蕎麦 日本各地での蕎麦文化

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蕎麦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/02 06:43 UTC 版)

日本各地での蕎麦文化

蕎麦の嗜好

東京

蕎麦専門店だけではなく、うどんも提供する店もありこのような店も「蕎麦屋」と呼ぶ。立ち食い店も多い。蕎麦と酒を楽しむ趣向もある。古く江戸では、うどんも盛んに食べられていた。江戸時代には製麺技術が全国的に普及していなかったため、ほとんどの地方では麺としての蕎麦・うどんはハレの日のご馳走であり、蕎麦屋のある江戸などの都会において蕎麦・うどん文化は開花してゆく[94]。しかし、江戸時代中期以降、江戸での蕎麦切り流行に伴って、うどんを軽んずる傾向が生じたという。

江戸でうどんよりも蕎麦が主流となった背景には、水質や、出汁の原料、醤油の質、男女比や労働層、文化の特殊性などさまざまな要因があるが、食事からの栄養の多くを白米で摂取したことにより、ビタミン類の欠乏により生じる「江戸患い(えどわずらい)」と呼ばれた脚気を、ビタミンB1を多く含む蕎麦を食べることで防止・改善できたことにもよる。また、蕎麦に含まれるルチンの成分が酒呑みの高血圧や動脈硬化を抑える効果があることも人気の一環であったと思われる。

蕎麦とうどんの抗争を酒呑童子退治になぞらえた安永期の珍品黄表紙『化物大江山』(恋川春町作)は、当時の江戸人の蕎麦・うどんへの価値観の一面を描いていて、意外な資料価値がある。源頼光役は蕎麦、悪役の酒呑童子はうどんである。なぜか、「ひもかわうどん」だけは蕎麦側についており、蕎麦一色だった江戸でも例外的に人気があったようだ。

以後、江戸→東京では、蕎麦を食べることに一種の「」を見出す高い価値付けさえ生じるようになり、「夕方早くに蕎麦屋で独り、種物の蕎麦を肴に酒を飲む」ことが、スノッブ(俗物根性)さも臭わせる趣味として横行するまでに至る。江戸では、蕎麦を食べることを「手繰る」(たぐる)ともいう。このような言葉を使うこと自体、1つの気取りと言える。

夏目漱石の『吾輩は猫である』(明治38年(1905年))でも、粋人を気取るハイカラ遊民・迷亭が「うどんは馬子の喰うもんだ」とうそぶき、上がり込んだ苦沙弥先生宅で勝手に蕎麦の出前を取って一人で喰う描写がある。蕎麦食いの講釈をとうとうと垂れ、薬味のわさびの辛さに涙しつつやせ我慢で耐えて蕎麦を呑み込む迷亭のいささか俗物的な面も否めない粋へのこだわりぶりに比べ、胃弱症の苦沙弥先生が「うどん好き」であることで、うどんの印象は相対的に冴えないものとなる。

同じく漱石作品の『坊っちゃん』(明治39年(1906年))においても、江戸っ子である“坊っちゃん”が松山で天ぷら蕎麦を注文する一場面が見られる。

近畿

近畿における蕎麦処の筆頭は兵庫県豊岡市出石町出石城下町)で、皿そば「出石そば」は広く知られている。これは江戸時代に蕎麦の本場だった信州上田藩の藩主仙石政明出石藩に国替えとなった際、大勢の蕎麦職人を連れて来て以来の伝統とされる。

京都は古くからの蕎麦屋が多い。これは背後に控える丹波地方でそば作りが盛んだったためである。また、有名なニシンそばは幕末に生み出されたものであり、古くから京都にあった惣菜である「ニシン昆布」に発想を得ている。全体的に見れば、大阪と同じくうどんの方が好まれる傾向にあるが、大阪のようにそば屋がうどんを提供する場合は極めて稀である。

大阪では「そば」より「うどん」の方が一般的に好まれるとされ、立場が東京とは全く逆である。うどん屋が利用者のニーズに応えて「そば」も出しているという概念が強く、蕎麦屋であってもうどんを提供する店も存在する。また、出汁は元来うどんに用いる前提で作られた、淡口醤油を基調とした透き通ったものを用いることが多い。しかし、それによって生まれた文化もあり、たぬき(油揚げの乗ったそば)やとろろ昆布が乗ったこぶそばは大阪が発祥である。また、そばは産地の関係か一般に黒そば、田舎そばなどとと呼ばれる殻ごと碾いたものが好まれる傾向にある。

日本の農山村における蕎麦

日本の農山村において、伝統的に蕎麦切りはもてなしの料理だった。焼畑でソバを栽培していたような山村にあっても、蕎麦切りは祭礼正月、来客時のごちそうであると認識されていた。どこの家でも素人ながらに蕎麦打ちの技術を持っており、来客があると、家の主人もしくは主婦が蕎麦を打ち、食事として供した。

食べ方としては、にんじんや椎茸などを細切りにして煮込んだ澄まし汁みそ汁をつけ汁にして、もりで食べる。また、蕎麦粉の節約のため、細切りの大根(薬味とは異なる)や、春にはセリなどをゆでて、麺と混ぜて盛りつけて食べることもあった。一方、蕎麦掻きは、作るのが簡単であることもあり、普段、農作業の合間に口にするような食べ物だった。他にも、その他の雑穀類と同様、団子にしたり、野菜を煮立てた中に蕎麦粉を入れてかき混ぜるような食べ方もあった。食糧の自給をほとんどしなくなったことや、都会風の蕎麦の食べ方の普及により、地域ごとに特色のあった蕎麦の食べ方は廃れつつある。

各地の名物そば

ソバは痩せた土壌でも栽培できたことから、北は北海道から南は鹿児島まで、山間地や新規開拓地で盛んに生産された。なお、各地の有名・老舗蕎麦店、立ち食い蕎麦屋、蕎麦チェーン店などについてはそれぞれ関連項目を参照。

北海道地方

東北地方

青森県
津軽そば弘前市
元々はつなぎに大豆を使い、手間を掛けて作られる蕎麦[68][95][96]を指していたものの、その手間から作る人や店が減少したことによって津軽地域で食べられる通常のそばを指すことも多くなった[97]。「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」の三たてがよいとされる江戸前のそばとは異なり、あえて茹でおきのそばをかけで食べるという特徴がある。
白神そば(西目屋村
南郷そば(八戸市
岩手県
わんこそば花巻市盛岡市
秋田県
石川そば(八峰町
江戸時代よりそばの栽培が行われていた。そば粉のつなぎとして豆乳を使用しているのが特徴[98][99]
西馬音内そば(羽後町
山形県
板そば(山形県村山置賜最上
ざるではなく木で作られた長方形の浅い箱状の器に薄く均一に盛られる。蒸籠に盛られるより水分の吸収が蕎麦に適している。通常は盛り蕎麦の3 - 5人前の量であるが、蕎麦好きであれば、軽く平らげることができる。
冷たい肉そば河北町谷地)
茹でた鶏肉の薄切りを具材に用いた蕎麦[100][101]
冷たい肉そば
山形そば(山形市
蕎麦店が江戸に誕生してから時間をおかず、蕎麦に関する技術が山形に伝わって定着し、常食されるようになった[102]松尾芭蕉の『奥の細道』の随行者・河合曾良の「曾良旅日記」に羽黒山で蕎麦を食べた記述がある[102]
天童そば(天童市
手打そばが観光資源となっており[103]、また乾麺も生産されている[104]
金俣そば(遊佐町
鳥海山の山腹に位置する金俣の気候が生産に適しており、香り高いそばになる。
天保そば山形市、他)
天保の大飢饉の際に後世を想って俵に詰め保存された蕎麦の実が、平成11年に福島県の浜通り天保当時は相馬中村藩)の古民家の屋根裏から発見され、研究室や試験場へ託した後に山形県内の製粉所が約160年ぶりに発芽させたもの。他品種との交雑を避けるため、本土から30㎞近く離れた日本海沖合の飛島でのみ栽培されている。
福島県
裁ちそば(南会津地方)
つなぎ粉を一切使わない生地で脆く畳むのが難しいため、生地を伸ばした後に数枚から十数枚重ねて裁つように切るところから、こう呼称されるようになった[68][105]
磐梯そば(磐梯町猪苗代町
地産そば粉と名水百選にも選ばれている磐梯西山麓湧水群の天然水を使用した蕎麦[106]。磐梯そばの知名度向上と地域活性化を目的として2007年に磐梯町で「第13回日本そば博覧会 in 会津・磐梯」が開催された[107][108]
山都そば(喜多方市山都地区)
宮古地区で有名なことから宮古そばとも言う。つなぎを一切使用しない、地産そば粉と伏流水を使用した蕎麦で、手打ち体験にも力を入れている[109]耶麻郡山都町(現・喜多方市)が蕎麦貯蔵用の大型保冷庫を建設した。
高遠そば南会津郡下郷町大内宿
会津松平家の初代藩主保科正之は大変なそば好きだったと伝えられており、また二十数年信濃国高遠藩との密接な関わりがあり、この地域ではみそ味(みそ+大根おろし+ネギ)のそばつゆ「からつゆ」にて蕎麦が食されていた[68][110][111][112]。その後、保科正之が陸奥国会津藩23万石と大身の大名に引き立てられたことがきっかけで、この「からつゆ」蕎麦の食べ方も会津地方に伝わり、発祥地の名を取って「高遠そば」と呼ばれるようになったが、その名が逆に会津から高遠地区に伝わって「からつゆ」蕎麦を「高遠そば」とも呼ぶようになり、それに対して出汁の効いた醤油味のつゆは「あまつゆ」とも呼ぶ[68][110]。現在福島県の高遠そばは南会津郡下郷町大内宿の名物として有名である。当地では箸が用意されず、付け合せの長ネギを用いて食す事が特徴である。
檜枝岐そば(檜枝岐村
檜枝岐産の蕎麦(前述の「裁ちそば」等)[113][114]を指す。

関東地方

茨城県
金砂郷そば(常陸太田市
常陸太田市金砂郷地区は茨城県の奨励品種「常陸秋そば」の発祥地であり、その旧町名をそばのブランド名として復活させた(商標登録日本第4873108)[115]
栃木県
今市そば・日光そば(日光市
日光市今市地区は、ソバ生育に適した気候と地形だったことから古くからの産地で、蕎麦屋は老舗町おこし観光資源として新たに誕生した店もあり、地域活性化の一環として秋には「日光そばまつり」が行われている[116][117]
群馬県
上州そば(主に利根郡周辺、ほか群馬県全域)[118]
蕎麦の色が濃く、強い風味とコシ、太めの麺が特徴[119]
東京都
深大寺そば調布市三鷹市
元禄年間、天台宗東叡山寛永寺貫首公弁法親王に蕎麦切りを献上し賞賛を得てから知名度が上がり、その後一般庶民に広まった[120]
とろろ蕎麦(八王子市高尾山
大正時代、山を登る参拝客に精をつけてもらおうと麓の店が提供したのが始まりといわれている[121]地域おこし観光資源として、冬季に京王電鉄と「冬そばキャンペーン」実行委員会によって「高尾山の冬そばキャンペーン」が開催されている(2008年(平成20年)現在6回目)[122][123]
あられそば(東京都
小柱(バカガイの貝柱)を具にした温かい蕎麦[124]。小柱をかき揚げにして具にする店舗もある。
神奈川県
秦野のそば(秦野市
タバコ耕作の裏作としてソバが作られ[125]神奈川県内一の産地となっており、新かながわの名産100選[126]に選定された。

中部地方

新潟県
へぎそば・布海苔そば・十日町そば(十日町市小千谷市
へぎそば
つなぎに、布海苔を使用し、生麺の他に乾麺も製造しており、地産地消運動を奨励し、そば打ち体験ができるスポットもある[68][127][128][129]
しらうお(素魚・白魚)そば(佐渡島
シラウオを具材に用いた蕎麦[130][131]
大崎そば(佐渡島)
地元産で石臼挽きのそば粉100%で作った麺と、だしはアゴ(トビウオ)を用いた蕎麦[132][133]。「うまい本物の蕎麦を作って食べよう」という発想から生まれ、併せて郷土料理を食べたり大崎地区の伝統芸能を鑑賞できる等地域活性化の催しとなっている「大崎そばの会」が昭和53年(1978年)より毎年11月後半から12月初旬に行われている[132][134][135]
富山県
利賀そば南砺市
元々は、つなぎは玉子でそれにそば粉100%で作る蕎麦だったが、麺が切れやすく食感の好みも分かれるため、近年この地域にある蕎麦店では各店毎に独自性を出した蕎麦を作っている[136]。冬には「南砺利賀そば祭り」が催されている[137]
石川県
門前そば(輪島市
能登半島産のそば粉とつなぎには自生する自然薯を使った蕎麦[138]
鳥越そば(白山市
白山市鳥越地区産そば粉を使用した蕎麦で、毎年秋に「鳥越そば花まつり」「鳥越新そばまつり」が行われている[139][140]
福井県
おろしそば(越前そば)
越前そば(好み蕎麦仕様)
辛味大根と醤油を合わせてつけ汁にする蕎麦[68]
丸岡そば (坂井市丸岡町)
今庄そば(南越前町[141]
大野そば(大野市[142]
美山そば(福井市
山梨県
御岳そば甲府市昇仙峡
長野県
信州そば
長野県で生産されている蕎麦の総称及び登録商標
信州そば(天麩羅付き)
戸隠そば(長野市戸隠)
戸隠そば
凍りそば(北信地方)
寒晒し蕎麦(長野県諏訪地方、伊那地方)
凍りそばとは違い、玄ソバを厳寒期の清流に浸し、天日と寒風にさらして乾燥させて製造される。江戸時代に「暑中寒晒蕎麦」として信濃国伊那郡高遠藩と、信濃国諏訪郡高島藩の2藩から将軍家に献上され夏の土用に食された[143][144]。管理が難しい事などから明治以降は途絶えていたが、出羽山形藩に高遠藩主保科正之が移った縁があり1974年に献上の記述が見つかったことから研究の末、1984年に山形で初披露された[145][146]
行者そば(伊那地方)
奈良時代初期に役小角木曽駒ヶ岳で修行中、幾つかある登山道の途中にある集落「内の萱」の里人に篤い持て成しを受け、そのお礼に役小角が里人に渡したソバの種が発祥とされ、焼き味噌を溶き入れたつゆ(辛つゆ)に薬味として辛子大根おろしとネギを入れて食べる[147]。行者は修行の中に「五穀断ち」があるが、そばは該当せず、また火を使わなくても食する事ができる点を理由に、そばの実や粉を常備食としていた。
富倉そば(北信地方)
須賀川そば(山ノ内町)
富倉そばと同じオヤマボクチをつなぎに用いたコシが強い蕎麦と、そばがきの一種で長野県選択無形民俗文化財の「はやそば」が特徴である。
開田そば(木曽町開田高原)
冷涼で朝霧や夕霧が発生する気候によりソバ生育に適していた事から古くからのソバ産地で、その地産そば粉で作った蕎麦である[148]。具材にすんきカブ菜の漬け物)と鰹節を用いた「すんきそば」は冬季に作られる[68]
霧下そば(北信地方
「霧下そば」について、狭義では戸隠そばの中でも昼夜の気温差が激しく霧の発生する場所で獲れたソバやそば粉やそれで作った蕎麦だけを指し、広義では戸隠産の良質なソバやそば粉やそれで作った戸隠そばを指す[149][150]。また、同様の条件を満たした「開田そば」を指すこともある[68]
善光寺門前そば(長野市
単に「門前そば」や「寺町そば」とも言われ、善光寺表参道周辺で営業している店で出される蕎麦の総称。特に共通の特徴がある訳ではないが、蕎麦屋の立ち並ぶ密度と、参拝の休憩所と名物を求める参拝客から暗黙的に認知され定着したようである[151][152][153]
高遠の在来種そば(伊那市
高遠江戸時代には戸隠川上と並ぶ「信州そば三大名産地」であったが、戦時中の食料増産で収穫の多い「信濃一号」にほぼ置き換わってしまった。その後2010年代からは従来の「入野谷在来種そば」の復活が行われて、広く食されるようになってきた[154]。福島県の高遠そばも参照。
本山そば(塩尻市
本山宿は「そば切り発祥の地」といわれ、その所以は宝永3年(1706年)に出版された『本朝文選(風俗文選)』に「蕎麦切りといっぱ(いうのは)、もと信濃の国本山宿より出て、あまねく国々にもてはやされける」と書かれたことによる[155][156][157]。また、本山宿本陣では寛文10年(旧暦)6月4日(1670年7月25日)の大名宿泊時に蕎麦切り献上の記録も残っている[155]。この地域では家庭毎に蕎麦打ちの技術が伝えられていたこともあって長らく蕎麦屋がなかったが、本山手打そば振興会の手によって蕎麦屋が開店した[155]
ただし、日本のそば切りの発祥は#歴史の節にて宝永3年(1706年)より古い文献も示されているため、本山そば説が否定されることもある。
とうじそば(松本市奈川地区)
信州野麦峠周辺の旧奈川村に伝わるそば。そばをつゆに浸ける事を「湯じ」といい語源と言われているが、奈川では「投汁(とうじ)」と読み、ひたし・あたためるという意味もあり[158]登録商標になっている[要出典]。汁は火にかかったなべに入って(いることが多く)常時温かくなっており、これに小分けしたそばを専用のカゴに入れて浸してから食べる。そばを投じるためとうじそばという。わんこそばのように、家主が次々とそばをカゴに入れて温め、客人におなか一杯食べてもらうことが目的に発祥したとの説もある。
安曇野そば(2018年7月21日撮影)
安曇野そば(安曇野市
名水百選」、「水の郷百選」に選ばれた安曇野わさび田湧水群の名水を用いた蕎麦と、日本最大規模の大王わさび農場をはじめとする地元産の山葵を薬味とする蕎麦の総称。名水と薬味が共通であるため、蕎麦は昔ながらの信州そば(田舎そば)だけでなく店ごとに特徴を出すなど差別化の試みが見られる。そこが地元民にとって飽きの来ない選択肢の広さとして受け入れられている。NHKの連続テレビ小説「おひさま」の舞台としても有名になった。
岐阜県
荘川そば(岐阜県・飛騨地方)
白川そば(岐阜県・白川郷
静岡県
茶そば(静岡県中部・西部地区)
を練りこんだ蕎麦[159]
天竜そば(浜松市天竜区
愛知県・岐阜県
コロ(香露)
冷やし麺の一種。そばの他、きしめんうどんでも作られる。

近畿地方

滋賀県
日吉そば(大津市
日吉そば(鶴喜蕎麦)
坂本の郷土料理。江戸時代享保年間に鶴屋喜八が坂本で開いた蕎麦屋「鶴喜蕎麦」を起源とする[160]。小説家の司馬遼太郎が、日吉大社の近所の「鶴喜蕎麦」を目指して来たが、間違えて屋号が「日吉そば」(同名の立ち食い蕎麦チェーン店とは無関係)の蕎麦屋に入ってしまう行が紀行文集『街道をゆく(叡山の諸道)』にある。
箱館そば・今津そば(高島市
箱館山の麓にソバ栽培地が点在しており、その地産そば粉を使用した蕎麦[161][162]
多賀そば(多賀町
水口そば・信楽そば(甲賀市
伊吹そば(米原市)
伊吹そばは国が地域ブランドとして保護する地理的表示(GI)に2019年に登録された。
京都府
犬甘野そば(亀岡市
犬甘野高原地帯産ソバは品質の良さから1997年(平成9年)度に社団法人日本蕎麦協会会長賞を受賞している[163]。その地産そば粉を使用して作った蕎麦で、つなぎに亀岡産ヤマノイモを用いたものもある[163]
筒川そば(伊根町
兵庫県
出石そば豊岡市出石
出石そば
永沢寺そば(三田市
永沢寺周辺地域で食べられている蕎麦。そば打ち体験にも力を入れており、そばに対する興味関心の向上を目的とした「そばまつり」が毎年秋に開催されている[164]
奈良県
荒神の里そば・笠そば(桜井市
この地域はソバ栽培に適した条件が整っていたことや国営総合農地開発事業にて拡大化した農地の活用方法として1992年(平成4年)からソバ栽培に取り組み、それに伴って蕎麦屋も開店している[165][166]
和歌山県
高野そば(橋本市伊都郡
伊都地域の新しい特産品として、JA紀北かわかみと和歌山県農業大学校が中心となって推し進めている[167]
広域
あつもり(熱盛り・敦盛)そば(大阪府・京都府京都市・兵庫県神戸市)
「あつもり」(『蒸篭に入れて蒸した麺』、または『敦盛と「厚盛り・熱いもり」を掛けた洒落』)である蕎麦[168]
黄そば
中華麺にそばつゆをかけたもの。姫路えきそばが有名。

中国地方

岡山県
蒜山そば(真庭市
蒜山高原では昔からそばの栽培がされており、一時期大きく衰退した時期もあったが健康ブームなどから作付数が上向きになっている[169]
広島県
豊平そば(北広島町
山県郡豊平町(現・北広島町豊平地区)は、ソバ栽培に適した条件が整っていたこともあり出雲そばの流れを汲んだそばが細々と作られていたが、1987年(昭和62年)に地域おこしの一環として当時の町長や農協を中心に町役場(当時)職員や農家や町民達によって、新たに江戸流の更科系を取り入れた白いそばによる町おこし活動が始まり、関係者が当時山梨に在住していたそば打ち名人の元へ入門し各種ノウハウを学び重要な要素を得て[170]、それらを取り入れた地域おこし活動を継続して取り組んだことにより西日本有数のそばの里と称されることもあり[170][171]、そこで収穫されたものを加工している[172][173]。また後継者不足の問題も表面化してきており、その対策としてそば打ちの技術や作法を習得することを目的とした「豊平流そば打ち段位認定制度」を発足させ道の駅豊平どんぐり村で実施したり、新品種「とよむすめ」の栽培を展開するなど各種活動を行っている[170]
島根県
出雲そば出雲地方
出雲そば(割子そば5段)
割子そば(出雲地方)
「わりご」という段重ねの朱塗りの円い器にそばを小分けして盛り、直接薬味やつゆをかけて食べる[68][174]
釜揚げそば(出雲地方)
三瓶そば
三瓶山の山麓はソバ栽培に適した土壌で、三瓶山麓で薬用人参の栽培が安永2年(1773年)から始まると共にソバ栽培も盛んになって節目で食されるようになり、三瓶温泉の公衆浴場が1877年(明治10年)3月にできてそちらの献立に取り入れられた事や明治後半に三瓶高原が陸軍演習場になり兵隊に食されたことで広く知られるようになった[174]。食糧が豊かになってきたことや農家の高齢化が進んできた事で昭和30年代後半にはソバ栽培が衰退していったが、1984年(昭和59年)、地産地消の三瓶そば復活を目指した有志によって「九一そばの会」が結成され、ソバ栽培や加工が復活し、1986年(昭和61年)、農林水産省の山村振興対策事業を導入し「三瓶製めん類加工生産組合」に組織改編して拠点となる加工場を建設、蕎麦産業の中心的役割を果たしている[174]。割子・釜揚げ・山かけで食されることが多く、薬味はわさび、かつお節、のり、ねぎ等(ただし、大根は使用されない)を用いる[174]。出雲そばとの大きな違いは、出雲そばが挽きぐるみに近いそば粉を使用するのに対し、そばの実の芯の部分のみを多く使用した(更科に近い)そば粉を使用する点[175]
隠岐そば(隠岐地方)
短めで太い形状であり、つなぎは一切使用しないそば粉100%の麺で、だし汁は焼いたサバやあご(トビウオ)で取ったものを器に入れて薬味として隠岐産岩のりやゆず、ごま、ネギ等(ただし、大根は使用されない)を添えて食する。隠岐で蕎麦は節目節目で食べられており、隠岐民謡「どっさり節」(別名「そば打ち踊り」)の踊りの中に蕎麦打ちの要素が入っている[174]
山口県
瓦そば下関市

四国地方

徳島県
祖谷そば三好市など)
祖谷地方は大きな温度差や霧が多い気候でソバの栽培に適しており、古くは平家落人の隠れ里で焼畑農業によってソバが作られ常食されていた[176][177]。つなぎは少ない、またはまったく使わないため切れやすく少し太めで香り高い点が特徴[176]そば米汁(そば米雑炊)は米の代わりに殻を取り除いたソバの実を使った祖谷地方の郷土料理[176]
高知県
立川そば(大豊町
つなぎは無使用、または極少量使用とそば粉で打った蕎麦が特徴[178][179]

九州・沖縄地方

福岡県
弁城そば(福智町
1996年(平成8年)に農業で地域活性化を目指した「福智町農業総合プロジェクト」が発足し、その一環でそばが注目され2001年(平成13年)から本格的なソバ栽培に取り組み、同時にそばの花観賞と手打ちそば食体験を中心として農業と地域の活性化を目的とした「そばの花フェスタ」が毎年開催されている[180]
佐賀県
三瀬そば(佐賀市
1990年(平成2年)、三瀬村に初のそば専門店が開店。3年程で軌道に乗った事や口コミによって認知度が広がり多くのリピーターが訪れた事が影響し、ここ近年で続々と蕎麦屋が誕生し「そば街道」と呼ばれる新名所になっている[181]
長崎県
対州そば対馬市
日本そば切り発祥の地とされ、日本に伝わった当時の原種を用いたそばを提供する店が多い。
熊本県
阿蘇そば(阿蘇市
阿蘇市、南阿蘇村を中心に阿蘇の各地でソバ生産とそば料理の提供に取り組んでいる[182]
宮崎県
新富そば(新富町
1988年(昭和63年)頃、昔からあった在来種を栽培していた農家と、水田の裏作として栽培していた個々の農家が集まり協議会活動を開始、本格的な蕎麦栽培が広がり始めたが収穫量は少ない[183]
椎葉そば(椎葉村
椎葉村の地城産品の1つである[184]
鹿児島県
小薄そば(鹿屋市
つなぎとして大量の自然薯(山芋)を入れることにより、細く切った麺でも腰が強くちぎれにくい。
薩摩そば(鹿児島市
つなぎに自然薯を使い腰が強く、具材に薩摩揚げを用いたり薬味にネギや島蜜柑の皮等を使う[185]
出水そば(出水市
つなぎを使わない十割そば。太麺で腰は強くない。薬味には島蜜柑の皮等とネギを使う。出汁には焼きエビなどが使われる。例年、春の彼岸の頃には出水市高尾野町そば市(鹿児島の3大市の1つ)が開催される。
沖縄県

もともと食用作物としてソバの栽培が行われておらず、ソバの実を利用する食文化が無い。蕎麦を供する店は非常に少なく、130万人を超える県内人口に対してわずか40軒ほどしかない。県内で栽培した蕎麦粉を使用したり、月桃の葉を練り込んだ蕎麦を供する店もあるが県民にはまったく浸透していない。沖縄そばも小麦粉が原料という文化圏である。


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