若者の車離れ 分析

若者の車離れ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/05 11:16 UTC 版)

分析

若者の自動車離れの主な要因については、M1・F1総研が首都圏を対象に18歳から49歳の男女から集計した調査において、「経済的理由」や「趣味の多様化」にあるとの分析結果が得られている[19]

経済的理由(「買わない」のではなく「買えない」)

1990年代後半から顕著になった若年層の雇用不安(就職氷河期)、終身雇用の崩壊による非正規労働者の増大などにより、雇用不安が慢性化した。年度によっては緩和された年もあったが、その影響で正社員の給与も低下したうえ、非正規は低賃金労働が推進されたため低所得者も増加。その結果、個人の可処分所得が減少傾向となると同時に若年層の個人消費が大きく低迷し、数十万円単位の高額消費が厳しくなった[12][19]。また、就職や職務上の関係で運転免許証を取得できても、東京の最低賃金は1990年で548円、2000年で703円[20]、2010年で821円[21]、2018年で985円、2019年で1013円[22]と雇用情勢および収入の不安定化や消費税増税などの生活費の相対的な増加も加味すると十分に賃金が上がっているとは言えず、単純に自動車を購入する余裕がない(買うという選択肢が存在しない)というのが現状である。

また、自動車税重量税取得税などの税金自動車賠償責任保険を含めた自動車保険、燃料代(米国と比較すれば割高であるが、欧州と比較すると安価になっている)、駐車場賃借料金、車検費用など、自動車を所有・利用するにあたり発生する、年数十万円単位の各種維持費が容易に賄えなくなった[14][19]。日本における自動車の維持費は諸外国に比べても極めて高額であり[23](特に税制に関しては、欧米でCセグメント車が所有できる程度の税負担だと日本では軽自動車しか維持できないという指摘もある[24])、特に税制面での高額な負担が問題視されている[25][26]

古谷経衡は「若者が車から離れているように見える理由の大半は、単に経済的な理由である[27]」「デフレーションを放置し経済失策を続ける日本国政府の責任であり、自動車メーカー側に落ち度は無い[28]」と指摘している。

中野剛志は「若者の自動車離れがよく話題となるが、それは若者が内向きになって車で遠出しなくなったというより、(寧ろ)単純にデフレでローンを組んで自動車を買うことができなくなった(信販会社が非正規労働者に融資しなくなった)だけである」と指摘している[29]

趣味の多様化

携帯電話スマートフォンパソコンに見られる通信機器ゲーム機、その他にも鉄道航空機単車自転車など、自動車以外の趣味が多様化したことも要因の1つとして挙げられている[14][19]

環境に対する意識

経済学者高橋洋一は「若者の気質の変化によって車離れが起きているとされているが、環境問題に対する意識が高まっており、若者は特に反応している」と指摘している[30]


注釈

  1. ^ 全て車両本体・消費税抜き価格。価格に関してはFX、ランクスはGoo-net掲載情報に基づく。オーリスに関しては2013年2月版新車カタログより。スポーツに関してはトヨタ公式サイトに税抜価格が掲載されていなかったため、同サイト掲載の税込価格より算出。全て2019年9月29日閲覧。
  2. ^ このような大都市部では、タクシー会社も非常に充実している。このため、このような地域ではタクシーを日常生活で頻繁に利用しても、自家用車を保有するより金銭的負担が少ない場合もある。
  3. ^ このような大都市部では、ビジネスホテルや、それより安価に利用できるインターネットカフェが多数存在しているため、自動車が無い場合でも、深夜帯の行動も可能である。
  4. ^ なお、サイオンブランド設立の背景にはトヨタ/レクサス両ブランドで付いてしまった「機械としては優秀だが退屈」というトヨタ車のネガティブイメージを払拭し、いわば「若者のトヨタ離れ」を阻止する目的がある。

参照元

  1. ^ a b 四元正弘 2012, p. 39.
  2. ^ a b 四元正弘 2012, p. 40.
  3. ^ 無署名 (2008), “「若者たちの○○離れ」”, 週刊ダイヤモンド 2008年12月27日・2009年1月3日合併号 (ダイヤモンド社): 174頁 
  4. ^ 西村大志 2012, p. 22.
  5. ^ 西村大志 2012, p. 21.
  6. ^ 2015年度乗用車市場動向調査 (PDF)” (日本語). 日本自動車工業会. p. 14 (2016年3月). 2016年6月17日閲覧。
  7. ^ a b c 廣田利幸(トヨタ自動車) (2010年7月26日). “「若者のクルマ離れについて」 (PDF)”. 国土交通省. 2014年8月11日閲覧。
  8. ^ 財団法人自動車検査登録情報協会[1] (PDF) [リンク切れ]
  9. ^ 仮運転免許は道路交通法第87条第6項の規定により、仮運転免許の運転免許試験(適性検査)を受けた日から6か月とされている。そのため、取得に専念する時間が一定期間発生することが避けられないため、仮に期限が切れてしまった場合、講習は一からの再スタートとなる(正確には技能実習が再スタートとなる)。
  10. ^ カローラ セダン1.5X 5M/T(2000年8月) 税抜127.3万円
    ランサーセディア セダン1.5MX 5M/T(2001年5月) 税抜112.3万円
    ファミリア セダン1.3ES 5M/T(1999年8月) 税抜99.1万円
    すべてGoo-net.comより、2020年4月5日閲覧
  11. ^ 価格は各社公式サイトより(カローラ、ゴルフは税抜価格が掲載されていなかったため税込価格より算出)。2020年4月5日閲覧。
  12. ^ a b 池原照雄 (2009年1月14日). “若者のクルマ離れ、その本質は「購買力」の欠如”. 日経ビジネスオンライン (日経BP). http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20090109/182410/ 2017年5月19日閲覧。 [リンク切れ]
  13. ^ 新型「CIVIC」を発売 2017年7月27日、ホンダ公式。2020年4月5日閲覧
  14. ^ a b c d 高木啓 (2007年3月9日). “若者のクルマ離れ…都会で売れない”. Response.. 2008年10月5日閲覧。
  15. ^ a b 清水典之「若者はもはや「クルマ離れ」ではなく「クルマ嫌い」になった(4/5)」『SAPIO』第22巻第06号、小学館、2010年3月31日、 pp.96-97、2016年6月17日閲覧。
  16. ^ “自動車ユーザーの98%が自動車にかかる税金に負担を感じています。” (プレスリリース), 日本自動車連盟, http://www.jaf.or.jp/profile/news/file/2012_34.htm 2012年10月22日閲覧。 
  17. ^ a b 清水典之「若者はもはや「クルマ離れ」ではなく「クルマ嫌い」になった(3/5)」『SAPIO』第22巻第06号、小学館、2010年3月31日、 pp.96-97、2016年6月17日閲覧。
  18. ^ 詳しくは自動車検査・登録ガイド(国土交通省)を参照
  19. ^ a b c d 若者のクルマ離れに関する検証 (PDF) M1F1総研、2007年2月28日
  20. ^ 地域別最低賃金に関するデータ(時間額)、厚生労働省、2020/4/5閲覧
  21. ^ 東京都、最低賃金30円上げ初の800円台 生活保護よりなお低く 日本経済新聞(2010/8/25)、2020/4/5閲覧
  22. ^ 地域別最低賃金の全国一覧、厚生労働省、2020/4/5閲覧
  23. ^ 第7回 みんなで考えようクルマの税金”. 自動車税制改革フォーラム (2009年10月31日). 2011年7月27日閲覧。
  24. ^ 知れば知るほどいいね!軽自動車 (PDF)”. 全国軽自動車協会連合会 (2009年10月31日). 2013年5月9日閲覧。
  25. ^ JAMA レポート No.78 自動車関係諸税の国際比較”. 日本自動車工業会. 2005年5月29日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年6月17日閲覧。
  26. ^ 自動車ユーザーの98%が自動車にかかる税金に負担を感じています。”. 日本自動車連盟(JAF) (2012年9月28日). 2012年10月22日閲覧。
  27. ^ 古谷経衡 『欲望のすすめ』 ベストセラーズ〈ベスト新書〉、2014年、94頁。
  28. ^ 古谷経衡 『欲望のすすめ』 ベストセラーズ〈ベスト新書〉、2014年、89頁。
  29. ^ 中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、35頁。
  30. ^ 高橋洋一 『日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える』 光文社〈光文社新書〉、2010年、25頁。
  31. ^ ガソリン8月に190円突入? 石油元売大手が値上げを検討”. J-CASTニュース (2008年7月23日). 2011年7月27日閲覧。
  32. ^ 自動車保有台数、7か月連続の減少…若者のクルマ離れ影響 読売新聞、2008年9月10日[リンク切れ]
  33. ^ 椿山和雄 (2008年9月10日). “トラスト、民事再生法の適用を申請…負債65億円”. Response.. 2008年10月5日閲覧。
  34. ^ 「若者の車離れ」が響く 大手損保が自動車保険料引き上げへ”. J-CASTニュース (2008年6月23日). 2008年10月5日閲覧。
  35. ^ 若者の車離れの次は熟年の車離れ トヨタの過ちを専門家指摘 NEWSポストセブン、2012年2月5日
  36. ^ “伸び悩むIKEA、都区内駅周辺に小型店開業へ”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2018年8月30日). https://www.yomiuri.co.jp/economy/20180830-OYT1T50017.html 2018年8月30日閲覧。 
  37. ^ 若者の車離れ「自動車ゲーム」が原因 「トヨタ自動車幹部」発言に異論続々 J-CASTニュース、2009年10月22日
  38. ^ ホントのエコカーって何だ? 「カー不在」のエコ Carview、2009年12月30日
  39. ^ 若者の車離れの理由「クルマにセクシーさがないから」 NEWSポストセブン、2011年7月11日
  40. ^ 若者の車離れの次は熟年の車離れ トヨタの過ちを専門家指摘 NEWSポストセブン、2012年2月5日
  41. ^ スーパーカーから姿消すMT仕様 フェラーリなどすでに廃止「無謀な行為」 (1/4ページ)www.sankeibiz.jp(2016年7月5日)2020年2月20日閲覧
  42. ^ 【池原照雄の単眼複眼】挟撃で苦戦したトヨタ…13年度国内シェア Response.、2014年4月9日
  43. ^ トヨタはマイカー時代の終焉の訪れを覚悟したのか? – WEDGE Infinity 2018年10月12日掲載 2019年8月24日閲覧
  44. ^ トヨタが本格的なMaaSを小さく始めたわけ – WEDGE Infinity 2018年11月6日掲載 2019年8月24日閲覧
  45. ^ シボレー・カマロを20代の若者が最も多く購入している理由とは?” (日本語). clicccar.com(クリッカー) (2018年11月25日). 2019年6月25日閲覧。
  46. ^ 若者のクルマ離れ、米国でも進む ネットや携帯が原因? CNN.co.jp、2012年9月18日
  47. ^ 米国、85歳超の運転者が増加-若者は車離れ WSJ
  48. ^ EU カーシェアリング、各社が参入:若者の車離れに対応 エヌ・エヌ・エー、2010年5月13日
  49. ^ イタリアですら「若者のクルマ離れ」加速 IT化で変わる価値観 SankeiBiz、2012年10月14日




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