英国放送協会 不祥事・トラブル・議論を呼んだ報道

英国放送協会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 05:21 UTC 版)

不祥事・トラブル・議論を呼んだ報道

イラク大量破壊兵器疑惑報道問題

2003年5月29日、BBC Radio 4のニュース番組「TODAY」の中で、アンドリュー・ギリガン記者は前年9月に政府が発表した「イラクは45分以内に大量破壊兵器の展開が可能」とする報告書につき、政府の圧力によりイラクにとって都合の悪い形に【「よりセクシー(扇情的)な内容」にするように】-脚色・誇張させられたと報じた。これに対して、イギリス政府は全面的に否定し、謝罪と撤回を求め、BBCと政府の対立が深まった。政府側は、このニュースの情報源が国防省顧問のデビッド・ケリーであると発表。ケリーは7月15日に下院の外交委員会に召還されて厳しい尋問を受け、その3日後に遺体で発見されるという事態が起きる。

これを受けて、BBCは情報源がケリーであったことを認めた。真相を解明する独立司法調査委員会が結成され、その委員会に召還されたギリガン記者は、報道は「口を滑らせた」発言であったと証言した。翌2004年1月28日に委員会は報告書(ハットン報告)を発表した。その内容は、

  1. ケリーの死因は自殺である
  2. BBCの報道内容には問題があった
  3. ブレア首相には報告書やケリーの死についての責任はない

というものであった。

この報告書の発表により、当時のBBC会長、グレッグ・ダイク(Greg Dyke)は辞任を表明し、報道機関としての信頼性を問われたが、辞任直後に行われたイブニングスタンダード紙の調査では、49%のイギリス国民が「ハットン報告を信用しない」と答え、56%がBBCが非難を受けるのは「不公正だ」と答えた。

二重被爆者を題材にした番組

毎週金曜日に放映されている、お笑いクイズ番組QI」の2010年12月17日の放映で、広島市長崎市に投下された原子爆弾で、二重に被爆した被爆者である山口彊(2010年1月に死去)を「世界一運が悪い男」と紹介した。

スタジオ内には、山口の大きな顔写真が原子爆弾投下時に発生した、きのこ雲の二つの写真に挟まれた状態で掲示され、司会者が二重被爆の経緯について語った後に、ゲストのタレントが「93歳まで長生きしたなら、それほど不運じゃない」「原爆が落ちたその日に列車が走っているなんて、イギリスじゃ考えられない」(イギリスの鉄道事情に触れた後に)「(放射線に被爆しても)サンドイッチは大丈夫でした」などと、笑いながら発言をした。

この放送内容について、在英国日本国大使館は2011年1月7日に「原爆投下の問題を、コメディー番組で取り上げるのは極めて不適切で、日本人の国民感情を無視している」との内容の抗議書簡を、番組制作会社とBBCに送付した。

番組制作会社からは17日になって「配慮に欠けていた」などとする返答があり、1月21日にロンドン日本大使館に、番組プロデューサーから謝罪文が届けられている。謝罪文は17日付で、「我々が(日本人視聴者を)不快にさせてしまい、大変残念だ」「日本人の潜在的な敏感さを軽視したのは明らか。お気楽な番組で扱うには、不適切と日本人が見なすのは想像に難くない」としている。また、BBCの広報担当者も、この件について釈明をした声明文を発表した。

山口の長女は、この件について不快感を示し「家族内で『運が悪かった』と話した事はある。しかし核保有国イギリスで、このように取り上げるのは話が別。核削減への真摯さが足りない風潮から、こういう発言が出てくるのではないか」「世界中が核廃絶で努力している中、父の体験を軽視することは遺憾で許せない」と話した。

駐英特命全権大使から報告を受けた外務大臣前原誠司も、1月25日に行われた記者会見で番組を非難し、「おわびをするなら、テレビで笑いながら話していたコメンテーターは、原爆被害の悲惨さをもう一度認識し、二度と起こさないための努力をしていただきたい」と述べた。

問題となった同番組のシーンは、動画共有サイトYouTube」にもアップロードされ、この件について日本で報じられると同時に、コメント欄が「炎上」する事態となったが、週明けの1月24日になって動画が削除されている。

英国在住のジャーナリスト小林恭子によると、このジョークは、様々な理由を付けて運休しようとする「英国の鉄道事業者への皮肉」であるという[8]

サッチャー元首相の娘が人種差別発言で降板

2009年、マーガレット・サッチャーの娘でBBCのリポーターであるキャロル・サッチャーが、ゴールデンタイムの番組「The One Show」の取材中、黒人テニスプレーヤーのジョー=ウィルフリード・ツォンガに対して「カエルのように黒くグロテスクな男」という人種差別表現を用いたとして番組降板処分を受けた[9]

BBC内部関係者によるウィキペディア編集

2007年8月、WikiScannerで調査したところ、英語版ウィキペディアで、BBCの内部に割り当てられたIPアドレスから、ジョージ・W・ブッシュアメリカ合衆国大統領のミドルネーム Walker“Wanker”wank自慰行為をする)と書き換える「下品なイタズラ」が行われていたことが明らかになった[10]

ラッセル・ブランド降板事件

BBCレディオ2のラッセル・ブランドが担当する番組内で、ブランドとジョナサン・ロスが、アンドリュー・サックスとその孫娘を卑猥な内容で侮辱する発言があったとし、ブランドは打ち切りに、ロスは3ヶ月間全ての関連番組からの出演停止処分となった。この件においてBBCの内部チェック体制が問題視され、BBCが事件当初謝罪や説明を十分に行わなかったことから非難の声が殺到する結果となった。

ジョナサン・ロスはBBCとの契約を延長せずに降板したが、2011年にはBBCの自動車番組トップ・ギアにゲストとして出演した際、若干だが話題にしている。

トップ・ギア

番組では辛辣なコメントや悪ふざけを「売り」としており、英国の王室や著名人、政府関係者といえどもジョークの対象となるが、度を過ぎてしまい不祥事へと発展してしまう事態も度々起こっている。2011年1月放送分で、メキシコのマストレッタ社が製造した「MXT」を紹介した際、番組司会者らがメキシコの国民や料理などを嘲弄する発言をしたことで、駐英メキシコ大使から抗議される騒ぎとなったが、2011年3月までに謝罪などは放送されず、逆にゲストまでがジョークのネタにしている[注釈 2]。2013年に放送されたシリーズの中では罰ゲームとして「メキシコに一人で行く」というものが設定された。一方で世界的な人気番組が話題にしたため、ウェブサイトへの訪問数や車の購入予約が一気に増えたという[12]。他にもエキストラが「やらせ」を暴露した際に、局側は「この程度の演出は視聴者もわかっている」と居直ったケースもある[13]。また、テスラモーターズの電気自動車を特集した際の扱いについて提訴されたり[14]、逆に出演者のザ・スティグを演じていたベン・コリンズの暴露本出版をやめさせるために告訴するなど、裁判に発展したケースもある。2015年、ジェレミーによる同番組プロデューサーへの暴力事件が表面化した事をきっかけに、ついにはジェレミーら司会者陣の降板にまで至ってしまった。

児童虐待に関する誤報

2012年11月2日、BBCのニュース番組で、1970年代から80年代にかけて、ウェールズ地方の児童福祉施設で性的虐待を受けたとする男性の主張を放映。本人の証言に基づき、犯人はサッチャー政権の保守党幹部だったと伝えた。番組では犯人の実名は伏せたが、インターネット上ではマカルパインという名の上院議員が犯人との憶測が飛び交い、マカルパイン側はこの事態に、疑惑を否定、法的措置も辞さないことを表明した。

結局、BBC側は謝罪の上、ジョージ・エントウィスル会長は、就任から2か月で辞任する事態となった[15]

元人気司会者による性的暴行事件

BBCで長く音楽番組などを担当していたジミー・サヴィル2011年に亡くなった直後、生前長きにわたって多数の少女に性的暴行をしていたことが発覚。犯行を追及しようとしたドキュメンタリー番組が上層部の判断により中止になり、代わりに追悼番組が流されたこと、被害者が200人以上になる可能性があること、BBC局内でも犯行が行なわれていたことなどが明らかにされ、BBC会長が議会下院の委員会に召喚され証言するなど、BBCへの不信と批判が高まった。その後、検証番組が放送され、現在も調査が続けられている[16][17]。また、BBC制作のミステリードラマ「SHERLOCK」のシーズン4第2話にはジミー・サヴィルをモデルにした人物が登場した。

ベトナム戦争における韓国軍によるベトナム人女性への性的暴行報道

2020年3月27日、BBCが「1968-何百人もの女性を苦しめた年」という報道で、ベトナム戦争における韓国軍兵士によるベトナム人女性への性的暴行を特集して「韓国人に何が起きたのかを認めてもらう必要がある」とのベトナム人被害女性の訴えを紹介し、ジャック・ストロー元英外相と「ライダイハンのための正義」が、国連人権理事会による調査と韓国による謝罪を求めていることを伝え、「韓国は、第二次世界大戦中に、何十万人もの韓国人女性が性奴隷として働かされたことをめぐり、謝罪をするよう何十年も日本に働きかけてきた」と指摘し、日本に謝罪を求めながら、自らの問題には頬かむりする韓国ダブルスタンダードを批判した[18]

中国における放送禁止措置

2021年2月、中華人民共和国は国内においてBBCワールドニュースの放送を禁止した。かねてより新疆ウイグル自治区の報道を巡り中国政府と衝突していたところに、同年2月にイギリス国内で中国国際テレビの放送免許が取り消された背景があった[19]


注釈

  1. ^ 西パプア州分離以前の記事[6][7]
  2. ^ 後に発言の発端となった司会者のジェレミー・クラークソンが文面で謝罪をしているが、その内容はメキシコはもっとジョークのセンスを持つべきだということとさまざまなエスニックジョークを書き連ねた厭味ったらしいものだった[11]
  3. ^ tvkでは一時休止していた。

出典

  1. ^ 日経BP社・日経トレンディネット「人気海外ドラマの配信もスタート!NHKオンデマンドの今後と課金モデルの謎に迫る!」2008年12月29日 2010年2月9日閲覧
  2. ^ [1] https://archive.is/20130424213455/www.americanchronicle.com/articles/68067
  3. ^ [2] https://www.youtube.com/watch?v=SmL22CRmsLA 動画
  4. ^ “<韓国旅客船沈没>「他局が訂正報道出しても、KBSは全員救助の誤報続けた」”. 中央日報. (2014年7月8日). https://japanese.joins.com/JArticle/187456 2014年7月19日閲覧。 
  5. ^ BBCの受信料廃止も ジョンソン英首相が検討表明”. 時事通信 (2019年12月11日). 2019年12月11日閲覧。
  6. ^ http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/2230489.stm
  7. ^ http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/2230489.stm
  8. ^ BBC「QI」と米ゴールデン・グローブ授賞式に見る、英国の「危ない」ジョーク、抜粋された訳がある
  9. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/2569221?pid=3766136
  10. ^ http://business.timesonline.co.uk/tol/business/industry_sectors/media/article2264150.ece
  11. ^ メキシコを侮辱したとBBC放送が謝罪…でもイギリスらしく皮肉めいた文面だと話題に
  12. ^ 【レポート】一体なぜ? 『トップ・ギア』で酷評された車の売り上げが急上昇!
  13. ^ 【ビデオ】この場面が"やらせ"!? 『トップギア』に出演した俳優のブログが問題に
  14. ^ 米テスラ、英BBC『Top Gear』を提訴
  15. ^ “英BBC会長が辞任、児童虐待巡る誤報で引責 就任から2カ月”. CNN. (2012年11月11日). https://www.cnn.co.jp/showbiz/35024293.html 
  16. ^ 「昨年死去した名司会者に性的暴行疑惑 揺れるBBC」CNN
  17. ^ 「元BBC人気司会者が少女暴行常習犯疑惑追及番組の放送中止でBBCに厳しい批判」NHK放送文化研究所
  18. ^ 原川貴郎 (2020年4月4日). “ライダイハン ベトナム戦争時の韓国軍の所業を英BBCが報道”. 産経新聞. オリジナルの2021年5月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210528221738/https://www.sankei.com/article/20200404-4CQU7UOD2ZM4TOW4X2J2YVXPAA/ 
  19. ^ 英BBC、中国で放送禁止に ウイグル問題で対立”. 日本経済新聞 (2021年2月12日). 2021年2月12日閲覧。
  20. ^ モバHO!での放送は、2007年3月31日をもって終了した。


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