若者言葉 概要

若者言葉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/09 04:00 UTC 版)

概要

若者言葉は現代に始まったことではなく、古くは清少納言の『枕草子』にも当時の若者の言葉の乱れに関する記述がある。新語や誤用の定着によって言語が変化することは往々にしてあるが、その変化の過程を共時的に捉えた際、既存の社会一般の言語規範標準語共通語)に反するために、しばしば社会的な批判を受けるが、今は改善されつつあり認められてきている側面もある。その流れの一環として、文化庁が第20期国語審議会にて若者言葉を『新鮮で好感の持てるものもあるが、好ましくないものも多い。それらの多くは次々に現れては消えるものであり、仲間内で使われる分には特に問題はないと思われるが、仲間以外の相手や改まった場面で、適切な言葉遣いが無理なくできるよう、学校・家庭・地域社会等の言語環境を整備し、指導していくことが望ましい。[注釈 1]』と表現し、若者言葉の発生を認めつつ社会上での適切な言葉遣いへの教育を進めるとした[3]

井上史雄は、「数十年後の使用がどうなるか」に着目して、若者言葉を次のように4分類した。「一時的流行語」は「アジャパー」や「チカレタビー」といった流行り廃りの早い流行語や、「グリーンカード」や「E電」といった時事的な言葉が当てはまる。「コーホート語」は後の若者には受け継がれないものの、特定の世代で使われ続けてその世代・年代の象徴となる言葉で、「月光仮面」や「シェー」や「ナウい」などが当てはまる。また「ぜいたくは敵だ!」や「竹の子族」といった各時代の世相や風俗を表す言葉もコーホート語になりうる。「若者世代語」若者文化の象徴として代々受け継がれ、年を重ねると使う機会が失われる言葉で、「代返」や「学食」などが当てはまる。最後の「言語変化」廃語(俗に言う「死語」)にならずに一般化していく言葉で、「頭に来る」や「ら抜き言葉」、「新幹線」などが当てはまる(俗語も参照)[4]

若者が老いて不使用 若者が老いて使用
後の若者不使用 一時的流行語
新語、時事用語、はやりことば
コーホート語(同世代語)
生き残った流行語、世相語
後の若者使用 若者世代語
キャンパス言葉、学生用語
言語変化
方言、確立した新語

若者言葉は、性別、地域(新方言も参照)、年齢、所属する集団の違いによって変化する。例えば、「ウザい」「キショい」「キモい」「しょうゆ顔」「ソース顔」を侮蔑語と捉え、相手を傷つけたり不快にさせたりするという理由で安易に用いない若者もいる。また「ハズい」などを使うと自らの品格を問われる可能性があるというような理由で「(知らないということはないだろうが、敢えて)知らない」「使わない、使いたくない」という意見もある[5]

若者言葉は最近では幅広い年齢の人も使っている。これは新しく出てきた言葉ほど顕著で、「ウザい」「キモい・キショい」「(危ない、という本来の意味からかけ離れた)ヤバい」「ハズい」などは使わなくなる人の方が多いというものである[6]。また金田一秀穂は、「チョベリバ」を例に、若者言葉というものに関して「隠語的な要素が含まれているため、に周知されると使用が控えられる」という傾向を指摘している[7]

若者言葉には、テレビCMドラマの台詞などから流行語となって日常化した物が多くみられる。特徴としては言葉を逆に言ったり、言葉をローマ字化してその頭文字のアルファベットを並べたり(チョーMM、MK5、KYなど[注釈 2])、誇張した表現(「超」の濫用など)といったことが挙げられる。また、日本各地の方言首都圏の若者に取り入れられ、マスメディアによって日本全国に再発信され、方言色の薄い全国一般の若者言葉となることも少なくない(首都圏方言も参照)。例として、中部地方由来の「じゃん(か)」、大阪由来の「むかつく」や「めっちゃ」、栃木福島由来の「(大丈夫という意味の)だいじ」「ちがかった」、多摩由来の「うざったい」などが挙げられる。2005年頃には、首都圏の女子高生を中心に、各地の方言を意図的に会話や電子メールに織り交ぜることが流行したこともある。


注釈

  1. ^ 「文化庁 国語施策・日本語教育 国語施策情報 第20期国語審議会 新しい時代に応じた国語施策について(審議経過報告) I 言葉遣いに関すること」より引用[1][2]
  2. ^ アブジャド#アブジャドに似た考えかた
  3. ^ 言葉「やばい」の使用は古くからあり、1955年(昭和30年)5月発行の『広辞苑』第一版2144頁で形容詞「危険である」の隠語とされ、さらに1969年(昭和44年)5月発行第二版2227頁では「やば」は不都合、けしからぬ、奇怪として『東海道中膝栗毛』の使用例を引用し、「危険」の使用例も示している。1915年(大正4年)5月発行京都府警察部出版、警視富田愛次郎監修『隠語輯覧』二類、三類でも同様の意味合いで載っていると復刻版の『隠語辞典集成』第2巻1996年(平成8年)12月大空社(ISBN:4-7568-0333-4/-0337-7)は記載している。
  4. ^ 漫画「うる星やつら」のラム、ドラマ「野ブタ。をプロデュース」で草野彰が使用。

出典

  1. ^ 文化庁ホームページについて”. www.bunka.go.jp. 2024年6月9日閲覧。
  2. ^ 文部科学省ウェブサイト利用規約:文部科学省”. 文部科学省ホームページ. 2024年6月9日閲覧。
  3. ^ 文化庁”. www.bunka.go.jp. 2024年6月9日閲覧。
  4. ^ 井上史雄『方言学の新地平』明治書院、1994年、3-14頁。
  5. ^ 北原保雄・編著『問題な日本語』大修館書店
  6. ^ 読売新聞(2007年1月31日朝刊・社会面)
  7. ^ 金田一秀穂『適当な日本語』アスキー・メディアワークス、2008、27頁。
  8. ^ 米川 (1997)。
  9. ^ 金水敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』岩波書店、2003年、146頁。
  10. ^ 金水敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』岩波書店、2003年、172頁。
  11. ^ a b 大辞林(三省堂)
  12. ^ 広辞苑 第六版「ばっくれる」
  13. ^ 大辞林(三省堂)(主に若者言葉で)としている。
  14. ^ 日本国語大辞典(小学館)
  15. ^ 第1期国語審議会記録「これからの敬語(建議)」
  16. ^ 社会人に聞いた“イラッ”とくる言葉遣い、「~っす」や「ですよねー」
  17. ^ a b c d e f g 井上史雄・鑓水兼貴[編] 『辞典〈新しい日本語〉』東洋書林、2002年
  18. ^ a b c d e f 徳川宗賢[監修]『日本方言大辞典』小学館、1989年
  19. ^ a b c 井上史雄『日本語ウォッチング』岩波新書、1998年。
  20. ^ 小林初枝 (1974)、『おんな三代』、朝日新聞社。
  21. ^ 馬瀬 良雄 (2003)、『信州のことば―21世紀への文化遺産』、信濃毎日新聞社。
  22. ^ 山口幸洋『方言・アクセントの謎を追って』悠飛社、2002年。
  23. ^ NHK教育テレビ「ふるさと日本のことば・北海道」(2000年5月21日放送)
  24. ^ 平山 輝男 (1992-1994)、『現代日本語方言大辞典』、明治書院。






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