航空交通管制 気象情報

航空交通管制

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/05 06:07 UTC 版)

気象情報

航空用の気象情報は、いくつかの情報がある。

  • 空域悪天情報(SIGMET)
  • 火山灰支援情報 (VA Advisory)
  • 飛行場の実況(METAR/SPECI)
  • 航空機観測報告(AIREP,PIREP)
  • 飛行場予報(TAF)
  • 空域・航空路予報
  • 各種天気図の提供
  • 飛行場の気象警報・情報
  • 航空管制当局を通じて提供される情報
  • 緊急地震速報および震度情報
空域悪天情報 SIGMET
空域悪天情報には、大きく分けて3種類存在する。熱帯低気圧、飛行上重大な悪天、火山噴火の3種類ある。有効期間は4-6時間。これらの情報は、飛行情報区(Flight Information Region)毎に報じられる内容で、悪天の強さや存在位置、今後の変化などの情報が含まれる。この情報は、飛行場内の予報部門のほか、航空管制経由で口頭、あるいはデータリンクサービスで伝えられる。明らかに問題がある場合は、航空管制から回避行動を指示したりする。
SIGMETの例
RJJJ SIGMET 1 VALID 300425/300625 RJTD-
RJJJ FUKUOKA FIR SEV TURB OBS AT 0402Z 40NM W OF MJE FL390 BY A333
MOV E 25KT INTST UNKNOWN=
火山灰に関するSIGMET
LIRR SIGMET 03 VALID 300800/301400 LIMM-
LIRR ROMA FIR FBL VA LAST OBS (300400Z BY LICZ) EXT 20 NM SE OF ETNA
FL090/120 MOV SE 15 KT.=
火山灰支援情報(航空路火山灰情報)
火山噴火が発生した場合、火山灰による航空機の安全を確保する目的で、噴火した火山灰がどの程度の範囲にまで達するか、存在する高さがどのくらいか。等の情報である。予報期間は最大で18時間。高さに関係なく報じられる。
この情報はSIGMETと異なり航空路火山灰情報センター (VAAC=Volcanic Ash Advisory Centre) が発信し、複数のFIRをまたいで報じられる。拡散範囲が広い場合、各VAACの管轄をまたぐこともあり、この場合は、各VAACから発信されるが、支援情報の中に「噴火元のVAACの情報を必ず見ること」が付け加えられる。
航空管制機関は、気象機関などから得た情報を基に、飛行中の航空機に対して情報提供、回避行動の指示や、空港の一時閉鎖、航空路の一時抑止といった措置を行い、航空機に対して報じる。
火山灰支援情報の例
VA ADVISORY
DTG: 20090630/0605Z
VAAC: DARWIN
VOLCANO: BATU TARA 0604-26
PSN: S0747 E12335
AREA: LESSER_SUNDA_IS
SUMMIT ELEV: 748M
ADVISORY NR: 2009/277
INFO SOURCE: NOAA, MTSAT-1R
AVIATION COLOUR CODE: ORANGE
ERUPTION DETAILS: VA PLUME OBSERVED APPROX 30NM TO W AT 30/0530Z
TO FL050.
OBS VA DTG: 30/0600Z
OBS VA CLD:
SFC/FL050 S0745 E12335 - S0805 E12245 - S0725 E12245 -
S0745 E12335 MOV W 05KT
FCST VA CLD +6HR: 30/1200Z
SFC/FL050 S0745 E12335 - S0805 E12245 - S0725 E12245 - S0745 E12335
FCST VA CLD +12HR: 30/1800Z
SFC/FL050 S0745 E12335 - S0805 E12245 - S0725 E12245 - S0745 E12335
FCST VA CLD +18HR: 01/0000Z
SFC/FL050 S0745 E12335 - S0805 E12245 - S0725 E12245 - S0745 E12335
RMK: GRAPHIC AT [LOWER CASE]
NXT ADVISORY: NO LATER THAN 20090630/1200Z
飛行場の実況(METAR/SPECI)
航空機から、飛行場の気象状態のリクエストがあった場合、その情報を伝える。また、離着陸に影響のある現象が観測された場合、航空機に対して観測情報が報じられるほか、回避・待機などの指示を出す。
航空機からの観測報告
航空機から、乱気流などの悪天を観測した場合や、火山噴火を観測した場合は、管制機関に通報し、管制機関から各航空機関・気象機関に通報される。
飛行中の各ポイントで観測された情報は、管制機関にデータリンク方式[注釈 6]で通報する場合もある。
飛行場予報(TAF)
飛行場予報は、直接管制から航空機に対して報じることはないが、着陸に必要な情報を航空機からリクエストがあった場合、直近に関して管制気象部門に問い合わせの上、伝えることがある。
空域・航空路予報
空域予報は、当該空域において悪天・現象、強さや存在高度の予測を行う。
管制機関から直接航空機に対して、通報されることはない。
各種天気図の提供
各空港で飛行に必要な天気図を、展示したりあるいは資料提供と言ったことが行われる。提供される天気図はAIPに記述されている。また気象機関によってはインターネットで、その内容を直接閲覧できるようにしているところもある。管制機関が直接航空機に対して、天気図の提供はしない。
日本では、民間の気象会社が公開しているサイトで、天気図を公開しているところもある(全てではない)。
飛行場の気象警報・情報
飛行場気象警報は、離着陸に影響がある風や現象・雲など一定の基準を設けて運用の規制をかけるような情報。各飛行場単位で基準が定められている。
この情報は、管制機関から航空機に対して通報される。
飛行場気象情報は、明確な基準はないものの、離着陸に影響があるような事象について、警報基準に達しないが、注意しておくべき事象が予想されるような場合、あるいは、事前に準備や飛行計画の検討を予め行っておく必要がある等と言ったような場合、さらには、飛行場内で行う陸上作業(積み荷の搬出入、除雪作業の事前準備、乗降への影響)などに影響を与えるような場合にも報じられることがある。
これらの情報は、飛行場単位で行われる。
緊急地震速報・震度速報[12]
気象庁震度階級4以上が予想される緊急地震速報が出たとき、あるいは当該飛行場で震度4以上の地震が観測されたとき、管制機関から航空機に対して口頭で報じられる情報である。
多機能型地震計が設置された空港で提供される(2009年4月現在、13の空港が対象)。
航空機の運航に影響を及ぼす恐れがある(震度4以上)のような、緊急地震速報が発せられたとき、管制機関から緊急地震速報が出た旨、管制官から可能な限り情報提供される。
滑走路等点検が必要(震度4以上)となる場合は震度速報(当該飛行場)の他、管制官から発着許可の取り消し、または着陸復行(ゴーアラウンド)の指示が出る。

注釈

  1. ^ 非商用飛行時に無線資格が不用で無線交信を必要としない空域が確保されている国(アメリカなど)もあり、エンルートチャートで指定されている。
  2. ^ 近年では空港無線電話により車両とも直接交信が可能となっている。
  3. ^ 日本では2006年10月まで"Taxi into position and hold"と言っていた
  4. ^ 千葉県東葛飾郡関宿町(現・野田市)に置かれた航空標識「関宿VOR」。実在する
  5. ^ MTSATを利用することで一飛行経路あたりの管制縦間隔(前後間隔)や飛行経路間隔(左右間隔)の短縮が見込まれる。また、(RVSM: Reduced Vertical Separation Minimum) によって垂直管制間隔(上下間隔)を狭く、航法精度要件(RNP: Required Navigation Performance)を満たす航空機の場合であれば広域航法(RNAV: area-navigation route)により飛行経路の保護空域の縮小により並行経路間隔を狭くして運航本数を増やすことができる。現在、正確に言うとRNPはRNAVと異なる概念であるが、便宜的にこの用語を使っている。
  6. ^ データリンク方式は、文字データ若しくはバイナリーデータの形式で航空機からのデータ基地局に対して送受信する通信手段で、方式としてACARS(短波帯・VHF帯),ASDAR(静止衛星で主に気象衛星が持つ場合がある),インマルサットなどを使った方式などがある。

出典

  1. ^ Aviation Glossary C”. Transport Canada. 2016年7月9日閲覧。
  2. ^ 航空交通管制職員試験規則
  3. ^ 管制塔バーチャルツアー ガンセット & ライトガン - 国土交通省
  4. ^ ATC Light Signal FAR 91.125 指向信号灯
  5. ^ 日本放送協会. “備えたことしか、役には立たなかった ~ある官僚たちの震災~”. NHKニュース. 2021年3月6日閲覧。
  6. ^ 群馬ヘリ墜落:機長はベテラン 大震災直後に被災地上空へ[リンク切れ] - 毎日新聞
  7. ^ a b A/G無線電話サービス - 日本空港無線サービス株式会社
  8. ^ 超短波通信装置 - 日本航空航空実用事典
  9. ^ 快適な空の旅を支えるJALのグランドスタッフに密着してみた - Car Watch
  10. ^ 航空法第97条第1項
  11. ^ a b 今後の我が国航空管制の課題と対応 (将来の航空交通需要増大への戦略) (PDF) -国土交通省 航空局航空管制部 (平成28年度航空管制セミナー 講演資料)
  12. ^ 航空情報サーキュラー Nr004/09 2009年2月26日付参照






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