落語 録音・録画の収集

落語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/26 09:02 UTC 版)

録音・録画の収集

高座の模様が収録された記録メディアレコードカセットテープCD、映像を含むビデオテープDVDなど)が市販されており、それを購入したり、ラジオテレビ等で落語を放送する番組をオープンリールテープやカセットテープ、MD等に録音、あるいはビデオテープやDVD・ブルーレイ等に録画(エアチェック)して収集する。

現在では入手困難な、前の落語家たちの名演が聞けるSPレコードを集める者もいる。特に著名なSP盤の収集家としては、のこぎり演奏家としても知られる落語家の都家歌六(8代目)と岡田則夫が挙げられる[25]。2人が集めたSP盤は約4,000枚におよび、日本で発売された落語SPの8割にあたる[25]。2人のコレクションの一部がデジタル化され、2006年(平成18年)には『SPレコード 復刻CD集 昭和戦前面白落語全集』として発売された[25]。8代目都家歌六には『落語レコード八十年史』の著書がある。

レコード化されていない音源なら、演芸評論家で『落語大百科』(全5巻)の著者でもある 川戸貞吉が挙げられる。TBSラジオ「早起き名人会」のアナウンサーを務めた川戸は、学生時代から落語テープを収集し、放送等に限らず、独自に高座での口演を録音し続けた。川戸のコレクションもまた、CDボックスとして発売されている。

  • CDボックスセット 川戸貞吉(撰)『古典落語の巨匠たち・寄席の噺・ホールの噺』第一期・第二期(ゲオ

その他、司会者として活躍した玉置宏NHKラジオ第1放送の「ラジオ名人寄席」で席亭(番組進行役)を務めたが、このなかで落語テープの収集家であることが明かされた。「ラジオ名人寄席」の目玉は、落語の歴史に通じた玉置が秘蔵する往年の名人の落語テープが披露され、解説が加えられることで、この企画はマニアックな演芸ファンの人気を博した[26]。しかし、2008年(平成20年)2月10日に放送された8代目林家正蔵(林家彦六)『大仏餅』の音源が、1987年(昭和62年)にTBSラジオ「早起き名人会」で放送されたものであることが判明し、これによりNHKがTBS側に陳謝し、著作権料を支払った[26]。さらに、このような無断使用は、番組が放送されていた12年間でNHK以外のメディアから91演目にもおよぶことがわかり、これに対する著作権料も払っていなかったため、玉置は責任を取って降板、番組も打ち切られた[26][27]

「『ラジオ名人寄席』での音源不正使用」の件で川戸とともに玉置を告発した草柳俊一は、数多くの落語録音にレコーディング・エンジニアとして従事し、現在は「極楽亭プロジェクト」なる協同蒐集活動を呼び掛けている[28][29]。草柳もまた、落語テープのコレクターでとくにオープンリールにこだわった収集活動をおこなってきた[29]。草柳が集めた落語や寄席演芸の録音は22,000点におよんでいる[28]。草柳の著書(芸能評論家矢野誠一との共著)に以下がある。

落語に関するありとあらゆる資料(書籍・古書・音源・刷物・グッズ・自筆物など)の個人収集家としては次の3氏が挙げられる。

  • 4代目桂文我(落語家[30]。)
  • 岡田則夫(前出。演芸史研究家[31]。SP盤はじめコレクションは多種にわたる)
  • 前田憲司(演芸史研究家。上方演芸資料が中心)

注釈

  1. ^ これは、日本芸術文化振興会「落語の歴史:落語家のはじまり」
  2. ^ 下谷神社の境内には、正岡子規の「寄席はねて 上野の鐘の 長夜哉」の句碑とともに「寄席発祥之地」の碑がある。
  3. ^ 可楽門下には朝寝房夢羅久(初代)、船遊亭扇橋(初代)、林屋正蔵(初代)、三遊亭圓生(初代)のほか、可楽(2代目)、喜久亭寿楽(初代)、萬笑亭亀楽(初代)、三笑亭佐楽(初代)、東亭鬼丸(初代)、自笑亭里楽、宇治新口(初代)、三笑亭古楽(初代)、三笑亭可上(初代)、三笑亭可重(のちの2代目可上)、三笑亭世楽、つるや萬助、初代川島歌遊(初代)、よたん坊ゆ又、瀧亭鯉丈(初代)、菅良助(初代)、菅良助(2代目)などが確認されている。
  4. ^ 現在、学生落語の全国大会として、“落語の祖”といわれる安楽庵策伝の名を冠した「全日本学生落語選手権・策伝大賞」が年1回、岐阜市で開催されている。
  5. ^ 角岡賢一は、これを便宜的に「擬古典」と称している。「上方落語演目の意味的分類」
  6. ^ 角岡によれば、そもそも、落語の起源には歌舞伎や浄瑠璃の要素が濃く、落語はこれらを簡略化した一人芝居としての性格をもっており、(狭義の)「芝居噺」の演目も数のうえでは決して少なくなかったが、大抵の場合は創作者一代限りで絶えてしまったという。「上方落語演目の意味的分類」
  7. ^ 「マクラが面白い落語家」として広瀬和生が挙げているのは、「マクラの小三治」として知られる柳家小三治(10代目)のほか、立川志の輔柳家喬太郎立川志らく桃月庵白酒(3代目)である。広瀬(2010)pp.85-87

出典

  1. ^ a b c 落語芸術協会「落語ってなに?」
  2. ^ a b c d 上方落語協会「歴史」
  3. ^ a b c d e f g h i j 『CD付 落語入門』(2008)p.14
  4. ^ a b c d 日本芸術文化振興会「落語の歴史:笑い話を楽しむ」
  5. ^ a b c d e 日本芸術文化振興会「落語の歴史:落語家のはじまり」
  6. ^ a b c d 柳家花緑(2002)pp.44-47
  7. ^ a b 落語”. 日本文化いろは事典. 2016年1月18日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h 日本芸術文化振興会「落語の歴史:興行としての成立」
  9. ^ a b c d e f 日本芸術文化振興会「落語の歴史:江戸落語のにぎわい」
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『CD付 落語入門』(2008)pp.4-5
  11. ^ 日本大百科全書(小学館)。
  12. ^ 桜庭由紀子 (2019年8月15日). “戦争が落語を禁じた日。はなし塚に葬られた53の禁演落語”. 和楽web. 小学館. 2020年10月15日閲覧。
  13. ^ a b c 広瀬(2010)pp.13-26
  14. ^ a b c d e f g h i 広瀬(2010)pp.27-36
  15. ^ a b c d e f g h 角岡賢一, 「上方落語演目の意味的分類」『龍谷大学国際センター研究年報』 2013年3月 第22号 p.46-69, 龍谷大学国際センター, NCID AN10538881
  16. ^ 落語系情報サイト"噺;HANASHI"「落語用語辞典」
  17. ^ a b c d 『CD付 落語入門』(2008)pp.16-17
  18. ^ 桂米朝(1978)pp.95-96
  19. ^ 落語のすゝめ「枝雀のオチの分類法」
  20. ^ a b c d e f g h 広瀬(2010)pp.80-87
  21. ^ a b c d e 広瀬(2010)pp.88-95
  22. ^ a b c d e f g h 落語芸術協会「落語の表現」
  23. ^ NHK for School 国語10minBOX「落語」scene05 登場人物の立場を表す決まり・scene06 人物を演じ分けるしぐさ
  24. ^ 『CD付 落語入門』(2008)pp.120-121
  25. ^ a b c 朝日新聞(asahi.com)「SP落語、CD全集に復刻 コレクター2人が音源提供」(2006年11月17日)2014年1月19日閲覧
  26. ^ a b c リアルライブ「名司会者・玉置宏を精神的に追い詰めた事件」(2010年2月15日)2014年1月19日閲覧
  27. ^ NHK広報局・報道資料(平成20年12月8日)「『ラジオ名人寄席』音源無許可使用について」
  28. ^ a b 「落語三昧」草柳俊一
  29. ^ a b 落語三昧「音の博物館・極楽亭(極楽亭プロジェクト 発起人草柳俊一)」
  30. ^ 4代目桂文我公式Website「桂文我倶楽部」
  31. ^ 岡田則夫のブログ「巷間芸能研究室」
  32. ^ くだん書房:目録:マンガ:雑誌:集英社”. www.kudan.jp. 2023年4月18日閲覧。 “週刊少女コミック 1975年3月30日号(14) (新連載)すなこ育子「お笑いを一席!」巻頭8ページカラー”





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