脳死 脳死の概要

脳死

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/27 06:33 UTC 版)

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概要

古来、人間とは心停止であることが自明のことであったため、医学的に厳密に定義することはさほど重要ではなかった。一般に、心臓すべての機能が停止した場合(三徴候説)と考えられており、医師が死亡確認の際に呼吸脈拍対光反射の消失を確認することはこれに由来している。順序としては一般に

  1. 肺機能の停止
  2. 心臓機能の停止
  3. 脳機能の停止

という過程を辿ることになる。

しかし医療技術の発達により、脳の心肺機能を制御する能力が喪失していても(そのため自発呼吸も消失していても)、人工呼吸器により呼吸と循環が保たれた状態が出現することとなった。すなわち、

  1. 脳幹機能の停止#本来ならば心肺機能が停止する筈だが、人工呼吸器により呼吸が継続される
  2. 心臓機能も維持される

これらが一定の手順によって確認された状態が脳死である。脳死は、心肺機能に致命的な損傷はないが、頭部にのみ(例えば何らかの事故を原因として)強い衝撃を受けた場合やくも膜下出血等の病気が原因で発生することが多い。

脳死に近似した状態は、人工呼吸器が開発・実用化された1950年代頃に現れるようになり、当時は「超昏睡」や「不可逆昏睡」などと呼ばれた。本来、脳死に陥った患者は随意運動ができず、何も感じず、近いうちに(あるいは人工呼吸器を外せば)確実に心停止するとされる状態の筈であるが、ラザロ徴候など脳死者の中には、自発的に身体を動かすことがあるなど[1]、それを否定するような現象の報告例も見られることや、呼吸があり心臓が動いている、体温が維持されることなどから、一般人にとって脳死を人の死とすることに根強い抵抗が存在する。日本においては臓器提供時を除き、脳死を個体死とすることは法律上いまだ認められていない。国や宗教によって賛否はさまざまである。

心臓死の場合

脳細胞は高度な機能を支える分、エネルギー消費量が多いため、酸素不足に弱く、心肺停止により脳への酸素の供給が絶たれると直ぐに死滅し始める。 まず数分の内に人間の知的な精神活動を支えている大脳皮質の脳細胞の大部分が死滅する。この時点で外部刺激に対して意味のある応答を返せなくなる失外套症候群になり、社会復帰は絶望的となる。 次に、十数分で脳機能の大半が廃絶し、回復不能となる。この段階では生命維持すら困難になる。

日本での脳死論

日本では、脳の機能は完全に解明されておらず脳死とされる状態においても脳としての機能が恒久的に消失した状態にあるということを完全に証明することが出来ない、また仮に脳機能が完全に消失していたとしても、無機物にも魂が宿っているともされてきた日本の文化として、脳機能の消失だけを以って直接的に人間としての死でもあると断定的に結びつけることには無理があると主張された。しかし、実際には欧米でも一般人は日本と同じように脳死という新しい観念を受け入れるのには相当の抵抗を示し、臨床的脳死(後述)の状態でありながらちゃんと呼吸をしている患者の延命措置を停止には多くの遺族が日本と同じように反対する事例は多い[2]。また臓器などの摘出に関しても、「欧米と違い」日本人は特別な文化的執着があると論じられているが、例えばイギリスで病院が死亡した幼児の臓器を後の検死のために親に無断で摘出・保存していたことが発覚し、一大スキャンダルとなり、複数の親が臓器を病院側から取り戻した後、遺体を掘り起こし、取り戻した臓器と合わせて葬式と埋葬をやり直すまでの事態に発展している[3]。しかし、脳死を合理的で科学優先の欧米文化の観念とし、これを感情的・霊的文化を有する日本文化となじまないとの日本文化論が、脳死および臓器移植に対する反対論として長らく日本では展開された。一方で一般人の生死観に関わらず臓器移植が早急に普及した欧米では、移植においてはあくまで本人による生前のドナー合意(及び遺族からの合意)が確認される時のみとの立場が徹底されため、このような一般人の心情を文化論に昇華させて臓器移植に反対するという論争が起こった。


  1. ^ a b YouTube - ニュースJAPAN/脳死移植シリーズ vol.2 『いつか最期のときに』
  2. ^ Terri Schiavo case
  3. ^ BBC News - HEALTH - Organ scandal background
  4. ^ 高知新聞 - 生命のゆくえ 検証・脳死移植12
  5. ^ 高知赤十字病院で行われた1999年に行われた施術の例[要出典]
  6. ^ 高知赤十字病院に対する日本弁護士連合会の勧告及び要望 2003年2月18日 - 「脳死」・臓器移植に反対する関西市民の会
  7. ^ 横田裕行 (2009年8月1日). “神経救急 脳死判定の現状―脳死下臓器提供との関連から”. 中外医学社. 2010年9月16日閲覧。
  8. ^ ただし、2010年7月16日までは法的な意思確認の関係上、15歳未満が事実上の除外条件となっていた
  9. ^ 浜崎, 盛康脳死と人の死(下) -視床下部・下垂体系ホルモンと統合性- (PDF) 、『人間科学』第13号、琉球大学法文学部人間科学科、2004年3月、pp.287-300。


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