自転車用タイヤ トレッドパターン

自転車用タイヤ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/02 07:50 UTC 版)

トレッドパターン

ブロックタイヤ
セミスリックタイヤ (KENDA)

路面に直接触れるタイヤの表層部分には濡れていたり、ぬかるんでいる路面とタイヤの間の水分を排出して滑りにくくするための溝がある。この溝をトレッドと呼び、この部分の突起や溝の有無で以下のように分類できる。

ブロックタイヤ
表面に大きめの突起が多数ついているゴツゴツした見た目のタイヤ。オフロード用であり、主にマウンテンバイクに使用する。土や石のコースでは圧倒的なグリップを発揮する。しかし表面の凸凹によって転がり抵抗が大きくなり、ペダリングのエネルギーが奪われて漕ぎが重くなる。また、スリックタイヤと比較したとき、ブロックの重量のためタイヤが重くなる。
スリックタイヤ
表面の凹凸が無いなめらかなタイヤ。多少の模様がついているものもスリックタイヤに含む。晴れている時の舗装路用で、主にロードバイククロスバイクに見られる。転がり抵抗が小さいため、漕ぎが軽い。溝がないため、雨天での使用は非常に危険であることに留意されたい。
セミスリックタイヤ
センタースリックタイヤともいう。ブロックとスリックの中間のタイヤ。オフロードと舗装路両方を走ることを想定している。主にマウンテンバイクに使用する。トレッド中央はスリックかごく浅いパターンで舗装路直進時の転がり抵抗を抑え、サイドはブロックタイヤ同様に突起が配置されており、悪路でのコーナリングに対応している。デュアルパーパスタイヤ(トレールタイヤ)とも呼ばれる。

チューブ

チューブ

チューブはクリンチャータイヤ特有の部品で、タイヤ内の空気を保持するための浮き輪と同じドーナッツ状のゴム風船のようなものである。

チューブにはバルブがあり、弁機構により空気が充填できる。チューブはブチルゴムラテックスポリウレタンなどで作られる。チューブはタイヤ側とリム側に接しているが、リム側のスポークなどの突起物で穴が開きパンクを起こす場合がある。これを防ぐため、リム側にはリムテープ(「リムフラップ」「ふんどし」とも呼ばれる)を張りパンクを防止する。

空気保持力が高く安価で耐寒性も高いブチルゴムが、材質としてもっとも普及しているが、競技用自転車では、より軽量なラテックスゴムが用いられることも多く、ポリウレタン樹脂も用いられる。これらのチューブは、軽量でしなやかだが空気が抜けやすく、空気圧のこまめな点検が必要である。また、耐久性もブチルゴムに劣る。

チューブは自転車の走行で磨り減る消耗品である。タイヤが転がると接地面でタイヤが変形し、内部のチューブとタイヤとがこすれあう。タイヤが転がるとタイヤ内面がチューブを削り、薄くなることで空気漏れを起こしたりパンクを起こすのである。これを防ぐために、タイヤ内面にタルクの粉末(タルカムパウダー)を塗りすべりをよくすることもある。空気圧が低ければタイヤの変形量が大きくなりチューブの減りが早くなる。パンク防止には、リム打ちパンクを防ぐという意味でも、タイヤの空気圧を適正に保つことが重要である。また、適正空気圧はほとんどの場合、タイヤの横部に〇〇PSI、〇BARなどと表示されている。仏式バルブ、米式バルブの場合は、この数値を参考に一般販売されている空気圧ゲージ付きの自転車用空気入れで手軽に適正空気圧まで空気を充填、加圧できる。シティサイクル、軽快車等に多く採用されている英式バルブの場合は、英式から米式に変換するアダプターで外側を米式バルブにすることにより空気圧を計測しながら空気を充填出来るようになる。

現在ではチューブ部分がウレタン素材になっているノーパンクのものも存在する。

バルブ

英式バルブの原理図
米式バルブの原理図

バルブは空気を入れる部分の弁である。全5種類があり、そのうち日本で一般に見られるのはJIS D 9422『自転車用タイヤバルブ』に規定されている英米仏の3種類が主要である。各バルブに合致した空気入れを使わないと正しく充填できない。空気入れの中には、複数のバルブに対応した物も多くある。またバルブ間の変換アダプターも200円程度で売られている。

英式バルブ(ウッズバルブ、ダンロップバルブ)Dunlop valve (Woods valve, Hollands valve, English valve)
スコットランドの発明家ジョン・ボイド・ダンロップの名に因んでダンロップバルブとも呼ばれる。日本では軽快車を中心にもっとも普及しているバルブ。高い空気圧には対応できず空気漏れもしやすいがバルブの補修は容易。ただし、虫ゴムと呼ばれる細いゴムチューブの弁が劣化しやすく、劣化が進むと急速に空気漏れが起こるため、定期的に交換が必要。虫ゴムを使わない改良タイプの「スーパーバルブ」という製品も発売されている。
米式バルブ(シュレーダーバルブ)Schrader valve (Auto, Moto, American valve)
ドイツ系アメリカ人の発明家オーガスト・シュレイダー英語版ドイツ語版の名に因んでシュレーダーバルブとも呼ばれる。主にマウンテンバイクBMXなど激しいライディングを想定した自転車に採用される。シティサイクルマウンテンバイクをベースにしたクロスバイクにもよく使われている。構造が単純で扱いやすい。また頑丈で空気も漏れにくいがやや重い。自動車モーターサイクルと共通であるため、それらに空気を充填できる設備があれば基本的には共用可能。バルブ外径が英式と同じ為、英式バルブ装備車と相互に交換することが可能なほか、前述の英式バルブのバルブコア部分を交換することで米式にできる「エアチェックアダプター」という商品も存在する。
仏式バルブ(フレンチバルブ、プレスタバルブ)Presta valve (Sclaverand valve, French valve)
ロードバイククロスバイク、XC用のマウンテンバイクなどレース用の自転車でよく使われる。チューブラータイヤもほとんどこのタイプである。高圧の充填が可能。先端の小さなナットを緩め、いったん押し込んで弁を開いてから充填する。軽量だが構造的に華奢。
競輪バルブ
基本的な構造は英式と同じだが、細い。競輪用のチューブラータイヤで使用される。競輪車をベースにしているためピストバイクにもそのまま使われる事がある。
イタリアンバルブ(レヂナバルブ)
外観は仏式に似ているが、バルブがねじ止めされており取り外し交換できるようになっている。ヨーロッパ(イタリア、ドイツなど)の一般車で見かけるが、日本国内ではまず見ない。

米式バルブと仏式バルブはその構造から専用の圧力計を使用して空気圧を計測することができる(米式なら自動車用ゲージが使用出来るが、小型自動車向けゲージは最大でも500 kPa(約73 psi)程度までしか測れないため、これ以上の高圧タイヤの場合は使用できない)。このため、空気圧の調整・管理が容易であることから、競技・スポーツ用自転車のほとんどには、米式か仏式いずれかのバルブが採用されている。


注釈

  1. ^ 差し詰めインチを単純に25mmで換算したようなもの(鈴木邦友 1989, p. 40)。
  2. ^ 例えば700A、700B、700Cそれぞれビード径にタイヤの太さを足して外形を計算してみると、700Aの外形=25.4×2×(1 3/8)+642=711.85、700Bの外形=25.4×2×(1 1/2)+635=711.2、700Cの外形=25.4×2×(1 3/4)+622=710.9、のように凡そ28インチ=711.2ミリメートルの近傍になる(鈴木邦友 1989, p. 41-42)。

出典

  1. ^ a b c d e f 堀江順策「自転車タイヤのわだち」『日本ゴム協会誌』第55巻第1号、日本ゴム協会、1982年、3-11頁、doi:10.2324/gomu.55.3 
  2. ^ a b 平田靖「タイヤの変遷について」『日本ゴム協会誌』第68巻第1号、日本ゴム協会、1995年、25-29頁、doi:10.2324/gomu.68.25 
  3. ^ a b c 大武義人「競争用自転車タイヤ」『日本ゴム協会誌』第80巻第3号、日本ゴム協会、2007年、93-99頁、doi:10.2324/gomu.80.93 
  4. ^ a b 鈴木邦友 1989.
  5. ^ 鈴木邦友 1989, p. 40.


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