芸予諸島
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2024/02/07 10:22 UTC 版)
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| 地理 | |
|---|---|
| 場所 | 瀬戸内海 |
| 主要な島 | 能美島・大崎上島・向島・因島・大三島 |
| 行政 | |
| 都道府県 |
 広島県 愛媛県 |
| 市町村 | 江田島市・呉市・東広島市・大崎上島町・竹原市・三原市・尾道市・福山市・今治市・上島町・松山市 |
概要
芸予諸島は広島県本土（本州）と愛媛県本土（四国）の間に位置する。広島県（旧備後国を含む）呉市から東の島と、愛媛県旧越智郡島嶼部および若干の付属島嶼、大小数百の島から成る[1]。目安としては、東端が広島県福山市鞆の浦と愛媛県今治市を結ぶ線、西端が能美島・倉橋島までである。西に防予諸島、東に笠岡諸島がある。
ただし東西共に境界は曖昧である。西端部では広島湾奥部は含まないが[1]、湾口部の島々は含むことがあり、最大で山口広島県境の甲島まで含む場合がある[2]。東端部は鞆の浦から今治市を結ぶ線までとされるが[1]、その外側の魚島群島や四阪島[3]、来島群島の比岐島[4]を含む場合も多い。かつては下蒲刈島から大崎上島・大三島の周辺のみの狭いエリアを芸予諸島と呼ぶことがあった[1]。
芸予諸島をより細かく分ける場合、西側から安芸群島（江田島周辺のみ）・蒲刈群島・下大崎群島・上大崎群島・関前諸島・来島群島・越智諸島・芸備群島・上島諸島・備後群島とする。なお、芸備群島の一部と備後群島は厳密に言えば旧備後国に属している。
有人島は約50島、人口は合計約17万人。能美島・因島・向島・倉橋島の広島県4島の人口が比較的大きく、いずれも1万人を超えている。他5000人を超えている島として、広島県大崎上島・生口島、愛媛県大島・伯方島・大三島の5島がある。2010年の国勢調査によれば向島（尾道市市街）・因島に人口集中地区が存在している[5]。ほとんどの島で本土より早いペースで過疎化・高齢化が進行している。
平成の大合併の結果、芸予諸島の島々からなる市町村の多くは、本州・四国本土を中心とする広島県呉市・尾道市、愛媛県今治市などに組み込まれた。現在、芸予諸島に市役所・町役所・村役所を置く自治体には江田島市・大崎上島町・上島町がある。
自然環境
芸予諸島に非常に多くの島が密集していることで、芸備地方の歴史の在り方に種々の影響を及ぼしてきた[8]。
瀬戸内海は、地形の複雑さと潮汐の激しさが、流れの速い潮を生み出した。大正時代の物理学者・文学者である寺田寅彦は、「広い灘と灘を連絡する海峡の両側の海面の高さが時刻によって著しく違うところが出来ます。そうすると水面の高い方から低い方へ海の水が盛んに流れ込むので強い潮の流れができます」（『寺田寅彦全集 第六巻』、岩波書店、1997年）と記した[8]。なかでも、四国と大島とに挟まれた来島海峡はちょうど瀬戸内海の中心に位置し海峡幅も広いため現在では国際航路として様々な船が航行しているが、古くは「一に来島、二に鳴門、三と下って馬関瀬戸」と唄われるように潮の流れが速く瀬戸内海有数の難所であった[9]。こうした地形を巧みな操船技術を持つ者が支配権を握るようになる[8]。
元々陸地として繋がっていたものを、航路として用いるため開削したところも存在する。例えば、呉市本土と倉橋島の海峡である音戸の瀬戸には日宋貿易の航路として用いるため平清盛が沈む夕日を扇で招いて1日で開削したとの伝承「日招き伝説」が残る（実際に掘削したかは不明）[10]。
地形的特徴としては、どの島も平野部が狭く急峻な山あるいは丘陵地で占められている[11]。芸予諸島最高峰は生口島の観音山で標高472.3m[12]。
気候は瀬戸内海式気候である。丘陵地で温暖な気候を活かした農業が展開されている。
植生で特徴的なのは、ほぼ広葉樹の代償植生で占められている点である。これはこの地で古くから製塩業が盛んで、製塩の際に熱源を必要としたことから燃料用に大量に木々が伐採されたことによりはげ山となり、そこで繁殖力旺盛なアカマツが植えられていったことによる[8]。
イノシシが生息しており、海を泳いで島から島へ渡る様子が住民たちによって度々目撃されている。芸予諸島では、ドングリが少なく田畑が休む冬場でも、柑橘類が豊富でイノシシが餌に困ることがない。近年では皮を剥いて食べた痕跡も発見されている[13]。
半無人島の上島町赤穂根島では、タヌキ・ハツカネズミなどの哺乳類、イシガメ・クサガメ・ニホンヤモリ・ニホントカゲなどの爬虫類、モツゴ・ドジョウ・メダカなどの淡水魚などが調査によって見つかっている。このうち、ドジョウは愛媛県で準絶滅危惧種となっているが、水田の整備が進んでいないため赤穂根島では豊富に生息している。またモツゴは人の手によって導入された[14]。
また、尾道水道にはかつての海洋生物の定期的な出現（回遊）に因んだとされる地名が複数残されている。三原市に所属する二つの小島の「鯨島」はクジラの回遊が見られた事からその名が付けられたともされており、因島で捕鯨が行われた可能性を示唆させる資料も残されており、瀬戸内海に大型鯨類（ヒゲクジラ類）が普遍的に回遊していた可能性を示唆させる資料の一つになっている[6]。一方で、これらに隣接する尾道市の岩子島はイワシの回遊に因んで命名されたとされている[7]。福山市にはニホンアシカの記録も残されている[15]。今治市の能島と鯛崎島には「クジラのお礼参り」という民話が存在し[16]、スナメリは後述の通り、決して多くはないが近年にも確認されており、現代でもまれではあるがイルカやクジラが周辺に姿を見せることもあり[16][17][18][19]、短期間ではあるが居着いた事例も存在する[20][21]。
また、芸予諸島には現代の瀬戸内海でも比較的に多くのアマモの藻場が残されている[22]。竹原市の沿岸には、カブトガニの貴重な生息地である賀茂川の河口の「ハチの干潟」[23]や、天然記念物に指定されている阿波島の「スナメリクジラ廻游海面」が存在する[24]。呉市の「アビ渡来群游海面」や三原水道・有竜島の「ナメクジウオ生息地」も天然記念物の指定対象になっている[25][26]。上記の「ハチの干潟」では、ハクセンシオマネキや90年ぶりの採取が報道されたサナダユムシなどの特筆すべき生物種も確認されている[23]。一方で、スナメリは安芸灘から播磨灘にかけて著しく減少したと言われており、上記の天然記念物の阿波島周辺でも近年の確認はかなり少ない[27][28]。
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