舞鶴市
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経済
2010年(平成22年)の国勢調査によれば、第1次産業の従事者4.2パーセント、第2次産業の従事者23.4パーセント、第3次産業の従事者72.4パーセントである。産業別に見ると卸売業ないし小売業に就業しているものが最も多く(14パーセント)、ついで公務(13パーセント)、製造業(12パーセント)、医療・福祉(11パーセント)となっている[42]。男性に限って言えば公務従事者は全体の18パーセントを占め、これには海上自衛隊関連施設の存在が影響している[42][43]。
舞鶴港は日本海側の重要港湾であり、船舶の大型化や荷役のコンテナ化に対応する港湾にするべく舞鶴国際埠頭が整備された。
中心市街地の人口は1985年度の約8,400人から2000年度には約6,300人に減少、実質商品販売額も約170億円から約110億円と35%も減少している。
東舞鶴駅前を中心に高層マンションが建設され、駅北口には北近畿最大級の家電量販店ケーズデンキ東舞鶴店が入る、JR東舞鶴駅NKビルが建っている。
第一次産業
農業
農林業就業者数は全体の約2.7パーセント(1178人)であり[42]、耕地面積は舞鶴市全体の4.2パーセント(1270ヘクタール)である。2015年のデータによると市内には2041世帯の農業経営者がいるものの、そのうち販売農家は714世帯、そのなかでも専業農家は245世帯のみである。最も多く育てられているのは米(548経営体・316ヘクタール)で、ほかには小豆(78経営体・25ヘクタール)、茶(19経営体・10ヘクタール)、ダイコン(162経営体・11ヘクタール)なども栽培されている[44]。京野菜の万願寺とうがらしは舞鶴発祥であり、「万願寺甘とう」の名称で2017年(平成29年)、京都府内でははじめてGI登録を受けた[45]。
舞鶴市は由良川水源地と与保呂川水源地をもち、市の耕作に用いられる土地は全体の4.7%の1,620haである。そのうち水田率は77.8%であり、主にコシヒカリを生産している。また畑に用いられる土地は368haで、主に普通畑である。総人口に占める農家人口は、1990年には15%強あったが、2000年には11.9%、2,831戸まで低下している。全国と同じく農業就労者の高齢化も進んでいる。
林業
林業については、市内に2万6957ヘクタールの林野があり、主にスギ・ヒノキ材を生産している[44][46]。中丹地域(福知山市・綾部市・舞鶴市)の由良川流域で育った木材は品質がいいということから、「丹州材」のブランド名がついている[47]。
市全体の林野率は79.0%で27,015ha、人工林率は34.0%で8,597haである。国有林率は民間林の26,261haに比べ、754haで全体で2.8%になっている。林家数は1,239戸で、総世帯数に占める林家数の割合はわずか3.6%でしかない。ちなみに保安林は4,322haで全体の16.0%にあたる。
水産業
若狭湾に面する舞鶴市では漁業も営まれており、イワシ・サワラ・ブリなど2493トンが水揚げされている[44]。舞鶴市内に属する漁港には、舞鶴漁港のほか田井漁港・野原漁港・竜宮浜漁港・水ヶ浦漁港・成生漁港・瀬崎漁港・西大浦漁港・神崎漁港などがある。
2000年現在で387世帯が漁業に携わっており、個人漁業経営体332世帯で、 漁業従事者世帯は55世帯である。舞鶴市でも就労者の高齢化が進んでおり、漁業就業者数に占める65歳未満の割合は59.3%まで低下している。なお舞鶴漁港ではいわし類やあじ類が多く水揚げされており、近年では舞鶴近海でとれる岩牡蛎を「舞鶴牡蛎」としてブランド化しようとする動きがある。
- 京都府漁業協同組合連合会(京漁連・漁連・ぎょれん)
- 傘下に、舞鶴・田井・成生・小橋・三浜・野原の各漁協がある。
- 漁港
市内に所在する漁港は以下のとおり。
畜産業
畜産業も行われており、市全体で乳牛が190頭、採卵鶏が13万9100羽飼育されている[44]。
第二次産業
産業名 | 事業所数 | 従業者数(人) | 製造品出荷額(万円) |
---|---|---|---|
食料品 | 26 | 503 | 891974 |
飲料・たばこ・飼料 | 2 | 33 | — |
繊維 | 6 | 146 | 45997 |
木材・木製品 | 6 | 429 | 2601507 |
家具・装備品 | 1 | 41 | — |
印刷 | 4 | 40 | 32811 |
化学 | 2 | 58 | — |
石油・石炭 | 1 | 16 | — |
プラスチック製品 | 5 | 100 | 119365 |
窯業・土石 | 8 | 1108 | 8808392 |
非鉄金属 | 2 | 39 | — |
金属製品 | 11 | 151 | 235100 |
汎用機械 | 2 | 26 | — |
生産用機械 | 5 | 243 | 270626 |
電子部品 | 2 | 28 | — |
電子機械 | 2 | 50 | — |
輸送用機械 | 13 | 780 | 4047746 |
その他 | 4 | 27 | 20390 |
工業
終戦後、日本海軍の解体により大きな経済基盤を失った舞鶴市は、旧海軍の工場施設を活用することによって復興の道を歩んだ[49]。舞鶴海軍工廠を前身とするジャパン マリンユナイテッド舞鶴事業所は、日本海側にある造船所としては唯一8万トン級の船舶が建造できる施設であったが、中国や韓国との競争激化を理由に2021年には造船事業を撤退、以後は艦船・船舶修理専従事業所として操業している[50]。同様に、肥料メーカーの日之出化学工業・繊維メーカーの大和紡績舞鶴工場も戦中軍需施設として使われていた施設を活用したものである[51]。
市内の工業のなかで重要な位置を占めるものとしては、ほかにガラス工業と木製品加工業があり、特に前者は市内の工業生産額の約半分を占めている。ガラス工業については、1952年(昭和27年)に日本板硝子が舞鶴工場を設置しており、1991年(平成3年)時点で1021人を雇用していた[52]。木製品加工業については、1968年(昭和43年)に丸甚合板工業・林ベニヤ産業・丸玉木材が工場を建設し、平工業団地を形成している[53]。
鉱山
かつては銀・銅・硫化鉄を産出する舞鶴鉱山や、銅・鉛を産出する大俣鉱山などがあったが、現在はいずれも閉山している[54]。
- 舞鶴鉱山
- 舞鶴炭田:石炭:志高、吉坂、八戸:中生代(約2億3千万年前)の石炭。
- 志高炭鉱:1948年閉山。無煙炭を産出した。舞鶴帯の志高層郡に存在する。
- 松尾寺炭鉱:無煙炭を産出した。舞鶴帯の難波江層郡に存在する。
- 白杉鉱山:褐鉄鉱、
- 大俣鉱山:銅、廃止
- 硫化水銀/丹、辰砂、朱沙(朱砂)、丹砂
- 大丹生
- 浦入
- 女布
- 紀ノ川・吉野川流域
- 舞鶴要塞地帯内加佐郡
- クローム鉱、ニッケル鉱
第三次産業
商業
舞鶴市の商業は細川氏により、田辺城とその城下町が建設されて以降発達した。江戸時代に西廻り航路が開かれて以降は、藩内の由良湊が航路中の要津となった。また、城下町を流れる高野川筋にある竹屋町は商業の中心地となり、廻船問屋や商家、川の両岸には舟小屋や細工場が立ち並んだ[5]。終戦後まもない1958年(昭和28年)、舞鶴市は産業貿易館を設け、輸出産品の陳列を行い、貿易商の斡旋などにも力を入れた[55]。
商圏・都市圏
舞鶴都市圏は舞鶴市全域を含め福井県大飯郡高浜町の全域とおおい町の一部、綾部市・宮津市の一部を含んでおり、商圏人口は約12万人である。
近年では東舞鶴駅前に平和堂系列の「らぽーる」(本社:舞鶴市、1995年開業)が進出し、西舞鶴にも駅東側にさとう系列の「バザールタウン舞鶴」(2000年開業)、駅前に「さとう舞鶴店」が出店しており、また東西両舞鶴市街地を結ぶ白鳥街道(京都府道28号小倉西舞鶴線)沿いや、西舞鶴の国道27号・国道175号沿いには郊外型飲食店や娯楽施設、大規模小売店などが立地するなど、北近畿の商業地域として近隣市町村にその商圏を広げている。
なお、前述した白鳥街道にはバイパス計画や4車線化計画があるものの、既に市街地が形成されていることなどから事業が進んでおらず、白鳥街道の旧道を拡張しバイパスとする新たな道路計画がある。
卸売業
卸売業については2016年(平成28年)現在で168事業所1213事業者、小売業については644事業所4154事業者存在するが、事業所数・販売額ともに減少し続けている[56]。また、巨大な港湾を持つ舞鶴市では貿易も盛んであり、2018年(平成30年)で輸出額4429万2959円、輸入額7140万1949円となっている[57]。輸入品では石炭・コークスおよび練炭が(4546万6087円)、輸出品では輸送用機器(2678万3528円)が最も多い[58]。
観光業
舞鶴市内には旧海軍施設である舞鶴赤レンガ倉庫群や田辺城、古社・古刹といった様々な観光資源が存在するが、同市はその中でも「赤れんが」と「海・港」を活かした魅力づくりを推進している[59]。2016年(平成28年)次の推計観光客数は255万人であり、前年・前々年度と比べても増加している[60]。
拠点を置く主な企業
製造業
- 金属製造業
- ジャパン マリンユナイテッド 舞鶴事業所(艦艇・船舶修理)
- 日立造船 舞鶴工場(鉄鋼構造物、プラント機器、電子制御機器など)
- エナミ精機 舞鶴工場(金型、装置設備など)
- カンネツ 舞鶴工場(冷却装置)
- 和幸産業 舞鶴工場(造船艤装)
- ガラス製造業
- 食品製造業
- ケンコーマヨネーズ 関西工場(食品) - 倉谷工業団地に所在。
- 化学製造業
- 繊維製造業
- 大和紡績 舞鶴工場(衣料・リビング素材・産業資材・土木資材)
- 近年発生した火災のあと、工場は解体され更地となっている。
- 木材加工
運輸・物流
小売店
- 株式会社エール 本社・東舞鶴店(小売)
- さとうグループ・バザールタウン舞鶴 ほか2店舗(小売)
- フクヤ 本部ほか6店舗(小売)
- ヤマダ電機テックランド舞鶴店
- ケーズデンキ東舞鶴店
- ニトリ舞鶴店
- ココス東舞鶴店
- トマトアンドアソシエイツ(外食、トマトアンドオニオンなどを運営)の創業地であり市内に本店があったが、2006年のすかいらーくグループ入りの後に、実質的な本社機能がある大阪府吹田市に本店を移動した。
金融機関
以前には舞鶴市内に本店を置く金融機関は東舞鶴信用金庫、舞鶴信用金庫などがあったが、いずれも2002年(平成14年)の京都北都信用金庫との合併により消滅しており、市内に本店機能を有するところはJFのみ。
なお、福井県を地盤とする福井銀行、福邦銀行が支店を有する他、小浜信用金庫も舞鶴市を営業エリアとしている。
市の指定金融機関は、京都銀行である。
市内に本店・支店・出張所等の窓口を置く金融機関一覧は以下のとおり(2010年〈平成22年〉8月現在)。
金融機関種別 | 金融機関名称 |
---|---|
地方銀行 | 京都銀行(2), 福井銀行 |
第二地方銀行 | 福邦銀行(2) |
信用金庫 | 京都北都信用金庫(8) |
信用組合 | 近畿産業信用組合、京滋信用組合 |
労働金庫 | 近畿労働金庫 |
公庫 | 日本政策金融公庫 |
JA・JF | 京都丹の国農業協同組合(4), 京都府信用漁業協同組合連合会(2) |
証券会社 | みずほ証券、六和証券 |
生命保険 | 日本生命、住友生命、大樹生命、富国生命、ジブラルタ生命など |
損害保険 | 三井住友海上、損保ジャパン、東京海上日動、共栄火災など |
- ※カッコ内は窓口を置く事業所(支店など)の数。
注釈
出典
- ^ 舞鶴市 2018, p. 12.
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- ^ 舞鶴市 2017, p. 9.
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- ^ a b c d e f 日本歴史地名体系 1985, 『舞鶴市』.
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- ^ “定期航路”. 京都舞鶴港. 2022年3月25日閲覧。
- ^ “京都府文化財、新たに10件 本満寺蓮乗院霊屋など”. 京都新聞. (2013年3月5日). オリジナルの2013年3月14日時点におけるアーカイブ。 2013年3月14日閲覧。
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