これにより送信時刻における航法衛星の座標が求められる(これの誤差は視線方向成分がほぼ1.5m以下)。
最終的に、利用者受信機の座標及び受信時刻(合わせて4つの未知変数:)の解は、慣性系を仮定し、各航法衛星の時空点座標を頂点とする光円錐(4つ以上が必要)の交点となる[4]
言いかえれば次の連立方程式の解となる。ここでは用いる航法衛星数を4機とし、航法衛星の信号送信時刻、その座標光速としている。

航法衛星

地上で測位が可能とするためには、可視衛星(空中の見通せる範囲内の航法衛星)を4機以上必要とする。さらには、良好な測位精度を得るには、精度阻害の少ない可視衛星を4機以上必要とする。加えて測位精度は複数の可視衛星の見通し方向にも依存し、静止軌道のように赤道上に一直線に並んでいては良好な測位は行えず、できる限り互いに離れた位置関係が望ましい。このような要求を満たすために、全地球規模の測位を行うシステムでは合計20機以上の航法衛星を3つや4つの地上2万キロ程の軌道上に等間隔で配置されることが多いが、特定地域向けの測位用では1つの軌道上に数機だけのシステムも計画中として存在する。
航法衛星は原子時計を搭載し短中期的な時間揺らぎの少ない航法信号を生成し送信することができる。原子時計の中長期的ずれ(バイアス誤差)については、予測情報(およそ2時間毎に更新)として利用者へ伝え、利用者側で誤差の除去を行う。

地上局/地上施設

航法衛星を管制する地上局が1つ以上必要であり、全地球規模のシステムでは関連する地上施設等を合わせると10ヶ所前後の地上局を持つ。航法衛星の軌道を管理する施設の他に、衛星軌道を正確に測距する施設、基準となる時系を保持する施設、電離層監視施設、航法衛星の天体暦及び搭載する原子時計の中長期的バイアスの予測値を決定する施設、衛星へのメッセージ通信施設、そしてシステム全体を運用管理する施設が必要となり、これらのいくつかの施設は統合されていることが多い[3]

システム例

全地球航法衛星システム

複合的なシステムも含む。

各システムの現状については各項目を参照のこと。

GPS

アメリカ合衆国のグローバル・ポジショニング・システム (GPS) は、最大32機の6種類の異なる軌道平面中地球軌道衛星によって構成される。1978年から運用され、1994年に全地球上で常時使用できるようになった。GPS衛星は、現在世界中で最も普及している衛星航法システムである。

ガリレオ

米国依存からの脱却のため、当時のヨーロッパ共同体ヨーロッパ宇宙機関は、2002年3月にガリレオと呼ばれる独自の全地球航法衛星システムを導入する事で合意した。当初、中華人民共和国も計画に参加している(後に離脱)。当初の予定では24億ポンドで[5]30機の中地球軌道の衛星によって2010年から運用する予定とされた。GPSと共存性相互運用性が確保される見込みである。

その後財源や事業体制[注 7]などの課題により運用開始は2012年の予定になった。最初の実験衛星ジオベ衛星は、ロシアのソユーズロケットを用いて2005年12月28日に打ち上げられた。2016年12月25日、ようやく全地球サービス開始にこぎつけたと日本では報道された[6]

GLONASS

旧ソ連は米国との対抗上、GPSと同様のGLONASS(グロナス)を構築しようとしたが必要な衛星を全て打上げる前にソ連が崩壊してしまい、予算の縮小から衛星打ち上げが頓挫。一部の地域で部分的に運用されていた[注 8]。ロシアになってから計画が再開され、2005年には再開後初の衛星を打ち上げ、2010年9月までに24基の衛星を打ち上げ、GLONASSは復旧した(24機中24機が運用中である。)。2011年には全世界で測位可能となり、現在は測位精度を高めるためにGLONASSとGPSを併用する受信機が登場している(GLONASS#受信機も参照のこと)。

Compass

中国は北斗と呼ばれる地域衛星航法システムを拡張することで2020年までに全地球規模で測位できるようにする[7]。計画はコンパスと中国の公式の報道機関である新華社で呼ばれる。コンパスシステムは30機の中地球軌道の衛星と5機の静止衛星から構成される。

全地球航法衛星システムの比較

システム 信号方式 軌道 遠地点と近地点 衛星数 周波数 状態
GPS アメリカ CDMA 20,200 km, 12.0h ≥ 24機 1.57542 GHz(L1信号)
1.2276 GHz(L2信号)
運用中
GLONASS ロシア FDMA/CDMA 19,100 km, 11.3h 24機(CDMA対応機を打ち上げた場合は30機) 約 1.602 GHz (SP)
約 1.246 GHz (SP)
再構築後運用中 CDMAは準備中
Galileo ヨーロッパ共同体 CDMA 23,222 km, 14.1h 2機の試験機が周回中
22機の衛星の運用予算が認可
1.164-1.215 GHz (E5a and E5b)
1.215-1.300 GHz (E6)
1.559-1.592 GHz (E2-L1-E11)
準備中
Compass 中国 CDMA 21,150 km, 12.6h 35機[8] B1: 1,561098 GHz
B1-2: 1.589742 GHz
B2: 1.207.14 GHz
B3: 1.26852 GHz
15機運用中、20機追加予定

地域航法衛星システム

北斗 1

中国の地域航法衛星システムで全地球規模のCompass ナビゲーションシステムへ拡張中。

DORIS

Doppler Orbitography and Radio-positioning Integrated by Satellite (DORIS) はフランスの衛星測位システムである[9]

IRNSS

Indian Regional Navigational Satellite System (IRNSS) はインド政府の下でインド宇宙研究機関によって現在開発が進められている衛星航法システムである。2006年5月に政府は計画を承認して2014年に完成して運用を始める予定である[10]。7機の航法衛星から構成される[11]。7機の衛星は全て静止軌道から地域の地図情報を送信する。天候に関わらず7.6m以上の精度でインドとその周辺のおよそ1,500 kmの地域を網羅する[12]。最終目標はインド全域で端末も全てインド製になる予定である[13]

QZSS

日本には、3基の人工衛星からなりGPSの位置情報を補正して高精度の測位を可能とする準天頂衛星システムQuasi-Zenith Satellite System, QZSS)と呼ばれる計画がある。すでに事業化を検討する民間の主体として、新衛星ビジネス株式会社が2002年(平成14年)に設立されており、高速で移動する車輛の内部で精度25cmとされる測位精度を用いた各種事業が検討されていた。

最初の人工衛星は、2008年(平成20年)に打ち上げられる予定であった。予算の都合で、通信・放送との複合機能衛星となっており、それらのサービスのシナジー効果が期待されていたが、採算性の面から2006年(平成18年)3月に放送・通信の事業化が断念され、純粋な測位衛星として利用されることになった(新衛星ビジネス株式会社は2007年8月2日に解散し、財団法人衛星測位利用促進センターが、測位分野のみ継続)。

ちなみに日本では2005年(平成17年)、第44回衆議院議員総選挙自由民主党マニフェストである「政権公約2005」の52項目に「国家基盤としての衛星測位の確立と骨格的空間情報の整備」との記載があり、日本独自の高精度な位置測定衛星を打ち上げる可能性があった。

日本ではその後、内閣官房測位・地理情報システム等推進会議が設置され、2006年(平成18年)3月には「準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針」を発表した。それによると、国家が衛星測位の重要性を認識し、民間の資金負担がないとしても、国家が衛星測位システムを整備することを宣言している。

2010年(平成22年)9月11日に、準天頂衛星の実用試験機として初号機みちびき (QZS-1)「みちびき」が打ち上げられた。2013年に運用が開始され、2016年現在は1機体制でL1-SAIF信号を送出しており、高精度なSBAS(衛星航法補強システム)的利用が可能である。今後、2017年に衛星3機が追加で打ち上げられ、2018年に4機体制でシステムを運用開始し、さらに2020年に初号機の後継1機と2023年に衛星3機を追加して7機体制で運用することが決定された[14][15]

衛星航法補強システム

静止衛星型衛星航法補強システム (SBAS)

航空機での精度向上を当初目的として、(静止)衛星型衛星航法補強システム (SBAS: Satellite Based Augmentation System) の運用が開始されている。

また、以下の地球的地域においてSBASが計画されている。[16]




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注釈

  1. ^ 2011年平成23年)4月からは国土地理院では全地球型のシステム(全地球航法衛星システム)を、GNSSと呼称することになった。
  2. ^ よく誤解されるが、GPSはあくまでも衛星測位システムの中の1つ(固有名詞)であり、衛星測位システムそのものを指すものではない。
  3. ^ GPSは地上約20,200 kmのほぼ円軌道をとる。傾斜角55度の6つの軌道に4機ずつの合計24機に加えて、予備に何機かを軌道上で常に用意している。周期はおよそ12時間である。GLONASSは19,100 kmの高度を120度ごとの傾斜角64.8度3つの円軌道に45度異なる8機、合計24機の衛星を配置する予定である。周期は11時間15分44秒である。ガリレオは傾斜角65度で長半径29,601.297 kmの3つのMEO (Medium Earth Orbit) 軌道内に各9機の衛星が40度ごとに離れて置かれ、合計27機が予備3機と共に置かれる。予備衛星も各軌道で1機を持ち、およそ1週間で移動を完了する。周期は14時間4分45秒17である。
  4. ^ 受信機測定値である信号送信時刻は、そのままの形よりも、「受信機で仮り決めした受信時刻」=「伝播時間」という形で表現されることが多い。「この伝播時間×真空中の光速度」は擬似距離と呼ばれる。受信・測定時刻については受信した複数の航法衛星に対して同一時刻で行われる。この受信時刻は、GPS時に同期させる場合が多い。例えば、測定レートが 1 Hz の受信機では、GPS時の正秒時との差が±1 ms 以内になるよう受信機内部で調整される。
  5. ^ ただし送信時刻の測定値には、航法衛星での航法信号の生成の時刻ずれ(つまり信号基準である衛星時計のずれ、バイアス)が元来含まれている。そこで正確な送信時刻を得るために、このバイアス値の情報を航法衛星から受信し利用者側で差し引くことで、ほぼ確実に5 ns(距離に換算して1.5 m)以内にバイアス誤差が除去された送信時刻を得ることができる。
  6. ^ 航法衛星の天体暦(軌道)、衛星時計のバイアスは航法メッセージ信号を復調して得る。
  7. ^ 民間企業も採算の見込みが立たないと手を引いたため、本格運用開始の共同事業体の体制がととのわず、目処が立たない状況となっていた。
  8. ^ このことは、航法衛星システムの維持がいかに財政的な裏付けを必要とする困難な事業であるかを物語っている。
  9. ^ Cバンドは4-8GHz、Sバンドは2-4GHz、Lバンドは1-2GHzである。
  10. ^ 日本では長年の電離層観測による「臨界プラズマ周波数値」によって、TECとの相関を利用した高い精度の補正値が得られており、他国も同様の研究を行っている。
  11. ^ 正確には、慣習上、乾燥成分と呼ぶものは大気分子全てを非分極気体分子と見なした屈折率寄与の和(静水圧項)を指す。気体としての水(水蒸気)からの屈折率寄与については非分極項と分極項(すなわち非静水圧項)とに分け、後者を指して慣習上、湿潤成分と呼ぶ。
  12. ^ 中性大気の屈折率は15GHzまでの周波数帯に対して一定値を示し、衛星航法に使用される電波帯では周波数差から屈折率推定を行うことはできない。
  13. ^ 衛星航法システムの衛星が使用する搬送波の周波数帯は、国際電気通信連合 (ITU) の割り当てを受けているが、複数のシステム同士は2010年現在、互いの周波数は離散的に配置されている。
  14. ^ 従来のGPSだけが存在していた時代ではSAによる測位精度操作に大きな意味があったが、複数のシステムが並立するようになれば相対的に1つのシステムごとのSAの価値は希薄化する。

出典

  1. ^ [1] 2011年度施行改正公共測量作業規程の準則(基準点測量)解説、アイサンテクノロジー
  2. ^ [2] 平成 22 年度 -公共測量- 作業規程の準則の一部改正 第2編 基準点測量 新旧対照表、国土地理院、赤字で示されている箇所。
  3. ^ a b c d e f ヴェレンホーフ、リヒテンエッガ、ヴァスレ著、西修二郎訳、『GNSSのすべて』、古今書院、2010年2月10日初版第1刷発行、ISBN9784772220088
  4. ^ en:GNSS_positioning_calculation#The_solution_illustrated
  5. ^ “Boost to Galileo sat-nav system”. BBC News. (2006年8月25日). http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/5286200.stm 2008年6月10日閲覧。 
  6. ^ ついに運用が始まった欧州版GPS「ガリレオ」
  7. ^ Beidou satellite navigation system to cover whole world in 2020
  8. ^ China to send third navigation satellite into orbit
  9. ^ DORIS information page
  10. ^ April 15 launch to give India its own GPS
  11. ^ India to develop its own version of GPS
  12. ^ Launch of first satellite for Indian Regional Navigation Satellite system next year
  13. ^ India to build a constellation of 7 navigation satellites by 2012
  14. ^ 宇宙基本計画(平成28年4月1日閣議決定) (PDF)”. 内閣府宇宙基本計画. 宇宙開発戦略本部. p. 17 (2016年4月1日). 2016年12月20日閲覧。
  15. ^ 宇宙基本計画工程表(平成27年度改訂版) (PDF)”. 内閣府宇宙基本計画. 宇宙開発戦略本部. p. 3 (2015年12月8日). 2016年12月20日閲覧。
  16. ^ http://www.navipedia.net/index.php/Other_SBAS
  17. ^ GPS without limits
  18. ^ Why are there altitude and velocity limits for GPS equipment?
  19. ^ COCOM Limits
  20. ^ 例えばBroadcomは、http://ja.broadcom.com/products/GPS/GPS-Silicon-Solutions/BCM47511






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