肺胞蛋白症 肺胞蛋白症の概要

肺胞蛋白症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/04 05:15 UTC 版)

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肺胞蛋白症
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
呼吸器学
ICD-10 J84.0
ICD-9-CM 516.0
OMIM 265120 610913 610921 610910
DiseasesDB 29642
MedlinePlus 000114
eMedicine med/1927
MeSH D011649

病態

肺胞蛋白症は肺胞腔内にリポ蛋白様物質が貯留する疾患である。肺胞は呼吸(ガス交換)を行う場であるため、肺胞腔内に物質が貯留すると呼吸困難をきたし、また咳嗽を呈する。

肺胞内に貯留する物質は、リン脂質、特に肺サーファクタントの主成分であるレシチンに富む。また、肺サーファクタント蛋白であるSP-A、SP-D濃度も増加していることから、この貯留物質は肺サーファクタント由来であると考えられている。肺サーファクタントは、II型肺胞上皮細胞によって産生され,肺胞マクロファージによって分解・除去される。本疾患においては、肺胞マクロファージの機能異常により、肺サーファクタント蛋白が肺胞から除去されずに貯留すると考えられている。

本症は先天性と後天性に分けられ、また後天性は特発性と続発性に分けられる。続発性は免疫異常をもたらす白血病骨髄異形成症候群等の血液疾患、膠原病やHIV感染症、粉塵や化学物質の吸入暴露等によって二次的に引き起こされるものである。一方、特発性は90%以上を占めており、基本的には原因不明とされている[1]が、近年、GM-CSFあるいはその受容体遺伝子の欠損マウスが本症類似の病態を発症すること[2][3]、本疾患患者の血清中に抗GM-CSF抗体が存在すること[4]等が報告されている。これらのことから、GM-CSFの欠乏やGM-CSF自己抗体などによって肺胞マクロファージの成熟過程に障害がおこることで、肺胞マクロファージの機能異常をきたし、肺胞腔内から余分な肺サーファクタントを除去できずに貯留し、本疾患が引き起こされると考えられるようになった。

疫学

人口10万人あたり0.37人と推定される[5]。30-50歳に好発するが、全ての年齢で発病しうる。男女比は3:1で男性に多く、喫煙者に多い[6]

臨床像

症状

緩徐に進行する息切れ、乾性咳嗽。感染症の合併がなければ、発熱や炎症反応は普通見られない。進行すると呼吸不全を来たし、体重減少やチアノーゼばち指を呈することもある。この場合、湿性ラ音(断続性ラ音)が聴取される場合がある。

検査

血液検査
血清中LDHSP-A、SP-D、KL-6CEAなどが上昇し,病勢と相関する。炎症反応は普通みられない。また、血液ガス分析においては低酸素血症もみられる。
病理
経気管支肺生検(TBLB)や外科的肺生検により、肺胞腔内にエオジン好性、PAS陽性の蛋白様物質が充満する像がみられる。肺胞や気道の構造は正常である。
呼吸機能検査
拘束性障害(肺活量の低下)、拡散能の低下がみられる。
胸部X線写真
典型的には両側性、肺門部優位の浸潤影を認める。しばしば気管支透暸像を伴う。
胸部CT
非区域性のすりガラス状陰影の中に、小葉間隔壁の肥厚がみられ、メロンの皮状,あるいはcrazy-paving shadow(不揃いな敷石状)と呼ばれる。濃度上昇域と正常肺の境界は明瞭。
気管支肺胞洗浄(BAL)
米のとぎ汁様と呼ばれる白濁像を示し、これは本疾患に特徴的な所見である。また、PAS染色は陽性を示す。

合併症

肺胞マクロファージの機能異常、肺胞内の液体貯留等により、易感染性となり、アスペルギルス、カンジダ結核菌非結核性抗酸菌ニューモシスチスウイルスなどの感染症を合併しやすい。

治療・予後

20〜30%において、自然に治癒する例がある。肺機能検査や臨床症状悪化した場合は肺胞洗浄療法を行なう。これは確立された治療法である。全身麻酔下に片肺ずつ洗浄を行う全肺洗浄と,局所麻酔にて気管支鏡下に行う方法とがある。

また近年、本疾患に対しGM-CSF投与が有効である可能性が期待されており,治験が進行中である。




  1. ^ Goldstein LS, Kavuru MS, Curtis-McCarthy P, et al. "Pulmonary alveolar proteinosis. clinical features and outcomes.", Chest, 114, 1998, pp. 1357-1362. PMID 9824014
  2. ^ Dranoff G, Crawford AD, Sadelain M, et al. "Involvement of granulocyte-macrophage colony-stimulating factor in pulmonary homeostasis.", Science, 264, 1994, pp. 713-716. PMID 8171324
  3. ^ Stanley E, Lieschke GJ, Grail D, et al. "Granulocyte/macrophage colony-stimulating factor-deficient mice show no major pertubation of hematopoiesis but develop a characteristic pulmonary pathology.", Proceedings of National Academy of Science of the United States of America, 91, 1994, pp. 5592-5596. PMID 8202532
  4. ^ Kitamura T, Tanaka N, Watanabe J, et al. "Idiopathic pulmonary alveolar proteinosis as an autoimmune disease with neutralizing antibody against granulocyte/macrophage colony-stimulating factor.", Journal of Experimental Medicine, 190, 1999, pp. 875-880. PMID 10499925
  5. ^ Ben-Dov I, Kishinevski Y, Roznman J, et al. "Pulmonary alveolar Proteinosis in Israel. Ethnic clustering.", The Israel Medical Association Journal 1, 1999, pp. 75-78. PMID 10731299
  6. ^ Seymour JF, Presneill JJ. Pulmonary alveolar proteinosis. progress in the first 44 years. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine", 166, 2002, pp. 215-235. PMID 12119235


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