船舶工学 安全設備

船舶工学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/04 07:55 UTC 版)

安全設備

航海灯

航海灯の見え方
航海灯の配置

白赤緑の3色の「航海灯」が夜間航海時の船舶の互いの視認に役立てられている。 これら3種類5個の航海灯の配置は万国共通で決められており、レーダーに頼らなくても、夜間に船体が見えなくても船の方向や大きさがほぼ判るようになっている。 後進した場合については法的に決められていないが、左右の赤と緑を逆にできるように左右とも赤緑両方が付いている場合と後部マストに左右逆に航海灯が付いている場合があり。後進している状態でも進路を誤認させないように工夫されていることが多い。

消火設備

「海上における人命安全会議」(SOLAS : Safety of lofe at sea)で1914年にSOLAS条約が13ヶ国で調印され海運の国際秩序と海上における人命及び財産の安全確保のために「IMCO」(政府間海事協議機関)が1958年に発足した。これらの機関によってその後、さまざまな案設備に関する決まりが定められた。

船舶では防熱上や構造上の境界によって40mを越えない仕切られた区域に区分されている。特に居住部分は他の部分から隔離されている。船内は可燃性材料の使用を控え、火災探知、警報、消火、脱出の各装置が備えられている。持ち運べる消火器も多数が用意されている。

消火設備は、消火専用のポンプの他に、普段はバラスト・ポンプ、雑用水ポンプ、衛生ポンプとして使用しているものを火災発生時に消火用に使用することが認められている。多くのポンプが機関室にあるため、機関室からの火災の場合を考えて機関室外の独立して働くポンプも備えられていて、通常は船尾舵機室にある。船内のどこから出火しても2条以上の放水が可能なように消火水配管と消火栓、消火ホースが配置されている。消火ホースは船長30mに付き主と予備の合わせて2組を備え、最低5組が用意される。

固定式の消火装置として、ガスによるもの、発泡水によるもの、霧状放水によるもの、スプリンクラーによるものがある。これらが火災探知機とともに、特性・効果を考慮して配置されている。 タンカーにはイナート・ガス発生装置が備わり、油槽からの火災を未然に防いでいる。

火災探知機は光の遮断を探知するものや、空気中のイオンを探知するもの、空気の膨張を探知するものなどがある。

救命胴衣

およそ船舶と名の付くものすべてに、乗船する乗員乗客の総数以上分の「救命胴衣」(ライフジャケット)の搭載が義務付けられている。 固体式(浮力材:発泡スチロール)、気体封入式(浮力:常圧のガス)、膨張式(使用時にボンベからのガスで膨張する)、固体膨張ハイブリッド式、等の救命胴衣がある。

救命浮輪(きゅうめいうきわ、Life Buoy)も露天デッキの各所に備えられている。

救命ボート

ある程度の距離を航海する船舶は、船体が沈没や火災などの危険な状態から乗員乗客が安全に避難できるよう、必要なだけの「救命ボート」の搭載が義務付けられている。外洋客船では国際規則によって、片舷の救命ボートだけでも乗員乗客の避難に必要なだけの数を備えるように決められている。

救命ボートにはボート型の他にプラスチック・カプセルに収められた膨張式の「救命いかだ」(Life raft)もある。救命いかだのカプセルはたとえ沈没する船に放置されたままでも4m以上の水深水圧が加われば自動的に離れて水中から浮かび上がり展張するようになっている。

救命ボート内には1人当り3リッター分の飲料水をはじめ、食料や発煙信号器、懐中電灯などいくつかの救命用備品が備えられている。

大型のクルーズ船では100人程度が乗船できるテンダーボートと兼用の小型船を搭載していることが多く、大型船が接近できない場所を観光する際にも使用される。

GMDSS

GMDSS(Global Maritime Distress and Safety System)は海上安全の為の包括的な遭難通信システムの全体構想の名称であり、1999年2月から完全実施が開始された。実際に船に搭載されるのは次に示す E-PIRB、DSC通信装置、インマルサット通信装置、SART という個別の通信装置である[6]

E-PIRB

大型船の露天デッキに備わっている「E-PIRB」(非常用位置指示無線標識装置、Emergency Position Indicate Radio Beacon、イーパブ)は沈没する船に放置されたままでも4m以上の水深水圧が加われば自動的に離れて浮かび上がり、船名や位置情報を含む救難信号を発信するようになっている。

1999年2月1日からは「SOS」で有名だった海上緊急通信としてのモールス信号は公式には廃止され、電子装置が発するデジタル信号を基本とするGMDSSに置き換わっている。E-PIRBもGMDSSを使用している。

DSC通信装置

DSC(デジタル選択呼出:Digital selective calling)通信装置は無線機に付加して特定の無線局との通信チャンネルを自動的に設定する機能である。ボタン一つで遭難信号を送信する機能も備える。

インマルサット通信装置

インマルサット(INMARSAT)通信装置は海上交通や航空・陸上の交通の安全のための緊急通信用インマルサット静止衛星を使って遭難信号を含む重要な通信を送受信する通信装置である。静止衛星であるためアンテナさえ安定できれば常に緊急通信によって音声を含む送受信が行なえるため、モールス符号による緊急通信の制約を過去のものにした。

インマルサットEGC放送
インマルサット静止衛星から海上安全情報を文字放送している。大型船舶では自動受信した放送をプリントアウトする[6]

SART

SART(Search and rescue radar transponder)は沈没などの事故時において、捜索航空機のレーダー電波に対して自動的に遭難信号を応答発信する装置であり、沈没前に海上に浮かべておけば救難捜索活動の短縮化に役立つ[6]

国際VHF

国際VHF(marine VHF band)は入出港時や遭難時などに使用される。総トン数が100トン以上の日本船舶には、DSC付き国際VHFの設置が義務付けられており、その他の日本船舶の設置は任意である。これらを使うには総合無線通信士海上無線通信士またはレーダー級以外の海上特殊無線技士の資格が必要である。ただし、第三級海上特殊無線技士は5Wをこえるもの及びDSCは操作できない。(無線従事者参照)

総務省は、2008年のイージス艦衝突事故を契機に、国際VHFを船舶共通通信システムと位置づけ[19]、設置義務の無い100トン未満の船舶に対し普及促進するため2009年10月に省令告示を改正[20]した。

アンカー

Fluke anchor-1-.gif

アンカー(錨)は比較的浅い沿岸海域などで停泊する場合に、海底に投錨することで船体の移動を抑制する機能を果たす。

特に台風などで強風や波浪の高まりが予想される場合には、大型船は港内での高潮によって岸壁に乗り上げたり係留索の断裂等による事故を避ける為、港から開けた沿岸海域に事前移動後、投錨して危険を避ける事が普通である。

21世紀はじめの近年では、使用しないときには余分な重量となるアンカーは軽量ものを1つだけ搭載する船もあり、いざとなればエンジンをかけて風に対抗することでアンカーの軽量化分を十分補えるとしている。


  1. ^ a b 泉江三著 『日本の戦艦 上』 グランプリ出版 2001年4月20日初版発行 ISBN 487687221X
  2. ^ a b c d e f g 池田良穂著 「図解雑学 船のしくみ」 ナツメ社 2006年5月10日初版発行 ISBN 4-8163-4090-4
  3. ^ 渡辺逸郎著 「コンテナ船の話」 成山堂書店 18年12月18日初版発行 ISBN 4425713710
  4. ^ 伊藤雅則著 「船はコンピュータで走る」 共立出版 1995年1月15日第一版発行 ISBN 4-320-02915-1
  5. ^ a b c 池田宗雄著 「船舶知識のABC」 成山堂書店 第2版 ISBN 4-425-91040-0
  6. ^ a b c d e f 仲之薗郁夫著 「海のパイロット物語」 成山堂書店 2002年1月28日初版発行 ISBN 4-425-94651-0
  7. ^ 小野寺幸一著 「地球90周の航跡」 東京経済 1995年4月20日第一刷発行 ISBN 4-8064-0419-5
  8. ^ 「船の省エネ技術開発」『海の環境革命~海事社会と地球温暖化問題~』(PDF) 日本海事センター、2010年3月、17頁。
  9. ^ ジャパン マリンユナイテッドホームページ TOP > 技術・研究開発 > 技術開発 > 流力技術 > 実海域性能
  10. ^ a b c 野沢和夫著 「船 この巨大で力強い輸送システム」 大阪大学出版会 2006年9月10日初版第一刷発行 ISBN 4-87259-155-0
  11. ^ 檜垣和夫著 「エンジンのABC」 ブルーバックス 講談社 1998年3月20日第6刷発行 ISBN 4-06-257129-3
  12. ^ 野沢和夫著 「氷海工学」 成山堂書店 2006年3月28日初版発行 ISBN 4-425-71351-6
  13. ^ a b 拓海広志著 「船と海運のはなし」 成山堂書店 平成19年11月8日改訂増補版発行 ISBN 978-4-425-911226
  14. ^ 恵美洋彦著 「Illustrations of Hull Structures」 成山堂書店 2006年11月28日初版発行 ISBN 4-425-71381-8
  15. ^ 佐藤忠著 「セメント船を造ろう」 パワー社 2001年9月25日発行 ISBN 4-8277-2277-3
  16. ^ 吉識恒夫著 「造船技術の進展」 成山堂書店 2007年10月8日初版発行 ISBN 978-4-425-30321-2
  17. ^ 池田良穂著 『内航客船とカーフェリー』 成山堂書店 平成20年7月18日新訂初版発行 ISBN 9784425770724
  18. ^ 満田豊他著 『海のなんでも小事典』 講談社ブルーバックス 2008年3月20日第1版発行 ISBN 9784062575935
  19. ^ 海上における船舶のための共通通信システムの在り方及び普及促進に関する検討会報告書p.14 (PDF) 「海上における船舶のための共通通信システムの在り方及び普及促進に関する検討会」報告書(案)に対する意見募集の結果及び最終報告書の公表 総務省報道資料別紙3 平成21年1月27日 (国立国会図書館のアーカイブ:2009年7月22日収集)
  20. ^ 船舶が任意に設置する安価な国際VHF機器の導入に伴う関係規定の整備 総務省報道資料 平成21年10月1日 (国立国会図書館のアーカイブ:2009年10月21日収集)





船舶工学と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「船舶工学」の関連用語

船舶工学のお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング



船舶工学のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの船舶工学 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2019 Weblio RSS