葉緑体 色素体の起源

葉緑体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/07 23:48 UTC 版)

色素体の起源

色素体の起源となる共生体としては、同じ酸素発生を行うシアノバクテリアの一種と考えられているが、現生のシアノバクテリアのどれに近いか、またはそれらの祖先種の近縁種に由来するのかは、まだわかっていない。 ちなみにシアノバクテリアの起源としては、光化学系1と2を供給したものとしてヘリオバクテリアクロロフレクサスが考えられているが、実際の光化学系1・2とこれらの光合成細菌の光化学系はかなり異なるので、系統的に関連があるということを除けば,構成タンパク質の機能がそのまま対応するわけではない。また,光合成以外の機能に関しては、細胞の起源はわかっていない。

葉緑体は、細胞核遺伝子の産物がなければ機能できないので、昔考えられていたような葉緑体の培養ができることはない。しかし、葉緑体が細胞から分離した状態でも機能できる証拠として、ウミウシの例がある。ウミウシの仲間の嚢舌類は、海藻の細胞内物質を吸い込むように食べるが、ある種において、藻類の葉緑体を分解せずに細胞内に取り込む例が知られている。こうして動物細胞に取り込まれた葉緑体は、ここで光合成を行ない、動物細胞にその産物を供給するという。

藻類の葉緑体

上述のように、藻類においては葉緑体の形質は多様である。光合成色素も群によっては異なったものを持っている。比較的共通する形質としては、ピレノイドという構造がある。色素体の中に1-数個ある丸い粒状の構造で、タンパク質性で、光合成産物を貯蔵物質に変えるのに関与しているとされる。緑藻類ではデンプン合成がここで行われる。

植物界のものと藻類とで大きく異なる点に、藻類の葉緑体が、往々にして三重以上の膜で覆われている点がある。また、葉緑体のDNAがはっきりした塊に見える場合がある。これらは、近年では重複的な細胞内共生によるものと考えられるようになった。そこで「植物界や藻類の二重膜葉緑体を持つものは、葉緑体を持たない真核生物にシアノバクテリアのような原核藻類が共生したのが起源」と考えられる。二重の膜は内側が原核光合成生物の細胞膜、外側が植物細胞の細胞膜に由来すると考えるとわかりやすい。ただし、確証は得られていない[3]

それに対して、たとえばクロララクニオン藻の葉緑体は、四重の膜に包まれ、外側から二枚目と三枚目の間に、ヌクレオモルフと言われる、核様の構造がある。これに関して内側の二重膜が本来の葉緑体であり、その外の膜はそれを所有していた藻類の細胞膜、最外層がこの藻類自体の細胞膜に由来する[4]。つまり、真核藻類を、非光合成性の真核生物が細胞内に取り込んだことで、藻類化したと判断できる[5]。ヌクレオモルフは、取り込まれた藻類の核の名残である。この藻類の場合、取り込まれたのは緑藻類と判断されている[4]


  1. ^ a b c d e f g 「葉緑体」『岩波生物学辞典第4版』岩波書店、1996年。ISBN 4-00-080087-6 
  2. ^ 小林康一. “葉がなければ根で光合成?”. 東京大学. 2020年8月25日閲覧。
  3. ^ 千原編1999、p.148-149
  4. ^ a b 千原編1999、p.257
  5. ^ 千原編1999、p.150


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