自動車競技 スポンサーシップ

自動車競技

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/21 04:18 UTC 版)

スポンサーシップ

グラハム・ヒルが駆るロータス・49。自動車競技史初のスポンサーカラーである(1969年
パーソナルスポンサーであるGoDaddyのロゴ入りレーシングスーツを着たジェームズ・ヒンチクリフ

スポンサーシップ (: Sponsorship) とは「後援」を意味し、その名の通りチームや選手に対して技術や資金を提供することである。こうした資金と技術提供者をスポンサーと呼ぶ。自動車競技におけるスポンサーは、大きく分けて「テクニカルスポンサー」と「コマーシャルスポンサー」の2つが存在する。

自動車競技において、選手、チームが優秀な成績をあげることは、その選手、チームに携わる自動車製造会社製品(車両本体やパーツも含める)、あるいは当該企業のイメージアップにも繋がる。したがって該当する車種の販売にも大きな影響を与える。そのため製造各社はさまざまなかたちで競技参加者を支援しており、個人の参加車にもサポートをする。先述のセミワークスもこれに該当し、車体だけでなく部品供給などの恩恵を与えることでこれらの当該企業の営利的な目的にもなる。こうしたことからもセミワークス体制は「テクニカルスポンサー」を受けたプライベーターという解釈も可能である。

また、競技の参加にはほとんどの場合多額の資金やメカニック・エンジニアなどのスタッフが必要になるため、競技参加者は自動車製造会社だけではなく、広く経済社会全体からスポンサーを見つける努力を行う事が常となる。スポンサーによる資金の提供を受けた場合は、選手のレーシングスーツユニフォーム広告)や車体にスポンサーのロゴの掲示やコーポレートカラーとする「コマーシャルスポンサー」が一般的である。

自動車競技におけるスポンサーは1960年代後半に入ってから行われるようになり、F1のチーム・ロータスに代表するように車体にスポンサー企業や団体を掲載し、さらにメインスポンサーが求めるカラーリングで車両を塗装する「スポンサーカラー」という手法も確立した。その収入によってより強力なチーム体制を身につけることに成功した背景から、自動車競技は「走る広告塔」と比喩されるまでになった。

自動車競技はチームとは別にドライバー個人に対しスポンサーが付く場合も少なくないのが特徴である。これを「パーソナルスポンサー」と呼ぶ。パーソナルスポンサーはコマーシャルスポンサーの一種であり、このスポンサーを見込んでプライベーターチーム側がドライバーに対する契約締結条件するケースも珍しくはない。これは、自動車競技という競技の特性における側面の1つでもあり、チーム運営にかかるコストが莫大であるために資金力が重要になる傾向がある。スポンサーになる企業もその広告費の高さから比較的大きな企業に限られ、特にチームの競争力を高めたいという考えや、あるいは資金不足があらわになったチームはドライバーの自動車競技の能力よりも、チームの運営状況を改善してくれるドライバーを好まれる場合が多いためである。したがって、下位カテゴリから上位カテゴリに昇格を目指す新人ドライバーは、それまで戦ってきたカテゴリでの特筆される実績とプラスして、スポンサーを要求される。

このようにスポンサーを要求され、その力によってシートを得たドライバーをペイドライバー (: Paying Driver) とも呼ばれる。通常はドライバーもスポーツ選手と同じく一つの職業であり、彼らと同等に戦果や奮闘の対価としてチーム側から契約金や年俸などが支払われ利益を得るのが常ではあるが、ペイドライバーの場合は反対にチーム側からの支払いを一切受けることない、あるいはごくわずかな年俸などを得てチームのレギュラーシートに座る[41]。しかし、その見返りとしてペイドライバーが持ち込んだスポンサー企業がチームに付き、その企業がスポンサー料をチーム側に支払う。 こうしたドライバーは自身が得る利益よりも支払い (Paying) の額が明らかに大きいためペイドライバーと揶揄されるようになった[42]

これらの事から、時としてスポンサー目当ての新人ドライバー契約が問題視される場合もある反面[43]、プライベーターのマネジメント能力と新人抜擢能力が評価されるケースもあり、こうしたプライベーターでチームの競争力以上の大きな活躍をすることで、将来的に選手個人に対して強豪チームからオファーが訪れ引き抜かれてゆく、あるいは古参ドライバーが加齢による身体能力の低下などによって引退するなどを行い、そのシートに新たな新人が自らの能力を挑戦する意義を見出してスポンサーと共に自身の昇格を目指すという登竜門的な意味もある。 また、自動車競技においてのチーム側の考えとしては、財政的理由と才能の間での正しいバランスを見つけることがチーム運営上の重要事項であるため、ペイドライバーについては評価が分かれる[42][43][44]

スポンサー企業の傾向としては、以前はマールボロを代表とするタバコ企業が豊富な資金力を背景に自動車競技と強い関係を結び付けていたが、1980年代後半よりEU諸国から始まったたばこ広告規制強化によって、たばこ広告の縮小を始める。この規制はイギリスで最初に行われ、F1においてもイギリスGPではタバコ銘柄の名称を記載する行為を禁止した[45]。この風習は後の喫煙問題によってEU諸国に広がり、現在ではヨーロッパ諸国全土においてたばこ広告の掲載は禁止されている。近年では車体に描かれる図柄がたばこ広告に似ている、あるいはサブリミナル効果としてタバコを連想させるというだけで問題視される傾向にあり、事実上たばこ広告は完全排除されている[46]。この他にも、アルコール飲料のスポンサーも、飲酒運転アルコール依存症などの問題で規制される傾向にある[47]

たばこ産業が撤退した後にはレノボヒューレット・パッカードなどの大手IT企業がスポンサーとして名乗りを上げている。IT企業はコマーシャルスポンサーであるが現物支給としてワークステーションスーパーコンピュータなどの自社製品やIT技術者をチームに提供し、数値解析で車両開発を支援するなどテクニカルスポンサーとして活動する企業もある。




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  2. ^ 折口 1970, p. 20.
  3. ^ 折口 1970, p. 22.
  4. ^ 応募車両の動力には「圧縮空気」「重力」「家畜動力併用」など、本気で出場する気があったのか疑わしい内容も多数存在したという。現実のレースに出場したのは蒸気自動車とガソリン自動車・オートバイだけであった。
  5. ^ アメデー・ボレーと息子のアメデー2世およびレオンは、1873年以来長らく蒸気自動車を開発し続けていた。このレースでラ・ヌーヴェルは鈍足ながら十分な信頼性を示し、途中リタイアしたドライバーたちを拾ってルーアンまで完走している。
  6. ^ 宇宙物理学者のジョルジュ・ルメートルではない。
  7. ^ 折口 1970, p. 22.
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  9. ^ 折口 1970, p. 22.
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  16. ^ “The Greatest Race – 1908 New York to Paris (Page #3)”. sportscardigest.com. (2011年9月28日). http://www.sportscardigest.com/the-greatest-race-1908-new-york-to-paris/3/ 2012年11月13日閲覧。 
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  41. ^ 中にはテストドライバーとしてチームに在籍するだけでスポンサーがチームに付く場合もある。こうした事情は単にチーム側の実情だけでなく、スポンサー側の意向も反映している。
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  45. ^ 当時はスポンサーを行う事は合法であり、車体のロゴ、ヘルメット、レーシングスーツ、サーキット看板でロゴや銘柄を連想させるような図柄は随所に存在した。
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  48. ^ かつてのヨーロッパツーリングカー選手権はセミ耐久レース。
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  50. ^ 現在はパリを使用しないルートであるが現在でも「パリダカ」と呼ばれることがある。
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