自然災害 防災・予測と警報

自然災害

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/15 02:22 UTC 版)

防災・予測と警報

自然災害を予防し、また起きてしまった災害に応急的な対策を取るために、さまざまな防災対策が行われている。例えば洪水対策としては、上流のダムや河川の堤防によって増水した水を河道内に封じ込め、速やかに海へと流し去ることが基本的な方針となる[35]。土砂災害の予防としては、危険性の高い地域の開発をあらかじめ禁じておくことや、砂防ダムの建設などが挙げられる[36]

重大な自然災害の発生が予測される場合、いくつかの国では政府が警報を発表し警戒を促す。日本ではこの業務は気象庁が担当しており、警戒水準によって注意報警報特別警報の3段階が存在する。かつては注意報と警報のみであったが、2013年8月30日から特に重大な災害の発生が予測される場合には特別警報が発表されることとなった。また、霜害に注意を呼びかける霜注意報のように、注意報のみで警報の存在しないものもある[37]。また、地震の予測は原則として不可能であるが、地震発生時のP波(初期微動)とS波(主要動)の到達速度、それに各地の地震計から発せられる電波のタイムラグを利用して日本では緊急地震速報のシステムが整備され、主要動が到達するよりわずかに(数秒から数十秒[38])早く人々に警報を発することができるようになった[39]

この他、自然災害によって予測される被害とその範囲を地図化したハザードマップも、地震や洪水、土砂崩れなどの各種災害に対応したものが作成されている[40]

自然災害による被害

ドイツのミュンヘン再保険社の年次報告によれば、2010年の自然災害による死者は約29万5千人(うちハイチ大地震による死者は22万人)、経済的損失額は1,300億ドルとの推計を行なっている。これは1980年以降5-6番目に悪い数字であるという[41]

1900年から2006年までの統計では、死者1000人以上の巨大自然災害は地震が127件、気象災害が82件、火山災害が15件、地すべりが14件、雪害が2件、風害3件となっている[42]。自然災害による死者数は様々な防災対策の施行によって減少傾向にある一方で、人口増加や移動によって居住不適地への居住者が増加し、被災者数のそのものの増加を招いている[43]

自然災害が起きた場合、先進国においては事前の防災対策によって被害が少なく済み、その復旧の過程で災害時に発覚した新たな問題点に対応する形で新たな防災対策が行われるといった動きが起きるために自然災害への対応力は上昇し続け被害が減少する傾向があるのに対し、発展途上国で災害が起きた場合防災対策が不十分なため被害が拡大し、被害の大きさと復旧の遅れによって新たな防災対策も不十分なものとなり、そして新たに災害が起きて被害がさらに拡大するといった負の動きが起きる傾向がある[44]。こうしたことから、自然災害の死者数は発展途上国の方が圧倒的に多い[45]

自然災害と国際法

自然災害時の支援に関して、ジュネーブ条約による国際赤十字・赤新月合運動があり、さらに障害者権利条約第11条は、「締結国は国際人道法国際人権法も含めた国際法の義務に従い、武力紛争人道的緊急事態並びに自然災害発生の際も含めた災害時の障害者の救出と保護のためにあらゆる必要な措置を講じる」ことを定めている。さらに1991年12月の国際連合総会決議によって、自然災害や紛争などの人道危機への対処と調整を行う国連機関として国際連合人道問題調整事務所(OCHA)が設置された[46]


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  2. ^ B. Wisner, P. Blaikie, T. Cannon, and I. Davis (2004). At Risk - Natural hazards, people's vulnerability and disasters. Wiltshire: Routledge. ISBN 0-415-25216-4 
  3. ^ G. Bankoff, G. Frerks, D. Hilhorst (eds.) (2003). Mapping Vulnerability: Disasters, Development and People. ISBN 1-85383-964-7 
  4. ^ http://www.unesco.org/science/disaster/about_disaster.shtml より引用
  5. ^ D. Alexander (2002). Principles of Emergency planning and Management. Harpended: Terra publishing. ISBN 1-903544-10-6 
  6. ^ アマルティア・セン『貧困の克服』 pp.112-114 集英社、2002年
  7. ^ http://www.afpbb.com/articles/-/2718762 「アイスランドの噴火で欧州の空に混乱、英国では全飛行を禁止」AFPBB 2010年04月15日 2020年3月12日閲覧
  8. ^ https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/031400115/?P=1 「古代の超巨大噴火、人類はこうして生き延びた」ナショナルジオグラフィック 2018.03.14 2020年3月28日閲覧
  9. ^ 「基礎地球科学 第2版」p186 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  10. ^ 「基礎地球科学 第2版」p185 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  11. ^ 「基礎地球科学 第2版」p187 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  12. ^ 「基礎地球科学 第2版」p194-196 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  13. ^ https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1902Z_Z10C11A4CC1000/ 「東日本大震災の死者、ほぼ津波が原因 60歳以上が65%」日本経済新聞 2011/4/19 2020年3月12日閲覧
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  21. ^ 「図解 異常気象のしくみと自然災害対策術」p64 ゲリー・マッコール著 内藤典子訳 原書房 2019年7月31日第1刷
  22. ^ 「図解 異常気象のしくみと自然災害対策術」p89 ゲリー・マッコール著 内藤典子訳 原書房 2019年7月31日第1刷
  23. ^ https://www.kodomonokagaku.com/hatena/?989d10945af54bad03babf0b28945a40 「高波、津波、高潮はどう違う?」子供の科学 誠文堂新光社 2020年3月27日閲覧
  24. ^ http://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/takashiobousai/02/index.html 「高潮は恐ろしいの?」日本国国土交通省 2020年3月23日閲覧
  25. ^ 「海の気象がよくわかる本」p204-205 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  26. ^ http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h27/81/special_01.html 「特集 大雪への備え~雪害では、どのような災害が起こるのか」(平成27年度 広報誌「ぼうさい」冬号(第81号))日本国内閣府 2020年3月23日閲覧
  27. ^ 「図解 異常気象のしくみと自然災害対策術」p61 ゲリー・マッコール著 内藤典子訳 原書房 2019年7月31日第1刷
  28. ^ https://dil.bosai.go.jp/workshop/01kouza_kiso/13kaze.html 「防災基礎講座 基礎知識編:13.強風・たつ巻・降雹」防災科学技術研究所 2020年3月24日閲覧
  29. ^ a b https://dil.bosai.go.jp/workshop/01kouza_kiso/14reigai.html 「防災基礎講座 基礎知識編:14.冷害」防災科学技術研究所 2020年3月24日閲覧
  30. ^ https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/yamakaji/con_1.htm 「日本では山火事はどの位発生しているの?」日本国林野庁 令和2年2月21日 2020年3月28日閲覧
  31. ^ https://news.yahoo.co.jp/byline/morisayaka/20200211-00162510/ 「30年ぶりの大雨ですべての山火事が収束へ オーストラリア」森さやか ヤフーニュース 2020年2月11日 2020年3月28日閲覧
  32. ^ 『アフリカを知る事典』、平凡社、ISBN 4-582-12623-5 1989年2月6日 初版第1刷 p.333
  33. ^ https://news.yahoo.co.jp/byline/tatsumiyoshiyuki/20200129-00160738/ 「恐竜絶滅を引き起こした「隕石の冬」と「火山の冬」」巽好幸 ヤフーニュース 2020年1月29日 2020年3月19日閲覧
  34. ^ 「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p142 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷
  35. ^ 「流系の科学 山・川・海を貫く水の振る舞い」p109 宇野木早苗 築地書館 2010年9月10日初版発行
  36. ^ 「基礎地球科学 第2版」p200 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  37. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p152-153 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷
  38. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p96 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷
  39. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p84-85 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷
  40. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p30 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  41. ^ 2010年の大災害死者、世界で29万人超(共同通信2011年1月4日)
  42. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p17 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  43. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p11 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  44. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p18-19 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  45. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p14 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  46. ^ https://www.unocha.org/about-ocha/history-ocha 「HISTORY」OCHA 2020年3月28日閲覧
  47. ^ 『シュメル - 人類最古の文明』p13-14 小林登志子 中央公論新社〈中公新書 1818〉、2005年10月。ISBN 978-4-12-101818-2
  48. ^ http://www.bosaijoho.jp/topnews/item_5826.html 「日本の災害・防災年表:「災異改元」編」防災情報新聞 2018.10.5 2020年3月25日閲覧






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