航空母艦 分類

航空母艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/18 14:05 UTC 版)

分類

1921年ワシントン軍縮会議では、「水上艦船であって専ら航空機を搭載する目的を以って計画され、航空機はその艦上から出発し、又その艦上に降着し得るように整備され、基本排水量が1万トンを超えるものを航空母艦という」と空母を定義している[5]1930年ロンドン海軍軍縮条約で基本排水量1万トン未満も空母に含まれることになった[6]

設計による分類

アメリカ海軍では、当初、航空母艦(Aircraft carrier)には一括してCV船体分類記号が付与されていた。その後、第二次世界大戦に伴う需要激増に対応し、特に船団護衛に投入するため、1941年には商船の船体を利用した小型・低速の空母として航空機護衛艦(Aircraft escort vessel)が登場し、AVGの船体分類記号が付与された。1942年8月20日には補助航空母艦(Auxiliary aircraft carrier)と改称し、船体分類記号もACVに変更された[7]

その後、1943年7月15日に整理が図られた。従来の航空母艦(CV)のうち、満載排水量5万トン以上の艦[8]ミッドウェイ級)は大型航空母艦(Large aircraft carrier)に類別変更され、CVBの船体分類記号が付与された。一方、巡洋艦の設計を流用して満載排水量2万トン以下の艦[8]インディペンデンス級サイパン級)は軽空母Light aircraft carrier)に類別変更され、CVLの船体分類記号が付与された。またACVについても、他の空母になぞらえて、護衛空母Escort carrier)と改称し、船体分類記号もCVEに変更された[7]

1952年には、正規空母(CV・CVB)について、下記のように役割による分類が導入された。また1956年5月29日には、核動力を導入した「エンタープライズ」が就役し、原子力攻撃空母Nuclear-powered attack aircraft)の類別が新設されて、CVANの船体分類記号が付与された。その後、役割による分類が薄れたことから、1975年には、在来動力艦はCV、核動力艦はCVNと、再び設計のみによる分類へと回帰した[7]

なおこのように、アメリカ海軍とカナダ海軍で空母を表す船体分類記号としては「CV」が用いられる。1文字目の「C」は"Carrier"とする説もあるが[9]、アメリカ海軍の公式webサイトでは、もともと巡洋艦の種別から派生したことから"Cruiser"の頭文字をとったものとしている[10]。また2文字目の「V」はVesselの頭文字とする説もあるが[9]世界の艦船ではこれを否定し、艦上機の主翼を模した象形文字としている[7]ドイツ連邦共和国においては空母はRB、軽空母はRLに類別されている。またポルトガル語圏ブラジル連邦共和国においては空母はNAe、軽空母はNAeLに類別されている。

役割による分類

1952年7月、アメリカ海軍は、CVの一部を対潜戦に投入することを決定し、対潜空母Anti-submarine warfare support aircraft carrier)の類別が新設されて、CVSの船体分類記号が付与された。また10月には、それ以外のCVとCVBが攻撃型空母に類別変更されて、CVAの船体分類記号が付与された[10]

しかしその後、ベトナム戦争後の国防予算削減のなかで、対潜戦専従の航空母艦を維持することは困難になっていき、CVA/CVANに艦上哨戒機・哨戒ヘリコプターを搭載して対潜戦を兼務させることになり、CVSの運用は1974年までに終了して、CVA/CVANは汎用化されてCV/CVNと改称した[10]。一方、イギリス海軍インヴィンシブル級航空母艦もCVSと称されていた[11]

なお、大戦中よりヘリコプターが発達しており、対潜戦や上陸戦への応用が注目されていた。これは原理的には空母以外の艦船での運用も可能ではあったが、特に初期の機体はかなり大型だったこともあり、できれば空母での運用が望ましかった[12]。このこともあり、1955年には、CVEの一部が船団護衛でヘリコプターを運用するための護衛ヘリコプター空母(CVHE)に類別変更され、また「セティス・ベイ」が水陸両用作戦用の強襲ヘリコプター空母 (CVHA) に改装された。ただしCVHEについては特段の改修が行われたわけではなく、またCVHAについても、後には航空母艦の保有枠を圧迫しないように揚陸艦のカテゴリに移すことになり、ヘリコプター揚陸艦(LPH)という新艦種が創設された[13]

一方、アメリカ国外でもヘリ空母が登場し始めていたが、その一部は、ヘリコプターだけでなくV/STOL機も搭載するようになった。このように固定翼機の運用能力を獲得したヘリ空母も「軽空母」と称されることもある[14]


注釈

  1. ^ a b 第十三、飛行機母艦「フューリアス」ノ全景[3] 獨國大海艦隊投降当時英國大艦隊ハ「フューリアス」「ヴィンディクティヴ」「アーガス」「ペガサス」及「ナイラナ」ノ五飛行機母艦ヲ有シ此ノ五隻ヲ以テ一航空戰隊ヲ編成シアリタリ本写真ハ其ノ旗艦「フューリアス」ナリ
    「フューリアス」ハ前部ニ発艦、後部ニ著艦滑走台ヲ有シ大小合セテ十八隻ノ飛行機ヲ格納スト称セラルル一万九千頓三十二節ノ巡洋艦ナリ 仝艦以上ノ攻撃力ト仝等以上ノ速力ヲ併有スル軍艦ハ世界中英國大艦隊ニ「レパルス」「レナウン」ノ二巡洋戰艦ト「カレッジアス」「グロリアス」ノ二巡洋艦アルノミ
    此ノ種母艦ハ艦隊戰闘ニ必要ナルノミナラス敵國領土内ノ所要ノ物件ニ対シ飛行機襲撃ヲ決行スルニ最適ノモノナリ。之レカ侵撃ヲ防クニハ潜水艇、飛行機及巡洋戰艦ノ併用ヲ俟ツノ外良策ナキカ如シ 研究ヲ要スル大問題ナリ。
  2. ^ 軍縮で日本が廢棄を主張する航空母艦 彼女が持つ任務如何[4](中略)依つて左に海軍中佐加藤尚雄氏によつて説明された航空母艦に關する話を紹介する
     航空母艦の話
     航空母艦とはどんな任務を持つて居る軍艦か、は名前の通り航空機の母艦である。艦内に澤山の飛行機を積み込んで居るふねである。然し母親が子供を抱いて居るやうに只飛行機を腹の中に入れて居るだけなら今日のやうに航空母艦がさわがしく論ぜることもなからう。
     とは前記のやうに澤山の飛行機を搭載して艦隊と一緒に又は單獨に行動し、いざといふ時にその子供の飛行機をどん〱艦から出發させて、或は敵情を偵察させたり或は敵艦の爆撃や雷撃、(魚雷で攻撃すること)をやつたり敵の飛行機を撃ち落させたりするのであつて、海上では空中兵力の根據地となるものである。だから航空母艦の勢力の大小といふことは、やがて海軍の空中武力の大小といふことに非常な關係があるから、軍縮會議などでやかましい問題となるのである。繰り返していふ、航空母艦はの根據地となる艦である。然もそれが非常な速力で遠いところへどしどし行動出來る移動根據地である。
    ほんとの航空母艦と水上機母艦
    ウソの航空母艦があるわけではないがワシントン會議ロンドン會議で航空母艦と定められたものは飛行機の發着が自由に出來る飛行甲板のあるのを航空母艦といふのであつて、そういふ飛行甲板がなくてを積んで居るのは補助航空母艦といでもいふのである。故にほんとの航空母艦では艦上機といつて陸上機と同じやうに車輪を持つた飛行機を用ゐ、それで飛行甲板を陸上飛行場のやうに滑走して出發し又この甲板へ降りて來て止まるのである(以下略)(記事おわり)
  3. ^ 現在まで左舷側にアイランドを設けたのは日本の「赤城」と「飛龍」のみ。
  4. ^ a b クイーン・エリザベス級では、垂直ではなく斜めに着艦するSRVL (Shipborne rolling vertical landing方式とすることもある[26]
  5. ^ この「ハーミーズ」は第一次世界大戦勃発後の1914年10月31日にUボートによって撃沈された。艦名は空母「ハーミーズ」に受け継がれた。
  6. ^ 第一次世界大戦に参加した水上機母艦「アーク・ロイヤル」は新造空母に艦名を譲り、「ペガサス」と改名した(第一次世界大戦に参加した水上機母艦「ペガサス」は既に除籍済み)。
  7. ^ 対外的には10,050トンの空母として発表した[55]
  8. ^ なお誤解されることが多いが、マレー沖海戦イギリス東洋艦隊を攻撃して戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と「レパルス」を撃沈したのは日本海軍の陸上攻撃機一式陸上攻撃機九六式陸上攻撃機)である。北大西洋や地中海では、ドイツ空軍やイタリア空軍の陸上攻撃機がイギリス戦艦や巡洋戦艦を攻撃しているが、撃沈に到った艦はない。
  9. ^ 大西洋艦隊に所属していたニューメキシコ級戦艦ノースカロライナ級戦艦は健在であった。
  10. ^ 空母「赤城」「加賀」「飛龍」「蒼龍」、重巡「三隈」。
  11. ^ 大西洋では正規空母「レンジャー」が活動しており、また護衛空母も何隻か就役している。
  12. ^ 1942年8月以降、第二艦隊司令長官近藤信竹中将と第三艦隊司令長官南雲忠一中将では、近藤中将が先任のため南雲を指揮する立場にあった。
  13. ^ 太平洋戦争開戦後の1942年8月31日、軍艦籍となり「大鷹」と改名した[68]。艦艇類別等級では大鷹型航空母艦となる。
  14. ^ ただしその後も、アメリカ海軍の対潜空母(CVS)と同様にS-2艦上哨戒機やA-4艦上攻撃機、ヘリコプターを搭載して行動を継続した艦もあった[81]
  15. ^ 他の2種類はAH-64攻撃ヘリコプターF-117ステルス攻撃機であった[85]

出典

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