育児 育児の概要

育児

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 22:46 UTC 版)

育児

育児を大きくわけると、愛情栄養、養護に分けることができる[4]、と澤田啓司は述べた。

生後の育児

愛情

育児の基本条件の中でも第一のものは、養育される小児と、養育する人との間に愛情の交流があることである[4]とされる。物理的な環境がいかに整っていようが、愛情を欠く環境では小児は健全には育たない[4]と澤田啓司は指摘している。このことは多くの研究が示している[4]と言う[注 1]ボウルビーは、母と子が愛情のきずなで結ばれていることが、子供が(子供の)自己への信頼を育てることになり、それがやがては他者への信頼を育てることになり、円満な社会生活を営むことができる人格形成につながる、と指摘した[4]。子が母に対して抱く愛情のきずなをボウルビーは「attachmentアタッチメント」と呼んでいる。クラウスとケネルらは、こうした愛着の形成には、出生直後における母と子の皮膚接触(スキンシップ)や母乳哺育が大切であると指摘した[4]と言う。こうした指摘を受けて、近年の産院では、分娩直後から母子が肌を触れ合う機会を増やしたり、早期授乳を行ったり、産褥期に母と子を同室にする、などの配慮をすることが増えてきている[4]、と澤田啓司はした。

皮膚接触(スキンシップ)をすることは、子の人格が健全に育つのに役立つ、とされる。赤ちゃんの皮膚感覚は脳と直結しているので、赤ちゃんの肌に触れること(タッチング)をすればするほど、脳の発達を助けることにつながる[5]とされる。

栄養

可能な限り母乳で乳児を育てるほうがよい、母乳で育てられている赤ちゃんは、人工栄養の赤ちゃんと比較してSIDS(乳幼児突然死症候群)が起こりにくいと考えられている、と日本の厚生労働省のサイトでは説明している[6]ユニセフ金のリボン運動と称して母乳育児を推奨している。(産婦人科の)島岡昌幸、池下育子ら監修のサイト『妊娠・育児大百科』も、母乳育児はママと赤ちゃんの間に強い絆をつくりあげていく、母乳を射出するオキシトシンというホルモンには、母親に幸福感や恍惚感を与える作用が、そして、母乳を産生するプロラクチンというホルモンには母親に赤ちゃんを保護したいと思わせてくれる作用があるそうだ、とし、母乳育児は母性を育む一番の近道とする[5]。出産後、母親から最初に分泌される初乳には、IgA抗体が多く含まれ、乳児を細菌などの感染から守る働きをしている[5]母乳の出方には個人差があり、「必要以上に授乳の方法に関して心配はしないほうがよい」と言われることもある。母乳が不足している場合は、ミルクを足す。

母乳の出が悪い、疾病や死去、離婚、子供と母親や母親の実家との関係を遠ざけるためにわざと授乳させない、などの理由で、母親の代わりに授乳させる産婦を乳母という。産婦が、別の産婦に一時的に授乳の代行を頼むことを「もらい乳」という。

養護

養護、すなわち身の回りの世話をしてやることについて解説すると、体温を維持すること、皮膚を清潔に保つこと、排泄物(いわゆるウンチオシッコ)を処理することなどは、乳幼児は自分ではできないことなので[4]、大人がそれをしてやることになる[4]、という。また、健康増進のために、屋外に出て日光浴外気浴・外遊びなどを行うことも大切だ[4]と言う。上で愛情が第一の基本条件だと指摘されているが、こうした養護行為もただ機械的に行うのではなく、愛情をこめて微笑みかけ語りかけるほうがよいし、また養育者は、子供からの笑顔や語りかけに対して積極的に応答することが大切だと、こうすることによって母と子のきずなが密となり、コミュニケーションの基礎がつくられてゆく[4]、と澤田は指摘した。また数多くの言葉を聞かせてやることによって、言語の習得の基礎がつくられる[4]という。

食事

哺乳期~離乳準備期

新生児期から4か月頃までは哺乳による栄養補給を受ける[7]。母乳のほか育児用調製粉乳(粉ミルク)や乳児用液体ミルクである。

乳児は体重に占める水分の割合が多く、体から蒸発する水分量(不感蒸泄量)も多いため、特に哺乳は重要である[7]。乳児は腎臓が未発達で尿を濃縮する力も弱いため、体内の水分低下を尿の量を減らして調節することが難しく脱水症状を起こしやすい[7]

離乳期

生後5か月頃から、乳に加えて半固形食を与え、次に固形食を与えるようになる[4]。この過程が「離乳」(weaning)であり、この時期に食べさせる食物を「離乳食」という[4]

生後5か月から6か月頃にミルクと離乳食の併用となり、生後12か月から18か月頃に離乳食に完全に移行することが多い[7]

断乳の適切な時期については、育てる側にも様々な考え方があり、また赤ちゃんひとりひとりごとに事情も異なっているので、一概には言えない。「早ければ良い」というようなものではない、とされる。3食とも離乳食となり栄養が充分に摂れていることが確認できると、断乳を検討しはじめても良い時期となる。12ヶ月頃を目安に断乳すると良い、と言う人もいる。また、(上の節で指摘したような)母子のアタッチメント(愛着)が強化されるという利点に着目して、授乳することが発育を妨げず母子にとって楽しい行為であるうちはそのまま乳を併用すればよく、断乳を急ぐ必要はない、と言う人もいる[4]。世界保健機構WHOは、特殊な病気が無い限り、最初の6か月は母乳だけで育てることを勧めている。その後は、適切で安全な離乳食を始めて、2歳になるまでは母乳を飲むことを勧めている[8]。それは、低栄養や肥満の予防に役立つ。

離乳が完了した後でも、乳幼児はすぐには食卓の上の食べ物を自分で口に運ぶことができるようになるわけではなく、養育者が助けてやる必要がある[4]。またこの時期は、少食や、むらのある食べ方や、《遊び食べ》の問題が生じやすい[4]

離乳後の栄養に関して重要な点は、

  1. 栄養学的にみて、質・量ともに適切な食品を、子の摂取能力に合わせて食べやすいかたちで与えること
  2. 食べることが楽しい、と思える雰囲気をつくるようにして、子の意思に反して食べることを無理強いしたり、食事量を強制したり、強引な「しつけ」をおこなったりしない

という2点だと澤田は述べた[4]

乳歯の生える2歳頃に離乳食から幼児食に移行する[7]


注釈

  1. ^ 例えば20世紀初頭のホスピタリズムの研究や、フロイトによる研究、1950年代のボウルビーの母子関係理論でも、1970年代以後のクラウスケネルらの母子相互作用に研究でも明らかにされている。(出典:澤田啓司「育児」 『世界大百科事典』平凡社、1988年。 

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